政治方針改訂案の中間まとめを報告/連合の中央委員会

(2013年6月5日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は5月31日、福島市内で中央委員会を開催した。検討を続けている政治方針改訂案について「中間まとめ」を特別報告するとともに、「2013春季生活闘争中間まとめ」、向こう2年間の「政策・制度 要求と提言」や2014年度の重点政策などを確認した。

実体経済放置ではデフレ解消できない

古賀会長が腰を痛めて欠席したため、主催者あいさつは、徳永秀昭会長代行(自治労委員長)が行った。徳永会長代行は、いわゆるアベノミクスについて、「(1―3月期のGDP速報がプラス成長を記録したものの)働くものの暮らしや労働条件は傷んだまま、まったくと言っていいほど改善しておらず、むしろ、将来に向けて大きなリスクをはらんでいると言わざるを得ない」と強調。実体経済の行方を左右するのは個人消費だと主張したうえで、「実体経済を放置したままお金だけ増やしてもデフレは解消できない。家計の所得を増やし、雇用不安・将来不安を払拭することで、働く者が安心してお金を使えるようにすることを最優先にした政策運営が必要だ」と訴えた。

また、産業競争力会議や規制改革会議などで、労働に関するルールの見直しについて議論が行われていることに対して、「『解雇の金銭解決制度』や『ホワイトカラー・イグゼンプション』など、解雇や労働時間に関する労働者保護ルールを大きく改悪しようとする議論を、労働者代表を一人も加えることなく一方的に行っている」と抗議し、「労働者不在のなかで労働者の犠牲の上に成長戦略を描こうとする姿勢は極めて遺憾と言わざるを得ない」と批判した。

徳永会長代行は憲法の第96条の改正の動きについても言及。「憲法は、公権力の濫用を防ぎ国民の権利を保障するためのものであり、立憲主義の立場から発議要件の緩和には問題があると考えており、いまの憲法を本当に変える必要があるのか、仮に変えるならば、どこを何のためにどう変えるのか論ずることなく、改憲の手続き条項のみの改正を先行させるということではあってはならない」と述べた。

「憲法改正は時期尚早」と中間まとめ

連合では現在、2003年以来となる3度目の「連合の政治方針」の改訂作業に入っている。改訂素案を組織討議に付すことを今年1月の中央執行委員会で確認し、4月10日には構成組織からの意見集約を締め切った。21の構成組織および11の地方連合会から意見が寄せられ、中央委員会で、構成組織の意見も踏まえて修正が施された「中間まとめ」が本部から中間報告された。

憲法問題について、現行方針は「まだ論議自体が国民的な広がりを見せておらず未成熟なため、現状では憲法改正を俎上に乗せることは、時期尚早と判断する」との記述となっているが、中間まとめでは「とりまく情勢を冷静に見極め、国民的な議論の動向にも注意を払いつつ慎重な対応を図っていく」と記述。自衛隊については、現行方針にある「縮小の方向を指向する」との文言を維持している。

「連合の求める政治」では、現行方針の「政権を担いうる新しい政治勢力の結集に努力し、究極的には二大政党的体制の確立をめざす」との文言から、「与野党が互いに政策で切磋琢磨する政治体制の確立が重要であると考える。そのため、政権交代可能な二大政党的体制をめざす」と変更した。大会に提起される最終の改訂案は、9月の中央執行委員会で確認される予定となっている。

「デフレ脱却つながらず」と春闘中間まとめ

「2013春季生活闘争中間まとめ」は、今春闘について、4月30日現在での回答状況を踏まえて総括したもの。それによると、同日までの賃金引き上げの回答内容について、「働く者の暮らしを底上げし、デフレ脱却につながるような賃金改善までに至っていない」と総括。政府が経済団体へ賃上げを要請するなど賃上げが注目される状況となったことについては、「『賃上げによるデフレからの脱却』という主張が、社会的にも認識され理解が広がったことは社会的運動の観点からも一定の役割を果たし得たものと受け止める」としつつ、賃上げを含めた労働条件の決定は、「当該労使の真摯な議論・交渉で決定されることが基本」と、あらためて連合としてのスタンスを表した。

2009年から設置している「共闘連絡会議」について、今春闘を機に「これからの共闘連絡会議の充実や闘争の枠組みなどについて検討を深めていくことが必要である」として、そのあり方の見直しを示唆。全構成組織が参加することにした「非正規共闘」については、非正規労働者の処遇改善を含めた取り組み意識が全構成組織に再徹底することができたと、評価した。「中小共闘」については、集計結果から、「格差是正に至っていない」との認識を示している。

具体的な取り組みの評価をみていくと、賃金では、賃金カーブ維持分を確保した組合は増加しているものの、今後も維持分を確保していくために賃金制度の確立などが課題だとして、支援策強化の検討を深めていくとしている。非正規労働者の処遇改善では、賃金改善に加え、最低賃金協定の拡大や水準引き上げ、正社員化、一時金の導入など「多様な観点からの処遇改善への取り組みが進んでいる」としている。

2014春闘に向けて早めに検討に着手

2014春季生活闘争に向けては、政府のデフレ脱却に向けた施策や輸入物価の引き上げ、予定される消費税の引き上げなどを注視しながら、賃金水準の回復の取り組みと合わせて、可処分所得の向上という視点も加えて要求項目や要求水準について検討を早期に進めるとしている。8月下旬の中央執行委員会には、「考え方の一定の枠組みを打ち出す」(須田孝・総合労働局長)。ベア要求を検討する際は、従来は過年度物価や成長率などを根拠の柱としてきたが、従来の考え方の枠組みでよいのかどうかも含めて検討する方向だ。

「2014年度の重点政策」では、解雇規制の緩和を行わないことや、いわゆる準正社員の導入に際して、整理解雇の4要件のなし崩し的緩和につながるものとさせないこと、ホワイトカラー・イグゼンプションなど労働時間規制の緩和を行わないことなどを柱に掲げた。中央委員会ではこのほか、今年10月から7年間を期間とする「第4次男女平等参画推進計画」を確立した。