産業別最低賃金で500円の引き上げを獲得/電機連合の春闘回答

(2013年3月15日 調査・解析部)

[労使]

パナソニックや日立製作所など、電機連合の10の中闘組合では、すべてが賃金体系維持分を確保し、一時金はすべての組合が産別ミニマム基準である年間4カ月を確保した。組合側が1,000円の引き上げを要求していた産業別最低賃金(18歳見合い)は、500円の引き上げで労使が折り合った。

電機連合での今回の春闘では、シャープ労組とパイオニア労組が統一闘争から離脱し、10組合での統一闘争となった。

賃金では、「開発・設計職基幹労働者賃金」(年齢要素は30歳相当)の個別ポイントの賃金水準を維持すること(賃金体系の維持)を要求していたが、すべての組合が体系を維持した。

一時金は、パナソニック、東芝、富士通、NEC、安川電機では業績連動算定方式を採用しており、業績に応じて算式によって一時金水準が確定するため、水準交渉を行っていない。水準交渉を行った各組合への回答内容をみていくと、日立製作所が5.8カ月の要求に対して5.35カ月。ただし、昨年実績の5.28カ月は上回った。三菱電機では、組合側は5.57カ月を要求したが、5.22カ月での妥結となり、昨年実績の5.67カ月を下回った。富士電機は、4.8カ月で昨年実績から0.3カ月積み増した。沖電気工業は4.25カ月で昨年実績を0.05カ月上回っている。明電舎は産別ミニマムぎりぎりの4.0カ月を組合側が確保した。

現行水準の15万4,500円から、1,000円の引き上げを組合側が要求していた「産業別最低賃金(18歳見合い)」(企業内最低賃金)は、組合側は11日の中央闘争委員会でストライキ実施の対象項目から除外したものの、最終的には500円の引き上げを獲得した。産業別最低賃金の引き上げは3年連続で、この3年間で2,000円引き上げられたことになる。

電機連合の有野正治委員長は、こうした中闘組合の回答について、13日の金属労協での記者会見で「正直、安堵感がただよっているというのが本音だ」とコメント。「電機産業は、(中闘組合の業績の合計をみると)2年連続の多額の赤字という歴史的な状況と、第3四半期で大手6社のうち5社が大幅な下方修正を行い、厳しい闘いになった」と振り返った。産業別最低賃金の引き上げについては、すべての労働者の処遇の底上げの観点から「最後までこだわった」とし、「500円という内容ではあったが、厳しい状況のなかでこれを獲得できたことは、働く者へのメッセージにつながるもの」と評価した。

今次交渉では、賃金体系維持については、回答日の1週間以上前から確保に自信をみせる組合があったほか、一時金の4カ月についても、9日の時点で、電機連合と産別労使交渉を行っている「電機・電子・情報通信産業経営者連盟」(電経連)の中川能亨理事長(パナソニック常務取締役)が、「各社の労使間で議論されるべきものであるが、(電機連合側の)従来からの労働運動の連続性もあり、重く受け止めている」と述べるなど、組合側は事前に確保の手ごたえを得られていた。一方、産業別最低賃金については、「高年齢者雇用等の労働条件の底上げにつながる」(産別労使交渉の経営側)などとして、経営側は終始厳しい姿勢を示していた。