賃上げでデフレからの脱却を訴えてきた成果が伺える/連合

(2013年3月15日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は13日、金属や小売大手などの回答引き出しを踏まえて記者会見を開いた。同日13時時点で回答を引き出したのは63組合。うち、6組合が単純平均で871円の賃金改善分を獲得している。こうした状況について古賀会長は、「賃金の底上げ、底支えを図るとともに、『賃上げでデフレからの脱却を』と訴えてきた成果が伺える内容だ」などと話した。

6組合が単純平均871円の賃金改善分を獲得

連合が13日にまとめた「2013春季生活闘争最大のヤマ場における回答引き出し状況」によると、13時時点で賃上げ回答を引き出したのは63組合で、すべての組合が賃金カーブ維持分を確保した。このうち、金額の集計が可能な23組合の回答額は単純平均で5,980円(定期昇給込み)となっている。昨年同時期は、今年より8組合多い71組合が回答を引き出したが、賃上げ額の集計が可能な組合は逆に7組合少ない16組合で、その回答額の平均は5,307円だった。

この内容について須田孝・総合労働局長は、「昨年は(集中回答日前日の)12日に有志共闘という形で先行組合に頑張ってもらったが、今年は先行して回答を引き出す状況に至っておらず、回答引き出し組合はマイナスになっている。だが、金額での引き出しに頑張っており、(賃上げ回答の平均額は)680円程度増えている」などと説明している。

また、回答を引き出した組合のうち、ベアや手当などの賃金項目の改善については6組合(単純平均871円)が獲得した。昨年同時期には8組合が単純平均1,188円を獲得していた(ただし、昨年と今年では対象組合が異なるため、単純な比較はできない)。

そのほか、パートなどの非正規社員の時給改善を獲得したのが4組合ある。

古賀会長は会見で、こうした状況を踏まえ、 (1) 賃上げについては、すべてで賃金カーブ維持分を確保した (2) 賃金改善については、賃金の底上げ、底支えを図るとともに、『賃上げでデフレからの脱却を』と訴えてきた成果も伺える回答内容 (3) 賃金以外の総合的な労働条件改善についても、一時金を中心に回答が示されている (4) 非正規労働者に関する取り組みも同時決着をめざして回答を引き出している――などと概括。「厳しい交渉環境のもとで組合員の努力を強く訴え、デフレの脱却、人への投資の主張を繰り返し訴えながら引き出した回答状況と受け止めたい」と評価したうえで、「まだ、大半の組合が回答引き出しに向けて懸命な交渉を行っている。第1先行組合、第2先行組合、中小組合と途切れのない交渉を推進し、賃金の社会性を訴えながら交渉の追い上げを図って行きたい」と述べた。

政府は非正規労働者に向けた政策対応を

また、政府の経営者団体に賃金引上げの要請を行ったことに対しては、「賃金を含む労働条件交渉は、あくまでも労使交渉・労使自治のなかで決定することが基本。ただ、連合はここ数年間、所得の向上によるデフレ脱却を主張し続けており、そのことが政府としても必要との同一認識にやっと立った。物価だけ上がって国民所得が上がっていかなければ社会は混乱する、とのわれわれと一緒のリスクの認識があって、ああいう行動に出たのではないか」などと指摘。さらに、「政府が本来的に行うことは30数%を超える非正規労働者、極めて処遇の低い非正規労働者がこれ以上増えないような政策・制度を打つことだ。底上げを図るために最低賃金の引き上げを行うことや、年収200万円以下の層が1100万人を超える実態のなかで、社会保障や税も含めた所得再配分機能を強化することなどの政策面での対応が政治の本来の役割だ」などと主張した。