月給制1万円以上、時給制60円以上の賃上げ要求/介護クラフトユニオンの春闘方針

(2013年2月20日 調査・解析部)

[労使]

ヘルパーなどの介護従事者約6.6万人(全体の3%程度)を、会社の枠を超えて組織する日本介護クラフトユニオン(陶山浩三会長)は15日、都内で中央委員会を開き、月給制組合員については平均1万円以上、時給制組合員では平均60円以上の賃上げ水準要求と、定期昇給制度や扶養(家族)手当の導入など制度要求の2本を柱とする、今次春闘方針を決定した。

一時金は年間4.0カ月を要求

要求方針は、(1) 介護事業に関連する組合員については、月給制で平均1万円(格差是正分)以上、時給制で平均60円(月給制の引上要求額÷所定労働170時間)注1、年俸制で平均16万円以上(格差是正分×一時金含む16カ月) (2) 介護事業に関連しない組合員(例えば保育やマッサージ等)については、UAゼンセン総合サービス部門の要求方針に準じ、月給制で(賃金体系維持分を含めて)一人平均7,000円(2.8%)以上、時給制で正社員と同様の職務なら40円、異なる職務なら20円を目安――にそれぞれ引き上げることを目指す。

また、期末一時金の交渉については、UAゼンセンの方針を基本にしつつも、現在の支給実態は年間4.8カ月基準に及ばないことから、要求の組み立て方として「季節賃金」部分を「(基準内賃金の)年間4.0カ月(時給制では原則、夏・冬期別に各2.0カ月注2)」を基準に据える方針を決めた。

陶山会長「格差是正に目途がつくまで毎年1万円以上を要求」

陶山会長はあいさつの中で、今春闘方針の考え方について、「介護従事者が希望と誇りを持って働くためには、月給も時給もその賃金水準が全産業平均を下回ってはならない。全産業の賃金水準は低下傾向にあるが、それでも未だ8万円以上の開きがある注3」と指摘。そのうえで、「格差是正に一定の目途がつくまで、毎年1万円以上の要求を続ける。多くの人材を介護業界に惹きつけるには、『余裕を持った生活設計ができる賃金水準』と『将来を描ける賃金制度』を構築することがもっとも大切だ」などと強調した。

また、昨年末行われた衆院選での民主党敗北に触れ、「UAゼンセンも組織内・準組織内の3人すべてが落選し、NCCU元政治顧問の元厚労相も残念ながら議席を失った。民主党政権下では、さまざまな審議会・検討会に代表を送ることができ、私たちの主張が確実に行政に反映されていった。介護職員処遇改善交付金が加算金に至る過程や、昨年の制度改正による労基法の罰則を受けた事業者の指定取り消し、キャリア段位制度などがある。私たちの思いを国会へ届けるには、今夏に予定される参院選での再選に向け、NCCUの底力を見せなければならない」などと訴えた。

染川朗事務局長は、方針提案の中で昨年の春闘結果注4を振り返り、「2012年の介護報酬改定は1.2%のプラスとなったが、3年続いた交付金が介護職員処遇改善加算として介護報酬に組み込まれた結果、実質的には0.8%のマイナス改定と受け止められている。だが、報酬改定後初めての中間決算をみると、組合員の頑張りのおかげで営業利益を確保できている事業者もある。団塊の世代が75歳以上となる2025年には、現状の1.5~1.7倍の介護従事者が必要と推計されるなか、慢性的な人材不足を解消するためにも、私たちの使命は大きい」などと強調した。

脚注

注1訪問介護員等の移動に係る交通費や移動(拘束)時間など、直接サービスを提供している時間以外の時間帯に対する労働対価は含まない。

注2時給制の一時金の基礎となる平均賃金は、「(一時金算定期間内の延べ労働時間÷6)×本人時給」で算出する。

注3平成23年賃金センサスの全産業・規模計が29万6,800円なのに対し、NCCUの2012処遇改善調査に基づく、月給制組合員の平均賃金は21万6,468円となっている。

注434分会が交渉に臨み、月給制(有額回答16分会計)では単純平均2,927円(前年比▲200円)、加重平均1,872円(▲231円)、時給制(同13分会計)では単純平均13.7円(前年比+2.6円)、加重平均6.9円(+0.45円)となり、最終的に月給制・時給制とも「賃上げなし」が13分会(前年比4分会増)――などとなっている。