トヨタ、本田労組は一時金の増額を要求/自動車メーカー労組が要求提出

(2013年2月15日 調査・解析部)

[労使]

トヨタ労組や日産労組など、自動車総連(約76万人)に加盟する大手自動車メーカーの11の労働組合が13日、一斉に今春闘の要求書を経営側に提出した。11メーカー組合で、賃金改善の要求を行った組合はなかったものの、車体・部品メーカーの労組を含めた加盟組合全体では、賃金改善を要求する組合は半数以上に達する見通しだ。一時金では、トヨタ、ホンダなどの労組が、昨年の獲得実績を上回る水準を要求した。

相原会長「自動車労使の交渉は例年以上に重い役割」

11メーカー労組が要求提出を終えた同日午後、都内の本部で記者会見した相原康伸会長は、「日本経済の安定、発展に資する取り組みとしたい。その結果は、必ずや雇用の安定につながると確信している。自動車産業を支える一人ひとりの職場の努力・がんばりに忠実に報いる交渉としたい」と抱負を述べた。

相原会長はまた、政府でもデフレ脱却に向けた施策が打ち出されていることに関連して、「経済再生に向け、政労使それぞれの立場で最大限の役割を発揮する責務が一段と求められている」「(だからこそ)自動車労使の交渉で出す結論は例年以上に重い役割を負っていると認識している」とコメント。「これまで職場は機動的な対応を求められてきた。組合がきちんと、職場があげてきた成果を確実に交渉のテーブルに乗せ、経営側に訴えるとともに、経営側はそれを真正面から受け止め、誤りのない判断をしてほしい」と強調した。

自動車総連では、大手メーカーの11労組と、部品メーカー1労組(今回は日本発条)の計12組合を「拡大戦術会議登録組合」と位置づけ、交渉の先導役とするとともに、共闘効果を発揮させるために交渉日や回答日を統一して労使交渉を進めている。この日、12組合すべてが要求書を経営側に提出した。

賃金の要求では、12組合すべてで賃金改善を見送り、賃金体系維持分の確保に取り組むこととなった。各組合の平均賃上げでの要求内容をみていくと、トヨタでは組合が「賃金制度維持分(7,300円)」を要求、賃金制度上、定昇相当分の概念がない日産では「賃金制度に基づく改訂原資」を求めた。軽自動車を主力とするスズキは「昨年昇給水準維持」、ダイハツは「賃金体系維持分」の要求となっている。本田技研、マツダ、三菱自動車工業などでは、賃金カーブ維持分が労使確認されているため、組合は要求を行わない。

半数以上の組合が賃金改善要求へ

一方、車体・部品部門の組合は20日までに要求提出を終え、その後、販売部門の交渉がスタートする。車体・部品部門では、大手メーカーとの賃金格差を是正するため、多くの組合が賃金改善を盛り込んだ要求を提出すると予想される。昨年の春闘では、1,109の加盟組合のうち、478組合が何らかの賃金改善の要求を掲げ、131組合が改善分を獲得した。自動車総連では、今回は1,089ある加盟組合のうち、半数を超える組合が賃金改善を要求するとみる。相原会長は「半数以上というのは控えめな数字。(今年は)昨年の要求組合数に2割、上乗せできるのではと思っている」と自信をみせるとともに、そうした見通しから「自動車総連として、ナショナルセンター(連合)の(賃上げ・労働条件の改善のために1%の配分を求める)方針を下支えできる取り組みになり得ている」とコメントした。

一時金は7組合が昨年の要求水準を上回る

一時金は、昨年の水準を上回る要求月数が並んだ。各組合の要求水準をみていくと、トヨタが「5.0カ月+30万円」(前年は5.0カ月+3万円)、日産が「5.5カ月」(同5.5カ月)、本田技研が「5.0カ月+0.9カ月」(同5.0カ月)、マツダが5.0カ月(同5.0カ月)、三菱自動車工業が4.3カ月(同4.3カ月)、スズキが5.3カ月(5.4カ月)、富士重工が「5.0カ月+10万円」(前年は5.0カ月)など。

全体の要求内容を昨年と比べると、12メーカーのうち、要求水準が上がった組合が7組合、同水準が4組合、下がった組合が1組合となる。さらに昨年の妥結内容との比較では、上回る組合が11組合、同水準が1組合となっている。相原会長は「昨年の要求、妥結結果と比べても、(要求内容の)ベクトルは上向きといえる。(総連の)中央の労組としての役割は果たし得ている」と評価した。