年休付与日数などですべての業種別部会が改善に取り組む/基幹労連の2013春闘方針

(2013年2月8日 調査・解析部)

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄関連の労働組合でつくる基幹労連(神津里季生委員長、25万人)は6日、都内で中央委員会を開催した。2年サイクルで賃上げ交渉を行っている基幹労連の2013春闘は、一時金と、中小で構成する各業種別部会が大手との格差改善を中心に取り組む。格差改善の要求では、すべての業種部会が共通して取り組む項目として、年次有給休暇の初年度付与日数を20日以上とすることなど3項目を設定した。

写真:神津里季生委員長、第10回中央委員会のようす

「春闘に取り組む意義の発想転換を」(神津委員長)

あいさつした神津委員長は、2013春闘の持つ意味について、これまでの春闘ではインフレ経済のもとに要求額の議論や相場形成を軸としていたが、「今は異なる」と強調。自身も従来から「国民全体にとっての春闘として連合が力を発揮すべき」ことを訴えてきており、連合も非正規労働者の取り組みの重点的な強化を図っていると指摘した。一方、経団連は「相変わらず定期昇給にすら後ろ向きの発言に終始している」と批判したうえで、「古い発想が幅をきかせたままでは、未組織の労働者はいつまでたっても大きな格差社会の隅で押しつぶされたままだ」と春闘に取り組む意義についての発想転換を求めた。

そのうえで、「団結した労働組合組織のもとで着実・堅実な取り組みが可能な私たちの務めとして、このような経営側全体の姿にしっかりと対峙し、労働条件の改善に努めていくことが何よりも重要だ」と訴え、基幹労連が2013春闘の柱に掲げる格差改善が「労働運動全体の取り組みに貢献する」と強調した。

基幹労連では、2年に一度、賃上げ交渉する隔年春闘を採用している。大手鉄鋼メーカーや総合重工、非鉄大手などの労働組合は昨年の春闘で賃金交渉を行った。今年は中間年にあたるため、大手を含めすべての組合が一時金に取り組むほか、中小労組が各業種別部会の方針にも沿いながら、大手との格差の改善に取り組む。13の業種別部会が設けられており、主に中小が所属する部会としては「普通鋼」、「特殊鋼」、「造船」、「機器」などがある。

一時金は年間5カ月以上を基本に

一時金では、金属労協の「年間5カ月分以上を基本」とする考え方を踏まえながら設定するとし、構成要素は「生活を考慮した要素」(年間4カ月程度)と「成果を反映した要素」とする。要求基準をみると、金額で要求する組合では、生活を考慮した要素として120万円ないし130万円を設定したうえで、成果を反映した要素は、世間相場の動向などを踏まえながら40万円までの範囲を基本に設定していくとした。「金額+月数」で要求する方式を採用する組合では、「40万円+4カ月を基本」とするとした。大手では業績連動方式を採用する組合もあるが、その場合でも生活を考慮した要素の確保を前提とする。

格差改善では、業種別部会単位で取り組むことを基本とする。要求項目としては、「賃金」、「退職金」、「労働時間・休日」、「諸割増率」、「労災通災補償」、「60歳以降の安定雇用確保に関する取り組み」を設定。ただし、これらのうち、すべての業種別部会で共通して取り組む項目を3つ据えた。1つは、年次有給休暇で、初年度付与日数を20日以上とすることをめざす。2つめは、時間外・休日割増率の改善をあげた。3つめは労働災害付加補償、通勤途上災害付加補償についてで、大手組合が獲得している水準への到達をめざす。

賃金の格差改善では、条件の整う組合が取り組むとしている。なお、昨年の春闘の結果、今春闘でも定期昇給に関する取り組みが必要になっているところは、定期昇給相当分を確保する。退職金は、大手組合の水準を考慮して、各業種別部会や個別組合の事情に応じて引き上げ額を設定する。60歳以降の安定雇用確保では、基幹労連の方針と法改正をふまえた対応をするとし、新制度のスタートに万全を期すとしている。基幹労連によると、大手のほぼ8割で、制度の大枠は固まっているという。

失効年休ゼロの浸透も

このほか、ワーク・ライフ・バランスの観点から、失効年休をゼロにする取り組みもこの春闘で注力する。働く者すべての待遇改善という視点から、非正規社員の労災付加補償について、組織化されていない場合でも、「命の値段は変わらない」(工藤智司事務局長)ことから正社員と同等の扱いとなるよう求めていく。

方針に関する討議では、「現場ではまだ、経済環境の改善の実感をもてない」(鉄鋼関連部会)、「賃金改善の取り組みでは基幹労連や部門の一体的取り組みで成果をあげてきたことをかんがみると、一体的な取り組みとならない今次交渉は相当厳しいことが予想される。産別の支援が不可欠」(機器部会)、「関西での電力料金の値上げが重くのしかかっている」(山陽特殊製鋼労組)などの意見が出された。

要求提出は、2月8日を第一次集中要求日とした。大手組合は8日にそろって要求提出する。