ミニマム水準未達は一人平均7,000円等を要求基準に設定/UAゼンセン中央委

(2013年2月6日 調査・解析部)

[労使]

繊維、医薬、化学、食品、流通、印刷、レジャー、福祉など、内需型産業を中心に組織する民間最大産別のUAゼンセン(逢見直人会長、141万3,144人)は1月31日、都内で中央委員会を開催し、2013労働条件闘争方針等を決定した。4分の3を占める中小組合の賃上げをテコ入れするため、新たにミニマム水準を設定。これを下回る場合は、賃金体系維持分を含めた賃上げ原資として一人平均7,000円を要求し、ミニマム水準を上回っても到達水準未達の場合は、一人平均6,000円(賃金体系が確立していれば1,500円)を基準に、各部門で設定するなどの要求方針を据えた。

逢見会長「けじめのある闘いを」

旧UIゼンセン同盟と旧サービス・流通連合(JSD)が組織統合し、昨年11月6日に誕生したUAゼンセンの第1回中央委員会であいさつした逢見会長は、「141万組織はわが国雇用者の2.6%、連合組合員の21%になる。私たちが思う以上に、外部の注目度は高い。それだけに、顔合わせ・心合わせから力合わせの段階に早期に移行し、直面する課題について着実に前進を図らなければならないと決意している」などと述べた。

そのうえで、UAゼンセンとして初めて臨む今春闘について、「旧組織での経緯も踏まえつつ、労働組合の基本である組合員の固い団結を背景に、経営と対等の立場に立ち、労働条件の維持・向上を図るという役割と責任を全うできる、けじめのある闘いを展開したい」と指摘。方針について「格差是正に重点を置いた要求内容になっている。中小企業の賃金水準改善に力を入れたい」と強調し、「経労委報告はベア実施の余地なし、定昇の取り扱いが論点と言っているが、格差是正をしなければならないところはベアも必要で、定昇は人事制度を維持するためにも必要だ」などと反論した。

到達水準に加え新たにミニマム水準も設定

中央委員会では、格差是正に重点を置いた賃上げ要求基準と、総合的な労働条件改善に向けた課題などを盛り込んだ、2013労働条件闘争方針等を決定した。

方針では、すべての加盟組合が取り組むべき課題として、 (1) 賃金水準(少なくとも高卒35歳、大卒30歳)の把握 (2) 賃金制度の確立・整備 (3) 賃金体系維持原資(定期昇給+昇格昇給分)の確認と報告 (4) 企業内最低賃金(18歳の基本賃金で14万7,500円以上等)の協定化――を設定した。

そのうえで、賃上げ要求基準として、正社員組合員については、ミニマム・到達・目標の3つの賃金水準を指標に、 (1) ミニマム水準(高卒35歳・勤続17年及び大卒30歳勤続8年で、諸手当を除く基本賃金で24万円)を下回る組合は、賃金体系(カーブ)維持分を含めた賃上げ原資として一人平均7,000円を(部門・部会に係わらず)要求する (2) ミニマム水準を上回っても、到達水準(高卒35歳・勤続17年及び大卒30歳・勤続8年で、諸手当を除く基本賃金で25.5万円)が未達の組合は、賃金体系維持分を含めて一人平均6,000円(賃金体系が確立している場合は一人平均1,500円)を基準に、製造産業・流通・総合サービスの各部門で設定する(UAゼンセン流通部門第1回評議員会参照)。 (3) 既に到達水準を上回っている組合は、各部門で産業内の水準向上や産業間格差是正等を考慮し、中期的に目指すべき目標水準とそれに向けた要求基準を設定する――などとした。

一方、組合員の約半数(70万8,672人)を占める、パートなど短時間組合員の賃上げ要求基準については、賃金表の有無で時間給水準に差がみられることから、制度構築に取り組むことを基本とする。そのうえで、 (1) 既に賃金制度が導入されている場合は、正社員との均等・均衡待遇を目指す (2) 賃金制度が未整備の場合は、制度昇給分相当を含めた均等・均衡待遇として、正社員と同様の職務の短時間組合員なら40円、職務が異なるなら20円を目安に、時間給の引き上げを要求する――などとした。

なお、今季闘争では、統一後間もないこともあり、旧UIゼンセン同盟の加盟組合が、妥結権を中央に委譲する「統一闘争」として取り組むのに対し、旧サービス・流通連合の加盟組合は「統一的運動」として、要求内容や日程、情報開示等を揃えるにとどめる。

法定を上回る年限で無期契約転換制度を創設へ

このほか、総合的な労働条件の改善に関しては、改正労働者派遣法や改正労働契約法、改正高年齢者雇用安定法への対応を必須課題に掲げ、また、選択課題として(1) 男女間格差の是正 (2) 管理監督者範囲の適正化 (3) 職場のハラスメント対策 (4) 障がい者雇用の促進――など8項目をあげた。

このうち、改正労働契約法への対応については「法律を上回る年限で、有期労働契約組合員の申し出による、無期労働契約への転換制度の創設に取り組む」とともに、「正社員への転換制度がある場合は、勤続3年経過後の組合員に受験資格等を与えるよう改正する」などとした。

中央委員会ではこのほか、スポーツ産業の振興策や労働環境の改善などを提起する、「スポーツ産業政策」も策定した。

(注)旧ゼンセン同盟の2011年度賃金実態調査では、高卒35歳標準者の中位比較で、全体平均が25万9,700円に対し、300人未満では23万5,800円と2万3,900円の開きがある。また、昨年の賃上げ結果でも、賃金が社会水準に到達している組合の賃上げ平均が5,030円(1.73%)だったのに対し、賃金実態・水準も把握できない組合(全体の約55%)では2,952円(1.27%)と2,000円以上の差を生じている。こうした実態を踏まえ、旧UIゼンセン同盟が指標としてきた「到達水準」(すべての加盟組合が目指すべき社会水準として、賃金センサスの規模計の組合員層の基本賃金水準を基に算出)に加え、新たに「ミニマム水準」(同様に100~999人規模計に基づき算出)を設定し、最低限超えるべき統一賃金水準を示すことで、中小組合の賃上げのテコ入れを図った。