水準未達はベア・賃金改善分2,000円を求める/フード連合が闘争方針を決定

(2013年1月30日 調査・解析部)

[労使]

食品産業関係の組合で構成し、中小が8割を占めるフード連合(江森孝至会長、10万5,230人)は28日、都内で中央委員会を開催し、2013春季生活闘争の要求方針等を決定した。(1) 賃金制度(定昇等)はあるが、フード連合の目標水準に満たない場合は7,000円またはベア・賃金改善分2,000円 (2) 賃金制度がなく目標水準に満たない場合は6,000円を基準とするなどの統一要求課題を設定した。

「輸出産業が厳しい状況だけに、内需産業が賃金水準の改善を」(江森会長)

あいさつした江森会長は、今次春闘交渉に臨む姿勢について、「フード連合の賃金実態調査によれば、2004春闘からの8年間で平均賃金水準が約1万円(2004春闘後30万5,427円→2012春闘後29万3,237円)低下している。また、(賃金構造基本統計調査で)食料品製造業の所定内賃金は、製造業23業種中21番目(産業計を100として86.1)と相変わらず低位にある」などと指摘。

そのうえで、「春闘を通じ、食品労働者として誇りを持って働ける賃金水準を勝ち取っていかなければならない」とし、「とりわけ今春闘は、金属労協等の輸出産業が厳しい状況にあるだけに、内需産業を基盤としたフード連合は、賃金水準の改善に向けしっかりと取り組む必要がある」と強調した。

5本の統一要求課題と特別課題を設定

方針では、「まずは賃金の引き上げにこだわるとともに、何らかの労働諸条件を引き上げる要求をし、適正な配分原資を獲得する」観点から、全加盟組合が取り組む統一要求課題として、(1) 賃金(ベア・改善原資含む)の引上げ(2) 一時金の安定確保(年間最低4ヶ月、基本6ヶ月)(3) 企業内最低賃金の協定化と水準引上げ(到達目標は月額15.2万円以上、時間額870円(最低750円)以上ほか年齢別の設定も)(4) 労働時間の短縮(時短2,000ゼロ(注)や割増率の引上げ等)(5) パート等の組織化と処遇改善(制度に基づく昇給・昇格があるパート等については30円目安、それ以外は20円目安等)――の5本を据えた。

また、通年の取り組みを含めた協約改定の特別課題として、「希望者全員を対象とした65歳までの雇用の確保」をはじめ、「年金空白期間の賃金(月額28万円程度もしくは一時金を含む年収で336万円)の確保」や「改正高齢法への対応」なども盛り込んだ。

要求には3つの選択肢

このうち、賃金の引上げに関しては、絶対額を重視して全体水準を引き上げていく観点から、「すべての組合が賃金カーブ維持分(体系)を確保」したうえで、目指すべき「目標水準」に向けた要求の3つの選択肢を示している。

具体的には、目標水準として、フード連合の2004~11年における賃金実態調査結果の上位25%(第3四分位)平均を基に、高卒35歳で基本29.9万円、基準内32.5万円、同大卒で基本35万円、基準内37.8万円などを設定。そのうえで、要求に当たっては(1) 賃金制度(定昇等)はあるが目標水準に満たない場合は7,000円またはベア・賃金改善分2,000円を基準とする(2) 賃金制度がなく、目標水準に満たない場合は6,000円基準とし、賃金制度の確立を要求する(なお、同制度における定昇水準は5,000円以上を目指す)(3) 目標水準を満たしており、賃金水準の引上げに取り組まない場合も、必ず情報を開示するとともに、パート等の処遇改善や改正労契法への対応、企業内最賃協定の引上げや65歳までの雇用・賃金の確保などを要求する――などとしている。

闘い方としては、「すべての大手・主要組合が連合の『化学・食品・製造等共闘会議』の中核組合として登録」するとともに、「非正規共闘会議」及び「中小共闘会議」に登録する。また、定昇制度の確認や大幅賃上げなどの実績を上げている「中小労組支援センター」を今年も設置し、登録組合を選定しながら、中小労組の支援のテコ入れを図る。

「東アジアを基軸とした経済連携、給付付き税額控除を求める」(江森会長)

一方、江森会長はあいさつの中で、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題に触れ、「国益に適う最善の道を求めるなら、世界の成長を牽引している東アジアを基軸とした経済連携を重視すべきだ。そのことを通じて交渉力を持ちながらTPP交渉に望まなければ、アメリカ主導のルール作りに巻き込まれるだけだ」などと指摘。「私たちは、関係国との事前協議の情報公開と国民的な議論を求めるとともに、安倍政権の対応を見極めながら、志を同じくする幅広い団体等と連携し、内外に主張を発信していく」と強調した。

また、消費増税問題をめぐっては、「与党内では食料品等に対する軽減税率の導入が検討事項になっているが、食品業界の負担が大きく税の公平性や効果の面で問題ある軽減税率の導入には反対する」などと指摘。「格差社会を是正する観点からも、給付付き税額控除制度の導入を検討すべきだ」とし、さらに「流通からの影響を受けやすい食品産業としては、消費税の引上げ分を確実に価格に転嫁できるよう、法の整備や罰則・監視の強化を求めたい」と主張した。

注)年間所定労働2,000時間を超える組合が、2015年3月までに2,000時間未満の合意を目指した要求を行うことなどに取り組む。また、所定労働2,000時間未満の組合は、1,900時間未満を目指した要求とし、その実現を目指す。