すべてが賃金水準を維持し、中堅・中小が改善要求/金属労協の2012闘争方針

(2011年12月7日 調査・解析部)

[労使]

連合に加盟する金属ものづくり関連の5産業別労働組合でつくる金属労協(IMF・JC、西原浩一郎議長、202万人)は2日、都内で協議委員会を開き、2012闘争方針を確認した。交渉環境は昨年以上に厳しいとして、賃金の取り組みについては「すべての組合で賃金構造維持分を確保し、賃金水準を維持する」としたうえで、適正な成果配分や産業間・産業内の賃金格差の解消をめざす組合は「積極的に賃金改善に取り組む」とした。JCとしての集中回答日について西原議長は、3月14日を予定していることを明らかにした。

国内空洞化懸念が増大

2012闘争での交渉環境について、JCでは、震災による打撃、超円高や自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)への参画の遅れによる国内空洞化の懸念、最近のタイでの洪水の影響などにより、「昨年以上に厳しさを募る状況にある」(西原議長)との認識を示している。

写真・西原議長あいさつ、金属労協協議委員会のようす

賃金に関する具体的な方針では、まず、賃金水準を維持するために、 (1)賃金制度に基づき賃金構造維持分を確保する (2)賃金構造維持分を要求する組合は、賃金構造維持分を明確に把握し、その確保を図る――とした。そのうえで、中堅・中小企業を念頭に置き、「基幹産業にふさわしい適正な成果配分、産業間・産業内の賃金格差等解消をめざす組合は、積極的に賃金改善に取り組む」との方針もあわせて掲げた。2011闘争では、JC全体で999組合が賃金是正・改善に取り組み、333組合が具体的な改善措置を獲得した。今回の闘争では、前回の実績を上回る獲得をめざす。

この方針に関連して西原議長はあいさつで、「デフレの進行をくい止め、景気の下支えを図る観点から、すべての組合での賃金構造維持分確保による賃金水準維持を至上命題と位置づけるとともに、大震災であらためて明確になった中堅・中小企業をはじめとする日本の金属ものづくり産業基盤・サプライチェーン全体への高い評価にふさわしい賃金水準の確立をめざす。特に産業間・産業内の格差是正、賃金体系上のゆがみの是正、さらには、賃金水準が長期的に低下している組合における賃金水準の復元・是正を重視した取り組みを進めていきたい」と強調した。

一時金は5カ月以上が基本

一時金は、震災後の生産体制の早期復旧などの組合員の努力に積極的に報いることが重要だとして、「要求の基本は、基準内の年間5カ月以上とする」とし、昨年と同様に「最低獲得水準として年間4カ月分以上の確保」を掲げた。企業内最低賃金協定の締結拡大に取り組みでは、現状で協定締結組合が全体の4割程度にとどまっていることから、全企業連・単組で協定を締結していくとしている。

60歳以降の就労確保の取り組みでは、今回の闘争では統一指標などは示さず、各産別の取り組みを尊重するが、JCとして希望者全員の就労確保に向けて制度の充実を図っていくとしている。

闘争方針に関する討論では、5産別すべてが要望や決意表明などの発言を行った。JAMは、「昨年、(賃金水準が低下している組合は)1,500円の賃金改善を5年間取り組み続けると確認したが、今年も継続して取り組みたい」と表明。「交渉環境が厳しい特に100人未満規模の組合では、取り組みを継続してこそ底上げの効果が出てくる」などと発言した。電機連合は、JC方針の内容について「取り巻く環境を的確にとらえたもの」と評価し、一時金の取り組みについて「業績に見合った水準を確保するために5カ月中心で取り組みたい」と決意を語った。

基幹労連はWLBも重要課題として取り組み

2年サイクルで賃金に関する要求をし、今回は要求する年にあたる基幹労連は「魅力ある労働条件の確立に向け、賃金改善のみならず、ワークライフバランスにも重要課題として取り組みたい」と表明。全電線は、総実労働時間の短縮に向け、年次有給休暇の取得促進などにも取り組む姿勢を明らかにした。自動車総連は、交渉環境の厳しさは「明らかに前年を上回る」としたうえで、産業内格差の是正に取り組む組合を支えられるような方針を議論していきたいと述べた。

JCの集中回答日については、連合の拡大戦術委員会と連携してJCの戦術委員会で決定するとしているが、西原議長はあいさつの中で「3月14日の方向とさせていただく」と明らかにした。

協議委員会ではこのほか、地域別最低賃金の水準が産業別特定最賃の水準を上回ったことを理由に、東京都の地方最低賃金審議会が、金属関係の2業種の産別最賃の2011年度の改定の必要性をめぐる審議において「必要性なし」の答申が行われた点が問題視され、JCとして産別最賃の機能強化を図っていくことを確認した。