2012春季生活闘争方針を決定/連合の中央委員会

(2011年12月2日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長、約680万人)は1日、都内で中央委員会を開催し、2012春季生活闘争方針を決めた。昨年に続き、すべての労働者の処遇改善に向けて取り組む姿勢を強調し、すべての労働組合が1%を目安に賃金を含め適正な配分を経営側に求めていくとした。非正規労働者の労働条件では、間接労働者も含む総合的な労働条件の向上に注力する。

マクロの視点で配分の要求を

あいさつした古賀会長は2012春季生活闘争について、「日本経済を縮小均衡から脱皮させ、内需を拡大し持続可能性を引き出すためにも、マクロ的な観点から働く者への配分を求めることが重要だ」と強調。「まず、私たちが正社員グループや個別企業といったセクターの枠を超え、マクロの視点を持たなければならない」としつつ、内部留保の積み増しや非正規労働者への雇用の置き換えなどのミクロ視点での経営に労組が同調していけば、「経済は縮小し、国内的にもデフレの罠から抜け出すことはできない」と述べ、幅広い視点に立った闘争の必要性を訴えた。

古賀会長あいさつ「第61回中央委員会」/メールマガジン労働情報0775号(2011年12月2日)

古賀会長はまた、1997年に比べて4%低下している一般労働者の賃金水準を復元するため、「680万人連合の力を結集して取り組まなければならない」と強調。「現在の組合員の処遇改善だけでなく、いまは仲間になれていない働く人たちにも、さらに未来の仲間たちのためにも、働く現場の隅々に波及する成果を獲得して労働運動の社会的役割を発揮することを確認しあいたい」と締めくくり、未加盟・未組織労働者も見据えた取り組みの実施をあらためて構成組織に促した。

カーブ維持だけでなく、制度確立も

方針では、「すべての労働者を視野に入れ、格差是正、底上げ・底支えの取り組みを進めるとともに、適正な成果配分を追求する闘争を強化」するとし、そのために、「マクロ的な観点から、すべての労働組合が1%を目安に賃金を含め、適正な配分を求めていく」と、昨年と同じ文言を掲げた。

すべての組合が共闘して取り組む課題であるミニマム運動課題としては、 (1)賃金制度の確立・整備と賃金カーブ維持分の明示・確保 (2)非正規労働者を含めたすべての労働者を対象とした処遇改善 (3)企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げ (4)産業実態を踏まえた総実労働時間の短縮、時間外・休日労働の割増率の引き上げ――をあげた。基本的な内容は昨年と変わらないが、今年は (1)について、「賃金カーブ維持分の確保」のほかに「賃金制度の確立・整備」やカーブ維持分の「明示」の文言も挿入。賃金カーブ維持の取り組みにとどまらず、制度の確立・整備に確実に結びつけていく姿勢を強く打ち出している。

具体的な賃上げの取り組みでは、厚生労働省の毎月勤労統計調査でみると、一般労働者の2010年の賃金水準は97年と比べ4%低下していることから、賃金水準の「中期的な復元・格差是正」に向けた取り組みを徹底。すべての労働者のためにあらゆる労働条件を点検し、体系のゆがみを是正するとともに、多様な取り組みを展開するとしている。賃金制度が未整備な組合は、構成組織の指導のもと、制度確立・整備に向けた取り組みを強化するが、連合が示す1歳・1年間差の社会的水準である5,000円を目安に賃金水準の維持を図る。

非正規では総合的な労働条件改善をめざす

非正規労働者のための労働条件改善と中小労働者の処遇改善は、2012闘争における大きな柱となっている。非正規労働者については、昨年設置した「非正規共闘」を強化し、パートタイム労働者だけでなく、派遣労働者など間接労働者も含む総合的な労働条件の改善をめざす。具体的には、非正規労働者の正規化の促進をはじめ、昇給ルールの明文化や一時金の支給、福利厚生全般などを含めた正社員との格差是正を求めていく。

時間給の引き上げについては、「誰もが時給1,000円」をめざすか、「職務や人材活用の仕組みが正社員と同じ働き方」の非正規労働者は時給30円プラス格差改善分1%を、「職務や人材活用の仕組みが正社員と異なる働き方」の非正規労働者については、時給20円プラス1%を目安に要求する。

なお、「職務や人材活用の仕組みが正社員と同じ働き方」の非正規労働者の引き上げ額の時給30円は、連合が示す正社員の1歳・1年間差の5,000円を所定内労働時間165時間で割って算出している。

中堅組合を含めることで闘争を強化

中小労働者の処遇改善では、中小共闘を中心に、情報交流の強化や交渉ヤマ場の統一ゾーンの設定などに取り組む。中小300人未満の組合だけでは闘争参加人員の母数が少なく、運動の広がりが期待できないことから、今年は「中堅組合」も含めて共闘を展開する。「中堅」の規模は、共闘連絡会議を構成する産業により異なるが、業種によっては1,000人未満規模まで含まれる見込み。地域での情報推進と相場波及効果を高める目的で、県単位の「地方共闘連絡会議(仮称)」を設置するなど、地場での共闘の取り組みも推進する。

派遣法案は修正を容認へ

中央委員会では、ワークルールの取り組みについて、改正労働者派遣法案と公務員制度改革関連法案に対して古賀会長から言及があった。民主、自民、公明の3党で修正される方向となった派遣法案について古賀会長は、「この修正の方向性はまことに残念だが、労働者保護の観点から、法案を棚晒しにするのではなく、2003年から改正されていない現行派遣法を一歩でも二歩でも前進させることを優先せざるを得ない」と修正を受け入れる態度を表明した。

一方、公務員制度法案については、給与削減を盛り込む給与法案と制度改革関連法案の一体的な早期成立をあいさつのなかで強く求めた。ただ、中央委員会の終盤に会場に到着し、特別講演した民主党の前原政調会長は、これらの問題について、野党との実務者協議に入る見通しがついたことを明らかにした。