エネルギー政策や政治活動のあり方を議論/電力総連定時大会

(2011年9月9日 調査・解析部)

[労使]

電力総連(大会全景)/メールマガジン労働情報No.753(2011年9月9日 調査・解析部)

電力関連産業の労働組合で構成する電力総連(種岡成一会長、21万7,000人)は6,7の両日、名古屋市で定時大会を開き、「2011年度運動方針」を確認した。大会では、エネルギー政策の見直しの方向性や雇用に与える影響、今後の政治への対応などについて討論した。

原子力は電力安定供給に必要

電力総連(挨拶する種岡会長)/メールマガジン労働情報No.753(2011年9月9日 調査・解析部)

冒頭、あいさつに立った種岡会長は、東京電力福島第一原子力発電所の事故について謝罪したうえで、「この度の事故により、立地地域や国民への原子力発電の信頼を大きく損ね、またシンポジウム等の参加要請問題なども、原子力発電への不信を助長させることになった。明らかになった問題を率直に反省し、今後の活動に反映していきたい」などと訴えた。

その一方で、今後のエネルギー政策の検討にあたっては、「わが国では多様なエネルギー源によるベストミックスをめざすことが大事だ」と指摘。「現在、年間を通して原子力はベースロード電源(電力の安定供給のため、優先して運転される電源)になっている。自然環境に大きく影響される太陽光や風力による発電は、そのコストも含め、すぐにベースロード電源には成り得ない」として、「原子力は、現時点では電力の安定供給に必要な電源」との認識を示した。定期検査中の原子力発電所に関しても、「国による安全性が確認され、立地地域の理解が得られることを大前提に再稼働させられるために、社会の重要なインフラを支える電力関連産業に働く者の立場から、組織をあげて取り組んでいかねばならない」と述べた。

雇用への影響を懸念

また、エネルギー政策を見直す際には「エネルギーは、国民生活や経済・産業の根幹を支える国家の存立基盤」との基本認識から、 (1)「電力供給における安全確保」と「3E(エネルギー安全保障・持続可能な経済社会・地球環境保全)」を同時達成する (2)諸外国の先行事例の検証を含め、客観的・科学的に分析・評価し、関係する事業者や携わる者の意見をよく聞き、現場実態を十分に検証しながら進める (3)短・中・長期の時間軸の観点も踏まえ、国民負担や雇用、経済・産業活動や温室効果ガス排出量に与える影響、リスクなど各施策のプラス・マイナス両面のデータを明らかにし、国民的論議を通して合意形成する――などの視点が必要だとした

電気事業体制についても触れ、「国民生活、産業活動に必要な電力の供給責任を最終的に誰が果たすのかを基本に置き、雇用の安定や人材育成、技能、技術、スキルの継承、発展を大切にしながら議論すべきだ」と主張。「議論如何によっては、電力関連産業全体にも大きな影響をおよぼすことが考えられ、雇用にも影響が出ることを強く懸念している。国の政策によって、仲間の雇用が脅かされることがあれば、看過することはできない」との姿勢を強調した。

電力総連は主要構成組織の副委員長・書記長などをメンバーとする「エネルギー政策検討委員会」を設置し、8月24日以降、有識者から意見聴取を行っている。来年2月の中央委員会で今後のエネルギー政策に対する一定の考え方をまとめる構えだ。

雇用問題に関しては、運動方針の論議でも、「エネルギー政策の多方面に渡る見直し議論で誤った道を選択すると、国民生活や雇用、経済、産業、地球環境のみならず電力関連産業に働くわれわれ自身の職場環境、労働諸条件が劇的に変わり、生活環境も一変するとの心配や不安感が職場内に蔓延している」(北陸電力総連)、「原子力発電所の再稼働がなされないなかで、秋・冬の需給見込みは夏より厳しい逼迫が予想されている。このため、火力発電所はもとより水力発電所でも法定対応分と設備安全上の補修が必要なものを除き、来年4月以降に差し控えたり、比較的需給が安定している秋の前半に補修を集中させるなどの対応を余儀なくされている。そのことで秋冬の工事量が減少し、多くの協力会社が、工事力を維持するどころか会社の死活問題に発展せざるを得ない状況が想定されており、来年4月以降の工事力確保の影響も懸念されている」(関西電力総連)、「長い年月をかけて積み重ねてきたものを手放してしまったら、これまで理解・協力を得てきた地域との信頼関係を失い、培ってきた技術や人材も失ってしまう。職場で働くわれわれが落ち着いて自信をもって働けるよう、(原発推進など)方針上、文字にできないことはあっても、原子力を維持する立場は明確にして取り組んで欲しい(東北電力総連)などの発言があった。

また、「事故の収束にあたっては、放射線管理をはじめとした安全確保が何よりも最優先されなければならない。すべての作業従事者が安心して働けることが何よりも重要であり、関係省庁への申し入れなど、安全確保が何より最優先される事項との認識の下、万全を期して欲しい」(北海道電力総連)などの安全面を危惧する声も聴かれた。

政治活動への質問も

一方、今回の運動方針には、「民主党基軸」という表現を入れていない。論議では、この点についての質問も相次いだ。

四国電力総連は、「職場の組合員は、活動方針に触れられていた『民主党を基軸とした正統指示の考え』に立ち、選挙支援をしてきた経緯がある。現下の情勢を踏まえ、今般の活動方針では「民主党を基軸」としていないことについて理解しているが、民主党あるいは支援をしてきた議員との今後の関係の持ち方についてどう考えるのか」などと発言。中国地方電力総連も、「今回の議案書は、政治家個人により軸足を置いて活動するとの意の表れだと受け止めている。しかし、政党名で投票する衆議院比例ブロックにどう対応するのか」との疑問を投げかけた。九州電力総連も、「多くの国会議員が国の根幹であるエネルギー政策を真剣に論議することから逃げているような気がする。電力総連が推薦する議員でも、我々の声を代弁するどころか、首をかしげたくなるような対応をしている議員もいた。自分たちの利益になることをごり押ししてくれというつもりはないが、法律に書かれてあることすら解明しない政治家を支援する必要もない。今一度、電力総連推薦議員との関係を見つめ直すことも必要ではないか」などと話した。

こうした意見に対し、浜野喜史会長代理は、「引き続き政治活動に積極的に参画していくことははっきりしており、われわれの考え方・理念に沿う候補者議員を応援していく。そのうえで、政党に対してどう考えていくか。活字には載せていないが、民主党基軸を大転換して取り消すかと言えば、現状はそうではない。新内閣の動向をしっかり注目して引き続き意見を言っていく。そのうえで、今後の対応を考えていく」などと答弁した。

なお、役員改選では、現職の種岡会長、浜野会長代理、小田部清昭会長代理、内田厚事務局長がそれぞれ再任された。