被災企業を支える取り組みを重点に/JAM定期大会

(2011年9月7日 調査・解析部)

[労使]

機械金属の中小を多く組織するJAM(河野和治会長、約39万人)は9月1、2の両日、静岡県熱海市で第13回定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。方針の柱は、 (1)速やかな震災復興・再生で雇用を守り、被災企業を支える取り組み (2)ものづくり産業の基盤強化・熟練技能者活用事業の推進 (3)新たな成長戦略と産業政策の実現 (4)仕事と生活が調和し、希望がもてる働き方の実現 (5)組織の拡大・強化による組織と財政基盤の確立 (6)政策実現のための政治活動の強化――の6つ。役員人事では、河野会長、斎藤書記長が退任し、新会長に眞中行雄副会長(日本精工)、新書記長に宮本礼一副書記長(本部)を選出した。

「復興対策の強化を」

あいさつした河野会長は、東日本大震災の被災地支援に触れ、「運動方針の筆頭に『速やかな震災復興・再生で雇用を守り、被災企業を支える取り組み』を掲げた。JAMとして、支援物資の提供や人的支援とともに、被災地の雇用を守るため、雇用調整助成金の受給要件緩和や中小企業の借入の返済繰り延べ、運転資金の借り入れなどを政府に働きかけてきた」とJAMの取り組みを紹介。「政府は、国難ともいうべき現状に危機感を持って、復興策対策を遅滞なく施行してほしい」と述べ、政府の対応強化を求めた。

平均賃上げ4,322円(単純平均、6月20日現在)となった今春の賃上げ交渉については、「過去の景気回復に近い賃上げ回答を引き出し、とくに300人未満の健闘がめだつ。一時金も含めた賃金改善が進み、1%を目安とした配分の是正は達成された」と評価した。

また、野田新政権が発足したことを受け、「政府・民主党は新代表の下で、政権交代の原点に立ち返り、国民の政権・政治に対する信頼を取り戻すことに全党が一体となって取り組むよう強く求めたい」と訴えた。

そのほか、中小企業政策について、「中小企業は、原材料価格が上がっても価格転嫁できず、労働者が生み出した成果がほとんど残らないのが実態だ。中小・ものづくり企業の経営環境の改善は、わが国のものづくり産業全体の課題。公正な取引慣行実現のために、下請関係2法や『独禁法新ガイドライン』『下請適正取り引等の推進のためのガイドライン』の活用を、国・地方や企業に働きかけていくことが重要になる」と強調した。

公正取引によるものづくり産業基盤の強化も

運動方針の具体的な課題をみると、震災復旧・復興に関する取り組みでは、JAM中央・地方が連携して、被災企業の雇用維持や、部品供給企業としての地位の確保などについて個別支援するとともに、政府に対して、雇用継続支援策の早期実施、地場企業の再建に向けた震災による二重債務の軽減、資金調達支援を求めることとしている。

ものづくり産業基盤の強化については、公正な取引契約の実現をめざして、下請法やガイドラインの活用促進を進めることや、ものづくりを支える熟練技能者を育成する技能継承事業の推進が盛り込まれている。すでに書記長直轄で「熟練技能継承推進室」を設け、JAMが事業主体となって、高度熟練技能者を工業高校などに派遣して、実技指導する事業をスタートさせており、今後は、中小企業への派遣や対象地域の拡大に取り組む。

産業政策については、政府の「新成長戦略」、経産省の「産業構造ビジョン」の内容を精査・検討し、具体化に向けてJAMの意見反映ができるように取り組むとしている。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関しては、「単に自分がかかわる産業にとって得か、損かではなく、わが国がこれからどのような産業構造を構築していくべきか、という広い視点が必要」として、今後JAMとしての考え方をまとめるとしている。

組織拡大では、地方JAMでの個人加盟方式を活用した離職組合員の組織化や、構内請負企業、関連・協力企業をターゲットとした組織化、派遣・期間工など有期雇用契約者の組織化に取り組む考えだ。

そのほか、節電対策に関連して、大手製造メーカーの勤務シフト変更が中小企業に大きな影響を与えていることから、保育施設の柔軟な運用などの支援策を、政府に引き続き求めていくとしている。