人手不足に加えて安全衛生の課題も/介護クラフトユニオンの就業意識調査

(2011年8月26日 調査・解析部)

[労使]

ヘルパーなどの介護従事者でつくる、日本介護クラフトユニオン(二宮利夫会長、約6万3,100人、略称NCCU)は19日、「2011年度就業意識実態調査」結果を発表した。介護職場の人手不足感は職種で異なるものの、これに起因して管理職員等が長時間労働を余儀なくされており、また、感染症やケガ、健康問題など、安全衛生面での課題も抱える実態が浮き彫りになっている。

職種で異なる人手不足感

調査は、職場の実感としての介護従事者の過不足について、初めて職種別に尋ねている。それによると、不足感(「大いに不足している」と「やや不足している」の合計)が高いのは、「訪問介護員」(月給制組合員で78.3%、時給制組合員で58.8%)や「施設系介護員(入所型)」(同順に71.7%、62.0%)、「施設系介護員(通所型)」(61.5%、57.3%)、「看護師」(68.2%、55.4%)――などとなっている。

一方、現状でも「妥当である」との認識が強いのは、「ケアマネジャー」(月給制で54.8%、時給制で45.5%)や「生活相談員」(同順に49.6%、43.6%)、「事務職」(54.9%、52.7%)、「サービス提供責任者」(42.6%、39.4%)など。介護従事者の過不足感は、職種により大きな違いがあるようだ。

人手不足が長時間労働等の問題に

そうした人手不足が、職場のさまざまな問題に発展している様子もうかがえる。例えば、本年3月の就労日数・時間を職種別に尋ねた結果をみると、訪問系管理者の月給制で25日以上働いた人が27.5%で、働いた時間数は平均199.42時間に及んでいる。また、訪問介護員をマネジメントするサービス提供責任者の月給制では同順に、17.0%・平均198.2時間、施設系管理者(通所型)の月給制では16.2%・202.6時間などとなっており、「人手不足がシフトの穴を補填する等、管理職員の長時間労働問題につながっている」(村上久美子・政策部長)様子が見て取れる。

また、2010年の年末年始(12月29日~1月3日)の出勤状況についても、「働いた」割合が月給制で83.3%、時給制で71.8%にのぼっている。だが、「年末年始手当が支払われた」割合は、元日でも月給制で78.4%、時給制で74.6%にとどまる。「NCCUでは年末年始に出来る限り休業(あるいは特別扱いに)するよう求めているが、人手不足が解消されなければそれもなかなか難しい」(同)という。

離職者の復帰対策が重要に

こうしたなか、NCCUでは離職防止対策とともに、離職者の復帰対策の取り組みも重要になるとみている。

今回の調査で、離職者の復帰方策として必要なものについて聞くと、「賃金の底上げを図る」が月給制で61.9%、時給制で56.6%と群を抜いて多かった。また、仕事(現在の職種)の経験年数が長いほど、現在の会社での勤務年数との乖離が大きい状況も明らかになっている。村上氏は、「人手不足の抜本的な解決には賃金の底上げが必要」であるとともに、「人手不足の当面の軽減にはベテランの呼び戻しが有効で、例えば出産・育児等の離職事由の解消後、徐々に復帰してもらえるような職場環境の整備にも取り組みたい」と話す。

安全衛生面にもさまざまな課題が

一方、今回の調査では、介護従事者の安全衛生面についても尋ねている。

まず、業務を通じてケガをした経験が「ある」割合は、月給制で30.5%、時給制で26.6%などとなった。具体的なケガの種類(複数回答)については、「ぎっくり腰」(月給制で24.6%、26.3%)のほか、日常的な生活支援(台所作業、車椅子の取扱い等)に伴う「切り傷」(同順に58.2%、51.6%)や、自転車通勤時の転倒等に伴う「打撲」(32.4%、27.4%)なども多い。

また、仕事が原因の健康問題については、月給制で49.1%、時給制で40.1%が「ある」と回答。その症状(複数回答)をみると、介護従事者の職業病として知られる「腰が痛い」(月給制で58.8%、時給制で76.0%)や「肩がこる」(同順に49.0%、41.5%)のほか、「イライラする」(28.9%、20.0%)、「頭痛がある」(22.3%、11.0%)、「よく眠れない」(18.4%、7.9%)など、月給制組合員を中心に、メンタル的な問題を抱えている様子も浮き彫りになっている。

感染症予防に向けた研修・教育の徹底を

さらに、業務により感染症にかかった経験については、月給制で8.4%、時給制で5.6%が「ある」と回答。その内容(複数回答)は、「感染性胃腸炎(ノロウイルス)」がもっとも多く、月給制で44.7%、時給制で36.7%を占めたほか、「疥癬」が同順に17.9%、18.3%、「水虫」が17.1%、26.7%、「インフルエンザ」が17.9%、11.7%――などとなった。

これに対し、感染症に係る研修や教育を、「会社・事業所で受講した」割合は月給制で65.8%、時給制で56.6%にとどまり、「受講していない」割合も同順に8.1%、14.6%あった。NCCUでは、「感染源の特定が難しく、労災の対象にもなりにくいことから、日常的な自己防衛が重要で、そのためにも研修や教育の徹底を求めてゆきたい」(村上氏)としている。

調査は、基礎的な労働条件と時事的なテーマについて、2002年度以降、実施しているもの。今回は、介護従事者が本年3月時点で置かれている現状について、月給制1,465人・時給制1,071人の組合員2,536人(回収率50.7%)の声を集約した。