震災対応で「労組の社会的役割を果たした」/NTT労組定期大会

(2011年7月15日 調査・解析部)

[労使]

NTT東・西やドコモ、データなどNTTグループの労組で構成するNTT労働組合(加藤友康委員長、約18万人・うち有期約1.4万人)は14日、都内で定期大会(中間年)を開き、2011春闘を総括するとともに、2010-11年度の中期運動方針を補強した。加藤委員長は、東日本大震災への対応を「通信設備の早期復旧を成し遂げるとともに、労働組合の役割も果たしてきている」などと評価。今後、エネルギー政策の議論に参画していく考えを示した。NTT東・西などで特別手当の満額回答を得た2011春闘については、「組合員の努力と期待に応える『決着に値する回答』」と総括している。

組織全体で危機管理機能を発揮(加藤委員長)

加藤委員長は冒頭、あいさつで東日本大震災がNTT労組に及ぼした影響について、「組合員・退職者、家族の死亡・行方不明が160人、避難者が244人、電通共済生協への申請が5,500件超など被害は大きい。私たちは地震当日に『災害対策本部』を設置し、安否確認と通信設備復旧を最優先に、2011春闘の一旦凍結を決断して、全組織的な活動に尽力してきた」などと述べた。

NTT労組は、組合員の安全と健康を第一義にしつつも、「ライフラインである通信の確保のため、情報通信事業者としての責任を積極的に果たす」との認識を、会社側と共有。協力会社を含め1万1,000人の復旧支援体制を築き、 (1)服務・休暇制度の弾力的運用 (2)社宅の提供 (3)非常災害復旧作業手当の特別措置 (4)原子力発電所事故に伴う警戒区域等での手当の加算措置や作業時の安全対策――などに取り組んできた。

労働組合の社会的役割を果たす取り組みとして、 (1)被災した組合員・退職者会員への当面の生活必需品購入資金の無利子貸付支援 (2)救援カンパ(現時点で3億円超を集約) (3)連合「ボランティア派遣」への参加(NTT労組からは累積78人) (4)被災者相談ダイヤルの設置 (5)被災地からの要請を踏まえた生活物資等支援――を、情報労連や各企業本部と連携しながら進めてきた。

こうした取り組みを踏まえ、加藤委員長は「現時点で通信設備の早期復旧を成し遂げるとともに、労働組合の役割も果たしてきており、決断力・機動力、組織力など危機管理機能を、組織全体で発揮し得ているものと認識している」などと評価した。

今後のエネルギー政策の論議に参画

一方、今夏の節電対策をめぐってNTTグループの各企業労使は、労働基準法や労働安全衛生法等を遵守した取り組みとすることや、非正規労働者の雇用・労働条件に影響を与えないことなどを基本に据えつつ、7月から、「東電管内14社で節電の取り組み」「持株会社では午前中は出勤するも午後は在宅勤務」「NTTドコモでは土日に出勤し月火を休業へ」「研究開発センターでは秋以降の休日をすべて夏季に充当して集中的に休業」――などの対応を行っているという。

加藤委員長はエネルギー政策の今後のあり方について、「私たちの現在までの方針は、『究極的には脱原発』の方向で、安全管理と情報公開などを前提に原発を容認し、クリーンエネルギーを推進するというもの。安定した電力供給に向けた方向と、高度な安全・安心の確保及び国民の理解を深めた中で今後、情報労連・連合を含めたエネルギー政策論議に参画していきたい」などと述べた。

組合員の努力と期待に応える『決着に値する回答』(野田事務局長)

2011春闘については、「東日本大震災への対応を最優先したことから、春闘(のヤマ場の3月12日に)交渉を一旦凍結する異例の対応を行ったが、最終的には労使の信頼関係に基づくNTTグループ各社の決断を強く申し入れ(3/28)、3月下旬での短期集中決着を図った(各社の業績格差が大きいため、グループ全体としての賃金改善要求は見送った)」(野田三七生事務局長)経緯がある。

その結果、特別手当については、NTT東日本や西日本など6社は134万3,000円(高卒・40歳・一般資格1級モデル)の満額回答。コミュニケーションズを除き前年水準を上回った。ドコモとデータは昨年妥結額(ドコモは185万5,000円、データは174万5,000円)からの上積みを求めたが前年同水準だった。

野田事務局長は、「特別手当をはじめとする諸要求については、すべての交渉単位で満額獲得には至らなかったが、本部としては復旧活動等に懸命に取り組む組合員の努力と期待に応え得る『決着に値する回答』であり、加えて主要8社の決着に踵を接したグループ会社の妥結・決着を含め、企業本部における交渉権限の発揮による、今次春闘の結論として高く評価する」などと総括した。

そのうえで、一定の会社見解を引き出したものの、引き続き労使間論議を継続することになった「ワーク・ライフ・バランス」(恒常的な長時間労働の抑制及び労働時間の適正化と併せ、各職場の実態に見合った『休息時間』確保に向けた制度の創設等)や、「非正規労働者に係わる要求」(社員登用制度の確立及び充実)などについては、今後の労使対応を強化することを確認した。

65歳までの雇用制度等の確立を

なお、運動方針では、 (1)情報通信・情報サービス政策の実現と雇用の安定・確保(5月26日に成立した『光の道』関連三法案の対応含む) (2)NTT労組運動の強化・発展(新中期経営戦略の実現含む) (3)仲間づくりの取り組み強化 (4)安心と希望の社会づくりに向けた政治の実現――など5つの重点に加え、新たに「(退職・再雇用制度を含む現行のあり方の検討を含めた)65歳までの雇用をトータルで捉えた制度等の確立」を掲げた。