2013年度までの政策・制度要求を決定/連合中央委員会

(2011年6月3日 調査・解析部)

[労使]

連合(680万人、古賀伸明会長)は2日、都内で中央委員会を開き、2012~13年度の「政策・制度 要求と提言」を確認した。要求・提言案を組織内で議論する過程で東日本大震災が発生したことから、「災害復興・再生に向けた政策」を付加する形で策定した。中央委員会ではこのほか、2002年以来となる新たな「社会保障ビジョン」などを確認した。また、原発事故を踏まえ、原子力を含む連合のエネルギー政策については見直す必要があるとして、「凍結」することを決定した。

今回決定した2013年度までの「政策・制度 要求と提言」は、2011年7月~2013年6月までで、連合が実現に向けて取り組む政策・制度分野の具体策をまとめたもの。前回の「2010~11年度政策・制度 要求と提言」で、連合は、 (1)連帯 (2)公正 (3)規律 (4)育成 (5)包摂――という5つの理念をベースに据えて策定したが、今回の要求と提言でも、これらの5つの理念を堅持してとりまとめたとしている。

被災者の雇用対策や地域特性を踏まえた政策を推進

要求・提言は、東日本大震災震災が発生したことから「まずは、震災の復旧を急がねばならない」と強調。「災害復興・再生に向けた政策」についても経済・雇用から社会インフラ・くらしの分野まで幅広く、要望する政策・制度を策定した。災害・復興についての政策では、例えば、財源確保のための政策の優先順位付けの見直しや「復興債」の発行、時限的な「付加税」の新設の検討などを要求。雇用関連では、大量離職の防止や休業・離職を余儀なくされた労働者の救済などを求めている。

主催者あいさつした古賀会長は被災地の復興・再生について「政府・議会・行政が、引き続き個々の被害に対する迅速できめ細かな対策を講じることが肝要だ。そのうえで、被災地の復興・再生に長い時間を要することも想定しながら、生活・社会基盤の『復旧』、経済・雇用などの『復興』、地域社会・コミュニティーの『再生』というプロセスで、日本全体の再生につながる大きなグランドデザインを描いて実行することが必要だ」と強調。被災地の雇用については「被災地の雇用確保・創出を最優先すべきだ」として、当面は被災者を優先的に雇用することや、産業・地域特性をふまえて雇用政策と産業政策を一体的に進めることを強く求めていくことを表明した。

原子力エネルギーに関する政策は「凍結」

要求と提言の当初の案では、「エネルギー政策に対する連合の考え方」として、「より高度な安全確保体制の確立と地域住民の理解・合意等を大前提とした原子力発電所の高経年化対策、設備利用工場および一定の新増設」という内容が収録される予定だった。しかし今回の原発事故が起きたことから、「連合のエネルギー政策についての総点検・見直しを行う必要がある」として、事故の収束と原因究明が終わるまで「凍結する」ことを決定した。

社会保障ビジョンと税制改革大綱も確認

中央委員会ではこのほか、連合がめざす新たな社会保障政策と税制のあり方を盛り込んだ「新21世紀社会保障ビジョン」と「第3次税制改革基本大綱」を確認した。社会保障ビジョンでは、従来の社会保障が高齢期に偏り若年期に手薄だとして、子ども・子育てを社会全体で支える仕組みである「子育て基金」(仮称)構想などを打ち出している。

なお、中央委員会が開催された2日は、菅内閣の不信任案決議の行方が注目された日であったが、その動向が明らかになる前の時点(2日午前)に行われた主催者あいさつで古賀会長は不信任案決議について、「まったく理解できない行為。ましてや、政権与党である民主党内の対立が絶えないこと、さらに民主党の一部がこの決議案に同調しようとしていることは、きわめて遺憾といわざるを得ない。民主党は一丸となって粛々とこれを否決すべきだ」と述べた。