すべての働く者の処遇改善と政策制度要求の実現を/連合の中央集会

(2011年3月9日 調査・解析部)

[労使]

2011春闘がヤマ場を迎えるのを前に、連合(古賀伸明会長)は5日、東京・明治公園で、「2011春季生活闘争・政策制度要求実現中央集会」を開いた。構成組織の組合員約1万4,800人(主催者発表)が参加。古賀会長は「賃金、人件費をコストとしてしかみない経営側のカベを是が非でも突破していかねばならない」と訴えた。

1%要求の趣旨を徹底し、強力な交渉展開を

連合の中央集会/メールマガジン労働情報 No.704(3月9日 調査・解析部)/JILPT

冒頭、古賀会長は、「日本経済がデフレから脱却できないのは個人消費の低迷が主な原因だが、交渉環境は昨年10~12月期の企業業績をみると製造業の7割が増収。多くの企業で業績も上方修正されており、リーマンショック前との比較でも売上高で9割近い水準、経常利益も約8割まで回復し、外需も伸び続けている」と強調。こうしたなか、「経営側は賃上げも雇用拡大もせず、総額人件費抑制の姿勢を変えていない。これでは日本経済社会の再生はできず、低成長とデフレの罠から抜け出すこともできない」と厳しく批判した。

そのうえで、連合の方針を踏まえて「1%の適正配分要求の趣旨の徹底をはかり、強力な交渉を展開していく必要がある。賃金、人件費をコストとしてしかみない経営側のカベを是が非でも突破していかねばならない」などと訴えた。

平均賃上げ要求ほぼ前年並みの5,926円、パートの改善要求組合は倍増

連合が4日に公表した「2011春季生活闘争賃金改定状況」の要求集計資料によると、1日までに報告があった1,673組合(平均賃金方式、加重平均)の定期昇給込みの要求の平均引き上げ額は5,926円(2.05%)で、前年とほぼ同水準(1,133組合の平均引き上げ額5,904円、2.02%)になっている。

一時金の要求水準については、集計した1,687組合の年間平均月数は4.91カ月と、こちらも前年比0.03カ月(1,147組合の平均月数4.88カ月)の微増にとどまった。ただし、平均要求額は集計した755組合で年間153万3,459円と、前年(449組合で112万6,282円)を40万7,177円上回っている。團野久茂副事務局長は、「昨年に比べ、企業業績が回復していることが額要求増に表れている」などと話している。

他方、現時点でパートタイム労働者の待遇改善に取り組んでいる組合は1,108組合と、前年同期(554組合)より倍増した。ただし、時間給の引き上げに取り組む組合は222組合で、前年同期比で28組合減。時間給換算が可能な98組合の要求の平均は、24.68円で前年同期に比べ4.1円低い数字になっている。

あらゆる場を通じて、来年度予算および予算関連法案の早期成立の働きかけを

一方、政策制度課題について古賀会長は、「予算案は何とか年度内成立の目途が立ったが、一方で予算の執行に不可欠な関連法案は衆議院で難航している状況だ」と述べたうえで、「予算関連法案が成立しなければ、国民生活への重大な影響、わが国経済社会の混乱が生じることは明らか。さらに自治体の予算編成と執行にも計り知れない深刻な状況を及ぼす。このようなことはなんとしても避けなければならない」と強調。「野党に対し、法案審議に直ちに応じ、建設的な議論を集中的に行うことを求めるとともに、国民に対し、法案成立の重要性を訴えていくなど、全組織をあげて来年度予算および予算関連法案の早期成立を働きかけていこう」と呼びかけた。

連合がめざす「働くことを軸とする安心社会」の実現を

さらに、連合の政策委員長を務める西原浩一郎自動車総連会長も、「連合はいま、力を合わせて2011春季生活闘争を闘っているが、勤労者の雇用確保と生活改善のためには、併行してデフレ脱却、消費回復のための経済対策、求職者支援制度の恒久化、労働者派遣法改正案の早期成立などの2011年度政策制度実現の取り組みを運動の両輪として強力に進めていかねばならない」と指摘。「今こそ連合運動の真価が問われる。連合がめざす『働くことを軸とする安心社会』、誰もがいつでも働く機会、参加の場を得ることができる社会の実現のために一体となって全力で政策制度の実現に取り組む」との決意を表明した。

なお、集会では、私鉄総連、紙パ連合、自治労の構成組織代表がヤマ場に向けて決意表明したほか、「すべての働く者の期待に応えるべく、結集した力を背景にあらゆる場を通じ、来年度予算および予算関連法案の年度内成立を働きかけていく」などとする緊急アピールも採択した。