一時金要求提出の37組合すべてが昨年獲得実績以上を要求/金属労協

(2011年2月25日 調査・解析部)

[労使]

春季労使交渉のリード役となる金属労協(IMF‐JC)は、23日に戦術委員会を開催し、大手組合を中心とする集計登録組合の要求状況を集約した。それによると、59組合(昨春決定済みの基幹労連16組合を含む)のうち、賃金については40組合が要求を提出し、一時金は、交渉で決定する37組合が要求を提出(業績連動型が21組合)。業績の回復を反映し、一時金についてはすべての組合が昨年獲得実績を上回る要求内容となっている。

経営側は先行き不透明感を強調、賃金・一時金とも「慎重な判断が必要」

この日の戦術委員会は、金属労協が設定している登録組合の要求提出期限である23日時点での要求や交渉の状況を集約し、情報交換するため、開かれたもの。自動車、電機、鉄鋼・造船などの大手メーカーは10日以降、組合が要求を提出し、3月16日の集中回答日に向けて労使交渉が本格化している。

一巡目の交渉を終えた段階での、経営側の姿勢について、金属労協の取りまとめによると、経営側は企業を支える「人への投資」の重要性は認めながらも、先行き不透明感を強調し、厳しい姿勢で臨んでおり、 (1)業績は回復傾向にあるが、経済危機前には及ばず不十分である。原材料価格の上昇、円高などにより、先行きは不透明である (2)賃金については、雇用に影響を及ぼさないよう慎重な判断が必要である (3)一時金については、業績を反映すべきと考えるが、事業環境が厳しく、コスト増となる施策が実施し難い中で、慎重な判断が必要である――といった主張を展開しているという。

こうした交渉状況を踏まえ、同日の委員会では、 (1)金属産業は、危機を脱し、着実に業績を回復している (2)グローバル競争が激化する中で、「人への投資」によって、高付加価値を生み出す人材を確保し、企業の競争力強化とさらなる発展を図らなければならない (3)これまで労使の築いてきた賃金構造維持のしくみは、企業の競争力の源泉である。その確保は組合員の生活を守るための最低限の要求であり、景気の下支えを図るためにも不可欠である (4)組合員の協力・努力による業績改善に対して、一時金への適正な配分が重要である――との認識に立ち、「要求趣旨の徹底を図り、組合主張に沿った回答を求め強力に交渉を展開していくこと」を確認した。

企業内最賃協定の水準引き上げも

同日集約した各組合の要求状況(詳細は下記アドレス)によると、登録組合で賃金改善要求を盛り込んだのは1組合。JAM加盟のジーエス・ユアサ労組が賃金構造維持分6,020円に賃金改善分として1,500円を別途要求している。また、18歳高卒見合いの企業内最低賃金協定の水準引き上げについては、電機連合傘下の大手メーカー労組で構成する中闘組合のうち、今季中闘組合を離脱したOKIを除く13組合が、1,000円引き上げ(到達水準15万4,000円)を統一要求しているほか、本田、いすゞの自動車総連加盟組合を含む20組合が水準の引き上げを要求している。この他の要求事項としては、産別方針のもと、ワーク・ライフ・バランス、企業内最低賃金協定の締結と水準引き上げ、労災付加補償の引き上げ、非正規労働者に関する労使協議の強化などを要求している。特徴的な要求として、三菱重工労組がインターバル休息の導入を盛り込んだほか、古河電工、住友電工の労組でつくる全電線では、労災付加補償3,400万円への引き上げ要求を掲げている。