労働基本権の回復を見据えた春闘方針などを決定/自治労中央委

(2011年2月2日 調査・解析部)

[労使]

地方自治体の職員や公共民間労働者などで構成する自治労(82万7,000人)は1月27、28の両日、都内で中央委員会を開き、2011春闘要求の柱を (1)要求―交渉―妥結サイクルの確立と協約締結権の回復を見据えた妥結結果の書面化推進 (2)臨時・非常勤等職員の抜本的な処遇改善 (3)地域社会を支える公共サービスの質と公正労働基準の確保(入札改革、公契約条例制定、指定管理者制度の見直し等)――の3本とすることなどを決定した。

「全単組で要求・交渉・妥結と結果の書面化を」(徳永委員長)

徳永秀昭委員長はあいさつで、今通常国会に、労働基本権の回復を含む国家公務員法改正案が提出される見通しになっていることに触れ、「地方公務員に関する制度改革、労働基本権の扱い自体が、ここに至ってもまったく動きが見えない。私たちが求めているのは、基本法の定めに基づき、国家公務員の基本権の扱いと整合性を持った地公法改正案を、必ず今国会に提出するという当たり前のことだ。政府がその方向で作業を進めないのなら、総人件費削減の問題等を提案してきたとしても、現段階では協議のテーブルに着くことすらできないとハッキリ言っておきたい」と政府の動向を牽制。そのうえで、今春闘については、「人事院勧告制度の廃止が見込まれるなか、労使関係を対等なものへ変革していくための重要な通過点になる。自律的な労使関係では、単組力そのものが問われてくる。改めて春闘期に全単組で要求―交渉―妥結のサイクルを確立し、妥結結果の書面化に全力で取り組んでいただきたい」などと強調した。

さらに、約60万人にのぼると推計している臨時・非常勤等職員の取り組みについても、「本春闘方針で大きなテーマにしているが、このことを徳島大会で提案してから(正規と非正規との賃金シェアを提起)、多くの県本部・単組で大変な議論してもらっている。だが、国や自治体の財政を含め、冷静かつ中長期的に状況分析すると、正規―非正規の均等待遇の実現にはもう一歩進んだ運動の展開が必要だ」などと述べ、賃金シェア等の必要性を強調した。

昨春闘は要求書提出51%、交渉実施39%、書面締結13%にとどまる

2012年以降予定される、人事院勧告制度廃止を見据えた要求―交渉―妥結サイクルの確立と、非現業を含む全体での書面締結化をめざす自治労の取り組みは、昨春闘から本格化した。しかし、昨春は、要求書を提出したのは全単組中51%(臨時・非常勤等職員については60%)、交渉を実施したのは同39%(54%)、妥結事項を書面で締結化したのは13%(12%)にとどまった。一方、人事院勧告の確定闘争では、要求書提出が82%、交渉実施が80%にのぼっており、春闘期の取り組みは大きく進展していない。

こうしたなか、2011春闘の統一要求基準では、単組に危機感を促すとともに、02春闘から掲げてきた到達水準目標についても、国家公務員準拠ではなく、新たに絶対額で提示した。具体的には、06年給与見直し以前の水準到達をめざすとの観点から、自治体労働者(行政職)の賃金水準を30歳ポイントで24万4,615円、35歳ポイントで29万8,390円、40歳ポイントで35万1,443円以上などと設定した。

また、臨時・非常勤等職員の処遇改善では、 (1)パート労働法の趣旨の適用や非常勤職員に対する諸手当支給制限の撤廃等を求める、公務員連絡会の署名に130万人を目標に取り組む (2)最低でも40円以上引き上げる (4)通勤手当を全額支払う (5)自治体に雇用されるすべての雇用労働者と地域公共サービス民間労働者の最低賃金を、高卒初任給の目標とする月給14万9,800円、日給7,490円、時給970円以上とすること――などを盛り込んだ。

このほか、中央委員会では、 (1)公務員制度改革(消防職員の団結権回復問題、段階的定年延長等含む) (2)自治体財政の確立と分権推進 (3)社会保障制度改革(就労看護職員200万人体制化等)など13項目の重点課題からなる当面の闘争方針を決定した。また、雇用、教育、社会保障、地方分権、給付と負担をめぐる自治労の提言をまとめた「持続可能な日本社会のグランドデザイン構想」や、2014年8月までに大会の参加率や本部の中央執行委員会の構成で女性30%以上を目指すなどとした「男女がともに担う自治労第4次計画」も確認した。

討議では、公務員制度改革に関連して、「人事院勧告制度の廃止前に現行内容で協約化しておかなければ民間準拠を前提に大幅な賃金・労働条件引き下げが行われる恐れがある」「スト権なしの協約締結権付与だけという事態は絶対に避けなければならない」などの意見が出された。

注:臨時・非常勤の賃金改善のための財源について春闘方針では、 (1)行政に携わる職員自らの視点で事務事業を見直す (2)これまで実施された正規職員の人員削減による人件費総額の減少分を労使で確認する (3)正規職員の「時間外勤務手当(当初計画の未達分)」や「一時金(水準)・一時金加算割合」「特例カット(人事院勧告を上回る深堀り)相当分」「行政執行責任を踏まえた手当(いわゆる管理職手当)」等からの配分を視野に検討する――など踏み込んだ提起を行っている。