今春の交渉方針を決定、UIゼンセンとの統合協議をめぐる討議も/JSD中央委

(2011年1月26日 調査・解析部)

[労使]

百貨店やスーパー等の組合でつくるサービス・流通連合(約22万人)は25~26日、都内で中央委員会を開催し、2011春の交渉方針を決定した。また、JSDの運動のあり方(地域組織や財政の確立等)を議論してきたプロジェクトを休止し、今後の議論の軸足をUIゼンセン同盟との産別再編統合の協議再開に向けた組織内討議※1に移していく方針が報告され、承認した。

「臨賃3カ月以上をミニマムラインに年収低下に歯止めを」(八野会長)

あいさつした八野正一会長は、小売・流通サービス業界を取り巻く現況に触れ、「ビジネスモデルの変革の遅れや地方経済の低迷、将来不安からくる消費者の節約意識・低価格志向等が相まって、非常に厳しい状況が続いている。ただ、経費節減努力等を通じ収益には底入れ感も見え始めているほか、企業の状態は(高額品や衣料品を扱う百貨店や、価格競争が激化する総合スーパー等が苦戦しているのに対し、生活に密着した食品スーパーや利便性の高い通信販売等の売上は堅調に推移するなど)、業種・業態間等で大きく異なっている」などと述べた。

そのうえで、今次交渉方針の考え方について、「雇用維持を大前提としつつも生活防衛の観点から、04年対比で93.5%(10年)となっている年収の早期復元に取り組む。月例賃金の体系維持分の完全実施を求めるとともに、とりわけ同比マイナス1.33カ月と大幅に下落し、すべての部会で3カ月を割り込んでいる臨時賃金(年間一時金)に対する取り組みを推進し、月例賃金×15カ月を生活維持のミニマムラインとしていかなければならない。また、パート・有期契約労働者に対しても、均衡・均等待遇の実現を目指し、最低賃金の政策的引上げも視野に、時間給を大幅に引き上げる取り組みを推進する」などと強調した。

すべての単組で賃金体系維持分の完全実施を

中央委員会では、(1) 賃金体系維持分(定昇相当分・制度維持分)の完全実施と年収ベースでの水準復元(2)パート・有期契約の処遇改善と全労働者を対象にした取り組み(企業内最低賃金の時間給による協定化の徹底、特定最低賃金の引上げ等)(3)総実労働時間短縮の取り組みの強化(4)統一的運動の推進(2月28日を第一次、3月15日を第二次の要求提出日とし、先行グループは3月16日、第一は23日、第二は31日、第三は4月15日までに妥結等)――などを柱とする、2011春の交渉方針を決定した。

このうち、月例賃金の取り組み※2をめぐっては、賃金制度がある場合は「賃金制度に基づく賃金体系維持分(定期昇給相当分)の完全実施を要求・確保する」。そのうえで、「企業の置かれた環境を踏まえながら、上積み可能な組織については賃金改善要求を行い、全体の底上げや年齢別・男女間等の歪みを是正する」とし、その際の具体的な要求基準を、「30歳ポイント(大卒8年、高卒12年の一人前賃金(JSDの10年賃金プロット実態調査による現状は平均24万7,800円)」で、先行(水準牽引役)、社会的(産業中位)、底上げ(最低到達水準)基準の順に28万3,200円、24万9,200円、21万9,600円」等に据えた。また、賃金制度がない場合は、「原資維持分を含めて2.0%以上もしくは4,500円(昨春闘同額)以上を基準に要求する」などとした。

パート等は職務・人材活用の異同に応じ3.0%、1.6%、1.1%の範囲で要求

一方、JSD組合員の約42%(9.3万人)を占めるパート等有期契約労働者については、「制度維持分(定昇相当分)の完全実施を要求・確保する」として、(1)職務・人材活用とも同じパート(JSD調査で勤続5年までの平均時間給1,321円)については、制度維持分を含めて3.0%以上(昨春闘方針では2.1%以上) (2)職務は同じだが人材活用が異なるパート(953円)については1.6%(同1.2%)以上 (3)職務も人材活用も異なるパート(839円)については、1.1%(同1.0%)以上(4)フルタイム契約社員(17万1,333円)については2.0%以上――などとする要求基準を掲げた。

このほか、中央委員会では「両立支援に向けたガイドライン」を了承し、「JSD政策課題対応集」も公表した。

※1:「UIゼンセン同盟との産別再編統合協議再開に向けた方針」(素案)等が、昨年9月に提示され、同12月に修正されている。中央委員会初日の分科会討議で、岡田啓事務局長が行った説明によると、同修正素案は、 (1)産別再編統合は明らかに「新組織結成方式」によるものとし、 (2)協議再開に当たっては、前回不調に終わった際、両者でまとめた「新産別の姿(案)」(07年12月)を踏襲すること、 (3)不調の要因となった政治活動や労働条件改定のあり方(いわゆる統一闘争)についても同案の方向性をベースとし、 (4)前回一致を見なかった会費問題については、UIゼンセン同盟の現行水準を引き下げるのは極めて困難なため、協議の中で妥当な水準を追求するものの、今回は相当な覚悟をもって望む必要があること、 (5)UIゼンセン同盟の部会制については、百貨店など業態単位の自主性もある程度確保できるよう求め、 (6)スケジュール観は、本年4月の中執及び6月の定期大会で統合協議を再開するか否かの方針を提起し、9月20日に臨時大会を開催。協議再開が決定されれば、両者で「新産別の姿(案)」の詳細を詰めることになり、その後の大会で可否を占い、各単組で上部団体変更等の規約改正準備、解散大会開催といった運びになること――等の内容になっている。

※2:JSDは08春闘から、03年より続けてきた通年春闘路線(総合的な労働条件のミニマム重視で、個別組合が通年で交渉・協議するスタイル)を転換。月例賃金等に係る要求基準を掲げるとともに、通年交渉の集大成として、春に全加盟組合が一斉に要求・交渉する統一的な運動に移行している。