春闘方針を決定、TPPの拙速な参加は反対/フード連合中央委

(2011年1月26日 調査・解析部)

[労使]

食品産業関係の組合で構成し、中小が8割を占めるフード連合(渡邉和夫会長、10万2,280人)は24日、都内で中央委員会を開催し、2011春季生活闘争の要求方針を決定するとともに、「フード連合は、政府が拙速に対応することに反対を表明する。国民的な議論の下で、TPP参加の是非を慎重に判断すべきだ」などとする「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に対する特別決議」を採択した。

「TPPへの拙速な参加は歴史の汚点に」(渡邉会長)

あいさつした渡邉会長は、民主党・菅政権が「平成の開国」として積極的に推進する立場から、6月末までに結論を出すとしているTPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加問題に触れ、「まさに我が国の食料安全保障体制を危うくする問題。食品産業の基盤そのものを毀損しかねない。農業・食料対策が示され、広く国民的合意を得るなかで参加が確認されるならまだしも、拙速的な参加決定は歴史の汚点になる」などと強く反発。そのうえで、「5年で倍化を目指す米国の輸出戦略の一環としての意味合いも踏まえつつ、日本にとって真の国益とは何かを見据え、しかるべき対策を講じていくことが求められている」と強調した。

一方、今春闘を取り巻く情勢については、「景気は緩やかな回復の動きを見せており、デフレ基調からの脱却とまでは言えないが悲観的な状況にはない。食品産業でも、大手では引き続き海外投資が活発になっている」との判断を示しつつも、「連合構成産別の方針をみると必ずしも足並みが揃っているわけではなく、大きな力の結集足り得ない。私たちの闘いも、自ずと厳しくなる覚悟が必要だ」などと述べた。

そのうえで、今次交渉に臨む姿勢として、「最大の眼目は格差是正にある。フード連合の賃金(春闘後の算定基礎額)水準は、この6年間で約1万円ダウン(04春闘後30万5,427円→10春闘後29万5,191円)しており、(これを5年程度で復元する観点から)奮闘しなければならない」などと強調した。

フード連合の目標水準未満はベア・賃金改善2,000円等

中央委員会では、全加盟組合が取り組む統一要求方針を、 (1)賃金(ベア・改善原資含む)の引上げ (2)労働時間の短縮(時短2000ゼロ、割増率等の引上げほか、新たに労働時間の上限規制撤廃とインターバル規制の設定努力) (3)一時金の取り組み(年間最低4ヶ月、基本6ヶ月の確保) (4)パート等の組織化と均等・均衡処遇改善 (5)企業内最賃(到達目標は月額15.2万円以上、時間額870円(最低750円)以上)の協定化と水準引上げ――の5本に据えた。

そのうえで、賃金引上げに関しては、この間低下した賃金水準・労働条件の復元と、賃金の絶対額水準(賃金構造基本統計調査で、食料品製造業の09年所定内賃金は23業種中20番目・産業計を100として86.9)を引き上げる観点から、(1)すべての組合は賃金カーブ(体系)維持分(定昇等の賃金制度がない場合は5,000円以上)を確保する(2)そのうえで、すべての組合は自社の賃金水準を検証し、フード連合の目標水準(高卒30歳で基本24.9万円、基準内27.6万円、大卒35歳で同順に35.6万円、37.9万円等)をめざす。具体的には、 (1)目標水準に満たない場合は7,000円またはベア・賃金改善分2,000円を基準とする (2)目標水準を満たしている場合も、必ず情報を開示するとともに、パート等の時給を定昇込み40円、定昇なし30円を基準に引き上げる (3)定昇等がない中小組合は、賃金制度の確立とともに、定昇相当分として5,000円以上を目指す――などとする方針を決定した。

要求提出は2月末までとし、統一回答指定日は連合の回答引出しゾーンの最大のヤマ場(3月16、17日)や化学・食品・製造共闘連絡会議、有志共闘の動向等を踏まえて3月16日に設定。交渉難航が予想される組合に対しては、「中小労組支援センター」(昨年初めて設定したものを改称)への登録を促し、要求策定・制度確立、交渉・妥結・配分にわたり指導してテコ入れする方針も決めた。