「1%の財源の分配を求める」/JEC連合の賃上げ要求基準
(2011年1月14日 調査・解析部)
化学・エネルギー関連労組でつくるJEC連合(小柳正治会長、17万人)は13日、都内で第5回中央委員会を開き、今春の賃上げ交渉の方針を決めた。賃上げ要求基準は、連合の方針を踏まえて、「目安として1%の財源の分配を求める」こと。すべての組合が賃金構造維持分を確保したうえで、1%の原資分配を求めて、ベースアップや賃金カーブの歪み是正、諸手当の見直しなど様々な形で月例賃金を改善するとしている。非正規労働者の賃上げにも取り組む考えで、正社員を上回る時間給の引き上げを求めるとしている。そのほか、賃金の底上げや格差是正に向けて年齢別最低保障賃金や企業内最低賃金の設定などに取り組む考えだ。
あいさつした小柳会長は、「賃金を抑制していては国内の需要は停滞し、デフレ、不況の悪循環に陥ってしまう。国際競争力を引き合いに出されて、だまされてきた職場の意欲は低下している。98年と比べて生産性が2割ほど上昇する一方、賃金は1割低下している。生産性向上に見合った成果配分が忘れられている。これは今まで経営側が主張してきたことだったはずだ。先進諸国で日本だけ賃金が上昇していない。経営側は賃上げをしないことで、自ら景気低迷の原因をつくっている」と述べて、経営側の姿勢を批判。「1%程度の賃上げは実現できるはず。組合が要求しなければ決して上がらない。悪循環から脱するためにもミクロの企業論理を乗り越えて、マクロの見地から公正な配分を求めていく。生活者の代表として、粘り強く交渉して道を切り開いていく」と取り組み強化を訴えた。
1%の分配はベア、カーブ是正、諸手当などで
賃上げ方針は、今春の交渉について「企業から家計へと分配を反転させる」ものと位置付けている。要求基準については、環境の厳しい企業も含め、すべての組合が賃金構造を維持するために、最低限でも現行賃金カーブを確保することとしている。その上で、月例賃金の改善について、1%程度の原資を企業から引き出して、ベースアップや賃金カーブのゆがみ是正、諸手当の改善など様々な工夫で改善を図る考えだ。
賃金制度が確立されていない中小の取り組みについては、大手の定期昇給相当分の情報を共有することで支援体制を強めるとしており、賃金実態調査などから目安額として「1歳・1年間差5,000円」を示している。
派遣労働者を含めた非正規労働者の賃上げにも踏み込む考えで、連合の方針に準じて、 (1)時間給1,000円程度 (2)正社員に近い働き方の労働者40円、それ以外の労働者20円の時間給引き上げ――などの処遇改善策に状況に応じて取り組むとしている。
また、賃金の底上げと格差是正を図るため、年齢別最低保障賃金や企業内最低賃金の目標水準も設定。年齢別最低保障賃金では、人事院の標準生計費などを基に30歳20万3,000円、35歳22万6,000円など各年齢ポイントで目標水準を設けている。企業内最低賃金については、「社会的な賃金底上げをめざし、これまで以上にウエイトをかけて取り組む」としており、協定最低水準を時間額880円としている。
一時金については、「昨年実績および年間収入の視点を強めて、維持・改善を求める」とし、ミニマム基準を年間4カ月に設定している。
そのほか方針では、年間総労働時間1,800時間の実現、労働時間管理の適正化など労働時間に関する要求も盛り込まれている。
論議では、「格差是正を求める中小は、1%の要求基準では闘い難い。交渉で1%が上限になってしまう。中小への支援を強化してほしい」(化学一般)などの意見が出た。