賃金カーブ維持分の確保を大前提に/自動車総連の春闘方針

(2011年1月14日 調査・解析部)

[労使]

「自動車総連第78回中央委員会」:労使記事(調査解析部)/メールマガジン労働情報690号(2011年01月14日)/独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)

トヨタ、日産、本田など自動車メーカー労組が加盟する自動車総連(西原浩一郎会長、76万1,000人)は13日、京都市で中央委員会を開き、今春闘の賃金要求について定期昇給に相当する賃金カーブ維持分の確保などを柱とする「2011年総合生活改善の取り組み方針」を確認した。方針は、現行の賃金水準を維持するために賃金カーブ維持分確保が大前提だと強調したうえで、独自の判断で賃金改善に取り組む単組は、自社の賃金課題の解決に向けて主体的に取り組むとの考え方を示している。今後、傘下組合は同方針に沿って賃上げ要求方針を策定。大手メーカー労組は2月16日に一斉に要求を提出する予定だ。

一時金は「最低でも昨年獲得実績以上」

取り組み方針は、「現下の日本経済や自動車産業の状況、組合員の生活実態を踏まえると、これ以上のデフレ進行を食い止めねばならない」と指摘。「何としても現状の賃金水準の下支えを図るべく、徹底して賃金カーブ維持分の確保に取り組む」と強調した。

具体的には、「カーブ維持分の確保を大前提」としたうえで、自社の状況に応じて賃金改善に取り組む組合は、「生産性向上に向けて懸命に取り組む組合員の努力・成果、賃金実態を踏まえた格差・体系是正等を重視し、明確な額で要求する」方針となっている。

年間一時金については、リーマンショックによる企業業績の急激な悪化で、一昨年は大幅な水準ダウンとなり、未だ回復できていないことから、「組合員の実質生活に影響を及ぼしている実態を踏まえ、生活給としての一時金の役割を重視し、低下した水準の回復・底上げを図る」構え。要求は「年間5カ月を基準とし、最低でも昨年獲得実績以上」とする。

自動車産業の政策・制度課題は、経営者団体との連携強化も

また、昨年の春闘から方針の柱に組み込んだ非正規労働者に関する対応では、コンプライアンスの点検活動を徹底するとともに、正社員登用の促進や教育・研修体制の充実、待遇面での課題の改善などに取り組むことで、労働組合として同じ職場で働く仲間である非正規労働者に対する関与・対応力を高める。このほか、企業内最低賃金協定(18歳で15万4,000円以上を要求)の締結拡大・水準引き上げも求めていく。

政策・制度課題への取り組みに関しては、「連合の政策実現に向けた諸活動に積極的に参画し、日本経済の活性化と雇用増加、社会保障の充実など国民生活や日本全体の雇用拡大に向けた取り組みを推進することで、組合員の雇用と生活の不安解消をめざす」とともに、自動車産業の個別課題に対しても、経営者団体との連携をより強化し、諸活動に取り組む姿勢を示した。特に、 (1)自動車関係諸税の軽減・簡素化 (2)国内事業基盤の維持・強化に向けた総合経済対策の実施――を「重点フォローアップ項目」と位置付け、積極的な対応を行っていくとしている。

個別労組の賃金改善の取り組みを支援

西原会長はあいさつで、今春闘の賃金要求について、「デフレの主な要因が日本経済の需給ギャップにあることは明らかであり、家計の痛みの拡大を阻止しなければならない。賃金については働く者の生活を守り景気の下支えを図る観点から、すべての組合での賃金カーブ維持分確保を至上命題とする」などと主張した。

さらに、09年の春闘では220労組、2010年も160組合が賃金カーブ維持分を確保できなかった実態に触れ、「自動車総連全体が現行賃金水準維持の観点から、賃金カーブ維持分確保を大前提として強い姿勢で交渉に取り組まなければならない」などと強調。そのうえで、「業種間あるいは企業間の賃金格差や賃金体系上のゆがみの是正などの賃金課題に取り組む、あるいは組合員の努力・成果に報いさらなる意欲・活力に繋げる観点などから賃金水準の向上をめざす組合に対し、支援の姿勢を明確に打ち出す」と述べた。

また、年間一時金については、「09年に大幅に低下した水準が、全体として未だ回復途上にあることから、生活設計上の重みに鑑みて総連基準に基づき積極的な取り組みを要請したい」と訴えた。

「同じ職場で働く仲間」の視点に立って非正規労働者の取り組みを

一方、非正規労働者の対応にも言及。「雇用実態や課題が多様であることから、各労連・組合の実態や課題に応じて労働環境や労働条件面など『同じ職場で働く仲間』の視点に立って、非正規労働者の公正処遇の確立に向け、着実に取り組みを進めて欲しい」と要請した。このほか、企業内最低賃金の取り組みに関しては、「未だ未締結にある478組合の締結に向けて努力するとともに、非正規労働者の賃金底支え・底上げを強く意識し、総連基準・高卒初任給への水準引き上げや対象範囲の拡大などに取り組み、その成果を産業別最低賃金に連動させなければならない」と訴えた。