「目に見え、音が聞こえる春闘」めざす/国民春闘共闘が討論集会

(2010年12月1日 調査・解析部)

[労使]

全労連などを中心につくる国民春闘共闘は11月25、26の両日、静岡県熱海市で「2011年国民春闘討論集会」を開き、来春の賃上げ要求の方針案などについて議論した。統一要求基準として、傘下組合に対するアンケートの結果を踏まえて、今春闘と同水準の「誰でも時間額100円以上、月額1万円以上の賃金引き上げ」を提起。また、2010年版の「賃金センサス」の民間高卒初任給などを参考に、「月額16万円、日額7,500円、時給1,000円」を最低到達目標に掲げている。そのほか方針は、 (1)週労働時間60時間以上労働者の根絶 (2)全国一律時給1,000円以上の最賃確立 (3)大企業、政府、自治体による雇用確保の責任追及――などを柱とし、地域での討論集会開催などの取り組みを強化することで、「目に見え、音が聞こえる春闘」をめざすとしている。方針は、年明けに正式決定される。

「内部留保をため込んでも成長の役には立たない」(大黒代表幹事)

主催者あいさつした大黒作治代表幹事(全労連議長)は、賃金水準が下落する中で大企業の内部留保が増えている現状に触れ、「大企業の横暴な支配とそれへの屈服では日本経済が上向くはずがない。いくら大企業が内部留保をため込んでも、日本経済の成長には何の役にも立たないことはもはや明らか」と批判。「このような矛盾と景気回復を求めて、賃上げに向けての力の結集が必要だ。黙っていては、景気回復と雇用拡大の道は閉ざされる」と述べて、取り組み強化を訴えた。

方針案は、日本経済の現状について、「財界・大企業は、雇用の安定や内需拡大の努力よりも、経済危機でより激烈になった国際競争に勝ち残るために、賃金カットと雇用の流動化を中心とする人件費削減や下請け企業への犠牲転化を強め、一部の大企業の収益だけが『V字回復』する企業中心主義を強め、企業の社会的責任を放棄している」と分析。来春の賃金交渉で「『100年に一度の経済危機』を引き起こした責任と原因を国民に明らかにし、是正のための施策を政府に迫り、企業に社会的責任の履行を求める。雇用の安定と賃上げで内需拡大を求める(国民諸階層との)共同の取り組みを職場と地域で追求する」と強調している。

誰でも時間額100円以上、月額1万円以上を提起

賃上げ要求基準案「誰でも時間額100円以上、月額1万円以上の賃金引き上げ」の根拠となった要求アンケートの結果を見ると、約14,000人の回答を集めた月額要求水準の分布では、「1万円」が25.2%ともっとも多く、次いで「3万円」(16.0%)「2万円」(14.2%)などとなっており、パート要求アンケート(約4,300人)による時給額要求水準では、「100円」の回答がもっとも多かった(22.2%)。

「目に見え、音に聞こえる春闘」を実現させるため、地域での行動を強める考えで、「賃上げと雇用確保による地域経済活性化」をスローガンに、全国の自治体に最低賃金引き上げ決議や公契約条例の制定などを求める全国要請行動や、地方事業主団体を巻き込んだ中小企業アンケートの実施など、「総対話と共同」の取り組みを進めるとしている。闘争スケジュールについては、3月中旬に第一次集中回答日を配置し、その翌日に各地域で、集会や要請行動などの「1日総行動」を展開する考えだ。

討論では、「賃上げと雇用の質向上はもちろん。とくに、環境の厳しい若年者の声を職場で聞いてほしい」(全労連青年部)や「中小企業をめぐる環境は厳しいが、賃上げをあきらめても状況がよくなるわけではない。逆に、経営者が努力しなくなってしまう。『すべての組合が要求提出』の方針をどう実践できるかが重要だ」(JMIU)、「地域を巻き込んで『目に見える春闘』ができるかは、職場の要求がどこにあるのかの把握にかかっている。職場での議論の積み上げが重要だ」(埼玉労連)などの意見が出された。