成長戦略や人材育成・活用のあり方について意見交換/連合・日本経団連の懇談会

(2010年11月19日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)と日本経団連(米倉弘昌会長)は17日、都内で懇談会を開き、経済成長戦略や人材育成・活用のあり方などについて意見交換した。会合では、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加や法人税率の引き下げなどの政策の推進について、条件付きながらも認識が一致。人材の育成・活用に関しても、双方が幅広く意見交換した。

連合・日本経団連の懇談会:メールマガジン労働情報No.676/JILPT

冒頭、米倉会長は「わが国の経済は、世界経済の減速や急速な円高の進行により、先行き不透明感が高まっている。このような時期に景気の本格的な回復を図るためには、成長をキーワードに企業が活性化に向けて官民協力のもとで、遅滞なくいろいろな取り組みをしていくことが喫緊の課題だ。経済成長のカギは研究開発やイノベーションであり、それを担う優秀な人材の育成が重要。人材は最も大切な経営資源であるばかりでなく、わが国の国力の源泉でもある」などと述べた。

一方、古賀会長は「すべての働く者の連帯で希望と安心の社会をつくろうと確認した運動を展開している。組合員、非組合員、雇用形態を問わず、働く現場、雇用の現場が安定であれば社会は安定して発展していく。社会の発展と労働のバランスをどう取っていくかが問われている。そんな観点から前向きな意見交換をさせて欲しい」などと応えた。

TPPへの参加や法人税率の引き下げについて議論

意見交換では経済成長に向けた課題について、経団連側が「アジアをはじめとする新興国の成長を取り込んでいくことが不可欠であり、法人税の引き下げや為替の安定に加え、国を開くための施策が必要。TPPへの参加やEPA・FTA網の拡充で、貿易・投資環境の整備を進める」「社会保障の横断的な改革のためには、消費税の一刻も早い引き上げ、所得税の基幹税としての機能回復、法人税への過度な依存の見直しを求めている。雇用を維持・拡大していくためにも、法人税率の引き下げが必要であることを理解して欲しい」などと主張したのに対し、連合側は「『新成長戦略』推進のためには、グローバル化への対応が重要。国内産業を保護し、雇用への影響を配慮しつつ、TPP、FTA等を推進する必要がある」「法人税減税やTPPも重要だが、それらによる企業利益を労働者への配分の拡大と科学技術振興等の設備投資に充てていくべきだ」などとして、条件付きで賛意を示した。

成長分野で推進力となる人材の育成・確保を

また、人材育成・活用のあり方については、連合側から「中長期的に日本の成長力・競争力を発展させていく視点で、成長の推進力となる人材をいかに育成・活用していくかを考える必要がある」として、 (1)多様な産業分野で付加価値の高い財やサービスを生み出す、質の高い雇用への転換を進めていくべき (2)将来の人材確保の点では、新卒者・若年雇用が重要課題。雇用問題の根本的な改善には良質な雇用を生み出すことが不可欠との視点で、企業は雇用の拡大と質の向上に努力して欲しい (3)人材育成の観点では、数字に表れない高度熟練技能の評価が重要 (4)職場における信頼関係の構築には、適切な賃金・労働条件が保障されることが重要。賃金改善による人材確保と技能伝承を図っていきたい――などの考えが示された。

これに対し、経団連側は、「これまで労使が雇用維持に取り組んだ背景には、連合と経団連が協同で提言をまとめ、政府や社会にメッセージを発信したことが大きい。今後も協力して課題解決に取り組んでいきたい」としたうえで、「成長分野へのスムーズな労働移動を可能にするためには、企業内の人材育成だけではなく、公的な能力開発を強化すべき。ジョブカードなど雇用保険2事業は、能力開発と雇用安定の基盤として欠かせない」などの発言があった。

なお、有期労働契約法制に関して、経団連側が「自ら選択して非正規雇用での就労を希望している人も多く、一律のルール化は適切ではない」と主張したのに対し、連合側は「正規雇用に就くことができず、やむを得ず有期雇用で働く人もいる。すべての人に居場所があり、出番が期待できる法制度とするべきだ」と反論した。