タクシー減車と賃金底上げを最重要課題に―自交総連定期大会

(2010年10月29日 調査・解析部)

[労使]

タクシー・ハイヤー、自動車教習所、観光バス労働者などを組織する自交総連(飯沼博委員長/約2万人)は10月26、27の両日、都内で定期大会を開き、タクシー減車の徹底や賃金の底上げなどを内容とする2010年度運動方針を確認した。

規制緩和から規制強化へ

タクシー業界は2002年に道路運送法の改正以降、逆風に晒されてきた。法改正により、料金の自由化や新規事業者参入の原則自由化などの規制緩和が行われたことをきっかけに各地で業者間の過当競争が加速。低料金化の流れはタクシー運転手の労働条件の大幅な悪化につながった。

こうした現状を踏まえ、2009年10月に与野党一致の共同修正案による「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」(タクシー適正化・活性化法)が施行され、これまでの規制緩和を見直し、規制強化の方向に政策転換が図られた。この法律では、国土交通大臣はタクシーの過剰供給が起きている「特定地域」を指定し、同地域のタクシー事業者、労働組合などで構成される地域協議会により、妥当と判断されればタクシーの運行台数を減らす「減車」の枠組みが初めてつくられた。さらに新規事業者の参入要件の厳格化やこれまで事前届出制だった増車を認可制にするなど入口規制も強化された。

累進歩合制度の完全廃止を

自交総連はこうした流れを評価しながらも、「減車闘争はまだ緒についたばかりであり、適正台数の実現に向けた闘いは、これからが正念場を迎える」と受け止めている。今後は、タクシー運転免許を国家資格として法制化することで、運転手の質を高め、数を制限することにより、運転手にとって優位な仕組みづくりの構築をめざすことを確認している。

今回の運動方針では減車の流れをより確実なものとすることを重点課題の一つとした。地域協議会に対し、その権限を高め、各地域で適正な運賃の水準や台数を決定できるシステムを確立することを盛り込んだ。

もう一つの重点課題は賃金水準の底上げだ。タクシー運転手の賃金水準は規制緩和後、悪化の一途をたどっている。厚生労働省の調査によると2008年の平均年収は271万円で、他の産業に従事する労働者(510万円)との間に239万円もの格差が生じている。労働条件の悪化は運転手の資質やモラルの低下を招いているとし、自交総連では地域における賃金底上げをめざす。具体的な対策として、最低賃金法を守らない悪質な経営者の一掃や厚生労働省が通達で禁止している累進歩合制度(営業収入に応じて、運転手の手取り分の割合が変わる制度)の完全廃止などに取り組む。さらに歩合給賃金の改善策として、最低賃金を基礎とした固定給部分の制度的確立を図る。

また、景気の悪化で倒産や廃業する経営者が増えていることから、各地域でいざという時の対応策について学習会を開催するほか、経営状態を事前にチェックする機能を強化する。

組織拡大関係では組合員数3万人台の回復に向けて、取り組みを強化する。「一桁組合からの脱却、少数派から職場内多数派へ」「二桁の地連(地方連合会)は100人以上の組織勢力へ」を目標に掲げ、地域ごとに策定した計画に基づき、組合員の確保に努める。さらに、地連では個人加盟方式の組合「地域タクシー労働組合」を設置するほか、非正規雇用や個人タクシー、自動車教習所、観光バス労働者の組織化に向け、必要な対策を具体化するとしている。