賃金水準の復元と非正規は正社員上回る賃上げめざす/連合の2011春闘「基本構想」

(2010年10月22日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は10月21日に中央執行委員会を開き、2011春季生活闘争の「基本構想」を確認した。すべての組合が取り組むべき課題として、定期昇給に相当する「賃金カーブ維持分」の確保や、非正規労働者を含むすべての労働者を対象とした待遇の改善などを提起。具体的には、落ち込んだ賃金水準の復元と、非正規は時給ベースで正社員以上の賃上げ獲得をめざすとしている。闘争方針は12月2日の中央委員会で決定する。

求められる労働条件の復元と格差の是正

基本構想は、円高の進行・長期化や海外経済の減速懸念などの先行き不透明感が強まっていることやデフレ経済が続いていること、さらに失業率が高止まりして来春の新卒採用も過去最悪が予測されるなど雇用情勢が厳しさを増していることなどを踏まえ、「いま、求められるのは労働条件の復元と格差の是正をはかることであり、労使が危機感を共有し、家計・企業のバランスの歪みを修整・解消することだ」と強調。2011春闘では「国民の暮らしや生活に蔓延する『閉塞感』を打破するとともに、日本経済をデフレ循環から脱却させ、活力ある社会への展開、『希望と安心の社会づくり』をめざしていく」との考えを前面に打ち出した。

賃金カーブ維持とすべての労働者の待遇改善を

そのうえで、基本的な考え方としては、2010春闘同様、来春闘を「すべての労働者の処遇改善に向けた闘い」と位置づける。「すべての労働組合がすべての労働者を視野に入れ、要求を起こし、配分の歪みから是正、労働条件の底上げを実現することで、低下してきた賃金や労働時間、現場力などの復元をはかり、デフレ循環からの脱却と消費の回復により、活力ある社会への展開、日本経済の展望を切り開いていく」との姿勢を強調している。

すべての組合が取り組むべき課題(ミニマム運動課題)として、 (1)賃金カーブ維持分の確保 (2)非正規労働者を含めた全労働者を対象とした賃金をはじめとする待遇改善 (3)企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げ (4)産業実態を踏まえた総実労働時間の短縮、時間外・休日労働の割増率の引き上げ等――をあげている。

1997年のピーク時より5.1%下がった報酬の復元を

具体的な要求については、まず「賃金の水準を重視した取り組みを徹底することで、配分の歪みを是正する」ことに力点を置く。

「毎月勤労統計」の現金給与総額(年平均、5人以上)を用いた連合の試算によると、「一般労働者」の報酬は、ピーク時(1997年)に比べ、5.1%下がっているという。そこで、賃上げの取り組みでは、賃金水準をできるだけ早くピーク時に戻すとの観点で「賃金カーブ維持をはかり、所得と生活の低下に歯止めをかける」ことを絶対条件としたうえで、「足下の状況を踏まえて底上げ・底支え、生活の維持向上につながる配分を要求する」ことを明記。具体的な取り組みの中味については産別が決めることになるが、連合としても一定の考え方を最終案に盛り込みたいとしている。

非正規は正社員上回る賃上げを――新たに「非正規共闘」を設置

非正規労働者の労働条件改善については、従来の「パート共闘」を軸に「非正規共闘」に衣替えさせる。非正規労働者の正規化の促進をはじめ、派遣労働者などの間接労働者を含む非正規労働者全般の待遇改善の取り組みを展開。闘争の進捗と結果についての報告や情報開示を徹底する。また、非正規労働者の労働条件を正規労働者に近づけるため、「時給ベースで正規労働者を上回る賃上げを行うものとする」との文言を明記。均等・均衡に向けた非正規労働者の労働条件改善のあり方について検討する考えも示した。

政策・制度要求の取り組みも

このほか、賃金の絶対額水準を重視した取り組みの徹底や、賃金の底上げをはかるための企業内最低賃金の締結拡大と水準の引き上げ、生活防衛の観点からの一時金水準の確保・向上、「中小共闘」を中心とする格差是正・底上げの取り組みの強化なども盛りこんでいる。

さらに、賃金・労働条件改善と「運動の両輪」と位置づけている2011年度の政策・制度要求に関しても、経済対策の実施や労働者派遣法改正案の早期成立、中期的視点に立った最低賃金の引き上げ、有期労働契約の労働者保護ルールの法整備などを列記している。

「第2先行組合」(仮称)の配置や「中堅代表銘柄」(仮称)の設定も

一方、闘争体制については、09春闘で設置した「共闘連絡会議」(相場の波及力強化に向けて業種が近い産別組織ごとに情報交換などの取り組みを進める5つの共闘組織)を中心に労働条件の復元に努める。賃金カーブの維持や賃金水準の引き上げ、生活・職務関連手当、割増率の引き上げ、企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げなどを集計対象とする方針だ。

3月の集中回答日に回答を引き出す「第1先行組合」(仮称)と、その翌週の決着をめざす「第2先行組合」(仮称)を新たに設定し、要求と回答を集計して、中小組合への波及効果の向上をめざす。要求の集計は賃金カーブ維持原資、賃上げ額とその賃金水準を開示することとし、回答結果については3月初めの「共闘連絡会議代表者会議」の共闘資料とする。

また、昨年、格差是正や賃金体系整備の取り組みを推進する目的で共闘会議ごとに設定した各産業の代表銘柄(労働者の職種、年齢、勤続の賃金水準)を整備するとともに、新たに「中堅代表銘柄」(仮称)を設定する。加えて、時給と月給をつなぐための指標としての時間あたり賃金も示す。

今後、基本構想をたたき台に11月1,2日の中央討論集会などで討議を重ね、12月2日の中央委員会で「闘争方針」として決定する予定。