交通基本法の制定に向けて方針を確認―交運労協定期総会

(2010年10月13日 調査・解析部)

[労使]

陸海空の交運関係18産別で構成する交運労協(議長・渡辺幸一私鉄総連委員長/約65万人)は7日、東京・田町で定期総会を開き、「交通基本法」の早期制定を求めることなどを盛り込んだ2011年活動方針を確認した。

昨年、民主党が政権交代を果たしてから、交運労協内では長年取り組んできた政策課題解決への機運が一気に高まっている。そのため、2011年の活動方針は政策要求実現に向けた取り組みに重点が置かれる内容となった。

国民の移動する権利を保障する「交通基本法」については、国土交通省の検討会で基本的考え方が示されていることから、来年度通常国会での成立に向け、取り組みを強化するよう促した。さらに交通基本法に基づき、陸・海・空の交通政策を総合的に推進するための財源として、「総合交通特別会計(仮称)」の設置を求めた。

高速道路無料化や料金割引施策に関しては、「従来からの交通ネットワークのバランスを崩す恐れがある」と危惧を表明。交通基本法の精神を踏まえ、鉄道、航空、自動車などが適切に役割分担する「総合交通体系」を確立し、公共交通の維持・発展に配慮するよう訴えた。

タクシー業界では97年以降、段階的に規制緩和が行われ、新規参入が原則自由化された結果、低額運賃競争が激化し、09年にはタクシー運転手の年収が300万円台を割り込むなど労働条件の悪化を招いている。

こうした状況について、交運労協は「行き過ぎた規制緩和」であるとし、見直しを要求。併せて、新規事業者の参入要件審査を強化するとともに、参入後も参入要件を厳守しているかチェックする体制を整備するよう求めた。

規制緩和に伴う競争の激化や経営環境の悪化に伴い、企業の安全に対する投資がおろそかにされているという危惧から、安全の確保は09年に引き続き、最優先課題とされた。労働組合の立場から、現場の実態を把握したうえで、経営者に対して提言を行っていくことが盛り込まれた。

質疑では、総合交通特別会計の設立について、「(交通基本法の成立が現実味を帯びる中、)さらに踏み込んだ議論が必要ではないか。各構成組織が総合交通体系の全体像の中で、どういった特別会計が必要かについて具体的に話し合わなければ、理想論で終わってしまう恐れがある。今後は有識者を招いた検討委員会を開催するなどして具体案を詰めて欲しい」との要望が出された。