電力の安定供給、環境への適合、経済成長の同時達成を/電力総連定時大会

(2010年9月15日 調査・解析部)

[労使]

電力総連(種岡成一会長、21万6,000人)は8日、神戸市で定時大会を開き、「2010年度運動方針」を確認した。種岡会長は (1) エネルギー安全保障や電力の安定供給の確保 (2) 地球温暖化問題の解決 (3) 持続可能な経済成長――の「3Eの同時達成をめざす」考えを強調した。

電力総連第30回定時大会:労使/メールマガジン労働情報第658号(2010/9/15)/JILPT

あいさつに立った種岡会長は、エネルギー・環境政策活動をめぐる情勢について「昨年末のCOP15への対応、地球温暖化対策基本法案閣議決定に至る取り組み、新たなエネルギー基本計画とりまとめへの参画、排出量取引制度や再生可能エネルギー全量買取制度の検討への参画など、めまぐるしく変化し、多岐に渡る政策課題に取り組んだ」と説明。「これからの一年間が恐らくわが国のエネルギー・環境政策にとって大きな正念場になるなかで、私たちもさまざまな判断・決断を迫られる局面もでてくる」などとしたうえで、「一方でエネルギー資源に恵まれないわが国として、『エネルギー安全保障や電力の安定供給の確保』と『地球温暖化問題の解決』そして『持続可能な経済成長』という『3Eの同時達成』をめざす」といった基本的な考え方を今後も堅持していく方針を強調した。

国民全体の議論を通じた合意形成と国際的な公平性や実効性への配慮を

また、国の政策に対しては、「温暖化対策の推進においては、何らかの形で国民への負担増が避けられないことは明らか。雇用や産業の国際競争力にどのような影響を与えるのか、国民にどのような協力を求めるのか、温暖化対策の『光と影』に関する情報を広く開示したうえで、国民全体の理解・納得のうえで進めていくことが、政治が果たすべき大きな責任・役割」「温暖化対策を巡る国際交渉は、国益と国益のぶつかり合い、エネルギー争奪や新しいビジネスの競争の側面を有することを忘れてはならない」などの見解を表明。国民全体での議論を通じた合意形成と、国際的な公平性や実効性への十分な配慮の必要性を訴えた。

さらに、排出量取引制度や再生可能エネルギー全量買取制度、温暖化対策税のための税などの各論にも言及。「各政策が各省庁バラバラに検討されることなく、何のための施策・対策なのかをしっかりと見極め、各政策手法を『パッケージ』としてとらえ、費用対効果や時間軸も踏まえた総合的かつ冷静、慎重な対応を求めたい」と述べた。

必要な原子力についての国の政策への位置づけ

また、先ごろ閣議決定された「エネルギー基本計画」や「新成長戦略」に掲げられる政策目標の具現化についても、「『我が国のエネルギー安全保障の確保を基軸に据えつつ、優れたエネルギー・環境技術を活かした成長をめざす』方向性には賛同するが、その実現には相当のハードルの高さを感じるとともに、制度的・社会的に克服すべき課題が数多くある」との見方を示した。そのうえで、「現実を直視し、関係者の意見も踏まえながら十分な検討のうえで着実に進めていくことが必要だ」と主張した。とりわけ、原子力発電に関しては「原子力をしっかりと国の政策のなかに位置づけたうえで、その推進のためにどのような課題があり、その克服のために国は何を成すべきなのか、これまで以上に踏み込んだ取り組みが求められる」との考えを示している。

エネルギー・環境政策で連合運動の先導役を

一方、論議では、エネルギー・環境政策の取り組みに関して、「これまで組織をあげて原子力発電の必要性や実効ある地球温暖化対策を、国会議員や行政、連合や各産別に訴えてきた。連合が原子力推進を明記したエネルギー基本方針を策定したことは、電力総連の長年に渡る努力が結実したもの」(関西電力総連)、「情報技術を活用したインフラの整備と実用化等には多くの課題・条件が山積しており、電力関連産業で働く者の労働環境に与える影響が懸念される。引き続き、雇用と労働条件の確保を前提に電力総連の考え方を内外に示して欲しい」(中国電力総連)、「エネルギー政策について連合としての政策提言がまとめられたが、個々の組織レベルも含めた全体の取り組みにはまだ至っていないのではないか。電力総連が一体感のある連合運動となるよう先導して欲しい」(東北電力総連)などの意見が出された。