雇用と社会保障による『福祉国家』をつくる/全労連が定期大会で運動方針を決定

(2010年7月28日 調査・解析部)

[労使]

全労連(大黒作治議長、88万2,800人)は7月21日から3日間、東京都内で第25回定期大会を開き、「雇用と社会保障による『福祉国家』をつくる」などとする向こう2年間の運動方針を決めた。方針の重点課題は、 (1)雇用の安定と質の向上をめざす取り組み (2)生計費原則の賃金・所得をめざす取り組み (3)社会保障の拡充、消費税反対等の国民課題の取り組み (4)「組織拡大5カ年計画」最終年次の取り組み――など。役員選挙では、大黒議長、小田川義和事務局長を再任した。

「『貧困と格差』をなくすため、ディーント・ワークを追求」(大黒議長)

あいさつした大黒議長は、民主党の消費税論議に触れて、「『法人税減税』と『消費税増税』では、地域や福祉に充てる財源はなく、結局、『構造改革型政治』で財政支出の削減を行う財界が求める新自由主義的『構造改革』への回帰となる」と批判。さらに、「消費税が導入されて以来、大企業の減税の穴埋めに消費税が使われ、ほとんど同じ額が大企業の内部留保としてため込まれた」と指摘した。そのうえで、「財界の『国際競争力強化』の呪縛に縛られて、賃金は削減され、非正規雇用は拡大し、劣化した雇用で成長力は止まったまま。1067万人が年収200万円以下の『ワーキングプア』で生活苦にあえいでいる。貧困問題は、最大の社会問題であり、雇用と社会保障を拡充させ、ナショナル・ミニマムの確立の取り組みが重要な課題だ。『貧困と格差』をなくすために、すべての職場、産別、地域で『ディーセント・ワーク』(ILOが提唱する「人間らしい働きがいのある仕事」)を追求する」と訴えた。

毎月第3金曜を「ディーセント・ワーク・デー」に設定

方針は、「雇用と社会保障による『福祉国家』」をつくるために、雇用の安定と質の向上や生計費原則の賃金確保とともに、セーフティネットの整備・拡充、医療福祉・年金・教育・住宅の生活基盤整備――など、前回の第24回大会で提起した「安定した良質な雇用を求める運動」を本格化すると強調している。

重点課題となる、雇用の安定と質の向上については、具体的な取り組みとして、「ディーセント・ワーク・デー」を設けて、相談活動や集会・学習会、組織オルグを全国的に展開することを提起。2010年秋季・年末闘争方針では、9月17日から毎月第3金曜日を「ディーセント・ワーク・デー」に設定し、労働者派遣法の抜本改正や有期雇用の規制強化などを求める宣伝行動を各組織で展開するとしている。また、「ディーセント・ワーク実現署名(仮称)」も来年秋以降に具体化する考えだ。「派遣村」などの取り組みを教訓に、「何でも相談センター(仮称)」の設立も盛り込んでおり、失業者・生活困窮者支援のネットワークづくりを進める。

生計費原則の賃金・所得の確保については、加盟産別とともに、生計費調査を活用して、めざすべき賃金・所得政策を取りまとめるとしている。同時に、来年の通常国会での具体化を目指して「全国一律最低賃金、時給1,000円実現」の運動を強化する。

組織拡大については、雇用闘争の強化と一体的な取り組みとして、非正規、青年、中小未組織労働者に焦点を当てた組織化を進める。産別と地域組織の連携・協力を強め、全国的な組織化キャンペーンなど、「『目に見え、耳に聞こえる』取り組みを具体化する」としている。