JR不採用問題が24年目で和解成立/最高裁で和解条項を確認

(2010年6月30日 調査・解析部)

[労使]

1987年の国鉄分割民営化にあたってJRに採用されなかった国鉄労働組合(国労)などに所属する1,047人が救済を求めてきたJR不採用問題は、6月28日午前、最高裁で和解が成立した。内容は、国鉄の業務を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構が、組合員に総額およそ200億円を支払うことや、原告が係争中の訴訟を取り下げることなど。原告側は今後、JRなどへの採用を希望する組合員の雇用確保に力を入れる。

今後はJRなどへの雇用確保に注力

原告側の代理人によるとこの日、合意した和解条項は、(1)機構側が原告側に対し、4月の政府解決案にもとづき合意した約200億円を6月30日に支払う(対象は和解に応じた904世帯)。ただし、すでに関連訴訟で支払った約29億円は差し引く (2)原告側は東京地裁と同高裁で係争中の訴訟を同日、取り下げる (3)今後不採用問題では争わない―ことなど。この合意を踏まえて、国労など4者4団体(国労・全動労・鉄建公団訴訟原告団など被解雇者団体で構成)は、「過ぎ去った日々は、もはや取り戻すことはできないが、本日の和解解決を契機としながら、原告らはむろんのこと、家族や遺族もそれぞれの積年の思いに一つの大きな区切りをつけて、自らの道を進み、人生の再出発がはかられるものと固く信じてやまない」「今後積み残されている雇用確保が実現されるまで全力をあげて奮闘する決意である」などとする共同声明共同声明PDF(20100630メールマガジン/JILPT)を発表した。

和解合意後、4者4団体と各訴訟を担当した代理人が記者会見を行い、原告側からは「ひと段落ついてホッとしている。雇用問題が残されており、JR各社には人道的観点から、採用を要請したい」(鉄建公団訴訟・酒井直昭原告団団長)などの発言があり、JRへの就職希望者に対する雇用確保に全力で取り組むとの決意が表明された。4月の政府解決案では、「JR北海道、九州等の各社を中心に200名位の採用を要請する」「政府はJRへの雇用について努力する。ただし、JRによる採用を強制することはできないことから、人数等が希望どおり採用されることを保証できない」ことが盛り込まれており、政府への要請も強めていく考えだ。会見では、原告団のうちJRへの就職を183人が希望しており、JRの関連企業も含めると原告のうち約330人がJR関係への就職を希望しているとの報告があった。

国労採用差別事件訴訟の代理人・宮里邦雄弁護士は会見で、「雇用問題ではJR各社に、社会的、道義的責任を持ってほしい。真摯な検討を呼び掛けたい」と語った。