2010春季生活闘争の中間まとめを確認/連合中央委員会

(2010年6月4日 調査・解析部)

[労使]

連合(古賀伸明会長)は2日、都内で中央委員会を開き、「2010春季生活闘争の中間まとめ」を確認した。古賀会長は、「概ね賃金カーブ維持分を確保し、全体として賃金水準低下に一定の歯止めをかけた」などと評価。今後は、「賃金の絶対額水準を重視する取り組みをさらに推進していく」との考えを示した。

連合中央委員会/メールマガジン労働情報No631号(2010年6月4日発行)

賃金水準低下に一定の歯止めをかけた

古賀会長は冒頭のあいさつで、賃金水準の低落傾向に歯止めをかけることを目標に掲げた2010春闘について、「現時点の集計では、概ね賃金カーブ維持分を確保し、全体として賃金水準低下に一定の歯止めをかけた」と評価する一方で、「経営側の総額人件費抑制の姿勢を転換させるまでには至っていない」点を指摘し、今後の課題とした。

また、今春闘からは、職種別・業種別に大括りの賃率を形成することを目的に、各産別が情報開示した「代表銘柄」62種類の賃金データを示し、中小労組などへの波及効果を狙った。この取り組みについては、「今後、賃金の絶対額水準を重視する取り組みをさらに推進し、『賃金水準の社会化』に向けた取り組みを強化する足がかりとしなければならない」と強調。「まだ構成組織にバラツキはあるが、来年以降も対象を拡大するとともに、共闘連絡会議の機能を強化して波及効果を発揮していく」と述べ、賃金データの精度を高め、情報開示を進めていく考えを示した。

一方、「労働条件改善」と併せて車の両輪として取り組んだ「政策・制度要求」にも触れ、「通常国会の閉幕を待って総括する」としながらも、「前段では政府の緊急雇用対策に『労働者派遣法改正』『雇用保険法改正』『第2のセーフティネット継続』の3点を盛りこむことを求め、併せて、『最低賃金の引き上げ』や『公契約基本法の制定』など、労使の労働条件交渉では解決できない課題について、精力的に政府に働きかけてきた」と述べた。

深まる賃金カーブ維持の取り組みへの理解

連合が5月28日に公表した2010春闘の回答・妥結集計(5月27日時点)によると、組合員一人あたりの賃上げ額は、3,239組合の平均で4,879円(平均回答方式、定昇分込み)。昨年同時期より46円低い。

中間まとめは、今春闘で従来にない取り組みとして、 (1)賃金構造基本統計調査から算出した1歳・1年間差の社会的水準として5,000円の目安額を提起し、すべての労働者が同じ考え方で賃金水準低下阻止の運動を展開した (2)共闘連絡会議を中心に395の中核組合の賃金水準・賃金カーブ維持分を開示することで、定期昇給制度が未確立の組合も賃金カーブ維持分の確保をめざした――ことなどを列記。そのうえで、集計結果について「概ね賃金カーブを確保し、賃金水準を維持しており、不十分ではあるものの賃金デフレの流れを押し返す一定の効果があった」「賃金カーブ維持の取り組みの重要性について理解がすすみ、今後の取り組みへの足がかりになった」などと評価している。

社会的な波及力強化の観点からの検討を

ただし、中小企業の回答状況に関しては、「3月ヤマ場は、昨年と同一組合で同程度の回答を引き出していたものの、その次のゾーンにうまく波及せず、中小零細の引き出しが進むにつれ、集計結果もマイナスになった」と指摘。「3月末以降の中堅・中小の取り組みの工夫、交渉の舞台が地方に移ってからの地場での取り組み等について、社会的な波及力を強化する観点からの検討が必要になっている」などと総括している。

来春闘には、具体的な賃金指標の設置を

また、春闘の新たな取り組みとして設定・公表した「中核組合の賃金水準」と「62の代表銘柄」については、「賃金水準の社会化にとっての大きなステップになった」などと評価。「今後、第2ステップとしての代表銘柄の拡大を期待したい」と明記し、この取り組みを強化する考えだ。

多様な観点からの処遇改善の成果も

一方、今春闘で連合は、未組織労働者や職場に働く非正規労働者を含む「すべての労働者の処遇改善」を要求に掲げた。実際、「非正規労働者に関する要求もしくは取り組みを行った」のは、5月27日現在で3,145組合に上り、前年同時期(2,461組合)より684組合増。パート共闘の集計による時給の改善状況も5月9日時点で約12円増となっている。

中間まとめは、「時給の改善に加え、最低賃金協定の拡大・水準引き上げ、労災付加給付額の適用拡大・引き上げ、各種休暇制度の導入、正社員化、定昇や退職金制度の導入など多様な観点からの処遇改善が進んでいる」としている。

このほか、未組織労働者に対しても、 (1)労組に加入しない労働者が自らの労働条件をチェックするためのサポートとして実施した「ワークルールチェッカー」が2カ月強で約20万件のアクセスを得た (2)派遣事業者団体である日本人材派遣協会、日本生産技能労務協会と数回の協議を重ね、派遣労働者の処遇改善などに向けた共同宣言をとりまとめた――ことなどの成果についても言及している。

勤労者生活全体に責任を持つ取り組みを

来春闘に向けた課題としては、グローバル化の進展などによる景気変動や、非正規労働者の急増、少子・高齢化の進行などの環境のなかで、「労働条件闘争と政策・制度要求の取り組みを一対とした勤労者生活全体に責任を持った取り組みの推進が一層必要になってくる」と指摘している。具体的には、賃上げや労働時間短縮、雇用とセーフティネットのあり方、社会保障と可処分所得の増大に向けた政策・制度との連携などの課題を提示。それらを踏まえたうえで、「2011闘争に向けて、これら様々な課題を具体的な取り組みにつなげるべく検討を進めていく」としている。

とりわけ、賃金関係では、 (1)絶対水準の引き上げを重視する取り組みへ転換させる (2)賃金水準を維持するため、賃金制度を持たない中小労組に対し、実態把握や事例について連合としてまとめる (3)一時金の取り組みの位置づけを明確にする (4)企業内最低賃金協定(締結拡大と水準の引き上げ)の取り組みを強化する――ことなどをあげている。

組織拡大は直近半年間で約4万5,500人

中央委員会では、昨年10月の定期大会で確認した「組合づくり・アクションプラン21(2010~2011)」の第1期(09年10月~10年3月)集計を報告した。

それによると、昨年10月から今年3月までの半年間の組織拡大実績は4万5,476人。連合が掲げた目標(09年10月~11年9月の2年間で52万人+α)に対する現時点での到達率は、8.4%にとどまった。

構成組織の取り組み状況は、新規組織化で19構成組織103組合(1万3,010人)、未加盟組織の加盟10構成組織44組合(6,301人)、企業再編に伴う拡大10構成組織4,251人、組合員範囲の見直しによる拡大7構成組織8,997人など。これらのうち、重点ターゲットであるパートや派遣、契約労働者等の組織化は12構成組織1万4,208人で、総拡大実績の32.1%を占めた。なお、地方連合会に設置されている地域ユニオンの拡大は、49組合1,160人が報告されている。

このほか、中央委員会では、ディーセントワークとワーク・ライフ・バランス社会の実現や、社会的セーフティネット機能の強化などを中心課題に据えた「2011年度連合の重点政策」などを確認した。

中央委終了後には、総決起集会を開催

中央委員会終了後には、「政策制度実現・参院選勝利に向けた6.2連合総決起集会」を開催。「希望と安心の社会を実現するためにも、連合は『いまが踏ん張りどころ、見えない政治に戻さない』を合い言葉に、組織内候補はもとより推薦候補全員の当選を目指して、職場で地域で全力を挙げて取り組む」などとする集会アピールを採択した。連合は、組織内候補11人(民主党)の推せんを決めている。決起集会の後には、「日米地位協定」の抜本改定を求めるシンポジウムも開かれた。