賃金制度の整備が今後の課題/JAM中央委

(2010年6月2日 調査・解析部)

[労使]

中小の機械金属労組を多く組織するJAM(河野和治会長、約39万人)は5月28日、東京都内で第17回中央委員会を開き、今春の賃上げ闘争の総括や7月の参議院選挙に向けた組織固めなどを確認した。5月19日現在で、4,096円(単純平均)の妥結実績となった賃上げ交渉について、「多くの単組が賃金構造維持分を確保し、賃金水準の低下に一定の歯止めをかけた」と評価する一方、「賃金実態の把握が出来ていない100人未満規模を中心に、賃上げ結果の差が広がっている」として、賃金実態の把握や制度整備を今後の課題とした。

あいさつした河野会長は、「賃金低下の歯止めで臨んだ今春闘で、連合は代表銘柄賃金の明示をはじめとする賃金の情報開示を進めるなど、大きな転換点となった。今後、ますます賃金実態の把握や賃金制度の確立は重要になる」と述べて、取り組み強化を訴えた。

5月19日現在の賃上げ集計によると、回答を引き出した1,016組合のうち964組合が妥結しており、妥結額(単純平均)は4,096円と、ほぼ昨年と同水準で、昨年同一組合実績を76円上回っている。回答を引き出した組合(賃金構造分が明確な単組)のうち、ベースアップを獲得したのは110組合(平均970円)で、賃金構造維持分を確保したのが393組合。その一方で、118組合で構造維持分が確保できなかった。JAM傘下の組合は、エコカー減税などで比較的堅調な自動車関連から橋梁など落ち込みの続く公共事業関連まで幅の広い産業分野をカバーしており、それぞれの経営環境の違いからバラツキの大きい結果となっている。さらに、規模による格差が広がっており、100人未満規模の苦戦が目立つ。

遅れる100人未満での賃金実態の把握と制度整備

春闘総括では、「賃金実態の把握に基づいて要求した単組は、賃金構造維持分を確保して全体の相場を下支え出来た」と評価。その一方で、「賃金実態の把握ができているところと、できていないところの賃上げ結果の差が広がっており、昨年実績を確保できなかったところが100人未満で顕著となった」と指摘して、100人未満規模で、賃金実態の把握や賃金制度の確立が遅れていることが、格差拡大の原因だと分析。今後の課題として、来春闘に向け、 (1)全単組の賃金制度の有無や整備状況を把握する (2)それぞれの単組が賃金実態の分析に基づいた個別賃金での是正要求に取り組む――ことなどを掲げている。

改選となる組織内候補を抱える参議院選挙については、「今の政権だからこそ、私たちの声が直接政策に反映できるようになった。この流れを止めてはならない」(河野会長)などとして、取り組み強化を確認した。