自動車メーカーはそろって賃金カーブ維持/一時金ではバラつきも

(2010年3月19日 調査・解析部)

[労使]

自動車総連傘下のメーカー組合の大半は、5年ぶりにベアなどの賃金改善要求を見送った。しかし、交渉に入ると経営側からは定昇分も実施できないとの発言が出るなど、交渉は難航。最終盤で組合は「賃金カーブ維持分の原資100%確保」と腹固めした。その結果、17日に経営側からは「賃金カーブ維持」との回答が示され、決着した。一方、年間一時金については、労組が「水準回復」と「満額獲得」を主張したものの、経済危機以降の業績回復の差を反映して、バラつきが目立つ結果となった。

車体、販売中心に529組合で賃金改善の要求

自動車総連傘下のメーカー労働組合は、今季交渉で大半の組合が、賃金カーブ維持分の確保を求めた。また、一時金については一部を除き、年間5カ月以上で足並みをそろえ、要求満額または昨年実績以上の獲得を目指した。

交渉の中で経営側は、リーマンショック以降、一時帰休などの諸施策を受け入れてきた組合員の強力には理解を示しながらも、先行きの不透明さや競争激化を背景に、「賃金カーブ維持は約束されたものではない」「企業の収益や今後の見通しから、かけ離れた一時金要求である」などと主張。交渉は最終盤まで難航した。その結果、17日の回答日には、カーブ維持プラスアルファの要求を盛り込んだダイハツ(1,500円)や富士重工(1,000円)の組合に対しても「ゼロ回答」が示され、すべてのメーカーで、「賃金制度・体系維持」「定期昇給分」で収束した。

各社のカーブ維持の内容をみると、トヨタは前年同額の7,100円、日産は定昇と賃金改善分を分けて要求していないが、平均賃金改定額として昨年より1,000円増の7,000円を要求し、6,200円の回答を受けた。昨年実績を200円上回っているが、この原資は20代を中心に配分する考えだ。本田技研、三菱自工、マツダ、ヤマハ発動機は、定昇相当分等を労使で確認しているため、今回、交渉事項になっていない。

昨年は自動車総連傘下(約1,100組合)のうち約220組合で、賃金カーブ割れでの決着となった。こうした実態を踏まえつつ、規模間・業種の格差是正の観点から、今年は車体や販売を中心に現段階で529組合が賃金改善要求を盛り込んでいる。このため、本部は交渉がこれから本格化するこれらの中小労組に対するサポート態勢を強化させる。

トヨタ、ダイハツ、ヤマハで年間一時金が前年下回る

年間一時金については、本田が組合要求通りの満額回答で前年比0.7カ月増の5.7カ月、日産が0.8カ月増の5.0カ月となり5カ月分を確保。二期連続の営業赤字を見込むトヨタも、前年実績を4万円下回る5.0カ月プラス6万円を回答した。スズキ、富士重工、マツダの組合なども5カ月台乗せを目指したが、届かなかった。一方、ダイハツは前年実績マイナス0.2カ月の4.8カ月、また、ヤマハは前年の4.8カ月から3.7カ月プラス4万円と大幅に下げ、4カ月台を割り込むなど、業績回復の差が回答に反映された格好だ。

また、今季交渉で自動車総連は、企業内最低賃金の協定の締結や水準向上に取り組んだほか、派遣労働者などの非正規労働者を受け入れる際に、労働条件について協議する場所の設定などを求めた。その結果については、5月をめどに取りまとめる予定だ。

この結果について西原浩一郎・自動車総連会長は「メーカー労組すべてが定昇分を確保したことは、生活防衛やデフレの加速を防ぐことができ、労組としての責任を果たすことができた。一時金は昨年大きく落ち込んだので、今年は組合員の努力に報い今後へつなげるものとして交渉し、ほぼ納得できる回答が得られた。企業内最賃については昨年まで580組合が協定を締結し、今年は販売を中心に240組合が取り組んでいる。製造現場では、雇用責任が明確な直接雇用の期間工を中心にすることを確認するなど、非正規雇用については、労使の関与を前進させる確かな一歩が踏みだせた」などの見解を示した。