日教組が臨時大会で当面の方針を決定/北教組問題で委員長が見解

(2010年3月17日 調査・解析部)

[労使]

 

日教組(中村譲委員長、28.5万人)は15日、都内で臨時大会を開催し、 (1)教育政策 (2)教育行財政政策 (3)労働政策 (4)福祉・社会保障政策 (5)男女平等政策 (6)組織政策――からなる当面の取り組み方針を決定した。北海道教職員組合(北教組)の政治資金規正法違反容疑で北教組執行部3人が、3月1日に逮捕されたことについて中村委員長は、「大変残念。改めて法令遵守の徹底を図っていく必要がある」と述べた。

「改めて法令遵守の徹底を」(中村委員長)

北教組の政治資金をめぐる問題では、昨年の衆議院選挙で北海道5区小林千代美陣営に違法な政治資金を提供したとして、政治資金規正法違反の容疑に問われ、1日に委員長代理、書記長、会計委員の執行部3人が逮捕された。中村委員長はあいさつで、この問題に触れ、「大変残念であり、事実関係の解明は今後の捜査に委ねるほかないと考えているが、日教組として公平・公正な選挙による民主主義の確立に向け、改めて法令遵守の徹底を図っていく必要があると考えている」の考えを示した。

その一方、「マスコミ報道や国会論争を見ていると明らかに論議の混乱がある。今回の事件は、あくまで政治資金規正法との関係における労働組合の問題であり、教育の政治的中立性などとはまったく別の問題だ」と主張。教職員組合の活動の一環として、政治活動と法の許容する選挙活動が含まれていることは、ILО第87号条約(結社の自由)を持ち出すまでもなく当然としたうえで、「公務員の労働条件の向上が、法制度改定を通じて行われる以上、政治活動は必然であり、その要求実現に向け候補者を推薦・支持することは、正当な組合活動で何ら法的制約を受けるものではない」との見解を示し、今回の事件と労組の政治活動の是非は性格が異なる問題との認識を示した。さらに、「教職員組合の政治活動が許されないかごとき議論はまったくの誤りであり、また教育公務員特例法を改悪し、教育公務員の政治活動をすべて刑罰を持って禁止すべきかのような議論は、ユネスコ・教員の地位の関する勧告等、今日の国際常識並びに条約を無視した、時代錯誤と言わざるを得ない」と国会などでの議論を非難した。

公務員制度改革見据え、組織拡大の強化も

中村委員長はまた、当面の課題として公務員制度改革をあげ、「使用者機関のあり方、団結権・団体交渉権、協約締結権・争議権等の具体的な方向性、実施時期が、2~3年後にはシステムとして、自律的労使関係の下で行われることを考えると、体制確立の準備に本格的に取り組まなければならない。そのために今、日教組がやるべきことは組織の拡大だ。総声掛け運動の方針化から3年。この間、青年層の拡大に注力してきたが、日教組運動を継承する同層に引き続き焦点を当てつつ、何としても組織拡大を成し遂げなければならない。交渉ノウハウと経験の蓄積から、職場におけるリーダーシップ発揮に向け、運動の強化を図ろう」などと強調した。

日教組の調査によると、09年度の新規加入者数は約1万500人で、08年度より約1,100人増加したものの、組合員総数は08年度比で4,600人程度落ち込んでいる。少子化や学校統廃合による教職員定数の自然減だけでなく、退職組合員数に新規加入者数が追い付いていない状況となっている。

大会では、当面の取り組み方針のうち、労働政策に関連して、 (1)文科省08年度病気休職者数等調査結果(12月)で、教職員の病気休職が前年度比509人増の8,578人(うち精神疾患によるものが同405人増5,400人)等となっていることを受け、時短・多忙化解消の具体策を求め、交渉を強化すること (2)超勤時間に見合った給与保障と、義務教育等教員特別手当の回復、労働意欲を高めるための給与改善に取り組むこと――なども決定した。

役員改選があり、中村譲委員長と岡本泰良書記長が再任された。