賃金カーブ維持、一時金は昨年実績以上目指す/自動車メーカー労使交渉

(2010年2月19日 調査・解析部)

[労使]

 

トヨタ自動車など大手自動車メーカーの労働組合は17日、賃金・一時金を柱とする今季交渉の要求書を会社側に提出し、2010春闘の労使交渉が始まった。大半の組合は、賃金カーブ維持分の確保を求める内容だが、ダイハツや富士重工の組合はカーブ維持プラスアルファの要求を盛り込んでいる。一方、一時金については一部を除き、上部団体の自動車総連の方針を踏まえ、年間5カ月以上で足並みをそろえており、昨年実績以上の獲得を目指す。大手メーカーの集中回答日は3月17日。

一時金は5カ月基準、企業内最賃協定の締結も重視

自動車総連の今季闘争方針では、平均賃金引上げについて、「すべての組合は、現状の賃金水準を維持するため、賃金カーブ維持分を確保する。賃金改善分については、生産性向上などの会社施策に懸命に協力する組合員の努力・頑張り、賃金実態を踏まえた格差・体系の是正等を重視し、明確な額で要求する」としている。また、一時金については「年間5カ月を基準とし、最低でも昨年獲得実績以上」を目指している。さらに、今季交渉で連合が柱に据える非正規を含む「すべての労働者の処遇改善」に向けた取り組みとしては、企業内最低賃金協定の締結を重視。未締結の組合(総連全体の締結率は52%)の協定化と協定している企業もその水準引き上げを求める。要求基準は18歳最低賃金で15万4,000円以上。なお、09春闘では消費者物価上昇分等を踏まえ、大半のメーカー労組で4,000円の賃金改善(ベア)を求めたが、ベアゼロで収束している。

大手メーカー組合の要求提出を踏まえて記者会見した自動車総連の西原浩一郎会長は、「賃金カーブ維持分の確保は至上命題であり、労組として一歩も譲れない最低限の要求である」と強調。年間一時金の5カ月基準を堅持したことについては「厳しい環境下でも5カ月支給できる企業にしたいとの決意のあらわれ。昨年水準が大幅に低下したが、反転回復に向けて取り組んでいきたい」との意欲を示した。

ダイハツ、富士重工ではカーブ・体系維持プラスアルファ要求

トヨタ労組は「賃金制度維持分」として7,100円の完全実施、年間一時金(ボーナス)は昨年獲得実績の5カ月(基準内賃金)プラス10万円を要求した。メーカー労組で賃金カーブ(体系)維持分以外の要求をするのはダイハツ労組(賃金体系維持分プラス体系整備分1,500円)と富士重工労組(賃金表改定<原資1,000円相当>)。日産労組は05年から、成果主義をベースにした賃金体系に合わせ、一人ひとりの賃上げではなく、従業員全体の総額原資を確保・アップする要求方式に転換しており、定昇と賃金改善分を分けて要求しないが、今年は平均賃金改定額として昨年より1,000円増の7,000円(前年要求は平均賃金改定原資6,000円プラス賃金制度改善分4,000円)と一時金年間5カ月(前年回答4.2カ月)を求めた。また、UDトラックス(旧日産ディーゼル工業)も賃金改善分として1,000円を要求する。

自動車総連の12登録組合のうちトヨタ、日産以外の一時金要求については、本田技研労組が5.0カ月プラス0.7カ月(前年回答5.0カ月)、ダイハツ労組5.0カ月プラス0.5カ月(同5.0カ月プラスアルファ)、スズキ労組5.2カ月(同4.75カ月)。また、マツダ、富士重工、いすゞ、日野、ヤマハ発動機のメーカー労組と曙ブレーキはそれぞれ年間5.0カ月要求で足並みをそろえた。三菱自工労組は年間3.6カ月(前年回答2.4カ月)を要求した。