看護職員の確保に向け必要な措置を/自治労が院内学習集会で提言

(2010年2月19日 調査・解析部)

[労使]

自治労は18日、参議院議員会館で開いた院内学習集会で、労働科学研究所と連携して実施した「看護職員の労働と健康に関する緊急実態調査」結果を公表し、看護職員の過酷な時間外労働の削減や、働きやすい夜間交代勤務モデルの構築等を通じた、看護職員の確保方策の必要性について訴えた。

残業の申告時間は約6割弱に

自治労の通称・時間外労働時間緊急実態調査は、08年10月に東京都済生中央病院と国立循環器病センターの看護職員の過労死が、それぞれ労働災害、公務災害として認定されたことを受け、自治労(看護職組合員13.6万人)と、日赤労組等でつくるヘルスケア労協の傘下病院での看護職員の労働実態(時間外労働と夜勤・交代制の実情)を調査したもの。調査票1万枚を配布し、回収した有効回答9,756枚を集計した。

それによると、08年10月の一カ月間における、看護職員の「実際の時間外労働時間」「申告した時間外労働時間」「手当が支払われた労働時間」を聞いたところ、それぞれ自治労・ヘルスケア労協の平均値で約16時間、9時間、8~9時間、全国一般では6時間、2.5時間、2.5時間などとなり、実際の時間外労働時間の6割弱しか申告されていなかった。

その理由としては、「院内研修・看護研究等時間外労働として扱われていない業務がある」(自治労で64%、全国一般で約49%、ヘルスケア労協で約59%)、「申告できる時間数に上限が設けられている」(同約12%、約16%、8%)、「申告時間を上司が査定してカットすることがある」(同約9%、約11%、約7%)――などがあがり、結果として残り約4割が、「業務開始時刻前の仕事(前残業)」「勤務時間外の院内研修」「持ち帰り仕事」――のいわゆる'サービス残業'になっている実態が浮かび上がった。

日勤―深夜の連続勤務が月平均4~5回

一方、今回調査の対象者の多くは、夜勤・交代制勤務に従事しており、二交代・三交代、当直制だけをとっても全体の約80%を占める。二交代制・当直制については、「仮眠が取れる」ことが前提になるものの、「取れないことがたまにあった」「取れないことが多かった」とする回答が30~40%あった。16時間の連続勤務や、前後の時間外労働発生で、ケースによっては20時間以上眠ることなく連続勤務するような職場の実態が浮き彫りになっている。

また、とくに大きな負担を強いられる8:30~17:15までの日勤後、0:30から再び深夜勤務に入る「日勤―深夜」といったシフト・パターンについては、自治労・ヘルスケア労協とも約半数が「ある」としており、その回数は月平均4~5回となっている。こうした組み合わせでは、勤務間隔が最短では4~5時間となるなど、事実上連続勤務となってしまうことも充分あり得るという。

こうした実情を反映し、約1割の看護師が「仕事を続けたいとは思っていない」と離職の意思を示しており、約3割は「続けたくても続けられないと思う」と消極的な継続断念の意向を示している。そのため、看護職場の改善にもっとも重要なこととして、看護師の大多数が「人員の増加」をあげ、次いで若い世代を中心に「給与の改善」を求めている。

自治労・労働科学研究所は、こうした結果を受け、 (1)夜勤・交代制勤務における休息(勤務間隔)時間の確保 (2)働きやすい夜勤・交代制勤務のモデルプラン(32時間制や36時間制のもとにおけるモデル的な勤務編成)の策定 (3)24時間利用可能な院内保育所の設置――等を通じた、「看護職員の定着率向上と潜在看護師の掘り起こし」が重要とし、看護職員の確保方策の必要性を訴えている。