現行の賃金水準の維持・確保が至上命題/電機連合の要求方針

(2010年2月3日 調査・解析部)

[労使]

電機メーカーなどの労組でつくる電機連合(中村正武委員長、64万人)は 1月28,29の両日、横浜市で中央委員会を開き、「2010総合労働条件改善闘争」の要求方針を決めた。今春闘では、ベアや賃金改善分の要求はせず、賃金体系の維持を求める。中村委員長は「現行の賃金水準の維持・確保を至上命題とする」と強調した。

定期昇給や昇格昇給制度の完全実施を求める

電機連合中央委員会

電機連合は、今春闘での賃金改定について、「取り巻く経済・雇用環境が厳しい情勢のなかで、賃金水準の改善(引き上げ)要求を行う状況にはない」と判断。その一方で、「生活の安定と組合員のモラールの維持・向上の観点から、賃金体系の維持をはかる」とした。ただし、賃金水準の改善が可能な組合については、「体系維持をはかったうえで、改善に取り組む」としている。

中村委員長はあいさつで、「現行の賃金水準の維持・確保を至上命題として取り組む。これは、組合員のモチベーションと働きがいを維持するための労働組合としての社会的な役割と責任を果たすうえでの最低の要求だ」などと指摘。「賃金水準の維持・確保はもちろんのこと、定期昇給や昇格昇給制度が明確に確立されている組合は、その制度運営の完全実施を求める」と強調した。09春闘では、電機連合はいわゆるホワイトカラー層の賃金水準を4,500円以上引き上げることを統一要求に掲げたが、大手13組合が受けた回答は、いずれも「賃金体系維持」にとどまった。それに加え、電機大手の一部などで定期昇給の凍結・先送りが実施された経緯がある。そういった経営側の動きを、今春闘では認めない姿勢を強く示した格好だ。

ちなみに、電機連合は「賃金体系の維持」について、「現行賃金制度・体刑に基づく制度的な昇給の実施によって確保されるもの」と説明している。「制度的な昇給」とは、定期昇給(相当)分や昇進・昇格昇給などを指しており、賃金体系を維持する要素の一つとして位置づけている。

時間外割増率の引き上げや、非正規労働者の処遇改善も

また、長時間労働の解消やワーク・ライフ・バランスの実現に向けた時間外手当の割増率の引き上げに関しては、 (1)月40時間までは平日30%以上、休日50%以上 (2)月40時間を超える部分からは平日、休日ともに50%以上――とすることなどを要求。年間一時金は、平均で年間5カ月分を中心に要求し、「産別ミニマム基準」は年間4カ月とする。

このほか、産業別最低賃金の1,000円の引き上げも要求。非正規労働者の処遇改善では、 (1)パートタイム労働者など直接雇用の非正規労働者の賃金については、産業別最低賃金(18歳見合い)を保障する (2)直接雇用の非正規労働者の賃金が産業別最低賃金を超えている場合は、均等・均衡処遇の実現の観点で改善をはかる (3)派遣・請負など間接雇用の非正規労働者の受け入れにあたっては、法定産業別最低賃金の適用を確認する――などに取り組む。

なお、今年は総合的な労働条件改定の年でもあることから、労働災害・通勤途上災害補償に対する企業付加の引き上げや、改正育児介護休業法への対応、派遣・請負労働者の受け入れ時の労使協議の徹底などの労働協約に関連する課題の改善も求める。

要求に理解を示しつつ、産別指導の強化を要請

こうした要求に対し、討論では、三菱電機労連が「今交渉の特徴は、体系維持をはじめ、産別最賃の引き上げ、時間外割増率、労災・通災の企業付加分増など社会性・相場制が強いこと。要求の前進には産別労使交渉の役割が極めて重要だ」などと発言。日立グループ労連も、「賃金体系の維持をはかることは内需の下支えなどから絶対譲れない一線。一時金はデフレからの脱却、消費拡大につなげるためにも回復が求められている。時間外割増率の改善や労働協約改定にも取り組むなど要求は多岐に渡る。電機連合内の連携・強化が必要になる」などと述べ、要求の実現に向けた産別の指導強化を求めた。

また、パナソニックグループ労連は、産業政策のあり方について、「政権交代により産業界と政治との距離が少し遠くなっているなか、産別の存在意義はますます高まってきている。ニュートラルな立場は堅持しつつ、政権との政策論議を強化しなければならない」と指摘した。

今後、各労組は2月18日までに会社側に要求書を提出。3月17日の金属労協の集中回答日に向けて交渉を展開する。