賃金体系維持分の確保と到達水準を目安に/UIゼンセン同盟の闘争方針

(2010年1月29日 調査・解析部)

[労使]

民間最大産別のUIゼンセン同盟(107万人)は27日、愛知県・名古屋市で中央委員会を開き、2010統一賃金闘争の要求基準として、 (1)賃金体系維持分の確保を前提に、高卒・大卒30歳、35歳等年齢ポイントの基本賃金額到達水準を設定し、満たない場合は「格差是正分」を要求する (2)賃金制度が未確立の場合は、「賃金制度の整備」と「賃金体系維持分の社会的水準に格差是正を含めて一人平均5,000円以上」――などを柱とする方針を決定した。

「定昇凍結、廃止の逆提案にはストライキで」(落合会長)

あいさつした落合清四会長は、今次統一賃闘の考え方について、「本来なら内需拡大や生活向上のために、デフレスパイラルをストップさせるためにも、連合を中心に統一的にベア要求すべきだろうが、いずれの産業、企業も予想以上に厳しい環境に置かれている実態を考慮し、断念するに至った」と、全体的な背景を説明。そのうえで、「UIゼンセン同盟としても、賃金カーブ及び定昇制度が確立している組合に対しては、統一ベア要求を提示することは断念し、賃金カーブ維持を前提に標準労働者30歳、35歳の賃金水準を明示し、そこに到達するための格差是正分を要求していく。一方、大多数を占める中小組合では、定昇制度が確立していないため、1歳1年間ピッチを4,500円とし、格差是正分を含め5,000円以上を要求する。定昇制度のない組合は、その確立を求めて労使交渉することは労組本来の義務であることを強く認識し、今次交渉のテーブルにのせることを切に望む」と訴えた。

落合会長はまた、「統一ベア要求を断念したが、あえて統一闘争体制を編成して取り組みたい。ベアを共有できなくても、格差是正を含む何らかの要求を組み立てることで、ともに闘うための統一性を保持していくことが重要だ」と述べ、統一闘争の重要さを強調。さらに、闘争の進め方について、「経団連の経労委報告が示唆している定昇の凍結、廃止等の逆提案が仮にもあったなら、労組の存在意義を賭け、ストライキを背景に闘っていく必要がある」との考えを示した。

部会ごとに要求方針と到達水準を設定

中央委員会では、この要求基準と水準目安を踏まえ、繊維関連、化学、流通、フード・サービス、生活・総合産業、地方の6つの部会別に、具体的な要求方針を示している。スーパーなどの小売業でつくる流通部会では、30歳大卒・勤続8年の到達水準として26万500円、同35歳・13年で30万6,500円と設定。そのうえで、到達水準を上回る組合の要求は、賃金体系維持分(不明確な場合は4,500円程度を目安)を確保するとした。一方、到達水準を下回る場合は、 (1)制度により賃金体系が1.6%以上または4,500円以上維持されている場合は、賃金体系維持分を確保したうえで、格差是正分500円以上 (2)賃金体系維持が不明確な場合は、賃金体系維持分の社会的水準に格差是正分を含め、一人平均5,000円以上――をそれぞれ要求する。

UIゼンセン同盟の統一賃闘には約2,000組合が参加するが、350組合程度はすでにこうした到達水準を上回っていると推測される。しかし、UIゼンセン同盟は、妥結権を中央本部に集約する統一賃闘方式をとっているため、到達水準を上回った組合でも、賃金体系維持原資については制度的な定昇原資だけではなく昇格・昇級等を含めた分を要求し、労使確認するよう求めている。交渉日程は先行組(Aグループ)が、金属労協の集中回答日と同じ3月17日とし、Bグループが24日、Cグループが3月末日までの解決をめざす。

パート組合員の賃上げでは時給30~40円目安に

組合員の約4割(48.8万人)を占めるパートを中心とした「短時間組合員」の要求基準としては、昨年と同様に「正社員に準じた」取り組みとすることも確認した。具体的には、昇給・昇格制度がある場合は「制度に基づく昇給・昇格分を確保」、他方、同制度がない場合は、 (1)タイプA(正社員と職務も人材活用の仕組み・運用も同じ)は35~40円目安 (2)タイプB(正社員と職務は同じだが人材活用の仕組み・運用が違う)は30円目安 (3)タイプC(正社員とは職務も人材活用の仕組み・運用も違う)は主旨を踏まえて要求額を決定する――などと設定。この要求基準を踏まえ、パート組合員の多い流通部会では、昇給・昇格制度がある場合は、「制度に基づく昇給・昇格分とは別に15円(過年度昇給分含む)目安」、また同制度がない場合は、タイプAで過年度昇給分含め35円目安、タイプBで同30円目安などの部門別要求を設けている。

中央委員会ではこのほか、改正労基法・改正育介法への対応などを含む「総合的な労働条件の改善方針」をはじめ、「2010期末一時金闘争方針」「2010~11労災付加給付改定闘争方針」も決定した。このうち、期末一時金闘争方針としては、毎月の必要生計費を補填する季節賃金+期間業績に対する成果配分の合算として、社会水準(月数)の獲得をめざしてきた経緯から、「少なくとも年間4カ月を確保」したうえで、「年間4.8カ月」の協定を基準に、積極的に上積みを求めるとしている。