賃金体系維持分の確保徹底を/JSD中央委

(2010年1月29日 調査・解析部)

[労使]

百貨店やスーパー等の組合でつくる、サービス・流通連合(21.9万人)は26~27日、都内で中央委員会を開催し、賃金制度がある場合は「賃金体系維持分(定昇相当分等)の確保」、賃金制度がない場合は「原資維持分含め2.1%以上もしくは4,500円以上の引上げ」を求めることなどを盛り込んだ2010春の交渉方針を決定した。あいさつした八野正一会長は、「人事処遇制度の根幹である定昇を何としても確保することが、今次交渉の最低限」などと強調した。

「賃金体系維持分の確保が今次交渉の最低限」(八野会長)

八野会長はあいさつで、2010春の交渉を取り巻く現況に触れ、「直近の数字でみると、09年の百貨店売上高は対前年比マイナス10%と26年ぶりの低水準、チェーンストア売上高でもマイナス4.3%となる21年ぶりの低水準。私たちの足下をみれば店舗の閉鎖、希望退職による人員削減等、苦渋の決断を余儀なくされる組合も相次いでおり、ここにいる組合員が初めて経験するような厳しい産業の状況は、企業の存亡にもつながりかねないものだ」などと指摘。そのうえで、今次交渉に向けた方針の考え方について、「大変厳しい環境下にあることを認識しつつも、22万人の組合員に加え、私たちの産業で働くすべての労働者の雇用確保を大前提に、これ以上の賃金・労働条件の底割れには歯止めをかけなければならない」とし、そのためには「人事処遇制度の根幹である定昇を何としても確保することが、今次交渉の中で行う最低限重要な取り組みの一つと言って過言ではない」などと強調した。

臨時賃金は平均3カ月以上を

中央委員会では、 (1)賃金体系維持分(定昇相当分・制度維持分)の確保徹底と賃金水準の底上げ (2)パート・契約の処遇改善と全労働者(未組織有期契約、派遣、取引先からの応援店員等)を対象にした取り組み (3)総実労働時間短縮の取り組み(JSD労働時間取り組み指針の完遂等) (4)運動の再構築に向けた推進、支援、指導体制の強化 (5)企業の持続的な成長・発展に向けた交渉(経営協議等)の展開 (6)連合春闘への参画――等6本を柱とする、2010春の交渉方針を決定した。

JSDは08春闘から、03年より続けてきた通年春闘路線(総合的な労働条件のミニマム重視で、個別組合が通年で交渉・協議するスタイル)を転換し、月例賃金等に係る要求基準を掲げるとともに、通年交渉(2010労働条件改善交渉方針として昨年6月大会で策定し取り組み中)の集大成を引き出すために、全加盟組合が一斉に要求・交渉する統一的な運動を展開している。

2010春の交渉に当たっても、 (1)賃金制度により賃金体系が確立されている組織の要求基準として、「30歳ポイント(大卒8年、高卒12年の一人前賃金として。JSDの09年賃金プロット実態調査による現状は平均25万902円)」で先行(水準牽引役)、社会的(産業中位)、底上げ(最低到達水準)基準の順に28万2,000円、24万7,300円、21万8,200円(ほか25歳、35歳、40歳の各年齢ポイントも設定)を上回るよう改善 (2)賃金制度がないなど、賃金体系が確立されていない組織の要求基準としては、原資維持分も含めて2.1%以上、もしくは4,500円以上――などとする統一的方針を掲げた。

また、臨時賃金(年間賞与)についても、「業績に左右されない生活給」と「組合が努力した結果の成果配分」の合算という観点から、生活給部分に係る底上げ基準として「組合員一人平均3カ月以上を目標に取り組む」とした。

パート等は職務・人材活用の異同に応じ2.1%、1.2%、1.0%の範囲で要求

JSD組合員の約41.6%(約9.1万人)を占めるパート等有期契約者についても、引き続き「均等・均衡待遇の考え方に則り、働き方に応じた公平・公正な処遇を目指し、時間給を引き上げる取り組みを推進する」としている。そのうえで、「各加盟組合は、制度維持分(定昇相当分)の完全実施(JSDにおいてパート等の昇給制度は約52%の雇用形態区分を対象に導入済み)を要求し、必ず確保する」とともに、「 (1)職務・人材活用とも同じパート及び職務・人材活用を問わずフルタイマーの契約社員については、制度維持分含めて2.1%以上 (2)職務は同じだが人材活用が異なるパートについては、同1.2%以上 (3)職務も人材活用も異なるパートについては、同1.0%以上――の具体的要求基準を踏まえ、自らの組織の状況を勘案しながら、正社員との格差是正や底上げを行う」とした。

方針説明を行った石黒生子・事務局次長は、過去2年間は何らかの事情で要求を掲げられない場合に、許容してきた離脱組織を「今年は設定しない」と強調した。そのうえで、全加盟組合が必ず、方針に則った要求を掲げ、交渉スケジュール(2月28日を第一次、3月15日を第二次の要求提出日に設定。中執労組は3月31日まで、全加盟組合は4月30日までに妥結等)を遵守し、統一的に運動を進めるよう強く訴えた。