賃上げ要求基準を4,500円に/JAM中央委員会

(2010年1月20日 調査・解析部)

[労使]

 

機械金属の中小企業を多く組織するJAM(河野和治会長、39万人)は14、15の両日、静岡県熱海市で第16回中央委員会を開き、今春の賃上げ交渉の方針を決定するとともに、今夏の参議院議員選挙に向けた組織体制づくりを確認した。賃上げ方針の柱は、 (1)賃金構造維持分の確保 (2)企業内最低賃金協定の締結 (3)時間外割増率の引き上げ――など。賃金構造維持分の目安として、連合の中小共闘方針などを踏まえ、平均賃上げ要求基準を4,500円に設定した。ベースアップについては、統一要求を見送り、「必要に応じて、構造維持分を確保した上で、500円以上の改善・是正を要求」として、単組の個別対応となった。一時金についても、要求基準年間5カ月基準、最低到達基準年間4カ月としながら、「単組ごとの対応に拠る」として個別対応を認める方針となっている。

「賃金水準の低下阻止を」(河野会長)

あいさつした河野会長は、今春の賃上げ交渉について、「中小企業の置かれた厳しい経営環境を踏まえ、雇用を守ることと、消費低下やデフレの原因ともなっている賃金水準の低下を阻止することを最優先に取り組む」と説明。「賃金を下げないことで、『生活を守る』考えだ。まず、生活を守るために賃金構造維持分を確保する」と訴えた。また、一時金要求について、「基準は堅持しながら、いわば緊急避難措置として、地方JAM・地協と連携を図りつつ、単組ごとの判断に拠る」と述べ、個別対応を認めた背景を説明した。雇用確保の取り組みについて、「ものづくりを支えてきたのは数字に表れない経営資源としての人の創意工夫。人を大切にする企業風土をつくることが、企業の発展には不可欠」だとして、「労使協議の場を確保して、経営情報の開示を求め、分析することが重要だ」と強調した。

必要に応じて「500円以上」の賃金改善分要求

要求方針の具体的な中身をみると、賃上げ要求については、賃金構造維持分が把握できている単組では構造維持分を確保するとし、構造維持分の推計ができないところでは、目安として平均賃上げ要求基準「4,500円以上」を掲げて取り組む。ベースアアップについては、人材確保に向けた初任給の引き上げや、賃金分布の歪みの是正などの必要に応じて、「500円以上」の改善・是正に取り組むこととし、各単組の個別の判断にゆだねている。個別賃金要求では、高卒直入30歳で260,000円、35歳で305,000円を標準労働者の要求基準としている。

企業内最低賃金要求では、18歳以上最賃や全従業員最賃、年齢別最賃のいずれかの協定締結を求めている。方針提案した斉藤常書記長は、「一気に全従業員最賃協定はできなくとも、年齢別最賃から実現を」と強調して、取り組みを促した。設定基準については、18歳以上最賃で、正社員の月例賃金を所定内労働時間で割り戻した時間額としており、企業内に働くすべての非正規労働者や未組織労働者を視野に入れた均等処遇を求める要求となっている。

一時金要求については、要求基準を年間5カ月とし、最低到達基準を4カ月としながら、「個々の企業状況への対応を含む取り組みは、単組ごとの対応に拠ることとする」として、個別対応の余地を残すものとなった。

時間外割増率の引き上げ要求については、時間外労働が月45時間を超える場合の割増率50%引き上げを目指し、最低でも25%を超えた率とすることとしている。

非正規労働者に対する処遇改善も要求として掲げており、直接雇用の非正規労働者に対しては、賃金、安全衛生、育児・介護休業等の処遇・雇用環境に関する何らかの改善に取り組むとしている。派遣労働者については、派遣契約の内容、労働条件、派遣元における社会保険の加入状況などの点検活動を強化する考えだ。

闘争の前段での、賃金や企業経営など、企業状況の実態把握を重視しており、「雇用問題が発生し、雇用確保を最優先せざるを得ないと判断される単組については、地域組織、本部と連携した取り組みを行う」としている。

闘争スケジュールでは、統一要求日を2月23日とし、統一回答指定日を3月16日、17日に設定している。