国内労働情報 14-03
従業員の採用と退職に関する実態調査
―労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅰ)―

平成 26年 3月20日

概要

研究の目的・趣旨

近年、企業の人事管理に関する意識の変化による人事管理の個別化・多様化とともに、労働者の就業形態や就業意識の多様化が進む中で、労働者が納得・安心して働くことができる環境づくりや今後の良好な労使関係の形成という観点から、労働契約法制の整備・拡充が求められている。労働契約をめぐる実態を明らかにし、基礎的データをとりまとめることで、今後の労働契約法制の論議の活性化に資することを目的として、企業アンケート調査を実施した。

調査の概要

  • 調査方法:郵送による調査票の配布・回収
  • 調査対象:常用労働者50人以上を雇用している全国の民間企業20,000社(農林漁業除く)実施時期:2012年10月11日~10月26日
  • 有効回収数:5,964件(有効回収率:29.8%)

主な事実発見

  1. 正規従業員を採用する際に、試用目的の有期契約で雇い入れることがあるかについては、「行っている」とする企業が25.1%、「現在行っていないが今後検討したい」が14.7%、「行わない」が54.2%となっている。産業別にみると、「行っている」とする割合は、「情報通信業」がもっとも高く、次いで「製造業」「サービス業」「不動産業、物品賃貸業」などとなっている。正規従業員規模別にみると、「行っている」とする割合は、規模が大きくなるほど高い(図表1)。
  2. ここ5年間での懲戒処分の実施割合では、「始末書の提出」が42.3%でもっとも高く、次いで、「注意・戒告・譴責」(33.3%)、「一時的減給」(19.0%)、「降格・降職」(14.9%)、「懲戒解雇」(13.2%)、「出勤停止」(12.3%)、「諭旨解雇」(9.4%)などとなっている。「いずれの懲戒処分も実施していない」は39.0%である。これを正規従業員規模別にみると、いずれの懲戒処分も規模が大きくなるほど実施割合が高い。
  3. ここ5年間で、正規従業員に退職勧奨を行ったことが「ある」とする企業割合は16.4%で、「ない」が82.4%となっている。企業規模が大きいほど、退職勧奨を行った企業割合が高く、「1,000人以上」では30.3%となっている。
  4. 普通解雇について、「本人の非行」(30.8%)や「職場規律の紊乱」(24.0%)、「頻繁な無断欠勤」(15.0%)など職場規律に違反することを理由とするものだけでなく、「仕事に必要な能力の欠如」(28.8%)を理由とする解雇も少なくない。「仕事に必要な能力の欠如」を理由として解雇する企業の割合は、中小企業(正規従業員規模の小さい会社)のほうが大企業より高い(図表2)。
  5. 整理解雇の際、「新規採用抑制」「不採算部門の縮小・廃止、事業所の閉鎖」「配置転換」など多くの企業では何らかの解雇回避措置を講じている。解雇回避措置を講じていない企業は、6.5%に止まっている。正規従業員規模「300人以上」の企業では、解雇回避措置をなんら講じていない企業はない(0.0%)が、「100人未満」の企業でもその割合は8.6%に過ぎない。
  6. 整理解雇を実施する場合、正社員が「300人以上」の規模の企業では、「再就職先のあっせん」(31.6%)、「人材紹介機関の委託」(21.1%)などの種々の支援が行われている場合が多いが、「100人未満」の規模では、それぞれ24.0%、5.0%であり、離職者に対する支援は限られる。また、「退職金の割増」についても、賃金の「半年分以上の割増」の割合は「300人以上」(76.0%)、「100~300人未満」(48.0%)であるのに対し、「100人未満」では33.4%となっており、企業の規模により格差がある。
  7. 退職していく労働者について、秘密保持義務や競業避止義務を定める企業の割合が増加している。

図表1 正規従業員を採用する際の本採用する前の試用目的の有期契約雇い入れの実施状況(単位=%)

図表1画像

図表2 普通解雇を実施した理由(単位=%、複数回答)

図表2画像

※「普通解雇を実施した」企業を対象に集計。

政策的インプリケーション

整理解雇の際、ほとんどの企業が何らかの解雇回避措置を実施している。しかし、整理解雇の対象者に対する特別な措置(退職金の割増や再就職先のあっせん等)では、企業規模間格差がみられ、中小企業で離職者に対する支援は限られている。解雇法制面での検討の際の基礎データを提供している。

政策への貢献

労働契約法制の採用・懲戒・退職・解雇関連の実態把握をしており、労働契約法施行以降の状況が把握可能である。

本文

  1. 「従業員の採用と退職に関する実態調査」全文(PDF:2.1MB)

>全文ダウンロードに時間が掛かる場合は分割版をご利用ください。

  1. 表紙・まえがき・調査実施者・目次(PDF:812KB)
  2. 第Ⅰ部 調査結果の概要(PDF:760KB)
  3. 第Ⅱ部 2012年調査と2004年調査の2時点比較(PDF:587KB)
  4. 第Ⅲ部 資料(PDF:1.0MB)

研究の区分

情報収集

調査期間

平成24~25年度

執筆担当者

郡司 正人
調査・解析部次長
奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査・解析部主任調査員補佐

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.67)。

関連の研究成果

お問合せ先

内容について
調査・解析部 03(5903)6282
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。