メールマガジン労働情報 No.1904

■□――【メールマガジン労働情報/No.1904】

 「持続的な賃上げに向けて」をテーマに分析/23年版労働経済白書 ほか

―2023年9月29日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】「持続的な賃上げに向けて」をテーマに分析/23年版労働経済白書 ほか
【統計】8月の完全失業率2.7%、前月と同水準/労働力調査 ほか
【労使】日常的な組合活動を活性化させ、組合員が一体となることで組織強化につなげる/自治労定期大会
【動向】国内製造拠点の閉鎖縮小、2021年をピークに鈍化/民間調査 ほか
【企業】店舗の営業時間フレックスタイム制度など導入/JR宮崎シティ
【法令】労働関係法令一覧(2023年8月公布分)
【イベント】セミナー「ダイバーシティと外国人雇用」/東京都社労士会 ほか

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【JILPTからのお知らせ】
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★労働政策フォーラム「外国にルーツを持つ世帯の子育てと労働を考える」
 (10月13日~19日/ライブ配信は19日(木)13:30~16:00/参加無料)
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20231019/index.html

◇『日本労働研究雑誌』10月号刊行!  特集「公務員の職務と働き方」
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2023/10/index.html

◇『ビジネス・レーバー・トレンド』10月号刊行! 「社員が成長する会社」
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2023/10/index.html

◇英文ジャーナル『Japan Labor Issues』23年秋号公開!
https://www.jil.go.jp/english/jli/index.html

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【行政】
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●「持続的な賃上げに向けて」をテーマに分析/23年版労働経済白書

 厚生労働省は29日、2023年版「労働経済の分析」(労働経済白書)を公表した。
「持続的な賃上げに向けて」をテーマに、日本の賃金が伸び悩んできた理由を明ら
かにし、賃上げが企業・労働者・経済全体に及ぼす好影響、企業業績・価格転嫁状
況等と賃上げの関係等についても分析している。

 1990年代後半以降、我が国の一人当たり実質労働生産性は他国並みに上昇してい
るものの、一人当たり実質賃金は伸び悩んでいる。その背景として、パート労働者
の増加等により一人当たり労働時間が減少したことと、労働分配率が低下傾向にあ
ったことを挙げ、内部留保の増加にみられる企業の利益処分の変化、労使間の交渉
力の変化、産業構成・勤続年数・パート比率等の雇用者の構成変化、日本型雇用慣
行の変容、労働者のニーズの多様化等が影響した可能性を指摘している。

 また白書は、最賃引上げは、賃金水準が中位に位置するパートタイム労働者にも
効果が及ぶ可能性があること、同一労働同一賃金の施行は、正規と非正規雇用労働
者の時給差を10%程度縮小させる等の効果があった可能性についても指摘している。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35259.html
(概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/001149098.pdf
(本文)
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/23/23-1.html

<白書に引用されたJILPTの主な調査研究成果>

◇記者発表『企業の賃金決定に係る調査結果』(2023.9.15)
 https://www.jil.go.jp/press/documents/20230915.pdf
◇調査シリーズNo.207-2『「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の活用状況等に
 関する調査結果・労働者調査編』(2021.1)
 https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/207-2.html
◇資料シリーズNo.217『若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状』(2019.6)
 https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/217.html
◇調査シリーズNo.170『非正規労働者の組織化とその効果』(2017.3)
 https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/170.html
◇労働政策研究報告書No.147『中小企業における人材の採用と定着』(2012.3)
 https://www.jil.go.jp/institute/reports/2012/0147.html

●「年収の壁」支援強化パッケージを公表/厚労省

 厚生労働省は27日、「年収の壁」の解消に向けた支援強化パッケージを公表した。
「106万円の壁」への対応は、短時間労働者が被用者保険の適用となる際、労働者の
収入を増加させる取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円を助成。
賃上げや所定労働時間の延長のほか、手取り収入減少分の相当額を「社会保険適用
促進手当(新設)」として支給する場合も対象に含む。「130万円の壁」への対応は、
労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付すれば、
収入が130万円以上となる場合でも連続2回を上限に被扶養者認定を可能とする。
企業の配偶者手当については、見直しの必要性やメリット・手順について企業に
周知し、理解促進を図るとしている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_2023_00002.html
(「年収の壁」への対応HP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

●「持続的賃上げ」に向け促進策など議論/新しい資本主義実現会議

 政府は27日、新しい資本主義実現会議を開催し、経済対策等について議論した。
首相は議論を踏まえ、「3年間の変革期間でコストカット型の『冷温経済』を適温
の成長型経済へ転換する」として、「持続的賃上げ・所得向上の実現」については、
(1)賃上げ税制の減税措置の強化、(2)中小企業等の賃上げに資する省人化(人手不
足解消)等への投資の支援、(3)労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針
策定、(4)同一労働・同一賃金制の対応が不十分な企業への指導や非正規労働者に対
するリスキリング支援、などの措置を講じていくと述べた。
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202309/27shihon.html
(配布資料)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai22/gijisidai.html

●景気判断「緩やかに回復」を維持、中国経済の先行き懸念も/9月・月例経済報告

 政府は26日、9月の「月例経済報告」を公表した。基調判断は、「景気は、緩やか
に回復している」を維持。先行きについては「緩やかな回復が続くことが期待される」
としつつ、世界的な金融引き締めや中国経済の先行き懸念などが下押しするリスクと
なっているとしている。
 個別判断では、企業収益は「総じてみれば緩やかに改善」から「総じてみれば改善」
へ上方修正し、住宅建設は「おおむね横ばい」から「このところ弱含んでいる」へ
下方修正した。雇用情勢は、「改善の動きがみられる」の判断を維持した。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2023/0926getsurei/main.pdf

●「勤務間インターバル制度導入促進シンポジウム」のアーカイブ動画を公開

 厚生労働省は、7月27日(木)に開催された「勤務間インターバル制度導入促進シンポ
ジウム」のアーカイブ動画を公開した。2019年4月から企業の努力義務となっている
勤務間インターバル制度について、その重要性や企業が取り組むことによるメリット、
取組を進めるためのポイント等を先進事例とともに解説。視聴後のアンケートに回答
すると、会議資料をダウンロードできる。また、社会保険労務士等の専門家による
無料のコンサルティングも受け付けている。申込みは interval@jmam.co.jp まで。
(動画公開サイト)
https://work-holiday.mhlw.go.jp/seminar/
(アンケートサイト)
https://www.jmar-llg.jp/form/intervalenq.php

●白百合クリーニング不当労働行為再審査事件で初審命令を維持/中労委

 会社が前件における中央労働委員会の和解勧告を履行していないこと、和解勧告
に基づく組合員の就任通知等を議題とする団体交渉における会社の対応、記念式典
における組合員に対する会社の取扱い等が不当労働行為であるとして、組合が救済
申立てをした事件の再審査事件で、中央労働委員会は9月21日、初審命令を維持し、
組合員の工場顧問就任通知は、和解条項に明記された労使の合意事項であるとして、
会社が通知の内容等に関する団体交渉に応じる姿勢を示さなかったことは不当労働
行為に当たるとする命令書を交付した。
https://www.mhlw.go.jp/churoi/futouroudou/dl/r050922-1.pdf

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【統計】
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●8月の完全失業率2.7%、前月と同水準/労働力調査

 総務省は29日、2023年8月の「労働力調査(基本集計)」を公表した。完全失業率
(季調値)は2.7%で、前月と同率。完全失業者数は186万人(前年同月比9万人増)で、
2カ月連続の増加。就業者数は6,773万人(同22万人増)で13カ月連続の増加。雇用者
数は6,088万人(同44万人増)で、18カ月連続の増加。
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html
(概要)
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

●8月の有効求人倍率1.29倍、前月と同水準/一般職業紹介状況

 厚生労働省は29日、「一般職業紹介状況」を公表した。2023年8月の有効求人倍率
(季調値)は1.29倍で前月と同率。新規求人倍率(同)は2.33倍で、前月比0.06ポイ
ント上昇。新規求人(原数値)は、前年同月比で1.0%増。産業別では、宿泊業・
飲食サービス業(9.8%増)、教育・学習支援業(8.4%増)、医療,福祉(4.8%増)
などで増加。製造業(7.5%減)、建設業(3.8%減)、生活関連サービス業・娯楽業
(3.1%減)などで減少した。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35417.html
(報道発表資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001149673.pdf

●8月の鉱工業生産、「一進一退で推移している」で前月から横ばい/経産省速報

 経済産業省は29日、8月の鉱工業生産・出荷・在庫指数(速報)を公表した。生産
指数(季調値)は103.8で前月比0.0%の横ばい。業種別で上昇したのは、石油・石炭
製品工業、電気・情報通信機械工業等。低下したのは、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属
工業等。出荷は前月比0.1%上昇。在庫、在庫率はいずれも同1.7%の低下。基調判断
は、「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」として前月判断を維持した。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
(概要)
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/press/b2020_202308sj.pdf

●基調判断「改善を示している」で据え置き/7月・景気動向指数の改訂状況

 内閣府は27日、2023年7月の「景気動向指数・速報からの改訂状況」を公表した。
景気の現状を示す「一致指数」は、前月差1.4ポイント低下の114.2(速報値は114.5)。
基調判断は、「景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している」で据え置き。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/202307rsummary.pdf
(統計表)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di.html

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【労使】
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●日常的な組合活動を活性化させ、組合員が一体となることで組織強化につなげる
 /自治労定期大会

 地方自治体の職員などを主に組織する自治労は8月28~30日までの3日間、
北海道函館市で定期大会を開催した。向こう2年間の運動方針では、日常的な組合
活動の活性化や組合員の一体となった取り組みで自治労の組織強化を目指すことな
どの重点課題を提示。当面の闘争方針では、秋季・自治体確定闘争の取り組みとし
て給与の引き上げや中途採用者の賃金改善などを掲げた。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20230929.html

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【動向】
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●国内製造拠点の閉鎖縮小、2021年をピークに鈍化/民間調査

 東京商工リサーチは22日、「上場メーカー『国内の工場・製造拠点』閉鎖・縮小
調査」結果を発表した。上場メーカー(約1,470社)のうち、2022年に国内の工場や
製造拠点の閉鎖・縮小を開示したのは28社。2019年の17社から、コロナ禍より20年
27社、21年40社と急増したが、22年は減少に転じた。経済活動の再開や円安進行、
ウクライナ侵攻による海外サプライチェーンリスクなどが追い風となり、国内回帰
の動きも出始めていると指摘している。
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198010_1527.html

●8月のバイト時給1,280円、インバウンド需要増などで上昇/民間調査

 エン・ジャパンは28日、2023年8月度の「全国アルバイト・パート募集時平均
時給調査」結果を発表した。全国平均時給は1,280円で、前年同月比51円のプラス。
三大都市圏でも全エリアで上昇し、東海・関西の上昇額は2023年の最高額を記録。
 レポートは、「今年の夏は行動制限がなく、音楽フェスなど大規模の対面型イ
ベントも復活。受付や警備など幅広い職種で急激に人材の取り合いが発生。また、
特に飲食業界の大手各社が、インバウンド需要の増加も踏まえた客数の増加により、
アルバイト採用を強化。時給改定をすることで『他社よりも時給面で優位に立ち、
採用力を向上したい』という狙いが8月は顕著だった」と指摘している。
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2023/34586.html

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【企業】
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●店舗の営業時間フレックスタイム制度など導入/JR宮崎シティ

 JR宮崎シティが運営するアミュプラザみやざきは20日、「営業時間フレックス
タイム制度」および「特別休業制度」を10月2日から試験導入すると発表した。
全館のコアタイムを11時~19時に設定し、前後1時間をフレックスタイムとして
店舗独自で時間設定できる制度。飲食店舗については原則11時~20時をコアタイム、
20時~21時をフレックスタイムに設定する。また、全館休館日に加え、店舗独自で
福利厚生を目的とした休暇を年間最大2日取得できる。「ショッピングセンター業界
は人材不足が課題」とし、「店舗スタッフのサステイナブルな働き方を実現」すると
している。
https://www.amu-miyazaki.com/pdf/flex_230920.pdf

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【法令】
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●労働関係法令一覧(2023年8月公布分)
https://www.jil.go.jp/kokunai/mm/hourei/202308.html

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【イベント】
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●セミナー「ダイバーシティと外国人雇用」/東京都社会保険労務士会

 東京都社会保険労務士会は10月26日(木)、社労士会セミナー「ダイバーシティと
外国人雇用」をオンラインライブ配信で開催する。ビジネスのグローバル化の中で、
多様な人材を活かすダイバーシティ経営の第一歩とも言える外国人雇用について、
多様性の受け入れについて考える。対象は主に中小企業事業主、人事労務担当者。
参加費無料。Webにて、10月19日(木)までに申し込む。
https://www.tokyosr.jp/
(申し込みページ)
https://forms.gle/F9pW4AsTGAYPaeqk7

●「テレワークセミナー」/東京テレワーク推進センター

 東京テレワーク推進センターはテレワークに関するセミナーを10月6日(金)、24日(火)
に会場(文京区)及びオンラインで開催する。ハイブリッドワークにおける業務効率化・
生産性向上を達成するオフィス作り(6日)、中小企業における育児・介護と仕事の
両立支援の事例と取組方法(24日)について説明する。参加無料。要事前予約。定員
各回(会場)15名、(オンライン)300名。
https://tokyo-telework.metro.tokyo.lg.jp/seminarevent

●「派遣労働者の同一労働同一賃金オンラインセミナー・労使協定作成実務」/東京労働局

 東京労働局は10月19日(木)に「派遣労働者の同一労働同一賃金オンラインセミナー
~労使協定作成実務~」をZoomによるオンライン形式で開催する。労使協定作成実務
担当者を主な対象として、派遣労働者の同一労働同一賃金に関する労使協定の作成
方法について説明。参加無料。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/jyukyuuchousei_051019_0014_00001.html