論文要旨 介護疲労と休暇取得

池田 心豪(JILPT副主任研究員)

介護休業や介護休暇に代表される従来の仕事と介護の両立支援は、介護サービスの利用手続きや通院の付添いなど、日中の介護対応を想定し、就業時間と介護時間の物理的な調整を問題にしてきた。だが、時間調整を必要としない勤務時間外の介護負担から介護者に疲労が蓄積し、仕事との両立が困難になっている可能性もある。また、両立困難として従来は就業継続の可否を問題としてきたが、介護負担が重い状況にあってもすぐに退職する介護者は少ない。就業継続はしているが仕事に好ましくない影響が生じている可能性にも目を向けることが重要である。その観点から、介護による体調悪化が仕事に及ぼす影響を分析した。

分析結果は、(1)深夜の介護があるほど、介護者の体調悪化を招く確率は高いが、その背景に要介護者の重度認知症があること、(2)日中の介護に加えて、介護による体調悪化も、介護者の休暇取得確率を高めること、(3)介護のために休暇を取ることがあっても、体調悪化がない場合は仕事の能率低下を招く可能性が低いこと、(4)一方、介護による体調悪化がある場合は仕事の能率低下を招く可能性が高いことを示している。その意味で、日中の介護対応による物理的な時間調整よりも、介護負担の蓄積による体調悪化の方が仕事に好ましくない影響を及ぼす。これを防ぐためには、休暇を取得した介護者の健康状態を把握して適切な措置を行うこと、つまり、介護者の健康管理の観点から両立支援を整備することが重要である。

2014年特別号(No.643) メインテーマセッション●高齢社会の労働問題

2014年1月24日 掲載