論文要旨 民間教育訓練プロバイダーにおける教育訓練サービスの改善活動─サービス改善に向けた活動を規定する要因

藤本 真(JILPT副主任研究員)

わが国では自分自身で職業生活設計を考えていきたいという労働者が増えてきており、こうしたニーズに応えるための教育訓練サービスのより一層の充実が、ISOなどによる国際的な規格整備の流れと相まって、社会的・政策的な課題として認識されつつある。本稿では、教育訓練サービスの改善に関わる民間の教育訓練プロバイダー(以下、「プロバイダー」と記載)の取組みの現状とその要因について、労働政策研究・研修機構が実施したアンケート調査の分析を基に明らかにしようと試みた。

分析からまずISOのような国際基準がプロバイダーに対し求めている組織的な体制整備は、わが国のプロバイダーにおいても教育訓練サービスの改善に向けたPDCAサイクルを活性化させることがわかった。また体制整備を進めているプロバイダーについての分析から、(1)株式会社以外の経営者団体、財団・社団法人といった組織では体制整備が遅れがちであること、(2)教育訓練やキャリア形成に関わる公共政策の実施が、プロバイダーが提供する教育訓練サービスの改善を促す機能を果たしていることが示された。

以上の分析結果から、中小企業分野の教育訓練において大きな役割を果たす経営者団体、財団・社団法人といった組織での取組みをいかに進めていくかという点、また、公共政策に関わらないプロバイダーにサービス改善のための取組みを促す仕組みの確立を、今後の教育訓練サービスの充実に向けた課題として挙げることができよう。

2012年特別号(No.619) 自由論題セッション●Cグループ

2012年1月25日 掲載