2002年 学界展望
労働法理論の現在─1999~2001年の業績を通じて(全文印刷用)

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目次

出席者紹介

  1. 討論対象論文
  2. 学界展望選考対象文献リスト
  3. はじめに
  4. 1. 労働条件変更法理
  5. 2. 整理解雇
  6. 3. 労働市場法
  7. 4. パートタイム労働と均等待遇原則
  8. 5. 賃金の基礎理論
  9. 6. 健康配慮義務
  10. 7. 企業組織の変動
  11. 8. ユニオン・ショップ
  12. 9. 国際労働関係法
  13. 10. 労働法の未来
  14. おわりに
  15. 労働法主要文献目録(1999~2001年)

出席者紹介

大内 伸哉(おおうち・しんや)神戸大学教授(司会)

神戸大学大学院法学研究科教授。主な著書に『労働条件変更法理の再構成』(有斐閣、1999年)など。労働法専攻。

盛 誠吾(もり・せいご)一橋大学教授

一橋大学大学院法学研究科教授。主な著書に『労働法総論・労使関係法』(新世社、2000年)など。労働法専攻。

唐津 博(からつ・ひろし)南山大学教授

南山大学法学部教授。主な著書に『ベーシック労働法』(共著、有斐閣、2002年近刊)など。労働法専攻。

水町 勇一郎(みずまち・ゆういちろう)東北大学助教授

東北大学大学院法学研究科助教授。主な著書に『パートタイム労働の法律政策』(有斐閣、1997年)など。労働法専攻。


討論対象論文

日本労働研究雑誌に掲載された論文は、当機構「論文データベース」で全文をご覧になれます。

1. 労働条件変更法理

  1. 荒木尚志『雇用システムと労働条件変更法理』有斐閣、2001年
  2. 浜田冨士郎「就業規則法の理論的課題」『講座21世紀の労働法 第3巻 労働条件の決定と変更』有斐閣、2000年

2. 整理解雇

  1. 土田道夫「解雇権濫用法理の法的正当性」日本労働研究雑誌491号
  2. 村中孝史「日本的雇用慣行の変容と解雇制限法理」民商法雑誌119巻4=5号

3. 労働市場法

  1. 諏訪康雄「キャリア権の構想をめぐる一考察」日本労働研究雑誌468号
  2. 諏訪康雄「労働市場法の理念と体系」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第2巻 労働市場の機構とルール』有斐閣、2000年
  3. 脇田滋「雇用・労働分野における規制緩和推進論とその検討」萬井隆令・脇田滋・伍賀一道編『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社、2001年

4. パートタイム労働と均等待遇原則

  1. 菅野和夫=諏訪康雄「パートタイム労働と均等待遇原則」北村一郎編集代表『山口俊夫先生古稀記念 現代ヨーロッパ法の展望』東京大学出版会、1998年
  2. 林和彦「賃金の決定基準」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第5巻 賃金と労働時間』有斐閣、2000年
  3. 土田道夫「パートタイム労働と『均衡の理念』」民商法雑誌119巻4=5号

5. 賃金の基礎理論

  1. 盛誠吾「賃金債権の発生要件」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第5巻 賃金と労働時間』有斐閣、2000年
  2. 奥冨晃「雇傭契約における報酬請求権発生問題の基礎理論的考察」南山法学23巻1=2号

6. 健康配慮義務

  1. 渡辺章「健康配慮義務に関する一考察」花見忠先生古稀記念論集刊行委員会編『花見忠先生古稀記念論集 労働関係法の国際的潮流』信山社出版、2000年
  2. 水島郁子「ホワイトカラー労働者と使用者の健康配慮義務」日本労働研究雑誌492号

7. 企業組織の変動

  1. 吉田哲郎「純粋持株会社解禁と労働法上の諸問題」季刊労働法188号

8. ユニオン・ショップ

  1. 大内伸哉「ユニオン・ショップ協定が労働団体法理論に及ぼした影響」神戸法学雑誌49巻3号

9. 国際労働関係法

  1. 山川隆一『国際労働関係の法理』信山社出版、1999年
  2. 米津孝司「グローバリゼーションと国際労働法の課題」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第1巻 21世紀労働法の展望』有斐閣、2000年

10. 労働法の未来

  1. 水町勇一郎「法の『手続化』─日本労働法の動態分析とその批判的考察」法学(東北大学)65巻1号

学界展望選考対象文献リスト

以下の文献リストは、学界展望座談会での報告論文選考のための研究会で、座談会参加者により選考対象文献として提案されたもののリストである(座談会での討議対象論文については討論対象論文を参照のこと)。(50音順)

日本労働研究雑誌に掲載された論文は、当機構「論文データベース」で全文をご覧になれます。

  1. 相澤美智子「雇用差別訴訟における立証責任に関する一考寮(1)~(3)」法学会雑誌(東京都立大学)39巻2号、40巻1号、40巻2号
  2. 浅倉むつ子「労働法とジェンダー─『女性中心アプローチ』の試み」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第6巻 労働者の人格と平等』有斐閣、2000年
  3. 荒木尚志「裁量労働制の展開とホワイトカラーの法規制」社会科学研究(東京大学)50巻3号
  4. 石田眞「作業関連疾患」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第7巻 健康・安全と家庭生活』有斐閣、2000年
  5. 蛯原典子「雇用差別禁止法理に関する一考察」立命館法学269号
  6. 大内伸哉「労働法と消費者契約」ジュリスト1200号
  7. 鎌田耕一「契約労働の法的問題」鎌田耕一編著『契約労働の研究─アウトソーシングの労働問題』多賀出版、2001年
  8. 唐津博「労働契約と労働条件の決定・変更」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第3巻 労働条件の決定と変更』有斐閣、2000年
  9. 川田琢之「公務員制度における非典型労働力の活用に関する法律問題(1)~(3完)」法学協会雑誌(東京大学)116巻9、10、11号
  10. 毛塚勝利「『労使委員会』の可能性と企業別組合の新たな役割」日本労働研究雑誌485号
  11. 菅野和夫「労働市場の契約ルール」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第2巻 労働市場の機構とルール』有斐閣、2000年
  12. 長坂俊成「テレワークの法的性質と法的保護のあり方─労働法理を中心として」季刊労働法193号
  13. 中嶋士元也「裁判所の手法と労働委員会の苦境」日本労働研究雑誌473号
  14. 中嶋士元也「職業性循環器系疾患死の因果関係論(続論)」上智法学論集42巻3=4号
  15. 西谷敏「日本的雇用慣行の変化と労働条件決定システム」民商法雑誌119巻4=5号
  16. 野田進「解雇の概念について」法政研究(九州大学)68巻1号
  17. 野田進「労働契約における『合意』」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第4巻 労働契約』有斐閣、2000年
  18. 村中孝史「人事制度の多様化と解雇の必要性判断」季刊労働法196号
  19. 三井正信「組合のなかの集団と個人」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第8巻 利益代表システムと団結権』有斐閣、2000年
  20. 三井正信「就業規則法理の再検討」修道法学23巻2号
  21. 籾山錚吾「労働委員会の将来─補充性原則の適用の視点から」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第8巻 利益代表システムと団結権』有斐閣、2000年
  22. 両角道代「職業能力開発と労働法」日本労働法学会編集『講座21世紀の労働法 第2巻 労働市場の機構とルール』有斐閣、2000年
  23. 山川隆一「解雇訴訟における主張立証責任─解雇権濫用法理・解雇事由・整理解雇の問題を中心に」季刊労働法196号
  24. 山川隆一「セクシュアル・ハラスメントと使用者の責任」花見忠先生古稀記念論集刊行委員会編『花見忠先生古稀記念論集 労働関係法の国際的潮流』信山社出版、2000年
  25. 山川隆一「労働法における要件事実」筑波大学大学院企業法学専攻十周年記念論集刊行委員会編『現代企業法学の研究─筑波大学大学院企業法学専攻十周年記念論集』信山社出版、2001年
  26. 山口浩一郎編『救済命令の司法審査』日本労働研究機構、1998年
  27. 萬井隆令「採用拒否と不当労働行為」龍谷法学33巻3号
  28. 渡辺章「労働時間法政策の展開と課題」渡辺章=山川隆一編・筑波大学労働判例研究会著『労働時間の法理と実務』信山社出版、2000年

はじめに

大内

それでは、労働法学の学界展望座談会を始めたいと思います。

今回は、1999年から2001年の業績が対象となります。98年の業績についても、前回の学界展望において間に合わなかったものについては対象としております。今回、取り上げた業績は、これまでと同様、参加者全員で絞り込んでセレクションをしたものです。その際の第一の基準が、過去3年間において労働法学の理論的発展に貢献した業績であるかどうかという点であり、そのうえで労働法を専門としない方にもできるだけ労働法研究の広がりを知ってもらいたいということから、特定のテーマに偏らないようにするということにも配慮した選考をしました。

なお、今回の学界展望においては、形式的な点について従来と若干異なるところがあります。まず、今回、参加者が4名になりました。学界展望は幸いなことに、これまでの諸先輩方のおかげで大変注目を浴びる企画となっております。前回参加した私の経験からも、その反響たるや極めて大きなものでした。それだけ責任もあるわけですから、ここでの議論ができるだけ多様な意見を反映し、客観的なものに近づくよう、人数を増やすことになりました。また、最近の傾向として、業績の数が量的にかなり増え、また質的にも多様化しているなかで、3人でやるよりは4人のほうが、全体に目配りをしやすくなるということもあります。

さらに、今回は単行本を検討対象に加えたという点でも従来と異なっています。その理由は、労働法学の新たな理論的進展に貢献している業績から単行書を排除してしまうのは妥当ではないからです。これは、今回の選考において、これに該当する業績があったからというわけではなく、セレクションの前段階で4人で検討したうえでこのようなルールについて合意を得ていました。

そのほか、最終的な選考業績には含まれませんでしたが、外国語で書かれた文献も、事務局と参加者の把握できる限りにおいて目を通しましたし、また、比較法の論文についても、日本法の理論の進展に貢献したものがあるかどうかという点から検討したということもつけ加えておきたいと思います。

なお、単行本の中でも、教科書的なものについては慣例どおり、たとえ優れたものであっても選考からは除外しております。このような文献としては、諏訪康雄『雇用と法』、西谷敏『労働組合法』、盛誠吾『労働法総論・労使関係法』があります。また、モノグラフについても、大内伸哉『労働条件変更法理の再構成』や、土田道夫『労務指揮権の現代的展開』は、既に基となる論文がこれまでの学界展望で取り上げられていますので、初めから選考から除外しています。また、いくつかの論文を集めたもので、一つの業績として扱うことが困難なものは、ここでの検討対象に含めていません。そのような業績の中でも優れた注目すべき文献はあり、例えば、浅倉むつ子『労働とジェンダーの法律学』、鎌田耕一編『契約労働の研究』、道幸哲也『不当労働行為の行政救済法理』を挙げることができます。

それでは、早速、本論に入りましょう。唐津先生からお願いします。


1. 労働条件変更法理

紹介

荒木尚志『雇用システムと労働条件変更法理』

唐津

それでは、荒木尚志『雇用システムと労働条件変更法理』の内容紹介から始めます。本書は、その「はしがき」にもあるように、労働条件変更法理を従来のように法理論的な枠内で構成するのではなく、雇用システムないし労働市場の機能、紛争処理システムとの関連のもとに構成するという新たな議論枠組みを設定し、アメリカとドイツの比較研究を基に、日本の雇用システムに適合的であるとされる労働条件変更法理を提示することを目的としています。労働案件変更問題を規範論的に論じる規範的アプローチではなく、雇用システムや労働市場の機能等との相互関係のもとで論じる機能的アプローチを採っている点に本書の最大の特徴があります。

本書の主たる分析視点は「雇用システムの柔軟性」です。荒木さんによれば、雇用システムがいかにして経済変動に対処しているかを労働市場との関係で整理すると、外部労働市場の機能(解雇)によって調整するもの(外部労働市場型)と、内部労働市場において調整するもの(内部労働市場型)とに大別できます。

前者は、外的・量的柔軟性に、後者は内的・質的柔軟性に富んだ雇用システムとなります。日本型雇用システムは後者に当たり、解雇が規制(雇用維持が尊重)され、労働条件の柔軟な変更が認められてきました。

荒木さんによれば、柔軟性に欠けた雇用システムは変化の激しい状況に対応できず、高失業等の病理現象をもたらします。他方で、過度に柔軟な、労働者にとっては安定性に欠けた雇用システムも、長期的に見ると貧富の差の拡大や、労働力の二極化等の社会問題を引き起こしてしまう。一国の雇用システムにどのような柔軟性を、どの程度導入するかは選択の問題であるが、労働条件変更法理は柔軟な雇用システムを支える一つの制度であり、したがって、労働条件変更法理は雇用システム全体の中でバランスのとれた柔軟性をもたらすための法理でなければならない。

なお、荒木さんによれば、労働条件には集団的労働条件と個別的労働条件があり、それぞれについて別個の変更法理が要請されるのですが、日本では、個別的労働条件の変更法理については未発達であったため、近時の個別的雇用管理の進展を考えあわせれば、個別的変更法理の確立が必要です。また、集団的労働条件については、就業規則による変更と労働協約による変更の関係等、集団的労働条件設定・変更システム全体の中で、整合性のとれた変更法理を確立する必要があります。

そこで、本書では、まずアメリカとドイツを対象とする比較法的検討が行われています。具体的には両国の解雇規制を中心に、それぞれの雇用関係の外的・量的柔軟性の問題、すなわち雇用量調整のしやすさ、雇用保障の程度について検討され、続いて内的・質的柔軟性の問題である労働条件変更法理、すなわち労働条件の柔軟な変更の可能性が検討されています。

次いで、柔軟性という観点から見た日本の雇用システムの特徴を明らかにすべく、解雇規制、解雇権濫用法理、雇用システムに外的・量的柔軟性を与える有期契約等の規制状況が検討され、続いて、雇用関係の内的・質的柔軟性にかかわる労働条件の変更問題が論じられています。ここでは集団的労働条件と個別的労働条件を、集団的労働条件設定と個別的労働条件設定という観点から区別し、個別的規制により設定された労働条件の変更を、集団的労働条件変更法理である就業規則変更によって行うことはできず、個別規制条件変更には新たな変更法理が要請されていると主張されています。

そのうえで、集団的労働条件変更法理については、就業規則の不利益変更に関する判例・学説の到達点、問題点を整理した後、判例法理としての合理性基準論が日本の雇用システムのもとで妥当性を有するとの評価が示され、あわせて就業規則法理と労働協約法理を総合した集団的労働条件変更法理、すなわち多数組合、過半数組合との合意によって労働条件変更の合理性が推定されるとする議論(合理性推定論)が説かれています。

個別的労働条件変更法理としては、合意による変更、留保解約権行使による変更、そして変更解約告知が論じられ、変更法理型の変更解約告知(解釈論としての留保付承諾)の採用が提唱されています。

さて、本書では、各国の法状況、理論、動向についての明快な分析、整理をもとにして、綿密に組み立てられた体系的な変更法理(以下、荒木説)が展開されていますが、いくつか気になった点を挙げたいと思います。

まず、荒木説は、労働条件変更法理をめぐる議論の場を大きく広げたものとして注目されます。従来、労働条件変更問題を解決するために、判例、学説はさまざまな議論を重ねてきましたが、それはもっぱら規範的アプローチによるものでした。就業規則による労働条件の不利益変更に対して、どのような法的論理で対応できるのか、その論理構成に議論を集中してきたのです。けれども、秋北バス事件・最高裁大法廷判決(昭和43年12月25日民集22巻13号3459頁)以降、判例法理として確立した合理性基準論(以下、合理性テスト)をめぐる学説の混乱状態、つまり、合理性テスト全面否定論一色の時期の後に、その肯定的再評価の論調が現れ、次いで合理性テストを正当化する議論が展開されたが、同時になお根強い合理性テストに対する否定的評価があるという状態は、規範的なアプローチの限界を示すものだったのかもしれません。

ところが、荒木説は、労働条件変更問題を雇用システム・労働市場の柔軟性という視角(機能的アプローチ)からとらえ、労働条件の変更は解雇権濫用法理による解雇制限の代替としての機能を果たすものとして容認できるとして、判例法理である合理性テストを肯定的に評価し、あわせて合理性の判断基準を組み替え、合理性テストの補強を図ったのです。したがって、この機能的アプローチによる労働条件変更論の当否、有効性について新たな議論が起こることが予想されます。これが第1点です。

第2点は、合理性テストの理解の当否です。荒木さんは、最高裁判例が変更の必要性と変更内容の相当性という二つの要素の程度の比較考量と、これにあわせて多数組合(過半数組合)との合意に当該変更の合理性を推定するという判断枠組みを採用しており、合理性テストをこのように理解すれば、合理性判断には安定性がもたらされる、すなわち事業場の多数、あるいは過半数の支持を得ていることが合理性判定の第1次的指標となることにより、合理性判断の予見可能性が増し、法的安定性がもたらされると指摘されています。しかし、果たしてそうなのだろうか。

合理性判断基準については、浜田論文(浜田冨士郎「就業規則法の論理的課題」『講座21世紀の労働法 第3巻 労働条件の決定と変更』)であらためて厳しい批判がなされていますし、昨年のみちのく銀行事件(最一小判平成12年9月7日労判787号6頁)、北都銀行事件(最二小判平成12年9月22日労判788号17頁)、函館信用金庫事件(最三小判平成12年9月12日労判788号23頁)における地裁、高裁、最高裁での一転二転した合理性判断を見ていると、合理性テストの難点(判断対象事項の相互関係や、判断手順の不明瞭さなど)はいまだに克服されていないのではないか、また、そもそも、多数組合との同意から合理性を推定するという論理は成り立つのかという疑問があります。ですから、荒木さんの言うように、最高裁判例の展開を見ると、就業規則法理に多数組合の同意による合理性の推定を読み込めば、就業規則法理と協約の拡張適用の処理には事業場単位の統一的労働条件変更法理に向けた、一貫した収斂傾向を見いだすことができると言えるのかは疑問です。

また、浜田論文でも指摘されていることですが、労基法上の手続的規制(過半数代表からの意見聴取手続等の法定手続)を履践することが、合理性テストの前提条件であるはずであり、荒木説は、この点を軽視しているように思えます。

第3点は、変更法理型の変更解約告知論についての疑問です。荒木説では、変更解約告知について、民法528条は適用されない(つまり、既に存在する継続的契約である労働契約内容を変更する申込にはこの条文は適用されない)という解釈をとり、留保付承諾を認められていますが、この解釈論は理論的にはともかくとして、現実的ではないのではないか。本書の例示では、使用者が明確に無条件承諾か拒否による解雇かの二者択一を迫った場合、労働者に留保付承諾の余地はおそらくないとされており、留保付承諾という選択肢を裁判例の実績によって確立し、定着させることが望まれるとされています。しかしながら、その間の労働者の精神的、経済的コストを考えると、端的にドイツ流の立法的解決を図る方向の議論のほうが望ましいのではないか。もっとも、私自身は、個別労働条件変更ツールとしての変更解約告知の必要性については消極的な立場をとっています。

労働条件変更問題については、その解決システムをどう整備するか、つまり、裁判所以外の解決システムの可能性が論じられるべきであろうと考えます。この点、本書では自認されていますが、あまり突っ込んだ検討はなされていません。ですから、荒木さんの変更解約告知の合理性審査(従前の労働条件の変更の必要性と提案された労働条件変更内容の相当性の相関判断)については、就業規則変更についての裁判所による合理性テストの適用の場合と同様の難点を負わなければならなくなる、と思われます。荒木さんは、本書で、紛争処理システムも視野に入れた労働条件変更理論を打ち出したいとおっしゃっているにもかかわらず、裁判所による司法審査だけが議論されている。これは残念だなと思いました。荒木さんが、どういうシステムを考えておられるのかということに興味があったものですから。やはり労働条件変更問題を解決するためには、労使双方の納得可能性を高めるということで、おそらく多数組合との同意、合理性推定論も出てくると思うのですが、納得性を高める方向での解決方法ならば、裁判所だけを念頭に置いた議論というのは、ちょっと足りないような気がしました。

討論

機能的アプローチと規範的アプローチ

大内

どうもありがとうございました。今、論点として三つほどご指摘をいただきました。まず第1点目の機能的アプローチによる労働条件変更論の当否についてですが、唐津先生自身はどうお考えですか。

唐津

雇用システムの外的柔軟性と内的柔軟性に着目して、ドイツ法、アメリカ法の現状を分析し、日本の就業規則変更法理を法的論理としてではなく、雇用システムとの調和という観点から正当化する、このこと自体は巧みな説明のような気かします。ただ、アメリカではそもそも労働条件変更法理は不要なわけです。自由に解雇ができるのだから変更も自由にできる。また、ドイツでは内的な柔軟性と外的な柔軟性のバランスをとった議論というものを特に意識しているわけではないようです。ところが、外的柔軟性と内的柔軟性をトレードオフの関係でとらえると、日本ではうまくやっている、つまり、解雇規制が厳しいから内部で労働条件を変更して対外的な経済情勢の変動に適応している。しかし、アメリカ法、ドイツ法の比較法的な検討そして、日本の現状それ自体からは、日本の変更法理の正当性を論証することはできないのではないかという気がします。雇用システムのあり方をどう考えるかということと、労働条件変更法理とは直結するのかという疑問があるのです。

私も同じような意見です。労働条件変更法理の現状をいかに整合的に説明するかという観点からすれば、優れた著作だと思います。ただ、内的・質的柔軟性、外的・量的柔軟性を図式化しすぎているのではないかという印象を持ちました。トレードオフの関係にあるというのですが、果たしてそのように単純にとらえてよいのかどうか。

もう一つ、本書の前提として重要なのは、市場の概念です。外部労働市場、内部労働市場というように、同じ市場という概念を使って雇用システムを説明しようとしています。しかし、この点についても、その場合の市場とは何か、法律論に、しかも労働条件変更という解釈問題に、市場という経済学的な概念を持ち込むことが妥当なのかどうかについて、疑問を持ちました。

水町

唐津先生が問題提起されたように、規範的アプローチと機能的アプローチに分けて議論をすれば、法学者の基本的な作業は規範的判断なのですが、その規範的判断の前提として、機能や実態、社会経済の状況などを考慮に入れて考えることは、あるべき方向だと思います。

そういう意味で、機能に着目して規範的判断をしていくということであれば、新しい観点から新たな解釈の方向性を示した作品だと言えるかもしれません。ただ、機能を重視するあまり、規範的な観点や、理論的な根拠について十分に説明がされていない部分がある点がちょっと気になったところです。特に、就業規則の不利益変更について、その法的根拠が明示されていない。機能的な説明はあるけれども、規範的な根拠について明示的な説明がされていないのが不十分だと思いました。

もう1点、機能に着目した整理ですが、整理としては非常にクリアな気がします。ただ、外的柔軟性と内的柔軟性を峻別することにこだわりすぎているのではないかと思います。同じような問題が、集団的規制と個別的規制にも言えます。集団と個別の峻別にこだわりすぎている点で、非常に人為的で不自然な解釈になっているのではないかという気がしました。外的柔軟性と内的柔軟性は、実は連続性のある概念であって、外的柔軟性と内的柔軟性を別個に取り出して解釈すると、結論として非常にバランスが悪い帰結になることがあるように思います。また、集団と個別の問題についても、集団的労働条件でも個人の尊重が重要な局面もありますし、逆に、荒木先生の言う個別規制条件でも集団的な交渉や集団的な調整が必要な場合もある。両者が密接にかかわった問題であるにもかかわらず、両者を峻別して解釈論を立てすぎている点に不自然な点があると感じました。

大内

なかなか厳しい批判が出ていますが、本書は雇用システムの構造が非常にクリアに整理されていて、私としては勉強になったというのが率直な感想です。

集団的労働条件と個別的労働条件の区別

大内

ただ、やはり、皆さんが指摘されたのと同じような疑問を私も持ちました。とりわけ、荒木さんは判例の就業規則法理を認めておられる。その論拠は結局、外的柔軟性の欠如、つまり雇用保障から来ています。やはり規範論としては、そもそも、なぜ雇用保障が正当化されるのかをもう少し議論してほしい気がしました。外的柔軟性がないということを所与として、外的柔軟性がないから内的柔軟性があるべきだという議論を立てる場合には、その前に、なぜ外的柔軟性がなくともよいのか。なぜ、アメリカ法的であってはいけないのかについて、本当は議論をする必要があると思います。

次に、水町さんが言われた個別的規制と集団的規制という点についての私の疑問は、荒木説によれば、労使慣行が個別的規制の問題になるという点です。私はこれを集団的労働条件とみるので、就業規則に規定された労働条件は労使慣行により引き下げられうると考えているのです。荒木さんは、労使慣行はあくまで契約により規制される個別的労働条件なので、就業規則と契約との関係を規律する労基法93条が適用されるとします。そして93条を適用していない裁判所の一部の判決は問違っていると指摘されます。はたして、裁判所は間違っているのか、という疑問があるのです。

集団的規制、個別的規制の荒木説的な分類というのは、ドイツの議論の影響が強いと思われますが、私自身は、形式的には個別的規制手段によっているが、実質的には集団的性格を持つような労使慣行は集団的労働条件と位置づけるべきと考えています。

水町

荒木説だと、労働協約や就業規則で規定されているのは集団的労働条件で、それ以外のものは個別規制条件というように、それがどこで規定されているかで集団と個別を分けています。ただ、個別と集団の区別の議論では、客観的に集団的な関連性があるのかどうかという点が実は重要で、この本のなかでもこの客観的な集団的関連性を背景としたような解釈部分もみられています。この点で、個別と集団の区分とそのなかでの具体的な解釈がうまくかみあっていないのではという疑問があります。

もともと、最高裁判例(秋北バス事件判決)が就業規則による労働条件の一方的変更を認める根拠として、労働条件の集団的・画一的決定ということが重視されていました。そういう集団的・画一的決定・変更を必要とする労働条件であるがゆえに、就業規則には特別の効力が認められる。逆に、個別的な決定に服する労働条件には就業規則の効力は及ばない。そういうふうに考えることもできるわけですが、それでは、集団的な決定が必要とされる労働条件はどこまでなのかというと、おっしゃるとおり、その範囲を画定する基準は必ずしも明確ではありません。

唐津

荒木説によれば、個別規制と集団規制の区別は決め方の問題ですね。例えば、労働時間や、職務内容、勤務地といった労働条件の内容による区別ではない、そこはおもしろいと思う。今まで、集団的な規制がなじむかなじまないかで区別をやっているわけでしょう。けれども、ある条件について、それを決めたツールでないと変えられないというのは、どうでしょうか。最終的には全部契約の内容いかんに帰着する問題になるような気がするんです。だから、どこにこの議論のメリットはあるのかという気がする。

一つには、そういう個別的決定について、就業規則による集団的決定を排除することでしょう。いわば、有利原則の承認ですね。それを無条件で認めるのか、それとも、そのためには何らかの正当性のようなものが必要なのか。そこのところをもう少し議論してほしかったように思います。

もう一つ、集団的か個別的かという区別は、変更解約告知の議論に影響を及ぼすことになります。要するに、集団的な労働条件決定であれば、就業規則でやるべきであって、そこに変更解約告知が入り込む余地はない。それ以外の個別的な労働条件であって初めて変更解約告知が意義を持つ。この点が、荒木さんの変更解約告知論の特徴です。

就業規則変更の合理性判断

大内

二つ目の論点に行きましょう。合理性判断をめぐる議論についてはどうですか。

唐津

先ほど述べたように、荒木説では、多数組合との合意があれば、合理性テストの枠内での合理性が推定できるとしている。この論理は、第一小型ハイヤー事件の最高裁判決(最二小判平成4年7月13日労判630号6頁)に発想の萌芽があり、それが第四銀行事件最高裁判決(最二小判平成9年2月28日労判710号12頁)で取り入れられたという理解ですよね。けれど、秋北バス事件判決以後の就業規則に関する最高裁判例を検討してみると、最高裁は、かなり無原則といいますか、自由に文言の解釈を変えています。みちのく銀行事件最高裁判決では、多数組合との合意は無視されている。多数組合との合意は、やはり合理性判断のためのいろいろなファクターの一つにすぎず、相対的な位置づけしか与えられていない。菅野和夫先生や荒木さんは、多数組合との合意を重く見るということによって何とか合理性テストの活用可能性を高める方向で議論なさっていますが、裁判実務はそう動いていないのではないかという気がしています。

大内

しかし、その点については、この本の中で説明されていますよね。

唐津

説明はわかります。

だから、最高裁判例をいわば所与の前提として、それをいかに整合的に説明するかについて苦心されているわけですね。逆に、浜田論文との比較で言えば、判例を所与の前提とするがゆえに、なぜ規範的な意味で就業規則に拘束力があるのか、なぜ合理的ならば労働条件を変更できるのか、という基本的なところについての検討は十分にはなされていません。

大内

その点の検討は、やらないということなのでしょうね。

判例を前提とする以上、必要ないということかもしれません。それから、判例の理解自体にも、やや強引なところがあるようにも思います。例えば、判例は、多数組合や多数従業員の同意をそれほど重視しているのでしょうか。一応、合理性の推定機能はあるのだろうけれど、容易に覆すことができる程度の推定ではないでしょうか。

大内

第四銀行事件の最高裁判決では、「推定」という言葉は使っていません。「内容が合理的なものであると一応推測させる」と述べているだけです。ただ、私は、多数従業員の態度を尊重すべきとする考えを支持していますけれども。

唐津

逆に、多数組合ときちんとした協議を経ていないということが、合理性判断のマイナスファクターにならない理由がよくわからないのですが。そういう場合でも不利益が少ないなど、ほかの面で合理性が担保できれば、それは無視されるわけですね。けれど、先ほど言いましたように、労基法の意見聴取手続をやはり踏まなければいけない。罰則付きであるわけですから。こういうふうな枠組みで合理性テストは出来上がっているということを前提にすると、多数組合との協議は、合理性判断にプラスにだけ作用するファクターであって、マイナスにならないというのは、ちょっとバランスを欠いているような気がします。

大内

プラスにだけ作用させているのは多数組合との協議へのインセンティブを与えるということが意識されているのかもしれません。

唐津

多数組合との協議をやらないということは、使用者側が不利益変更を合理化する努力を怠ったということになるわけですから、そのことについてはやはりマイナス評価をする。マイナス評価をすることによって、労使協議へのインセンティブをかけることが可能になるのではないですか。

変更解約告知

大内

個別的な変更手段としての変更解約告知論についてはいかがですか。

唐津

私自身は労働条件変更というのは、雇用関係の解消を目的としたものではないということを前提に考えています。ですから、雇用関係を維持したまま交渉する、あるいは就労を継続しながら協議して、まとまらなかったら、その適否は第三者、望むらくは裁判所以外の特別な機関(紛争処理機関)で判断してもらう、そういうプロセスが当事者意思にかなうのではないか。雇用関係を維持できないのであれば、これは解雇か、あるいは辞職という形で関係の解消を図る以外にないのですから、変更法理型の変更解約告知というツールは要らないのではないかと思うのです。

大内

荒木説だと、合理性の適否は裁判所が判断することになりますね。

唐津

その問題が一つあります。結局は、荒木説では、変更解約告知の留保付承諾が認められますから、労働者は就労したまま、裁判所で変更の相当性を争うことができるということですよね。でも、労働条件について変更する権限を一定の場合に認めたうえで、その変更権の行使が相当であるかどうかを第三者機関で判定してもらうことでも、実質的には変わらないのではないか。私は、解雇が付随した変更の申し入れというのは、避けるべきではないかと考えているのです。

大内

でも、唐津説でも、あくまでも労働者が変更を拒否すれば解雇できることがあるということにはならないのですか。

唐津

ですから、拒否して、第三者の判断で処理をする。嫌であれば、それはもう労働者がやめればよろしいという考え方です。労働者と使用者間の条件が折り合わなければ働けないわけですから、お互いの言い分が通らないということになれば、第三者に仲裁してもらうか、それぞれが決断せざるをえない。使用者が決断するということは解雇です。労働者の決断は辞職です。解雇を前提にするような変更ツールは、私は望ましくないと思っているのです。

大内

そういう場合でも整理解雇が認められる場合はありますよね。

唐津

そうです。整理解雇、つまり、解雇法理で対応すれば足りると考えています。

大内

私もそう思います。「変更法理型」の変更解約告知は、概念としてはそのようなものはあってもいいのですが、現行法上は、要件面では整理解雇法理や、解雇の一般法理に吸収されてしまうのではないかと思うのです。もちろん、変更解約告知というタイプの解雇が行われたときに、多少、従来の法理に修正を加える必要はあるのかもしれませんが、いずれにせよ、荒木さんのいう「特殊解雇法理型」で十分ではないのかと思うのです。

唐津

スカンジナビア航空事件(東京地決平成7年4月13日労判675号13頁)も、整理解雇法理で処理できたと思うのです。あえて変更解約告知と東京地裁は言いましたが、これにはちょっと疑問がある。最近では、個別的雇用管理というとすぐに変更解約告知を活用すると言う人が多いのですが、これには非常に抵抗がある。

水町

留保付承諾を認めるかどうかで、大内さんも、唐津先生も認めないという立場で議論をされているようですが、留保付承諾を認めるという立場は、労働条件変更は嫌だけれども解雇や辞職はもっと嫌だという労働者に雇用を維持しながら争う方法を認める立場ですから、その分、選択の幅は広がることになります。

大内

そうです。留保付承諾を認めるということだとすると、たしかに「変更法理型」の変更解約告知という類型を特別に認めることの意義が出てきます。

水町

立法的解決によって処理するのが望ましいというのは私もそのとおりだと思いますが、立法が動かない段階で、現行法の解釈としてどう処理するのかという観点から見ると、唐津先生が言われるような結論に近づけようとすれば、留保付承諾を民法の解釈として認めて、それでもうまくいかない場合には、最終的には解雇権濫用法理の問題になるということでしょう。荒木説と唐津先生の考え方の違いは、立法的解釈を重視するか、それとも立法が望ましいけれども、立法がないときにどう解釈するかの差ではないでしょうか。

変更解約告知の議論の前提として、解雇それ自体が目的なのか、労働条件変更が目的なのかという問題がありますね。仮に、労働条件変更が目的だとすると、なぜ労働条件変更の問題に解雇を絡めなければならないのかが疑問になってきます。特に、留保付承諾を認めて、労働条件変更自体についての司法審査を肯定するのであれば、なにも解雇を前提とする必然性はないわけです。なぜ変更解約告知が必要なのかというところの議論が、ちょっと欠けているような気がします。変更解約告知を認めるなら、労働者側にも労働条件変更請求権を認めないとバランスを失するのではないでしょうか。

大内

私が変更解約告知を言うのは、最終的には解雇による処理という形にしたいからです。どうしても変更についての合意が成立しないときには解雇だというのを強調したい。荒木さんはそうではなく、むしろ変更法理として純化せよという発想です。そうなると、今、盛先生が言われたように、解雇を伴う必要があるのかという疑問は出てくる。

水町

ただ、配転の場合にも本質的には同様の問題が出てくる。配転については労働条件の変更としての配転法理がありますが、そのときに、留保付承諾を認めるかどうか。もし、労働者が留保付承諾をしないで配転を拒否した場合には、使用者が解雇をすることがあり、この解雇の効力は解雇権濫用法理の枠内で判断されることになりますね。

大内

その場合には、懲戒解雇の法理になりますね。

たしかに、配転の場合は異議をとどめて配転命令自体の効力を争うことができます。これが労働条件変更の場合と決定的に違うのは、配転の場合には使用者に命令権限があることが前提で、その行使について法的な有効、無効を争えるけれども、労働条件変更は、本来は労使の合意が前提になる問題だから、いったん変更に応じたうえで合意の効力を争うことに矛盾が生じることです。

唐津

私は、配転も労働条件変更権の行使の一種と考えているんです。そういう場合は就業規則の中に、変更権が留保されているという構成です。


2. 整理解雇

紹介

土田道夫「解雇権濫用法理の法的正当性」

最近、整理解雇に関する論文が集中的に現れました。その背景には、特に労働経済学者による解雇規制緩和論、それと、角川文化振興財団事件(東京地決平成11年11月29日労判780号67頁)など、一昨年来の東京地裁による、従来の判例傾向とは異なる判断を示す一連の裁判例の出現があります。2000年春の労働法学会でも、解雇の問題がシンポジウムのテーマとして取り上げられました。

最近の整理解雇論文のなかでも特に注目されるものが、土田論文です。この論文では、最初に、解雇一般についてその理論状況を概観したうえで、労働経済学者による整理解雇制限に対する批判を取り上げ、逐一それに労働法学の立場からの反論を試みます。次いで、整理解雇法理の法的正当性という問題を取り上げ、その根拠について検討を加えます。とりわけ、従来のような労働者イコール弱者という、社会権的構成による整理解雇制限法理の根拠づけは、次第に社会的・経済的妥当性が失われているという認識に立ち、より普遍的な正当化の根拠が求められるとして、次の二点を新たな根拠として指摘します。

一つは、内田貴教授の継続的契約関係に関する一連の著作に依拠した、いわゆる継続性原理です。もう一つは、村中孝史さんが指摘した、整理解雇そのものが労働者の人格権の侵害になる恐れがあるという人格権侵害論です。この二点によって、労働契約に限定された特殊労働法的要請でも、終身雇用を背景とする特殊日本的要請でもない、普遍的原理に基づく解雇権制限法理を構築しようというわけです。土田さんは、整理解雇法理が従来の日本的雇用慣行を背景に、その影響を強く受けて形成されてきたとの認識に立って、日本的雇用慣行そのものが変化しつつある現在、整理解雇法理をより普遍的な法理にするためには、従来とは異なる、より一般的な視点からの根拠づけをする必要があると考えておられるようです。

土田論文の後半では、最近の東京地裁の判例傾向にも触れていますが、その中では、整理解雇のいわゆる「4要件」については、「4要素」として理解すべきであるとの判例傾向をやや肯定的にとらえています。また、最近の裁判例に見られる再就職支援措置を回避努力の一つとして位置づけるような判例を肯定的に評価して、それを一つの選択肢として認めるべきだという主張もしています。

以上のように、土田論文は、最近の整理解雇をめぐる多岐にわたる論点を手際よく整理して自説を展開しているのですが、取り上げられている論点は、いずれもこれまで論じられてきたものであり、特に目新しい指摘はありません。整理解雇法理の根拠についての議論は、土田さんが力を込めた部分だと思われますが、結局のところ、整理解雇とは直接かかわりのない、継続的契約関係における継続性原理や人格権論などの一般的な原理論に言及しているだけであり、果たしてそれで整理解雇の規範的な根拠を十分説明したことになるのかどうか、疑問が残りました。かえって、整理解雇法理の持つ独自性というものが希薄化するのではないかという気もいたします。

なお、整理解雇制限法理の根拠に関連して引用されることが多い、村中孝史「日本的雇用慣行の変容と解雇制限法理」(民商法雑誌119巻4=5号)にも触れておきます。村中論文は、整理解雇は労働者の人格権侵害に当たるということを前提として、整理解雇の問題を考える必要があるという点を強調しています。ただし、村中さん自身は、整理解雇の根拠としては、やはり解雇に伴う不利益を中心に裾えています。最近の状況を考えると、人格権侵害という新たな視点を加えるのでなければ、整理解雇の問題には十分に対処できないと考えておられるのでしょう。

最後に、若干の論点を指摘いたしますと、まず、土田論文で問題とされている整理解雇制限の実質的根拠が何に求められるのか、それを論ずることがどのような意味を持つのかということです。これは、学説の中では最近、意識的に取り上げられている問題だと思いますが、一つには、やはり従来の整理解雇法理についての反省があるのでしょう。要するに、現在の整理解雇法理とは、判例の蓄積を前提にして、それを整理分析したものにすぎず、学説は、それ以上に積極的な貢献をしてこなかったともいえます。整理解雇制限の法的根拠を問うことは、いわば整理解雇法理における学説の復権を意識した作業でもあるように思われます。

もう一つは、最近の整理解雇をめぐる学説の議論の傾向として、整理解雇の類型論があります。いわゆる4要件を一律に適用するのではなく、経営不振に伴う人員整理を目的とした不況型、特定の部門を閉鎖するようなポスト削減型、より積極的なリストラのための戦略型など、整理解雇の類型に応じて要件を考えようとする動きです。それによって、従来の整理解雇4要件が次第に崩れていくのか、それとも、整理解雇4要件そのものは維持されて、具体的な適用の場面に応じた調整の方向に向かうのかという問題があります。

討論

解雇権制限の規範的根拠

大内

どうもありがとうございました。

土田論文は本誌に掲載されたもので、編集委員会のほうから解雇権の制限の規範的根拠を論じていただくよう依頼したものです。この論文の試みは成功していると思われますか。

私は必ずしもそうは思いません。先ほども言ったように、継続的契約原理や、人格権侵害ということを持ち込むことで、果たして解雇制限の規範的根拠を十分説明したことになるのかという疑問があります。例えば、継続的契約関係の中では労働契約は典型でしょうが、それ以外の継続的契約もたくさんある。したがって、仮にそのことが整理解雇制限の根拠になりうるとすれば、それ以外の継続的な契約関係についても、整理解雇と同じような、解約に対する制約が導き出されることになるでしょうが、それが妥当でしょうか。人格権侵害についても、いかにも法律学的な議論ではありますが、果たしてそれが労働経済学者を説得できる根拠となりうるかどうか。

大内

村中さんは、労働者にとっての労働とは自己実現の場であり、解雇されるというのは、その場を失うという意味で人格を侵害するというとらえ方をしていたと思うのです。ただ、人格権侵害論に対する疑問は、人格や人格的利益という概念が非常にあいまいであることに加え、人格的利益の保護を理由に解雇を制限すること自体が、かえって人格権侵害を生むのではないかという点です。例えば、解雇された後でも別の企業に望まれて転職していくとなると、そのほうがよりよい自己実現となるということもあると思います。

水町

私も、解雇が人格権の侵害に当たるとする解釈については、もう少し慎重な検討が必要だと思います。たしかに、その会社で働くこと、労働することに生きがいを感じている人や、そう思い込んでいる労働者が少なからずいますか、それは事実のレベルの問題であって、規範的レベルにおいても、労働をする、解雇を制約することが自己実現や人格の開花につながるという解釈をとってしまうことには躊躇を覚えざるをえません。それはなぜかと言うと、特に日本の労働関係に固有の問題として、労働者が長期雇用を前提とした企業共同体の中に深く埋め込まれていて、集団の中で個人を見失い、個人が埋没してしまっているという問題が、根の深く存在している。その中で長時間労働や過労死の問題が、自覚的にか無自覚的にか生じてしまっている。そういう実に真摯に目を向けるならば、解雇を制約して労働者をより企業の中に埋め込むよりも、労働者に自由を与えたり、労働関係から解放するという方向で解釈をするほうが、少なくとも労働者の人格の尊重という観点からすれば、規範的解釈として望ましい方向ではないかと思います。

大内

人格権というのは、極めてインパクトの強い概念で、解雇か人格権侵害と言われてしまうと、少なくともポリティカルには、解雇権規制の是非をめぐる話は終わってしまいます。しかし、実は可能な政策としては、特定企業での雇用維持政策だけでなく、雇用流動化政策もありうるわけで、流動化するなかでほんとうに適職を見つけられるような移動ができれば、そういう人格の実現方法もあるはずです。

したがって、解雇を人格権と結びつけて議論をするべきではないのであり、解雇をどこまで制限するのかは、政策問題にすぎないと言うべきだと思っているのです。流動化政策がきちんと整備されていけば、解雇もそれほど制限する必要はなくなるのです。もちろん、労働市場の現状は厳しいですよ。だから、現状では制限してもいいと思っている。

私自身は、判例による整理解雇制限法理は、実際には制限法理ではないと思っています。つまり、一般には、判例によって解雇が厳しく制限されていることを前提に議論しているけれど、むしろ、一定の要件が満たされれば解雇はできるわけです。その意味では、整理解雇法理の本質は、労働者の雇用継続への期待や解雇に伴う不利益を前提に、使用者に対してできるだけ解雇を回避するための努力を尽くさせる点にあると考えています。だから、大内さんがおっしゃるように、そのような前提が変われば、解雇制限法理の必要性も変わる可能性はあると思います。

水町

盛先生が指摘された、ほかの継続的契約関係にはない労働契約に特殊な事情がやはりあるのではないでしょうか。解雇の問題ではこの点は無視できないのではないですか。

そうですね。先ほど水町さんが言われたこととの関連では、労働者が埋没し、取り込まれている企業組織から、その期待に反して排除するのが整理解雇だという認識です。

たしかに、解雇は、荒木さん流に言えば、外部労働市場で労働力を調整するという機能を持っているけれど、実はもう一つ、組織からの排除という面も持っているわけです。整理解雇は、まさに労働者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、使用者側の判断によって組織から排除することで、労働者の生活を根本から覆すという意味を持っているわけですから、それはまさに整理解雇制限に特有の根拠になるのではないでしょうか。

大内

労働者に落ち度がない場合には、組織や共同体からの排除は簡単に認めるべきではないということですか。

そうです。逆に、専門職とか、年俸制で働いている契約社員などの場合には、組織に対する取り込まれ方は緩やかなこともあるわけで、そういった労働者については、仮に契約条件変更について労使が合意できない場合には、契約の解消という形で組織から出ていくということも考えられます。

大内

なるほど、共同体に取り込まれないような方向に行くべきだという、先ほどの水町さんとは逆の指摘ですね。

水町

盛先生の説明だと、おそらく人格の問題ではなく、経済的に非常に大きな不利益を被ることや、生活の基盤が覆されるといったコンテクストでとらえられていると思います。

権利濫用論としての解雇権濫用法理

唐津

土田論文は、解雇権濫用法理を正当化する論拠を求めるという構成ですが、権利濫用について、普遍的な正当化根拠を議論すること自体がおかしいのではないか。そもそも、いろいろな要素があって、それを総合判断して解雇権の濫用を議論するわけでしょう。一般的な制約の論理というのはそもそもあるのかという疑問がわく。権利濫用の材料になるような要素の中には、例えば、人格的利益が問題になる場合もあるでしょう。しかし、これは一般的な話ではないですよね。いろいろな雇用形態があるわけだし、経済的なダメージの軽重も、いろいろなケースかありうるわけでしょう。

大内

ただ、解雇権濫用法理は、権利濫用論の外見をまといながら、ある意味では制定法に近いような、一つの確固たる法理になっているとは言えないでしょうか。実際、土田さんは、この法理を制定法化すべきと言っているわけです。つまり、この法理には、それなりのはっきりとした規範的な内実があり、それを明らかにしなければならないという点については、わりと、そういう問題意識は学界で共有されていると思っていたのですが、唐津先生のお考えでは、そうじゃないということですね。これはまだ単なる権利濫用論にすぎず、個別的な処理が行われているにすぎないということですか。

唐津

解雇権濫用法理とは、解雇権の行使にさいして、例えば労働者本人の労働能力の欠如や非行、規律違反といった客観的・合理的理由になるものを要し、これに労使の相対的な利益状況のバランスを考えた社会的相当性という、もう一つの要件を加えたものだ、というのが私の理解です。それはやはり、権利濫用論の一適用にすぎないのではないですか。

だから私は、解雇によって、ある利益たとえば人格権的利益が侵害されるとしても、その被侵害利益から解雇を制約するという関係が一般的に成立するのか、疑問に思います。先ほど大内さんが、雇用政策のことを言われましたが、私も、解雇の問題は労働条件変更問題と違い、まさに雇用システム、雇用政策の問題だと考えています。労働条件変更は規範的にも解決できると思うのですが、解雇法理はやはり労働市場との関連がありますから、雇用政策的な視点から考える必要がある。解雇問題の解決のためには、経済的な損失補償や雇用代替的な利益の確保という道をきちんと整備するほかないのではないか。それを雇用政策の各種の行政措置と連動させて、労使がともに利用できるような状況にする。だから、労使協議が大事ですし、解雇退職条件の整備は、一般の解雇にも当然必要だろうと考えるのです。解雇は個別労使間の問題にとどまらないという意味では、何か普遍的な制約原理がありそうですが、実はそうではないのではないか、という気がしています。

解雇規制の立法化

大内

立法化の議論はどうですか。

唐津

解雇ルールは立法化したほうがいいと思います。ただ、そうするとそこでまた新しい議論をしなければいけない。でも、そうすれば最近の東京地裁のような議論はもう出てこなくなります。

大内

立法化に反対する人はほとんどいないように思いますが、私は実は反対なのです。整理解雇に限らず、解雇権濫用法理というのは、権利濫用法理であるがゆえのフレキシビリティーがあるのではないか。私は、権利濫用法理は、一般的な法理となっていると同時に、先ほど唐津先生も言われたように裁判所における個別的な解決手段としても役立つものであり、雇用政策の状況や、外部の社会的な環境の変化に応じて変わりうると思っています。立法化をすれば、ある程度固定化してしまうわけですから、そうではなく権利濫用法理でやっているというのは、ある意味で日本法は幸運な状況にあると言えると思うのです。

立法化の問題というのは、言うなれば、同床異夢という色彩が強い。一方で、解雇の要件を立法化することで解雇をやりやすくすべきだという主張があり、他方で、判例による解雇法理を立法によって明文化すべきだという主張がある。私などは、少なくとも、判例法理では不十分な解雇手続の面や整理解雇基準については立法化して、その内容を明確にすべきだという考えです。

大内

手続的な明確化はあってもいいのですが、解雇回避をしなければならないと法律で書いても、あまり意味がない。かといって、それを具体化していくとかえって硬直化する。

たしかに、そういうことを明文化しても、多くの大企業にとっては意味がないでしょう。既に雇用調整についての仕組みが出来上がっているような企業では、そのような立法は大きなお世話だということになるでしょう。しかし、そのようなルールがない場合や、解雇権濫用法理について知らない、あるいは知っていながらあえてばっさり解雇してしまうような使用者に対しては、立法化による教育的効果を期待できるのではないかと思うのですが。

大内

そのために立法化するというのは、何か、立法化の濫用という感じがします。

それならば、指針や要綱による行政指導という方法もあるでしょう。そのほうが現実的かもしれません。

大内

一部の学者は、規制内容の明確化のために法律をつくれと言うのです。その根底には、簡単に法律をつくったり変えたりできると思っている節がある。法律の制定・改廃は、それ自体にコストがかかるものであるはずで、この点を簡単に考えてはいけないと思います。

そうですね。法律を変えれば解雇が簡単にできるようになるという、法律万能主義のような発想があるように思います。

それに、もっぱら解雇だけを取り上げて、雇用調整全体を見ない傾向も気になります。例えば、統計上、日本では他国に比べて解雇が非常に少ないのは解雇が厳しく制限されているせいで、迅速な雇用調整を妨げているというような議論があります。しかし、解雇はあくまで雇用調整のための一手段であって、これまで日本の企業の多くは解雇以外の手段でかなりの雇用調整をしてきました。だから、解雇が少なくなるのは当然のことです。むしろ、それによって雇用調整を円滑に進めてきたともいえるわけです。


3. 労働市場法

紹介

諏訪康雄「キャリア権の構想をめぐる一考察」

大内

次に、諏訪康雄「キャリア権の構想をめぐる一考察」(以下、諏訪論文(JIL)と略)を紹介いたします。本論文は、雇用政策と労働法の理念として、キャリア権を提唱した非常に独創的なものです。周知のように、諏訪先生は菅野和夫教授との共著の「労働市場の変化と労働法の課題」(日本労働研究雑誌418号、以下、菅野・諏訪論文(JIL)と略)で、労働法を市場経済のサブシステムの一つとして位置づける新たな視点を打ち立て、最近では、諏訪康雄「労働市場法の理念と体系」(『講座21世紀の労働法 第2巻 労働市場の機構とルール』。以下、諏訪論文(講座)と略)で、労働市場法を労働法の中での主要分野へと体系的に位置づける重要な貢献をされています。そして、「キャリア権」は、諏訪教授の労働市場法論の中の一つのキーコンセプトとなっています。

それでは、「キャリア権」とはどういうものなのか。諏訪教授はこれを「理念としてのキャリア権」と、「基準としてのキャリア権」に分けて論じています。雇用政策の「理念としてのキャリア権」については、「キャリアは財産」というスローガンを立て、これを「職務は財産」、「雇用は財産」という過去のスローガンの核心を引き継ぎながらも、外部労働市場の比重が高まる現状にあわせてアレンジしたものであると位置づけます。

そして、この「キャリア権」を、労働権、職業選択の自由、自己実現の権利といった憲法上の規範と関連性を有するものとして、法的に根拠づけています。他方、「基準としてのキャリア権」に関しては、個別の雇用管理においてキャリア決定が組織決定型から個人決定型に移行することを予想し、そのようになると、雇用保障よりもキャリア保障が重要になると述べられます。また、具体的な解釈論においても、「キャリア権」は教育訓練、配置転換、出向、整理解雇などの人選基準、さらに就労請求権などにおいても新たな視点を提供するものと述べます。

この論文の評価ですが、まず、伝統的な労働法学においては、必ずしも労働市場法、あるいは雇用政策は重要な分野とは位置づけられてきませんでした。労働法の出発点を労働契約に求めると、それは採用から退職までの過程に重点が置かれ、採用前や退職後の問題は雇用政策の問題として法理論的検討の対象とほとんどされてこなかったわけです。これに対して、最近では雇用の流動化が進むなかで、採用前、退職後の外部労働市場の重要性が高まり、さらにそれが採用から退職までの内部労働市場の法理論にも影響を及ぼしています。諏訪教授の見解は、「キャリア権」という概念で外部労働市場については政策の理念を示し、内部労働市場における労働契約論などの新たな基準を示すという形で、労働市場全体を統一的にカバーしようとするものです。

このように「キャリア権」が、雇用流動化政策とマッチする単なる政策的な主張として提示されているわけではないという点は注目されます。本論文では憲法27条の「労働権」の規範的意味の検討をはじめとして、キャリア権を憲法の観点から規範的に根拠づけようとされています。立法政策の議論においては、経済学者と法学者が共同作業をすることが多いのですが、経済学者は、その学問の性質からかもしれませんが憲法論をせず、規範論にはほとんどコミットしないのに対して、諏訪教授の見解は法律家としてのオーソドックスな方法論に依拠しようとするものです。諏訪教授は立法政策にも深くかかわられ、実務に影響力が大きいことを考えると、このようなスタンスは貴重であると思います。

もちろん、このような諏訪教授の理論志向には、労働法学において強い反対もあります。ここでは、諏訪教授の議論に真っ向から反論を加えている脇田滋教授の見解を取り上げてみたいと思います(脇田滋「雇用・労働分野における規制緩和推進論とその検討」、萬井隆令・脇田滋・伍賀一道編『規制緩和と労働者・労働法制』)。脇田教授は、「労働市場法論」の持つ市場重視の議論に反対をするわけですが、とりわけ諏訪教授の「キャリア権」構想については、使用者の雇用責任を後退させ、解雇の自由へ大きく道を開くものであると批判し、さらに雇用流動化を推進するなかで必要となる雇用保険などのセーフティーネットに関しては十分な目配りをしていないという点も批判をします。

また、脇田教授は、労働市場法論全般についても、そこに見られる個人としての労働者を重視する傾向について、これを労働者の現実を無視していると批判します。脇田教授は、派遣労働者をはじめとする非典型労働者の保護に目を向けてきた研究者であり、強い自立した労働者像というものは虚構であると強く批判するわけです。また、外部労働市場における労働者の連帯に目を向けていない点、同一労働同一賃金の原則を否定するため、労働市場の二重構造を放置することになるという点などを指摘して批判を行っています。

ただ、「キャリア権」の問題に絞れば、諏訪教授の見解が解雇の自由への道を大きく開くという批判はあまり的を射ていないのではないかと思われます。なぜならば、諏訪教授は、雇用流動化を前提に、そこで求められるものとして「キャリア権」を提唱しているというに過ぎず、実は解雇の自由をどこまで認めるべきかということについては、具体的な見解を示されていないと思うからです。そして、この雇用流動化という前提については、むしろ諏訪教授の予測のように事態が進むと考えざるをえないわけで、「キャリア権」構想はそういう雇用流動化が進むであろう状況を前提に、使用者に対して雇用保障責任にかわるキャリア保障責任のようなものを課す、そういう議論ではないのかと思うわけです。したがって、諏訪論文では、キャリア保障を重視して、その限りでは雇用保障が後退するということは認められるのですが、積極的に雇用保障を軽視していくという議論ではないのではないかと、私には思えました。

他方、諏訪教授をはじめとする労働市場法論がやや雇用流動化の面に傾斜した議論をしている点も事実です。セーフティーネット論や企業横断的な労働者代表の議論を軽視しているような印象を与えているのも事実でありまして、その点では脇田教授の指摘には賛成できるところがあります。

いずれにせよ、雇用の安定を軸として内部労働市場の規制に著しく大きなウエートを置いてきた労働法は、外部労働市場を視野に入れたものへと改革しなければならないと思われます。それにより、雇用政策面だけでなく、解雇論も含めた労働契約論も大きな発想の転換が必要となるだろうと思います。キャリア権は、このような新たな議論への目を開かせる刺激的な概念であると思われました。

討論

キャリア権構想の広がり

私も、諏訪論文は、非常に斬新な発想で感心しました。ただ、脇田論文の批判にも、もっともなところがあると思います。この「キャリア権」の論文ではあまりはっきりとはしていませんが、諏訪論文(講座)を見ると、「キャリア権」が、いうなれば労働市場法論全体、さらには労働法全体を支配するような基礎理念として位置づけられています(講座第3巻14頁)。「キャリア権」こそが労働法全体の新たなパラダイムだというわけです。しかし、果たしてそこまで「キャリア権」を広げていいのかどうか、かえって「キャリア権」の持つ意味があいまいになるのではないかという気もします。

もう一つは、労働市場法論と、従来の雇用保障法の関係です。諏訪さんは、雇用保障法を全部、この労働市場法の中に組み込もうと考えておられるようです。しかし、従来の雇用保障法には、単一の理念というよりは、複合的な理念がかかわっていたと思います。一般の労働者についての雇用保障や適職選択権という面もあれば、障害者や女性、高齢者の雇用促進など、さまざまな要素が入っていたはずです。「キャリア権」という、いわば職業的な概念を中心にしてしまうと、そういうさまざまな理念が捨象される危険はないのかという疑問もあります。

大内

なるほど。それは、脇田教授の指摘する強い自立した労働者のみを対象にしているという点ですね。

そうです。たしかに、特定の範囲の労働者には、ぴったり当てはまる。むしろ、従来の労働法は、そういった範囲の労働者を無視してきたと言ってもいい。諏訪論文がそこに焦点を当てて、「キャリア権」という新たな理念に基づいて鮮やかにそれを組み立てたのは、卓見だと思います。

唐津

私も、さすが諏訪先生の論文という感じがしました。ただ、気になったのは、盛先生も指摘された、労働法全体を支配する法理念という形での「キャリア権」のとらえ方です。菅野・諏訪論文(JIL)は、労働法を交渉力の劣る労働者のためのサポートシステムと位置づけられましたが、この諏訪論文は、それを規範的に体系化したものと理解することができるのでしょう。ここでは、憲法13条の個人の主体性と幸福追求権、22条1項の職業選択の自由、25条1項の生存権、26条の教育権・学習権、27条1項の勤労権を組み合わせて、労働法を基礎づける社会権のグランドデザインを壮大に組み替えるスケールの大きな議論がされています。

でも、今までの、例えば労働契約関係における個人の自由意思の問題や、個別労使間で労働契約を起点にして権利体系を組み立ててきた労働法と、この「キャリア権」構想とでは、何か違和感がある。それが実際にどこまで説得力を持っているのか。つまり、キャリアといえば、むしろ転職というイメージが連動する。そうすると、雇用の流動化を推し進める論理だと、脇田論文にあるように反発が出てくるでしょう。

大内

「キャリア権」構想は正しい方向なのでしょうか。

唐津

そこで失われるものもあるでしょうね。

大内

それがよくわからない。内部労働市場や契約論にまで具体的な議論が波及して初めて、この議論のほんとうのインパクトの大きさが明らかになるかもしれません。

唐津

解雇についてはたしかに何も言われてませんね。

大内

どちらかというと解雇規制の緩和の主張のほうへと傾いているのかなとは思いますが、脇田先生の批判のように諏訪説が解雇の自由へ大きく道を開く、というのは言いすぎだと思います。

唐津

諏訪先生は、人が働くということ(労働生活)をトータルにとらえて、このようなことは今までの労働法が想定してこなかったことだという気はしますが、労働法というものを労働市場も含めたうえでの大きなライフサポートシステムとして考えておられるのでしょうね。

水町

私も、各先生方が言われたように、非常に壮大なテーマで、これまでの労働法のあり方を、違った観点から見直さなければいけないという、大きな問題提起だと思いました。脇田論文との関係でも言われている、交渉力の劣る労働者が存在して、これに対するサポートをしなければならないという点については、昔から量的な変化はあるとしても、質的にはまだ根本的な問題として解消されてはいないと思います。ただ、交渉力のサポートの仕方として、雇用保障以外の方法もありえますし、ここで出されているようなキャリア保障という方法もあると思います。いろいろな制度的なサポートの仕方がありえますので、その問題提起としては非常に重要な視点を提供したものだと思いました。

ただ、雇用保障から一気にキャリア保障に行って、キャリア保障が労働法の中核概念になるという点については、若干懸念もあります。今後おそらく相対的には専門能力型のキャリアで、企業を移動しながらでも養成されるような技能が増えていくと思いますが、同時に、長期雇用の中で養成されていくような長期熟練型の技能もやはり残ると思います。そこの部分ではやはり雇用保障が重要になる。そういう相対的な問題なので、多様な社会の実態を考慮しながら、それを受け入れられるような柔軟な制度枠組みをどうつくっていくのかが重要だと私は思います。

大内

だから、キャリアの保障は、別に雇用保障と対立するものではない。キャリアの内容によっては雇用保障の下でのほうがちゃんと育成されていくということですね。

ある意味では、キャリアにふさわしい雇用保障ということも必要なことでしょう。


4. パートタイム労働と均等待遇原則

紹介

菅野和夫・諏訪康雄「パートタイム労働と均等待遇原則」

水町

それでは、パートタイム労働と均等待遇原則の問題について菅野・諏訪論文を中心に、土田道夫「パートタイム労働と『均衡の理念』」(民商法雑誌119巻4=5号。以下、土田論文(民商法雑誌)と略)、林和彦「賃金の決定基準」(『講座21世紀の労働法 第5巻 賃金と労働時間』)にも触れながらご紹介したいと思います。

まず、菅野・諏訪論文は、先進諸国におけるパートタイム労働者の均等待遇に関する法的アプローチを概観し、パートタイム労働者のための均等待遇原則は、産業別団体交渉などによる職種別賃金率の確立というヨーロッパ的労働市場の構造と、社会的弱者の保護や社会的平等の実現を重視するヨーロッパ的な社会的市場の思想とに基づいた、ヨーロッパ的な法政策であって、自由競争市場の考え方を基盤とするアメリカなど、先進諸国に共通した普遍的な法原則とまでは言えないとします。そのうえで、女性への間接差別の禁止という手法でパートタイム労働者の均等待遇の実現を図っていったイギリスで低技能・低報酬の職種につく女性パートタイム労働者が増加するという職種分離の進行現象が見られたことを指摘し、均等待遇原則の導入は、女性労働者を二極分化、パートタイム労働者の低技能職種への集中につながる可能性があることを指摘しています。

これらの考察をもとに、日本における解釈論および立法論のあり方について検討し、普遍的な法原則とまでは言えないパートタイム労働者の均等待遇原則を、その前提となるヨーロッパ的な社会的基盤のない日本に導入することは困難であり、立法政策としても職種分離の可能性を考慮すると、全体としてのパートタイム労働者の地位向上にはつながらないとして否定的な考え方を示しています。救済否定説を代表する論考であり、極めて明快な論旨でこの説の論拠をまとめた作品と言えるのではないかと思います。

これに対し土田論文(民商法雑誌)は、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保等について、通常の労働者との均衡を考慮すべき事業主の努力義務を定めたパートタイム労働法3条に着目し、この条文が表明している「均衡の理念」はパートタイム労働者への著しい労働条件格差を違法とする司法上の根拠になるという見解を述べ、著しい差別に対する法的救済を図ろうとしています。

土田論文(民商法雑誌)のオリジナリティーは、第1に、パートタイム労働法3条の「均衡の理念」が不法行為上の公序を形成しているという独特の法律構成をとっている点とともに、第2に、基本的に労使自治を重視しつつ、使用者が格差是正の努力を怠り、著しい格差を放置している場合にのみ「均衡の理念」による柔軟な救済を行おうとしている点にあり、均等待遇原則による強行的な解決を図ろうとする従来の救済肯定説と、一切の強行的関与を否定する救済否定説の中間に位置する柔軟な解決方法を提示したものということができます。その意味で本論文はこれまでの見解には見られなかった画期的な考え方を打ち出したものと言えます。

また、林論文は、同一労働ないし同一価値労働同一賃金原則を日本にも導入しようとする従来の救済肯定説を基盤としながらも、同原則を男女間や正社員・パート間の問題のみならず、賃金決定の一般原則として位置づけようとする点、同原則が公序を構成するだけでなく、使用者が同原則に基づいて労働契約上賃金平等取扱義務や賃金差別是正義務を負うとしている点、および、使用者が格差の合理的理由を立証できない場合には、このような格差を生み出した賃金決定基準自体が違法とされ、同基準によって生じた格差をすべて救済の対象としようとしている点で、本多説(本多淳亮「パート労働者の現状と均等待遇の原則」大阪経済法科大学紀要13号(1991年))に代表される従来の見解をさらに理論的に進めたものと言えるかと思います。

このように、この時期には、救済否定説、救済肯定説、およびその中間的な説が理論的な進展を見せながら展開されてきたと言えますが、これらの見解にはなお次のような問題点があるようにも思われます。

まず、菅野・諏訪論文については、労使間の交渉による問題解決を志向している点で、正社員を中心とした日本の労使関係の実態に対して楽観的すぎる展望を抱いている点、および、労働者の二極分化の議論についても、旧来の正社員中心の硬直的な雇用システムを前提とした議論であり、むしろ今後の方向としては、正社員も含めて多様で柔軟な雇用システムを築いていくなかで、差別のない能力発揮社会を築いていく必要があるということが十分に認識されていない点で、現状にとらわれすぎている見解であるように思います。

これに対し、林論文には同一労働ないし同一価値労働同一賃金原則が一般的な法原則であると言いながら、労働や労働価値にかかわらない住宅手当や家族手当の支給も違法でないとするような説示が見られている点で、なお理論的に肝心な部分が十分に詰められていないという問題があり、また、土田論文(民商法雑誌)は、その要件として極めてあいまいな実体的概念が用いられているため、当事者にとっては予測可能性がなく、裁判官としてもそこまでの実体的判断をする知識・能力を有しているとは思えない点で疑問があります。

もっとも、いずれの見解にしても、パートタイム労働者が不当な差別を受けている場合があり、その能力が十分に発揮されていない現状を改善する必要があるという点ではある程度共通の認識が見られるように思います。問題がますます深刻になっている今日の状況を考えると、このような活発な議論を踏まえて、立法や判例が具体的で実効性のある対策を講じていくべき時期に来ているように思います。

討論

各論文の評価

大内

どうもありがとうございました。盛先生、いかかでしょう。

パートタイム労働に関する菅野・諏訪論文は、どちらかというと現状肯定の議論という感じがして、もう少し展望を持てるようなことを書いてほしかったという気もしています。

私が水町さんの評価とやや違うのは林論文です。林論文は、果たしてこれを従来の同一価値労働を主張する学説の延長上に位置づけていいのかどうかです。むしろ、従来の同一価値労働に関する議論に発想の転換を迫ったものではないでしょうか。というのは、従来の議論ですと、同一価値労働の原則というのは、労働の価値に従ってのみ賃金が決定されるべきであり、労働の価値と関係のない賃金決定要素は排除されるという原則だいうことを前提にして、それが日本に適用できるかどうかを議論していたように思います。それに対して、林論文では、むしろ同一価値労働の原則自体が非常に柔軟なもので、各国の賃金制度に合った内容であるべきだし、日本には日本的な同一価値原則があるべきだと主張しています。

そのために、例えば、学歴・年齢などがむしろ同一価値労働の基準として機能すると考えるべきであるとか、職種や職務の同一性は必ずしも同一価値労働の原則の適用にあたっては重要な意味がないと考えるべきだという点を主張しています(講座第5巻86頁)。それが成り立つかどうかは別として、まさに同一価値労働原則の理解そのものに再考を迫った論文だというのが、私の理解です。

水町

同一価値の判断の仕方が前よりも柔軟になったという点は、おそらく盛先生ご指摘のとおりで、これまでの、いわゆる同一価値労働同一賃金原則に立つ見解からは一歩進んだ解釈かもしれません。林論文では、同一価値労働同一賃金原則を、男女差別の問題とか正社員・パート間の問題を超えて普遍的な法原則であると言われているんです。そこで、普遍的な法原則にするにあたって、同一価値の認定を少し柔軟にしようという考え方のようですが、同時に合理的な理由の立証というのをこの原則の中に組み込んでいる。では、同一価値労働同一賃金原則が普遍的な原則であることと、合理的な理由の中身との関係がどうなっているのかというと、この点が具体的に詰められていない。詰められていないので、議論がしにくい。

唐津

その点は私も同じことを感じます。林論文では、同一価値労働同一賃金原則が普遍的な原則と言いながら、むしろ合理的理由があれば格差も認められるという論理になっている。正社員とパート間で賃金をどう決めるか、いかに格差をつけるかは、それを正当化する理由があれば自由であると。そして、その合理的理由として職種、職歴、職務、学歴、年齢、勤続、能力、権限、責任、実績、業績等、ありとあらゆるものが入ってくる。今の格差は、そのどれかで説明可能だと思うのです。

おそらく、これは、立証責任の問題を念頭に置いているのでしょう。格差があることを労働者側が主張し、証明すれば、あとは使用者側でその合理的な理由を反証できなければ原則違反になるということでしょう。

水町

結局、同一価値労働同一賃金原則ではなく均等待遇原則、合理的な理由のない差別をしてはいけないという原則に落ち着くような気がします。

唐津

格差をつけるなら合理的な理由がないといけないと主張しているわけですから。

大内

しかも、合理的な理由はどういうものであるべきかという点までは議論が詰められていないように思えます。

他方で、土田論文(民商法雑誌)によると、均衡と均等とはどういう関係にあると理解すべきなのでしょうか。

水町

均等プラス均衡ではないですか。均衡の真ん中には均等があって、均等も均衡の射程に入っている。そういう広いものとして位置づけている。ただ、その射程は漠然とした概念でアプローチするというものです。

例えば、ILO条約のように、フルタイマーとパートタイマーで同じものは同じに扱い、そうではないものは比例して扱うという発想があります。その点、土田論文では、あくまで均衡を前面に掲げるために、フルタイマーと本来均等であるべき部分がややあいまいになっているような気がしました。読み込み不足かもしれませんが。

唐津

正社員とパートタイマーの格差是正のために比例的救済というのがありますが、その比例的救済でよいのはなぜかというと、均衡がとれているからということですよね。土田論文はパートと正社員の待遇格差が比例的だったらいいという考え方、それを根拠づける議論ではないですか。そうすると、何が比例的かという問題がまた出てくる。

結局、それは裁判官の裁量に委ねられるということでしょうか。それとの関連で、土田さんは丸子警報器事件での8割という救済を均衡ということで説明しているけれど、やや強引かなと思いました。あれはむしろ、許容限度でしょう。

不均等状態の是正はどうあるべきか

大内

菅野・諏訪論文については、救済否定説という評価を与えてよいのでしょうか。私の理解では、菅野・諏訪論文では、救済の仕方としては労使自治に委ねましょうという議論だと思います。

だとすると、やはり法的救済としては否定説ですね。それと、今の日本に均等原則を導入すると、女性の二極化を生む可能性があるという指摘についてはいかかですか。

大内

立法論としても妥当ではないという点ですよね。菅野・諏訪論文では、イギリスの経験からも、水平的分断か生じてしまうと指摘しています。

ということは、女性は下位レベルに固定して一元化すべきだという主張だと言えなくもない。

大内

水平的分断と垂直的分断のどちらがまだましか。現在、日本は垂直的分断であり、そちらのほうがまだよいという考え方もありえます。

唐津

ただ、政策として、均等待遇原則がわが国社会において是か非かという議論をするときは、その前に法理念としてのその妥当性について詰めて議論する必要があると思うのです。単にイギリスでこういうことが起きたということだけでなく。社会的公正さについても、ヨーロッパ的な公正さと、アメリカ的な自由主義的な考え方における公正さとは違うという区分けがありますが、それを法学者が、これはヨーロッパの考え方、アメリカの考え方というように区分けして議論していいのかなという気がするのです。やはり、その底流にある普遍的な考え方を追求するという姿勢は必要ではないでしょうか。

大内

そのような普遍的な考え方はないというのがこの菅野・諏訪論文の主張ではないですか。

唐津

それは現実がそう動いているからということでしょう。ヨーロッパ型とアメリカ型は違うと。

大内

もっと底流に何かあるだろうということですか。

唐津

例えば、人権の思想があるわけでしょう。均等待遇の議論は人権論に近いと思うのです。それを、日本で受け入れていないときに、パートといっても多様化しているわけですから、イギリスではだめだったから、日本でもやっぱり無理というのはどうでしょうか。

大内

でも、実験しなきゃわからないこともあるでしょう。その実験結果としてイギリスの例があり、日本もこうなる可能性がある、という議論はできるんじゃないかと思います。ただ、この水平的分断というのは、実験と同時に理論でも出てきそうな結論ではありますが。

唐津

だとすると、むしろ、そうならないように何か政策として選択肢がないかと考えるのが必要ではないでしょうか。ヨーロッパ型とアメリカ型は違うが、日本はどちらなのかという形で、政策選択肢を狭めるのではなくて、広げる方向で考えるべきでしょう。

大内

でも、おそらく、菅野・諏訪論文の根底には均等待遇理念というものに消極的な姿勢があるのではないでしょうか。これは、ほんとうに人権問題なのか。実は、私自身もそのような印象を持っていて、何でも人権に絡めるのにはちょっと抵抗がある。

水町

仮に人権じゃないとした場合にも、アメリカ型の平等社会と、ヨーロッパ型の平等社会があって、では、日本社会を政策的にどういう社会にしたいのかというビジョンが重要なのだと思うのです。そこで、既に正社員とパートの処遇がかなり離れた二項分離的な状況にあって、そこで平等にしても、結局その差が開くだけなので、少なくとも法的には介入しないという選択肢と、それとも、この二項分離的な状況に手を入れて、理想とする社会に近づけていくような法政策を考えるかの選択の問題ではないでしょうか。あまりにも正社員・非正社員が分かれていて、将来進むべき方向と乖離しているのであれば、後者の選択肢をとって、政策的に工夫をしながら能力を発揮できるような柔軟な雇用社会をつくっていくというビジョンを描くべきだと私は思います。

大内

私は、それは、パートタイマーが自分たちで考えていくべきで、自力で解消することができるはずだと言いたいのです。だから、国が誘導していくのではなくて、労使自治に任せましょうということなのです。

水町

それは、現状に対して非常に楽観的すぎると思います。

大内

労使交渉に委ねることか楽観的だということですか。

水町

労使で話し合いをしなさいと言って、これまでパートタイム労働政策を進めてきたのですが、一向に改善していない。他方で、市場に委ねておけば、パートの需要が高まってパートの待遇が上がっていくはずだとも言われたのですが、実際には、パートの有効求人倍率のほうが正社員のそれよりも上がっているにもかかわらず、賃金格差は拡大する傾向にあり、市場でもうまく対応できない問題になっています。労使関係でも市場でも対応できないとすれば、あるべき社会に近づけていくためには、やはり規範的な介入や政策的な介入が必要なのではないでしょうか。

大内

なぜ正社員と格差があってはだめなのですか。それもパートの選択の結果だとは考えられませんか。

水町

時間制約があったり、一度やめてその後また再就職をしたいという人の能力を活用できる社会にするのか、それとも、そういう人は一度やめたのだから、短時間を希望している人たちの選好かあるのだから、彼(女)らの能力は活用されなくてもいいと思うかの、ビジョンの違いだと思います。

大内

企業だって能力のある人だったら活用するわけでしょう。

水町

そこが、今の正社員と非正社員の分離慣行、日本の企業文化と結びついた一種の強い思い込みのなかで一向に前に進まない状況になっている。

大内

企業が何か偏見を持っていて、パートを無能だと決めつけているということがあるならば、それを啓蒙するのはいいのですが、そこから均等待遇の原則の導入という話になるとちょっと行き過ぎているような感じがします。

水町

啓蒙や労使自治に委ねて改善するのであれば、まずそれをやるべきかもしれませんが、それができないときに何をすべきかという議論の時期にもう来ていると思います。

大内

そうでしょうか。やるべきことはされ尽くしたのでしょうか。

日本の正社員・パート格差問題の特殊性

やはり日本の場合、外国と比べると、あまりに正社員・パート間の格差が大きすぎる。これは、グローバルスタンダードという観点からしても許容されえないでしょう。でも、この問題は非常に難しくて、均等、均衡といっても、それは一つの企業の中での問題ですね。ところが、パートタイマーの労働条件は企業内だけで決まっているわけではなくて、むしろ企業を超えた市場で決まっている。大企業だからといって、中小企業よりも高額の賃金を出すかというと、出すはずがないですね。そういう意味では均等とか均衡をいくら問題にしても、労働条件決定のメカニズムそのものを何とかしないと、事態は一向に変わらないということになります。

大内

企業横断的な組合の登場が必要ということですか。

それも一つです。それから、最低賃金制度の改革もあるでしょう。最低賃金は、日本は先進国の中でもアメリカと並んで低いと言われています。

水町

市場がうまく機能していないのは、正社員を内部労働市場に抱え込みすぎたためではないでしょうか。正社員の賃金は内部労働市場で決まり、それ以外のパート等の賃金は外部労働市場で決めるという慣行のもとで、いくら外部労働市場の賃金を10円、20円上げたとしても、内部労働市場との格差は埋まらない。根本的にどこに問題があるかというと、やはり正社員の内部労働市場の閉鎖性・画一性に問題があり、これをどう再構成していくかが重要だと思います。

大内

だから、正社員の賃金をもう少し弾力化させて、場合によってはもっと下げるべきであるという議論もあるわけでしょう。

水町

安易・単純に正社員の賃金を下げるという方向ではなくて、正社員の雇用形態も多様化してきているので、多様化している雇用形態の中で、いわゆるパートと言われている人たちも、その多様な、複線的な雇用管理の上に乗せて、均等待遇、平等な処遇を実現していくという方向に進めていくことが重要だと私は思います。

大内

仮にそれがありうべき筋だとしても、それを法で強制していいのだろうか。

唐津

ただ、疑似パート問題もある。これは完全に社会的な不正義です。単に正社員と同等に扱いなさいというだけでは、これは克服できない。私は、労働者が選択できるよう、いろいろな雇用形態があっていいと思うんです。ただ、今のパートタイム労働者の問題は、単に選択肢の問題ではない。疑似パートというのは、パート問題を凝縮しているような気がしている。だから、立法政策的な介入は、何か必要ではないかと思います。それが何であるかというのは大議論なのですが。

大内

何かやってもいいと思いますけれども、賃金の決定に法律が介入するというのには抵抗があるのです。最低賃金法で十分ではないのか。賃金は契約で決めるべきものだという先入観が強すぎるのかもしれませんが。

水町

男女差別では法的に介入しています。さらに、アメリカでは年齢差別で介入し、ヨーロッパでは労働時間差別や契約時間差別で介入している。日本ではなぜ介入できないのかという話にもなりますね。


5. 賃金の基礎理論

紹介

盛誠吾「賃金債権の発生要件」

大内

では、次に盛教授の「賃金債権の発生要件」を取り上げたいと思います。盛論文は、賃金債権の発生をめぐる法的な諸問題を論じています。労働者の労務の履行が何らかの理由で行われなかった場合、あるいは不十分にしか行われなかった場合に、一体、反対債権たる賃金債権はどうなるのか。民法の双務契約に関する一般法理はどこまで妥当するのか。このような点は労働契約論にとって極めて重要な課題であるにもかかわらず、これまで十分な検討は行われてきていませんでした。本論文はこれらの問題について体系的に分析を行い、盛教授独自の見解を出そうとするものです。

まず、盛教授は、賃金債権の発生について、ノーワーク・ノーペイの原則に依拠したり、民法536条2項だけで処理しようとしたりする従来の議論が労務の不提供という例外的な場合を念頭に置いており、賃金債権発生それ自体の要件を明確にしてこなかったと批判し、そのうえで次のように述べられます。労働者は所定の労務提供の準備を整えて、所定の就労場所に赴いたときは、使用者は労務の受領があったと推定すべきであり、使用者は労務の受領を明確に拒否していて、なおかつそれが自己の責めに帰すべきものでないことを立証しなければ賃金支払義務を免れない、と。

また、賃金については、その多様性を考慮した検討をするべきであると指摘し、具体的には、例えば賞与について、就業規則などで支給要件や支給基準が定められている限り、労務提供に伴って賃金債権はその都度発生し、その具体的な額は人事考課や査定により特定されるが、使用者が査定を行わなかった場合でも、賞与債権の実現を妨げる債権侵害として労働者に損害賠償請求権が認められ、その額は基準が明確でない場合には、裁判所が補充的・形成的に決定できる、と主張しています。また、使用者は、査定を行う場合には、公正な評価を行う義務があるとし、それに違反した場合には、労働者は公正な評価に基づく場合との差額を訴求することかできると述べられます。このほか、支給日在籍要件については、使用者側の都合により、支給日前に労働契約関係が終了したような場合には、労働者は在籍日数に応じた賞与相当額を損害賠償として請求することができるとされます。

次に、労務の提供が何らかの形で不完全な場合の賃金はどうなるのかという点について、本論文では、「債務の本旨に従った履行」を賃金債権の発生要件として厳格に適用することに消極的な立場に立っていると思われます。例えば、不完全な労務提供であっても、使用者の指揮命令を完全に排除するものではなく、本来の労務の履行自体が可能である場合には、労務の提供自体はあったものと判断すべきであると述べられています。

また、使用者からの受領拒否があったケースについて、最近の裁判例が民法536条2項の適用が認められるためには、労働者が客観的に就労する意思と能力を有していることを主張・立証する必要があるとしている点を批判し、使用者の労務受領拒否がその責めに帰すべき事由によるものと認められ、使用者が労務受領拒否の意思を継続している限り、改めて労働者が就労の意思を有しているかどうかを問題とする必要はない、と述べられています。

以上の盛教授の見解は、賃金債権の発生を労務の提供との関係でとらえ、しかも、「労務提供」があったかどうかという点について、これを広く認めようとする理論志向を示したものではないかと思われます。そこでの「広げ方」には大きく二つのタイプのものがあるようです。一つは、労務提供があったかどうかという際の判断基準についてです。盛教授は、賃金債権の発生要件となる「労務提供」の範囲は、労働契約の内容で決まり、これはある程度広くならざるをえないという立場をとっていると思われます。さらに、違法解雇後のバックペイの請求について、労働者の就労意思を厳格に要求しない主張もこの考え方に連なっているように思われます。もう一つの「広げ方」としては、賞与に関して主張されているように、賃金請求権と賃金債権とを区別し、後者の賃金債権は、賃金請求権の発生前であっても、「労務の提供」によって逐次発生していくと主張しています。

この論文の評価としては、賃金を、履行が不十分であったというケースを想定したいわば裏側からの議論をするのではなく、労務の提供という、正面からの議論をしようとされている点が重要な理論的試みではないかと思います。ただ、労働契約が使用者の指揮命令を受けて、特定された労務を提供し、それに対して報酬を支払うものであると考えますと、盛先生の考え方は、その基本構造に合致した見解であるのかという点が気になりました。つまり、労働者の従事すべき労務は、あくまで使用者の指揮命令により特定され、それに違反した労務の提供は「債務の本旨に従った履行」ではないという議論のほうが理論構成としては労働契約の構造と整合的ではないのかとも思われます。

具体的な例を挙げて言いますと、使用者の労務の提供と受領という問題について、普通は労働者が労務を提供して、使用者がそれを受領することによって賃金請求権が認められると考えると思うのですが、盛先生の見解では、労働者が所定の労務提供の準備を整えて就労場所に行った段階で、労務の提供はあったと構成し、受領を事前に明確に拒否していて、それが、しかも使用者側の帰責事由がないということで、やっと賃金請求権の発生が阻止されるという論理構造をとります。私の理解では、労働契約は、使用者によって、まず、指揮命令で特定された労務がある。その労務の提供をして初めて債務の本旨に従った履行があると言える。そして、それを使用者が受領して、賃金が発生するという構造に思えるのですが、それと盛先生の見解とはやや違う。つまり、この論文では、比喩的に言うと、使用者の受領という問題も、労務の提供の中に入ってしまっており、要するに労務提供の範囲を広くとらえすぎているのではないか、と思います。

以上が、盛論文に対するコメントですが、このほか賃金については、奥冨論文も注目されます(奥冨晃「雇傭契約における報酬請求権発生問題の基礎理論的考察」南山法学23巻1=2号)。同論文は、賃金支払債務の発生について、雇傭契約における労務提供義務が絶対的定期行為であって、自己の意思による労務不提供が直ちに履行不能となるという点に売買契約との違いがあり、このような特殊性にかんがみると労務を提供しない者に賃金支払債務が発生するのはおかしいとして、結論として、ノーワーク・ノーペイの原則が妥当するとします。ノーワーク・ノーペイの原則は労働法学の通説が認めるところですが、民法学の立場からも、雇傭契約には双務契約の一般原則が妥当しないということを理論的に論証した点に、奥冨論文の意義があると思います。

討論

労務の提供と債務の本旨に従った履行

大内

盛論文について、水町さんどうですか。

水町

私も、賃金についてはこれまで理論的にあまりクリアにされてこなかった点が多いので、非常に興味深く読ませていただきました。この論文の最大の意義は、ノーワーク・ノーペイの原則という原理原則論ではなくて、賃金の実態の多様性に応じて個別具体的にその発生や特定を判断すべきという点を明らかにした点にあり、この点で非常に重要な功績を残した論文だと思います。また、そのこと自体は、多様化する賃金の実態にかなった妥当な解釈だと私自身も思っています。

ただ、個別の論点についてはいくつかの疑問があります。特に疑問なのは、大内さんが先ほど指摘された、労務提供と債務の本旨の解釈についてです。つまり、債務の本旨に従っていない労務提供でも、実際に提供されれば、その対価は発生すると解釈されていますが、この問題はまさに債務の本旨に従っているか否か自体の問題なのではないか。理論的には、債務の本旨に従っているか否かを個別の契約の趣旨に即して解釈するという性質の問題なのではないかと私は思います。もし、この点についての盛論文のねらいが、実際に労務提供されれば、その中身に関係なく賃金を発生させるという点にあるとすれば、労務提供中とか、労務提供をした後になって契約の趣旨に沿わない履行であったことが初めてわかるようなケースではどうなるのか。このようなケースでは十分に対応できないのではないか。

大内

盛先生が債務の本旨に従った労務提供を厳格にとらえているかどうかという点なのですが、本論文では、片山組事件の最高裁判決(最一小判平成10年4月9日労判736号15頁)を引いた後に、「労務提供義務は、それは人間労働を内容とするものである以上、常に一定の質や量によって特定されうるものではなく、労働者の経験や熟練、その時々の健康状態や加齢など、多くの要因によって不断に変化することが予定されているものである。したがって、そのような予定された範囲内の労務提供であるかぎり、たとえ通常とはその質や量において異なるものであっても、債務の本旨に従ったものと解さなければならない」(講座第5巻76頁)と書かれており、やや広くとらえているような感じもあります。

水町

この部分は契約の趣旨に沿った柔軟な解釈でいいのですが。

大内

その前の74頁では厳格なとらえ方がされています。76頁のほうでは柔軟です。ただどうも、基本的には、柔軟なとらえ方をするというのが盛説ではないのか、と理解していました。

水町

74頁のリボン闘争のところでは、債務の本旨に従っていないリボン闘争であっても実際に労務が提供されたかどうかで賃金の帰趨が決まるとされていて、「債務の本旨に従った履行」の解釈に一貫性がないような気がします。

大内

私は債務の本旨に従った履行というのは、やはり厳格に解釈したほうがいいのではないかと思っています。先ほど指摘したように、まず使用者の指揮命令があって初めて労働債務の内容は特定されるものですから、ある程度客観的にきちんと決まっているものだろうと。だから、まずは債務の本旨に従った履行かどうかを判断したうえで、本旨履行と判断されたときに、それを使用者側が受領拒否すると履行不能になる。後は、民法536条2項の帰責事由の有無について、ある程度弾力的に柔軟な判断をしていけば、妥当な結論が導き出せるのではないか、と思います。債務の本旨に従った履行のところで、いろいろな事情を考慮するか、民法536条2項の帰責事由の判断でやるか、どちらがいいのかという問題です。私は、536条2項でやったほうが、理論的にはおさまりがいいと考えています。

水町

これは二つの次元の異なる問題で、一方では、債務の本旨に従った履行かどうかの債務不履行の問題があり、他方で、その履行できなかった場合の履行不能・危険負担の問題については、使用者の帰責事由の有無によって反対債権である賃金債権の帰趨が決まるという性質の問題だと思います。

大内

たしかに両者は違う問題なのですが、実際の考慮事由はかなり近寄ってきませんか。私がそういう発想を持ったのは、JR東海の新幹線減速闘争事件(東京地判平成10年2月26日労判737号51頁)においてです。あの事件では、債務の本旨に従った履行というのはかなり弾力的に判断されていて、提供された労務が賃金の支払を拒否するに足りる程度に不十分といえるかどうかという観点から、債務の本旨に従った履行の問題を判断しています。そのような判断は、本来は民法536条2項の枠組みで行うべきだと思うのです。

唐津

盛論文は、多様な賃金形態を念頭に置いて賃金の発生要件という基礎理論的なところを押さえたうえで体系的な解釈論を展開したものとして優れた論文だと思いました。ただ、労務提供の準備を整えて所定の場所へ赴くということで、労務の受領があったと言われるのですが、それで特に不都合はないのか。私は、労務の受領というのは使用者による指揮命令のことだと考えています。つまり、指揮命令をその間に置いておいて、そこで賃金債権が発生すると。たしかに、労務の受領も広くとらえて、自分で常日ごろの労務提供をすれば、そこで賃金債権は発生するということは、労働契約のモデルとしてありうるという気がする。ただ、賃金債権が発生するためには使用者による指揮命令という受領行為が常に必要であって、労働者が所定の場所に来ただけで使用者がそれを例外的に拒否しない限り賃金債権が発生するのではなく、賃金と指揮命令は対になっているものなのではないか。労働者がいったん使用者の指揮命令下に入れば、途中、明確な離脱がない限りは、債務の履行があった、と考えるべきなのでしょうか。基本的に、不完全な労務履行や労務中断があったときには、賃金債権の問題として処理するのではなく、例えば、懲戒処分や人事考課の問題として処理をすれば足りるのではないか、と思います。ですから、債務の本旨を核とした賃金論のほうがいいとする大内さんの考え方のほうに、私も同調するのですが。

大内

もちろん、盛説でも、どんな就労でもよいというわけではないはずです。契約の範囲による限定があるはずです。ただ労働場所に行って、ゲームをしていたというのはいけないわけです。

唐津

ただ、「明確に離脱したと認められない限り」とありますから、そこでの債務の履行というものは一体どういうものを想定されているのでしょうか。

大内

私の理解では、盛説によっても、契約により許容される労務の範囲が狭まってくれば、賃金の発生要件も狭まってくると思うのです。ただ、現状では労働者がやるべき仕事の内容は漠然としか決まっていないから、使用者がはっきりと受領を拒否しなければ、労働者がやった行動がある程度広く労務提供と評価されやすくなる、こういう構造になっているのだと思います。

水町

おそらく局面の違いの問題ですね。労務受領を拒否したら、その時点で労働不能になって民法536条2項の問題になるのですが、受領した後(労務提供を実際にさせて後)では、債務不履行、債務の本旨に従っているかどうかの問題になる。

大内

指揮命令は事前になされ行うべき労務は特定されると思うのですが、なにも指揮命令しなくて、ただ労働者が会社にやってきた場合はどうなるのか。それでも、はっきり使用者のほうが拒否をしなければ、つまり指揮命令を行使しないとはっきり言わなければ、賃金が発生してしまうということになるのか。

水町

指揮命令をしない、自由に働いていいという契約であれば、それが債務の本旨に従った労働になりますが、実際に労務提供の中で個別の契約の趣旨に沿った履行がなされているかが、その債務の本旨に従っているかどうかの問題としてあらわれるわけですよね。

大内

盛論文では、その契約の趣旨というのは非常に広いのでしょうね。

水町

賃金の多様性やそれを含む労働契約の多様性を考慮に入れるのであれば、個別に契約の趣旨を見て、その中の一つとして指揮命令がどういうもので、それに沿った履行がなされているのか否かを個別に判断していくというのが筋だと思います。

賃金請求権と賃金債権

大内

盛論文の賞与論についてですが、労務の提供によって賞与債権が発生しているというのは、そこまではっきり言っていいものなのでしょうか。

唐津

これは賞与の額が決まるような仕組みがある場合でしょう。

大内

基準が就業規則などで定められているということが前提です。

唐津

盛論文では、成果主義賃金が採用されている場合や、使用者による考課査定によって変動するような賃金については、その賃金の内容は平均賃金や過去の支給実績などに基づいて裁判所が補充的に決定できるとされています。けれども、たしかに考課や査定を縛る論理は当然出てくると思うのですが、裁判所が補充的に賃金債権を特定できるという論理がどこから出てくるのかなという気がするんですけど。

水町

公正査定義務という契約上の義務が措定されるとして、その履行を求める方法として公正査定の直接履行やこの査定に代わる判決を求めることができるのかがまず問題となります。もしそれができないとすれば、債務不履行として損害賠償を請求することになる。その場合に問題になるのは、義務違反によって生じる損害額の算定の問題で、ここでは賞与額自体の認定ではなく、賞与相当額の認定となります。そこを賞与額自体の認定だというふうに踏み込んで考えているとすれば新しい考えだし、逆に理論的にどう構成するのかが問題になると思います。

大内

盛説は、支給日在籍要件については、支給日以前に整理解雇をされたような場合に、そのときまでの額が損害賠償として発生するということなのだと思います。債権は発生するけれども、請求権はない。そういう場合の処理として損害賠償でやるんだというアプローチだと思うのです。これは新しい考え方ではないですか。

水町

新しいと思います。

唐津

成果主義賃金の場合も同じような処理になるのではないですか。例えば、使用者には公正査定義務があるから、公正に査定しなければいけなかったのに、そうしなかった。それで、裁判所が補充的に決定する。けれど、賃金債権ではなくて、損害賠償という形です。

大内

そのほうが一貫しています。もちろん、使用者側が支給額の特定をしないがゆえに支払えないという場合には、その特定自身を訴求することもできるということも言っておられますね。

水町

発生と特定を分けているというところが盛論文の特徴なんです。にもかかわらず、賃金債権が発生して、その債権の実現が妨げられた場合には、この発生債権が特定されるという論理がよくわからない。発生と特定を区別するというところと、発生から特定につながるというところの関係が、理論的にうまく説明されていない気がします。

大内

では、この点についてご本人に聞きましょう。

賞与について言えば、債権侵害という形で処理したかったわけです。賞与支給日以前には賞与債権が特定されるわけではないけれども、既に抽象的にせよ発生した権利が侵害されたという点で損害賠償請求ができると構成したかったわけです。

水町

契約当事者同士で債権侵害というのはありますか。第三者による債権侵害という話はありますが、契約当事者同士で………。

債権侵害というのは、言い方が悪かったですね。要するに、使用者側の事情によって賞与債権が現実に特定されることが妨げられたという趣旨です。

大内

ちょっと、まわりくどい理論構成ですね。

従来の考え方によるとどうなるのでしょうか。菅野先生は、労働者が使用者側の事情によって賞与支給日前に退職せざるをえなかったような場合には、支給日在籍要件は適用されないと考えておられるようですが(菅野和夫『労働法(第4版)』177頁以下)、その場合には、いつどのようにして賞与請求権が発生するのでしょうか。

水町

支給日在籍要件が就業規則に書かれていて、それに合理性がないとして支給日在籍要件がなくなった場合に、どの時点で賞与が発生するのか。この点が必ずしも明らかでない。だから、結局、個別の契約の趣旨に即して合理的意思解釈として操作する、趣旨にかなった契約解釈をすると考えざるをえないのではないでしょうか。

大内

そういう裁判例もありますよ。団体交渉が遅れ賞与の支給日がずれてしまい、例年の支給日なら在職していたはずであったのに、支給日が遅れたためにそのときに在職していなかったという場合には、裁判所は賞与の支給を認めていますよね(最近では、例えば、須賀工業事件・東京地判平成12年2月14日労判780号9頁)。

それは、在籍すべき支給日は、賞与が実際に支給された日ではなく、支給が予定された日と解釈することでも対応できます。賞与が支給される期間というのは、社会的にもある程度限定されているわけですから。

大内

例えば、整理解雇の場合には、在籍要件としての支給日を前倒しすることで処理したほうがいいということでしょうか。

水町

ただし、盛先生がおっしゃっているように、賞与も退職金も多様だから、その個別の趣旨に即して契約の解釈がなされるというところを十分に認識しておかなければいけない。

退職金の請求権発生時期と没収可能性

大内

退職金でも同じような問題が出てきますね。

退職金が退職時に初めて債権として発生するという従来の考え方については、疑問に思っています。例えば、現在の企業会計原則によれば、在籍する従業員が退職することを前提として、必要な退職金を積み立てておく必要がありますし、賃金確保法による保全措置の定めもあります。では、なぜ、そういう仕組みがあるのに、労働契約上は退職時まで債権として発生しないのでしょうか。仮に、法的に退職金債権が全く発生していないのであれば、そういう処理自体がおかしいということにもなりかねません。退職金が全く恩恵的給付だというならともかく、やはり、法的にも退職金債権は抽象的には発生していることを前提として、退職金債権保護を考えないといけないのではないでしょうか。

唐津

盛説では、退職金債権は既に発生していて、その額については勤続年数に応じた決め方があるのでしょうが、退職時に特定する。退職時に額が決まるということになりますね。でも、退職金規定で何年勤続すれば金額はいくらってわかっているでしょう。だから、それは特定の問題ではなく、退職金の権利を行使する条件の問題で、退職時でないと権利を行使できないのかどうか、とういうことではないですか。

大内

履行期をずらすということですか。そうすると、労働基準法24条との関係が出てきます。

水町

退職金不支給条項はおよそ無効ということになりますか。

大内

懲戒解雇のとき没収するというのも、できなくなるでしょう。権利が発生しているのだから。

それは僕は、最終的な特定に条件がついていると考えます。

大内

そうですか。私は、懲戒解雇のときに退職金を没収するというのは、ほんとうはいけないことではないかと思うのですが。

唐津

退職金債権について特に賃金の全額払い原則の適用を排除されていませんしね。

大内

懲戒解雇と退職金を結びつけるというのは、あまりにも露骨な労務管理手段であると思うのです。また、使用者は、損害を受ければ損害賠償を請求して取り戻すべきであって、退職金で自分の被った損害額に関係なく全額を回収するのはあまりにも都合のよすぎる方法ではないかと思うのです。しかも、退職金となると金額も高額です。

水町

損害賠償は労働者に故意重過失がある場合に限るのか、損害賠償の額は青天井なのかということなどを考えると、いろいろ難しい問題もからんできますね。

大内

この問題は、解釈論で対処できるのです。懲戒解雇没収条項を公序良俗違反で無効と解すればいいのです。それなら退職金の請求権の発生時期の問題に触れなくてもよい。労働者の損害賠償責任については、別途、責任制限法理で対処すればよいのです。

そうなると、盗人に追い銭という議論に必ずなる。

大内

よくそう言われるのですが、それは多分に感情論だと思います。

実際的な処理としては、留置権というか、支払留保を認めればいいんですよ。要するに損害賠償請求を前提とした支払の留保です。場合によっては、それを損害の補填に充てるということで。

大内

労働者が無資力の場合にも退職金から回収できるということですね。

債務の履行態様は、賃金の問題か懲戒の問題か

唐津

盛論文によると、発生と特定を区分けすると、特定段階で公正査定義務が発動されますか。

それは、個々の賃金形態に応じて決まるでしょう。使用者が特定について裁量権を有しているときは、当然、公正査定義務も問題になります。

最後に、一言反論したいのですが、3人とも問題を債務の本旨のところで処理すべきだというご意見ですね。しかし、債務の本旨に従った労務の提供ではないということから、ただちに賃金債権が発生しないということにはなりません。これまでの裁判例も、債務の本旨に従った履行ではないから賃金債権が発生しないと言っているのではなく、あくまで、使用者による労務の受領拒否が、使用者の責めに帰すべき事由に当たるかどうかということで問題を処理しているのです。

それに、債務の本旨のところで賃金債権の問題を処理しようとすると、結局、使用者側に簡単に賃金カットの権限を認めることになってしまいます。労務の提供が債務の本旨に従ったものでなければ、最初から賃金債権が発生しないとか、不完全な程度に応じてしか賃金債権が発生しないとすると、使用者は、減給の制裁によらずに賃金の減額ができることになります。そうなると、懲戒処分や減給についての規制の存在意義がなくなってしまいます。働きぶりが悪ければ、それは債務の本旨に従った労務の提供ではない。だから、賃金請求権の全部または一部は発生していないから賃金カットだと言えるわけですが、それはどうでしょうか。やはり、債務の本旨については、労務の提供があったかなかったかというレベルで議論して、たとえ不完全にせよ、労務の提供があった以上は、賃金債権は発生すると考えるべきだと思います。それが結果的に不都合だというのであれば、使用者としては懲戒処分で対処することもできるわけですから。

大内

先ほどの唐津先生の指摘と逆ですね。つまり、まずは賃金論でやって、いきなり懲戒論でやるべきではないということですね。

逆に、賃金カットができないから、懲戒処分で対応する合理性が出てくるとも言えます。

唐津

ただ、賃金カットの適否を争うことと、懲戒処分のレベルでその適法性を争うことは、結局同じではないでしょうか。


6. 健康配慮義務

紹介

渡辺章「健康配慮義務に関する一考察」

続いて、渡辺章先生の「健康配慮義務に関する一考察」を取り上げます。この論文は、前半では健康配慮義務の問題が、後半では健康診断の問題が取り上げられていますが、ここでは主に前半部分を紹介いたします。

この論文は、これまで健康配慮義務が安全配慮義務の下位概念として理解されてきたことに対して、この二つの義務をその法的根拠や、義務違反に対する法的救済の理論構成に関して、あくまで峻別すべきであると主張した点に意義があります。

まず、安全配慮義務とは、使用者による労働場所の「指定」、設備・器具の「供給」、労務提供過程での「指示・管理」のいずれかの面に労働者の生命、健康に対する危険が内在し、それが顕在化した場合(これは業務要因性と呼ばれます)、労働契約上の信義則を根拠に使用者に損害賠償責任を負担せしめるものとしています。

これに対して健康配慮義務は、具体的な内容またはその義務違反が問題になる状況によって、労働契約規範または不法行為規範のいずれかの性質を有する義務とされ、その内容は二つに区分されます。一つが、業務要因性のある危険からの労働者の保護、もう一つが、直接業務起因性のない労働者の肉体的、精神的素因ないし基礎疾病の発症、増悪の防止を含む健康自体の保護であり、その点で安全配慮義務と区別する意味があるとされます。

そして、労働安全衛生法の第7章に定められた、事業者の健康保持増進措置の性格を三つに分けます。第1が安全配慮義務の内容になるべきもの(65条など)。第2が安全配慮義務または健康配慮義務のいずれかの内容になるもの(65条の3など)、第3が健康配慮義務の内容になるもの(66条1項など)です。

労働者が健康を保持することは、本来、労務提供義務をその債務の本旨に従って履行するための労働者自身の注意事項ですが、特に、業務の客観的に危険な属性のほか、業務の量的・質的な「過重性の介在」によって自然的経過を超えて発症が増悪したと認められる場合は、まさしく労働災害防止義務の違反ないしは安全配慮義務違反の有無の問題ということになります。

次に、先ほどの第2の範疇ですが、これに関しては、労働者の既存の健康障害状態には、業務要因性のある負傷・疾病の場合と、本人の素因ないし基礎疾病による場合とがあって、当該健康障害防止措置は、前者については安全配慮義務の問題となり、後者については健康配慮義務の問題になるということです。

第3の範疇は、それ自体としては、労働者自身の健康に対する注意ないし自己管理に事業者が積極的に協力するよう義務づけられたものです。特に健康診断がその内容になりますが、その違反は、労働環境の場にふさわしい内容の、不法行為上の注意義務違反の問題として検討されるべき性質のものであると指摘されています。

このように、安全配慮義務は労働契約に基づく義務として、健康配慮義務は労働者の健康に対する一般的な不法行為上の注意義務というように明確に区別して位置づけた点に、この論文の特徴があります。従来の理解とは大きく異なるわけですが、今後、健康配慮義務が果たす役割を考えると、これは非常に重要な問題提起だと思います。というのは、最近、厚生労働省では、メンタルヘルスに関して、使用者の注意義務を強化する方向で政策を進めようとしていて、メンタルヘルスのための管理者を指定させるとか、そのための研修システムを立ち上げるといったことをしています。つまり、労働者の健康問題は、単に業務との関連性を問題にすれば足りるというものではなく、労働者が生活時間のかなりの部分を企業において過ごしていることや、これからの保健医療のあり方を考えれば、やはり、業務との関連性を超えた、労働者の一般的な健康に配慮する使用者の義務というものを問題にしていかざるをえないと思います。もちろん、そのことについて、どこまで使用者に負担をさせるべきかという問題はあります。しかし、全体の方向性としてはそちらに向かっていくでしょうし、そのような観点から、健康配慮義務をこれからより具体化していく作業が必要になると思います。

これと対照的な論文が水島郁子「ホワイトカラー労働者と使用者の健康配慮義務」(日本労働研究雑誌492号)です。水島論文では、過労死や過労自殺に関する裁判例において、しばしば言及されている適正労働条件措置義務、健康配慮義務、適正労働配置義務の内容を詳細に検討したうえ、特に健康配慮義務が、通常の労働関係においても使用者が労働契約上負う義務となるのかどうかという問題について考察した論文です。

それによりますと、使用者はまず、すべての労働者に対して適正な労働条件を決定することが求められ、健康診断を実施し、その結果に基づいて労働者を適正な職場に配置すべき義務を負いますが、これは安全配慮義務の履行として理解されます。しかし、それ以外には使用者は基本的には健康配慮義務を負うものではなく、ただ、労働者(特に基礎疾病を有する労働者)の申出があれば、その労働者の健康に配慮した適正な職場に配置する必要があるという限りで、健康配慮義務の存在意義を認めるというものです。したがって、健康配慮義務は、水島論文の場合には、疾病労働者が業務の軽減や配置換えを求める場合に、使用者がそれに応じなくてはならない根拠として機能するということになります。

もともと水島論文と渡辺論文は、基本的な発想が全く違っています。特に水島論文の場合には、判例による安全配慮義務が、とりわけ過労死、過労自殺というような極限状態を前提として拡大されてきたということに対する疑念があります。それをそのまま労働契約の内容に持ち込むわけにはいかないという観点から、一般的な労働契約上の義務としての健康配慮義務を限定的に解釈するという意図に基づくものではないかと考えられます。

したがって、同じ健康配慮義務というテーマを扱っていますが、二つの論文は全くと言っていいほどかみ合っていない。両者を比較することで、今後の健康配慮義務の性格、位置づけはどうあるべきかについて改めて考えてみる必要があると思いました。

それから、やや気になったのは水島論文の前提です。これは、大内さんも主張しておられたと思うのですが、安全配慮義務の内容とは、ほんとうに拡大されすぎているのかという点です。例えば、電通事件(最二小判平成12年3月24日労判779号13頁)では、上司が過労自殺した社員の状況を把握していながら、有効・適切な措置をとらなかったことが健康に配慮する義務違反に当たり、そのことが民法715条によって会社の責任になるという構成をとりました。本件に関しては、そこまで使用者に健康配慮の義務があるのかという批判があることはたしかですが、そのことが労働契約上の一般的な健康配慮義務の拡大をも意味すると理解してよいのかどうか。その点、疑問に残りました。

討論

健康配慮義務の及ぶ範囲

大内

どうもありがとうございました。ちょっと質問していいでしょうか。渡辺論文では、健康配慮義務の範囲を画定する基準が出されているのでしょうか。

明確には出していないと思います。要するに、これまで未分化だった安全配慮義務と健康配慮義務を区分したうえ、労働安全衛生法上の健康確保措置義務の内容を整理しようというのが論文の意図です。論文自体が、その整理だけで終わっていますので、それ以上に、健康配慮義務の範囲を画定する基準は取り上げられていません。

大内

渡辺論文は、労安衛法上の規定をいろいろ区分できると指摘したうえで、健康配慮義務が不法行為によって根拠づけられる場合については、基本的な発想として、人が他人と接触する場合にはそれにふさわしい注意義務を負うという、そういう注意義務から根拠付けられています。ですから、渡辺論文では労安衛法上の規定しか述べられていないけれども、このような根拠からすると健康配慮義務は、広い射程をもちうることになりそうです。一体どこまでこの義務が及んでいくのかということを知りたいし、それがはっきりしなければ、渡辺論文をどう評価するのかは難しいと思います。逆に、水島論文では、健康配慮義務をむしろ限定する発想が示されており、その点でははっきりしています。

唐津

労安衛法の中にはいろいろな義務規定がありますが、渡辺論文はそのえり分けをやろうとなさったのかなという気がします。健康配慮義務は、一般的に使われる用語ではあるけれども、この概念と安全配慮義務との相互関係はあまり明確ではありません。ただ、使用者が負うべき注意義務の内容として健康に対する配慮があると一般に理解されている。

水島論文では、これは安全配慮義務でカバーしてはいけないという発想があるのでしょうか。それは、契約上の義務ではなくて、不法行為上の義務として構成したほうがいいと考えられているのか。しかし、水島論文の理解の仕方が果たして適切なのかという疑問はあります。また、盛先生がおっしゃったように、安全配慮義務の内容はほんとうに肥大化したと見るべきなのかという点にも疑問があります。

大内

水島説は、健康配慮義務を不法行為法上の義務として論じていますか。

いや、契約上の義務だと思いますよ。おそらく、安全配慮義務に関する判例は、むしろ債務不履行ではなくて不法行為のほうで構成しているという前提に立って、それが労働契約上の一般的義務としての健康配慮義務の内容になっていく、という考え方に立っていると思います。だから、水島論文でいう限定的な健康配慮義務とは、あくまでも契約上の義務という理解だと思います。

唐津

そうすると、水島論文は、今まで安全配慮義務の内容になっているとして論じられていたもの、あるいはそのレベルで議論されていたものを、安全配慮義務という概念から取り出して、別の概念としてその義務の内容を制約的・具体的に論じたというところに意味があるのでしょうか。

大内

従来の裁判所で出てくるのは、損害賠償のケースですよね。そのときに出てくる安全配慮義務違反の議論を、そのまま使用者が履行すべき義務という行為規範のレベルにそのままもってきていいのかという発想が水島論文にはあるのだと思います。もう少し限定したほうがよいという主張なのだと思います。

唐津

電通事件の最高裁判決は注意義務の内容を論じていますよね。

大内

そうです。でも、高裁までは安全配慮義務という言葉を使っていたはずです。いずれにせよ、水島論文では、その義務の内容を、行為規範のレベルでは、例えば、疾病があるか、どんな病気をしたかなどの細かい健康管理は使用者に求められないとし、使用者に義務づけられるのは、せいぜい一般的な健康診断で出てきた情報か、あるいは本人の申告に基づいて配置の配慮をするぐらいではないかとするわけです。使用者に積極的な疾病状況の把握などをするよう求めるべきではないという議論であり、私はその点には非常に賛成できます。

そうなると、渡辺論文で取り上げられている労安衛法上の健康確保措置は、水島説ではどう理解されるのでしょう。それはあくまでも公法上の義務として理解されるのか、それとも、一般的な適正労働条件措置義務に関係するのでしょうか。

大内

水島論文でも、一般健康診断の実施は、安全配慮義務というより、公法上の義務として当然に義務づけられるということが前提なのだと思います。労安衛法上の義務が契約の内容となるかどうかは一般法理に委ねられるので、当然に労働契約上の安全配慮義務の内容となるというわけではないと思います。労安衛法の義務と労働契約の義務とは別の問題ですから。

でも、健康診断といっても、特別健康診断ではなくて、一般の健康診断が安全配慮義務の問題かどうかというと、やや疑問です。その点では、渡辺説のほうに説得力があると思うのですが。

大内

でも、渡辺説では、健康配慮義務としてはやらなきゃいけない。

適正労働配置義務

唐津

適正労働配置義務というのは、健康という観点からの適正さを言っているのですか。そうでないとすると、適正労働配置義務はどういう仕事をやらせるのか、それ自体を要求できるということになりますよね。

大内

非常に血圧が高い人にストレスのたまる仕事をさせないとか、そんなイメージではないですか。

唐津

申出があれば、それには配慮しなければいけない。

大内

水島論文の健康配慮義務は、申出があって初めて出てくる義務なのです。だから、使用者側から一方的に、従業員の健康状況を探索するところまでは義務づけられないから、それは使用者がやらなくても、責任を負わなくて済むということです。

唐津

水島論文では、疾病労働者が業務の軽減、配置替えを求める場合には、それには応じなければいけないとされています。その場合に使用者には健康配慮義務があるわけです。だとするなら、これは、労働条件の内容を変えるという意味で、労働者の側の一種の労働条件変更権に当たるように思うのですが、そういうものを肯定できるのですか。

大内

そこまで踏み込んでないのかもしれませんが、つながるのかもしれません。

唐津

例えば、労基法上、妊娠中の女性は軽易業務への転換を請求できる権利を認められていますが、申出というのは、それとパラレルに考えているのでしょうか。

大内

水島論文では権利があるとまでは言っていません。でも、申出があって、それに使用者側が適切な対応をしなければ義務違反になる。それによって損害が生じた場合、例えば、死亡したり、病気になったりするということになると、損害賠償責任が発生するでしょう。

唐津

そうすると、労働者が例えば配置替えを求めたけれども、その求めたものを与えられなかったから欠勤をした。それで、懲戒処分を受ける。その懲戒処分の適法性を争うという形で健康配慮義務の議論が生きてくるんですかね。

大内

そういうことだと思います。

ただ、健康配慮義務としては狭すぎるのではないですか。例えば、電通事件のように、だれが見てもおかしな状況になっているにもかかわらず、本人が何も言わない以上、使用者の責任を問えないというのはどうでしょう。それとも、その原因が業務に関連しているのだから、むしろ安全配慮義務違反の問題だというのでしょうか。

大内

電通事件のような場合なら責任を問えると思いますよ。でも、最近、使用者の健康配慮義務の範囲を広げようとする議論が強いわけです。それには行き過ぎの面もあるのではないか、と私は考えています。

水町

業務にかかわることと、業務にかかわらない労働者の人格や個人的な領域に当たるようなところとの線引きの問題については、水島論文では、使用者が権限として労働者を配置できるというところでは一定の義務を負うけれども、それ以上の、まさに人格やプライバシーにかかわるようなところには、使用者から積極的に介入することには懸念があるので、そこまで義務化するのは問題だとされています。渡辺論文は、逆に、少なくとも労安衛法で言っているようなことは不法行為法上の注意義務になるし、さらにそれから広がる可能性もあるという議論です。そこの線引きをどうするのか、それとも線引きしないで無限定に義務が広がっていく可能性を認めていいのかという問題は非常に深刻な問題だと思います。

唐津

ただ、健康配慮義務の問題は、個人的な事情である疾病にかかわることなのでしょう。労働者本人にとってそれがつらいから仕事の内容を変えてくれということも使用者は認めなければいけないんですかね。つまり、労働者が申出さえすれば、どんな内容でも使用者はいろいろ配慮しなければいけないのか。

安全配慮義務と健康配慮義務との違いはあるか

大内

そこも入っているんでしょうね。そういう意味では、配慮義務は労働者に優しいパターナリスティックな義務です。だからこそ、水島さんは、健康配慮義務という概念に押し込んで限定したのではないですか。安全配慮義務というのは、もともと判例では、やはり渡辺先生の言うような業務要因性と密接に関連をしている義務なわけです。そうなると、それ以外のところは、健康配慮義務という別の概念で受け皿をつくったほうがおさまりはいいのではないかと思うのです。

唐津

ただ、安全配慮義務の内容として、高血圧の人に対しては、それが増悪するような就労条件、例えば長時間労働であるとか、休みを取れないとか、代替要員がいなくて年休も取れないという状態であれば、やはりそれを改善する何らかの措置をとらなければいけない、と論じる。そのような措置を健康配慮義務としてではなく安全配慮義務として論じても、何の不都合もないんじゃないかという気がするんです。なぜ、そこで健康配慮義務なのか。例えば、基礎疾病がある人について、健康を害さないようにいろいろな措置を講じなければいけないということを、安全配慮義務として論じることは行き過ぎなのでしょうか。

大内

それは業務そのものの危険性に関係しないのではないですか。その意味で、このような義務はやはり一種パターナリスティックな性格のものです。安全配慮義務も健康配慮義務も、同じ配慮という言葉を使っていますけれども、安全配慮義務を業務要因性と関連づける考え方を純化するならば、それぞれの守備範囲を分けたほうがよいと思います。

そのような業務関連性がない場合にも、使用者に対して労働者の健康に対する配慮を義務づけるという意味では、健康配慮義務を独自の概念とする意味はあると思うのですが、それは必要かどうかという議論はありうると思います。

大内

水島論文では、それが必要な場合もあるということを言っているのではないですか。

唐津

そうすると、安全配慮義務の議論の中で、健康に配慮する義務の内容としてはこういうものがありますと言ってもおかしくはないんですよね。いずれも労働契約上の義務ですし。

大内

まあ、そうですけど。私は、安全配慮義務は決してパターナリズムから出てくる義務ではなく、業務の危険に関連するもので、使用者が本来負うべき義務だと思うので、パターナリスティックな義務である健康配慮義務と区別したほうがよいと思う。

業務が原因になって健康を害したという場合もありうるわけでしょう。その場合は、健康について使用者が配慮するのは、これは一種の安全配慮義務の一環ということになるわけですね。それ以外の場合にも、健康について使用者が配慮すること、例えば、メンタルヘルスの問題でカウンセラーを置くことを義務づけるという点では独自の意味はあるのではないですか。労働者が申し出たときに適正配置をすることだけが、健康配慮義務なのかなという疑問はあります。

唐津

私は、議論のメリットを考えているんです。たしかに、そういう概念を分けて、使用者の負うべき義務の内容を明確化するメリットはあると思います。権利義務の内容を明確化するという作業としては意味があるのだろうと。ただし、法律上の効果としてどのようなものを想定するかによるのですが、今言ったように配慮義務の内容を特定していくこととなるのであれば、それは安全配慮義務の下位概念として位置づけるしかないのではないですか。

大内

いや、両者は性格が異なるという見方もできるのです。

もう一つ、健康配慮義務を措定する意味があるとすれば、使用者がそれを履行しない場合に、具体的な作為を求める権利までも認める場合です。結局、損害賠償ということであれば、大きな違いはないわけですから。

大内

実際上の効果という点では、違いがないかもしれません。

水町

業務にかかわらない、いわゆる私疾病に関しても使用者には一定の義務を負わせることがあるとしていますよね。水島論文では、申告すれば私疾病も健康配慮義務によって、使用者の一定の適正配置義務が出てくる。他方、渡辺論文については、申告をかませないでも使用者は一定の義務を負うことがあるとしている。

大内

そこまで言っているのかどうかわからない。

水町

そこまで言っていると思います。そこが、画期的なところで、解釈論としてそれがいいかどうかを議論すべきなんだと思います。

大内

最初にも言いましたが、渡辺先生が健康配慮義務の範囲はどこまで考えておられるのか、私はよくわからなかったのです。

水町

労安衛法は最低基準になると言っている。それプラスどこまでいくかははっきりしていません。

法定基準が労働契約の最低基準だと考えると、一般的な健康についての配慮も契約上の義務ということになりませんか。

水町

なぜ不法行為上の義務と言っているのかも、あまりはっきりしない。一般人としての義務と言いながら、実際には使用者と労働者の関係の間で生じるような義務を想定しているのですから、契約上の義務と考えるのが素直なような気もします。

大内

やはり業務要因性で説明できないからだと思います。このようなものは、一つの議論としてはパターナリズムと言ってもいいと思うのです。それを渡辺先生はそう言わなくて、一般市民の義務としている。これは、労使間における使用者のパターナリズムと言ってもいいと思う。パターナリズムと言うと、そこでプライバシーとどう関係してくるのかという問題が出てくる。水島論文は、そこを意識して議論しているような感じなんですね。水島さんはパターナリズムという言葉は使っていませんが。

あまりパターナリズムを強調するのもどうかと思いますが。実際問題としては、労働者は生活時間の大部分を会社で過ごすわけですよ。そういう状況下で健康を維持するには、会社の協力は不可欠でしょう。病院に行くにしても、カウンセリングを受けるにしても。そういう意味で、それは無制限のものであってはならないとは思いますが、一定の明確な内容の健康配慮義務を考えるということは、善し悪しにかかわらず必要なことだと思います。

大内

プライバシーを侵害しないように注意をして会社が健康配慮を行いながらも、それが不十分だったと言われるとすると、使用者にはきつい。その意味で、健康配慮義務の及ぶ範囲を明確に画定しておく必要があると思います。

適正労働条件措置義務

大内

あと、水島論文で、重要だと思ったのは、適正労働条件措置義務がちゃんと履行されたら、適正労働配置義務違反は問題にならないと言っている点です。

たしかに、労働条件が適正であれば、過労死や過労自殺は問題とならないわけですね。しかし、適正な労働条件とは何でしょう。

大内

健康配慮の問題の核心は、実は、適正労働条件措置にあるのではないでしょうか。例えば、電通事件も、労働時間の管理をちゃんとしていれば、もしかしたら起きなかったかもしれない。三六協定の管理もいいかげんだった。あの事件は、労働基準法上の労働条件保護をきちんとやっていれば起きなかったかもしれない。こういうのが適正労働条件措置でしょう。

しかし、理論的には、適正労働条件措置義務が尽くされていないから、過労自殺について法的責任が認められるというようには直結しないように思います。そこはやはりもう一段、結果を責任に結びつける論拠が必要になってくる。だから、電通事件の場合には、上司が健康状態について十分知っていながら放置したということを媒介として、法的責任を認めるという構成をとったわけです。

大内

電通事件は、会社のほうで、まさに指揮命令の仕方に問題があったわけですよね。だから、そこに業務要因性があると思うのです。だから、あの事件は安全配慮義務違反と言っても、全く構わないケースなのですが、あの事件の最高裁判決から使用者が一般的な従業員の健康を把握する義務があるとまでは言えないのではないか、ということです。


7. 企業組織の変動

紹介

吉田哲郎「純粋持株会社解禁と労働法上の諸問題」

大内

では、次に、吉田哲郎「純粋持株会社解禁と労働法上の諸問題」を紹介いたします。本論文は、純粋持株会社の解禁により、既存の単一の企業が各事業部門ごとに分割され、企業間における人事異動が増加してくると予想される状況において、法人格の相違に固執する伝統的な労働法理論を批判し、一定の企業グループを一つの「企業」と見る「実質的単一企業」理論を提唱して、従来の配転・出向理論の組み替えを行おうとするものです。吉田氏によると、実務的には形式的な法人格の違いがあっても、一定のグループ企業内であれば、労働者は同じ企業に所属するという意識を持つものであり、同氏は、そのような実務感覚をストレートに法理論に投影しようと試みております。

本論文では、持株会社や企業グループをめぐるさまざまな論点がありますが、理論的に注目されるのは、「実質的単一企業」を単位に人事異動と雇用保障を考えていこうとする点です。吉田氏は、「実質的単一企業」の範囲では、出向や復帰が予定されている転籍に配転法理を適用し、労働者の同意がなくてもよく、他方で雇用保障の点では、例えば持株会社の基幹労働者に対する整理解雇については、いわゆる4要件の充足について、「実質的単一企業」レベルで見て判断をしていくべきであるというふうに述べます。

ここで言う「実質的単一企業」は、その範囲が労働者ごとに決まる相対的なものであるという点に特徴があります。具体的には、労働契約の内容や採用の趣旨において、当該労働者の人事管理の単位がどこまで広がっているのかといった要素などによって決まるというふうに述べられています。そのため、持株会社の基幹労働者については、子会社も含めて広く「実質的単一企業」となるのに対して、子会社で採用された労働者については、その子会社を中心に「実質的単一企業」が措定され、同じ企業グループに属しながらも、子会社の労働者のほうが、持株会社の基幹労働者よりその「実質的単一企業」の範囲が狭くなるという結論になります。

本論文における具体的な主張として注目されるのは、先ほども触れましたが、出向や転籍には「実質的単一企業」内での異動と、そうでない異動とがあり、前者は配転と同視すべきであるということを明確に提示した点であります。

しかし、本論文で批判の対象とされている伝統的な労働法理論の理解が正確であるのかどうかについては、やや疑問もあります。一例を挙げますと、吉田氏は、配転は使用者の一方的な権限により行使できるものと理解しているようですが、それが妥当でしょうか。吉田氏は、配転は労働者の同意が不要で、出向は労働者の同意が必要であるが、その峻別が法人格の違いから由来しているのはおかしいとして、その区別を「実質的単一企業」の内か外かという基準にシフトさせようとしています。しかし、労働契約論の観点からは、配転も出向も労働条件の変更という点では共通であり、どちらにせよ労働者の同意が必要であります。従来の学説は配転と出向について、法人格の違いを決め手として具体的な議論をしていたのでしょうか。むしろ、別企業への異動(労務提供先の変更)は労働者の事前の同意に含まれていないことが通常なので、出向命令権の根拠となる同意の有無について、配転よりも慎重な認定が必要とされていただけではないのでしょうか。いずれにせよ、吉田氏の言うように、「実質的単一企業」の範囲を労働契約などを媒介に画定していこうとする限りは、「実質的単一企業」の枠内での出向について、労働者の具体的な同意があると認定しうる場合が多いと思われますから、そうであるとすると、既存の労働契約論と、「実質的単一企業」理論との違いはそれほど大きくないということにもなります。

この論文は、このほかにも、使用者責任、労使関係論、コーポレートガバナンスにまで踏み込んでおります。ただ、いろいろな論点に触れることにより、論文の内容が「実質的単一企業」理論からやや離れてしまっているところがあります。学術論文としてみれば、人事異動と雇用保障に絞って論じたほうがインパクトがあったように思います。とはいえ、持株会社の解禁をめぐる問題を横断的に分析したことの意義は小さくありませんし、とりわけ吉田氏が実務的観点からの分析を行おうとしたことを考えますと、むしろ包括的に多くの問題点に触れる手法を取ったことにも、それなりの価値があったのではないかと思われます。

なお、吉田氏は、持株会社の解禁は労働者の専門職化を促進し、労働契約の内容を限定する結果、内部労働市場一辺倒から外部労働市場の形成と、そこへの依存を強める方向で、我が国の労使関係を新たな局面へと展開させる契機をはらんでいる、という注目すべき主張もされていることを最後につけ加えておきたいと思います。

討論

「実質的単一企業」の理論のオリジナリティ

水町

配転と出向については、大内さんの理解も可能だと思いますが、転籍については、従来の学説は、やはり配転や出向とは法形式が違うものだとして処理してきたわけですよね。吉田論文は、そういう法形式にとらわれずに、実務感覚に基づき実態に即した法的処理を行っていこうという観点から、新しく「実質的単一企業」の理論を創造した点で、とても新鮮でおもしろい論文だと思いました。

ただし、理論化の仕方や、要件の立て方については、不十分な点があるという気はしましたが。

私も同感です。「実質的単一企業」というので、読み始めたときは、なるほどと思っていたのですが、読み進むうちに、論点が拡散してしまいました。例えば、使用者概念のところでは、「実質的単一企業」ではなくて、実質的労働契約という別の基準が持ち込まれていて、最後には、外部労働市場や内部労働市場の問題にまで触れています。しかし、これはなかなかの力作だと思います。

唐津

この論文では、著者本人の実務感覚からでしょうか、働いている人は、配転や出向で、自分がどういう労働条件規制を受けるか、どういう手続きで働くかをよく知っているんだということを前提として議論されていますが、でも、そうなのかなという気がする。実際、論文では、「ただし」と限定されて、「実質的単一企業」と言えるためには、最低限充足すべき条件として、そういった「実質的単一企業」を構成する企業間に資本保有関係など一般に企業グループと言われる関係があることが必要、とされています。また、その後のほうでは、「さらに当該範囲を実質的単一企業と認定するには、配転法理を支える基盤と同一の状況を創出することも必要となる」と、何か循環論法みたいな形で展開する。配転法理を適用するための単位がこうだから、だから形式的には出向でも配転として扱うんだと。そこが、説得力がないような気がする。

大内

それは私の理解では、その範囲での配転とか人事異動を予定しているからできるというだけで、労働契約論からすると当たり前に出てくる話だと思います。

水町

要は、配転も出向も転籍も、法的根拠は当事者の合意なんですよね。その点は、究極の根拠として押さえておかなければいけないところなんですが、吉田論文ではこの合意以外に、実態を強調しすぎてこれに左右されすぎている気がします。要件を三つ立てるときにも、一つは合意に関するような要件だけれども、第1の要件と第3の要件は、実態を全面に取り入れて、密接的企業関係の要件というのを入れている。この実態の要件が一人歩きして、人事異動を命じる権限があるんだという構成になっているところもある。この合意と実態をきちんと峻別しながら整理して理論化できれば、理論的にも整合性のあるものになったような気がします。

理論的な観点からはそうでしょうけれども、多分、吉田氏は、それはおかしいと考えているのです。それが実務的感覚ということの意味でしょう。例えば、学説・判例上は出向に同意が必要だというけれども、実際には、出向も配転の延長で、どちらも人事部の命令一本でやっていて、労働者だってそれを当然のことと受け止めていますよと。むしろ、現実とずれているのは理論のほうだという発想があるのではないでしょうか。ただし、実務的感覚なるものが、現実ベッタリとか、実務の無批判的な受容に陥る危険がないとはいえません。

水町

ただ、その合意が、人事異動時の個別の合意ではなくて、契約締結時かもしれない。その契約締結時の合意がどういうものだったのかというのを合理的に意思解釈して、その範囲を画定するということであれば、今までの理論と、実態を考慮して理論化しようとする吉田論文との整合的な解釈はできると思います。

大内

興和事件(名古屋地判昭和55年3月26日労判342号61頁)のように、採用時に労働者が関連会社間での人事異動がありうるという説明を受けていた場合には、配転と同じように出向命令は出せるんですよね。それと同じじゃないかという気がします。

水町

復帰予定のある転籍はどうですか。吉田理論と従来の学説とはちょっと違ってくる。

大内

復帰の予定のある転籍って、命令権の要件のところではかなり出向に近い扱いができるのではないですか。

むしろ、復帰が確実に予定されている転籍なら、もはや転籍ではなくて、出向でしょう。

大内

ただ、出向元との契約関係が一応切れるということはありますけどね。

水町

そこがこれまでは、出向類似だから出向と同じ要件でいいと言ってきたと思うのですが、出向と同じだからというよりも、そもそもそういう合意が契約締結時にあって、その合理的解釈によって、そういう人事異動もできるんだというふうに考えた論文だと思います。

大内

従来の議論が、ほんとうに、そんなに法人格の違いを重視していたのでしょうか。

唐津

転籍は法人格が違うというよりは、契約解消をして、新しい契約を結ぶという構成ですから。ただ、それは法律的な説明で、実態はそうではないでしょう。

大内

吉田氏の主張には、人事異動がある範囲において、雇用保障も考えていくということがあり、配転と解雇の牽連関係を認める議論をここで応用するわけですね。それは説明としては受け入れられやすい。ただ、既存の理論を批判するなら、配転法理、出向法理をもう少し詰めて議論したほうがよいと思います。それから、最後の、持株会社の解禁が外部労働市場の形成を展開していく契機になるという話はおもしろいと思うし、また、持株会社の解禁が労働者の専門職化を促進するという点も指摘として興味ぶかい。

その点は、どう理論的に説明できるのか、ちょっと理解できませんでした。外部労働市場というよりは、むしろ持株会社という枠の中での内部的な市場でしょう。

水町

拡大された内部労働市場の中での組織理論ですかね。


8. ユニオン・ショップ

紹介

大内伸哉「ユニオン・ショップ協定が労働団体法理論に及ぼした影響」

次は、ユニオン・ショップをテーマとした大内さんの論文を紹介します。

この論文は、題名こそ「ユニオン・ショップ協定が労働団体法理論に及ぼした影響」となっていますが、実際には、その主題は、ユニオン・ショップ協定の及ぼした影響の分析そのものよりも、任意団体としての労働組合というものを前提とした場合に、労働団体法理論はどのように再構築されることになるのかを提示することにあります。

論文では、まず、労働組合が組合員に不利益な決定や行為を行う場合に、その正当性は組合員の意思に求められなければならないが、ユニオン・ショップ協定締結組合では組合への加入は強制され、脱退が制約されているために、その前提に欠けることになる。そこで、ユニオン・ショップ協定有効論は、その正統性を補うために、個別に不利益制限法理を模索せざるを得ず、さまざまな面でその法理を発展させてきたというように評価、批判いたします。さらに、最近のユニオン・ショップ無効論についても、結果的には労働組合の正統性を軽視し、不利益制限法理を許容していると批判します。

次いで、ユニオン・ショップ協定の効力について論じており、そこでは、最近のユニオン・ショップ協定違法論とは異なり、消極的団結権を強調しています。それ以外にもいくつかの論拠が示されますが、そういったことを論拠として無効説をとったうえで、労働組合を組合員が任意に加入・脱退できる任意団体としてとらえた場合には、意思形成過程の民主性が確保されている限り、団体としての決定は正統性を持つことになるから、ユニオン・ショップ協定有効論のような特別の不利益制限法理は不要であるという前提に立って、各論的検討に入っていきます。

ここではさまざまな論点が取り上げられてますが、主な点を列挙しますと、まず、組合の対内的関係については、組合員資格は組合規約によって自由に決定することができ、性別や思想信条を組合員資格の条件として定める組合規約も有効とされます。統制処分の関係では、規約を中心とした組合加入契約の内容に応じて、あくまで自主的に決定されるべきもので、除名処分についても、特にその有効性を限定的に解釈する必要はないという主張がなされており、とりわけ裁判所による司法的介入には非常に消極的な立場がとられています。さらに、違法争議指令には拘束力があり、政治活動の自由を制限する組合の決定にも拘束力があるのは原則であるという、これまでの理解とは正反対の主張が展開されます。また、組合の対外的関係については、労働協約には、公正代表審査のような条件を付するまでもなく、当然に拘束力が認められ、違法争議についての個人責任は否定されませんし、山猫ストは正当性を欠くといった、大胆な結論が出されます。ほかに、立法政策論として、従業員代表論などにも触れております。

この論文の主旨は、労働組合は任意団体である限り、加入・脱退は自由であって、労働者が組合に加入し、民主的な決定がなされた以上、それに従わなければならないが、それに従いたくなければ、いつでも組合をやめればよいし、それかできるのだから、加入強制や脱退制限を前提とする不利益制限法理は一切不要であるということにあります。また、自己決定に伴う自己責任を貫徹しようとする点にも大きな特徴があると思います。このように、大内論文では、任意団体としての労働組合が大前提となっているわけですが、まさにそのような任意団体としての労働組合がどのような趣旨のものであり、そもそもそういう労働組合は存在しうるのかということが、問題になると思います。

たしかに、そういった任意団体としての労働組合を純粋な理念型としてとらえるならば、大内理論は非の打ちどころがない一貫した理論だということができるでしょう。しかし、現実の労働組合が、果たして、大内さんが想定しているような労働組合像と合致するのかどうか。大内さんは、ユニオン・ショップがあると加入強制・脱退制限が働くとおっしゃいますが、では、ユニオン・ショップ協定を締結していない組合は、大内さんが想定される任意団体として把握され、大内理論がそのまま適用されるのでしょうか。しかし、現実の労働組合は、たとえユニオン・ショップ協定を締結していなくても、何らかの強制や制限、制約という要素がつきものなのではないでしょうか。ユニオン・ショップ協定締結組合自体の強制が事実上のものだとおっしゃるのですが、たとえ締結していない組合であっても、仲間を裏切ってはいけないという仲間意識のような心理的圧迫によって加入を余儀なくされたり、脱退が制約されたりすることもありうるでしょう。形式的な強制はないというだけで、加入・脱退が任意だととらえて、そのことを前提とした議論を展開するのは現実的ではないようにも思えます。

特に気になったのは、嫌ならやめればいいという指摘です。それを言ってしまうと、それ以上議論が進まないことになってしまう。やはり、嫌でも組合にとどまる利益とか、少数者の保護というものは認めざるをえないのではないでしょうか。先ほど言った仲間意識ということもあるでしょうし、とりわけ、労働組合の組織が民主的な組織であるとするならば、常に少数意見が多数意見に変わる可能性があるはずだし、そのための条件が確保される必要があると思います。

それから、加入や脱退が任意の労働組合は、今でも労働者が作ろうと思えば自由につくれるわけです。それにもかかわらず、実際には組織率が恒常的に低下していて、俗にいう組合離れが進行しているわけですが、そのことをどう理解すべきなのか。大内流に自己決定と自己責任を結びつけて、組合をつくれるのにつくらないのは労働者の自己責任の問題だとして突き放すことでよいのかどうかです。

討論

大内論文の評価

大内

どうもありがとうございました。唐津先生、どうですか。

唐津

ユニオン・ショップ協定の有効・無効論について、仮に大内さんの考え方に立つとしても、労働組合のいろいろな活動に対して、司法的なコントロールは及ばないものとして考えるべきである、とされている点がひっかかります。大内論文では、そういうスタンスでいろいろな局面での解釈を展開されているのですが、組合加入契約の合意内容いかんで結論が決まってしまう点が気になるのです。つまり、入り口で決まる。ところが、組合の内部運営については、そこで意思決定をなすというときには、今度は民主的でないといけないんだという、任意団体と言われるのに、なぜそれが出てくるのか。組合運営の意思決定のレベルだけ民主制を要求して、それ以外ではこれを要求しない、例えば、性別による組合員資格の制約を肯定したり政治活動の自由も制約できるという論理を採られているが、そこでは、憲法上の規範である法のもとの平等、一定の事由に基づいて差別的な取扱いを受けないという論理が遮断される。その区分けと根拠は一体どこにあるのかという疑問があります。

水町

盛先生が指摘された点ですが、ユニオン・ショップ協定がない現在の農会については大内理論ではどうなるのか。それはおそらく任意団体で、大内さんが想定しているような組織であって、大内理論がそのまま及ぶということになると思います。そこで、事実上の強制や規制あるいは仲間意識などがあったとしても、それは事実上のものに過ぎないので、法的には考慮しないというのが、おそらく大内理論なのだろうと思います。その意味では、全く抽象論かというと、今の現実の社会の中でも一定の現実性を持った理論であるし、これまでの学説に対して理論的にクリアな整理をしながら、非常に独創的な見解を提示しているところが、とてもおもしろい。ただ問題は、そのような解釈がもたらす社会的帰結がどうなるのかという点です。

特に、大内さんの議論は、私的自治と自律的な労働組合を出発点として、そこから理論的整理をしているのですが、やはり私的自治には内在的な問題がある。個人には情報や能力の点で限界があるというのは今でも本質的には変わっていないのですから、労働者個人には交渉力の限界があるという点は変わらない。この点について、大内さんの考え方では、労働組合を自律的に結成して、そこで集団的に交渉すればよいということになると思うのですが、労働組合にも、社会的・歴史的なコンテクストから見るとやはり問題がある。労働組合自体はそもそも工業化時代で均質的な労働集団を前提にして、組織を拡大しながら集団的な力で交渉しなさいという組織で、今の憲法も法律も、それを前提とした労働組合像を描いているのですが、現在のポスト工業化の時代趨勢の中で、労働組合が社会的求心力を失っているのは、歴史の長い流れの中で見ると、ある意味では歴史的必然のような気がする。大きい組合では多様な利益や複雑な動きに対応できない。では、小さい組合を多数つくればいいかというと、小さい組合では交渉力が弱いので、現在想定されている労働組合ではやはり対応できない。

そうすると、やはり私的自治にも問題があるし、今の労働組合にも限界がある。その二つを出発点にしながら、理念型としての理論を組み立てた点では非常におもしろいのですが、現状の認識、将来の展望においてちょっと楽観的すぎる。

脱退の自由の意味

唐津

とにかく、嫌だったらやめればいいんだというのでは、議論が終わってしまう。

大内

これ、評判悪いんです。

唐津

意思決定過程における民主制というのは、要するに多数決の原理でしょう。少数派に転落したら、もちろん多数を形成する可能性があるんだから、自分でとどまるか、出るかは、それは自己決定だという議論もあるんだろうけれども、その少数者の権利も、任意団体といえども、実際の運営上はやはり配慮しなければならない。法理論的にも、組合が決めたことについては決まったことだから、決める過程に対する民主制のチェックだけで十分だというのは、私には納得できないです。

大内

脱退が自由な団体でもですか。

唐津

もちろんそうです。労働組合と言っても、一企業の中の一組合ではなくて、企業横断的な組合とか、いろいろあるわけでしょう。また、組合が下したある判断については支持しないかもしれないけれども、ある決定についてはものすごくサポートしたいという組合員もいるわけでしょう。その中でいろいろな利害調整をやるべきであるし、また、やらないと組合自体も運営できないと思うのです。企業内に組合があって、それに入るのも入らないのも自由、労働条件は自分で決めたらいい、おそらく、大内さんの頭にはそういう前提があるんじゃないかなという気がするのですが。

大内

嫌ならやめればよいというのを強調されるとちょっと困るのです。やめないで、組合にいる以上は組合の決めたことには正統性があるというほうを強調したいのです。組合の決定の内容は組合内部での問題であって、組合員はそこにおいて自らの活動や言論で、組合の決定に影響を及ぼすことができるはずですから。

組合の内部問題と司法介入

唐津

そういう面では、裁判所による司法的な介入も認めるんですか。

大内

いや、これは組合内部の問題であって、裁判所が介入するべきことではないと思います。例えば、高齢組合員に厳しい賃金の不利益変更をしたとします。内部で討議したことを前提にすると、使用者と協約が締結されたのに、その後、高齢者が、使用者に対して、この協約は無効であると主張できるとするとどうか。組合員である以上は、後から使用者に対して、うちの組合は合意したけど自分たちには効力が及ばないと主張するのは、何か筋が違うという気がします。

水町

そこでは手続に関する民主制のチェックはするけれども、実体に対しては裁判所は基本的に介入しないという考え方なんですね。その点は私も賛成です。

大内

ただ、ユニオン・ショップ協定締結組合だったら、そうは言い切れない。だから、ユニオン・ショップ協定が認められれば、特別な救済法理が必要となるのです。協約に対する内容審査は、そういう観点からであれば正当化できると思います。

大内さんの言わんとするところはわかりますが、やはり組合を構成する組合員の利害は、決して均一ではありません。そうした多様な利害が絡んでくるとなると、やはり、単純に民主制とか多数決原理だけで処理するわけにはいかないでしょう。多数の利害を調整するメカニズムというのは、組合内部の組織だけでは限界があるわけで、そこをだれがどうやってチェックするのかが問題となります。

大内

それを裁判所がやるというのは、おかしいんじゃないかという気がする。組合内部でできなかったら、それはもうしようがない。

改めて、利害が共通する人だけが集まって組合をつくればいいということですか。

大内

団体とはそういうものではないかなと思うのです。労働組合は違うのだと言われると、そうかなという気もしますけど、私自身は、労働組合を団体という面でそれほど特別なものではないと考えている。なるほど、組合に負わされている使命は大きいですよ。ストライキ権は特別な権限だし、社会的使命も大きい。だからといって、団体の性格まで変わるとみる必要があるのかという気がしています。

労働組合は公的団体か

唐津

ただ、公的団体論にも関係するのですが、民主社会の一員である以上は、やはりいろいろな面で制約は受けるし、特に、労働組合という、特別な権限を一定の要件をクリアさえすれば享受できる存在であれば、やはり単なる任意団体ではありえない。

大内

そういう意味ではね。ただ、いろいろな権限があるということですと公的団体になってしまうのでしょうか。

唐津

もちろん直結はしないけれど、それは無視するわけにはいかないのではないか。単に私的な任意団体ということだけでは説明がつかないものがある。例えば、男だけの組合である、女だけの組合であるということ、それはみんなが合意しているから、それでいいじゃないかということで足りるのかなという気がする。

大内

男だけの組合には、団体交渉権が憲法上保障されない、ということになりますか。憲法28条から、こんな組合じゃなきゃだめだという結論を導きだすことはできないのではないかと思うのですが。

唐津

ただ、団結権などの労働基本権を保障する憲法28条は、憲法の中の規範ですから、法の下の平等を保障する憲法14条の規範も当然、そこで考慮しなければいけない。だから、労働組合は単なる私的な任意団体ではありえないだろうと私は思うのですが。

大内

男性組合は違憲ですか。

唐津

憲法の中での団結権保障や法の下の平等などのいろいろな権利保障は、それら全体が整合性を持っていることを前提としているのではないですか。

大内

だって、女性だって女性組合をつくれるんですから、どこにも差別はないでしょう。

たしかに、職種別組合がよくて、男性・女性組合がだめというのは、考えてみると変な話で、好きな連中と集まって組合をつくれるというのは原則でしょう。でも、労働組合として、より一般的な課題に取り組むとか、企業内の労働条件を統一的に決定しようとする場合には、男性や女性だけの組合による交渉で決めていけるかというと、やはりそれは否定せざるをえないと思います。

実は、私自身は大内さんのおっしゃることにもある程度賛成でして、労働組合法5条との関係で法律上の救済を受ける必要がないなら、性別や思想信条を組合員資格としたとしても、それ自体は法的に禁止されないし、労働組合ではないということにはならないと考えています。

大内

その点は、同じですね。

ユニオン・ショップが禁止されるとどうなるか

大内

あと、組合はユニオン・ショップを使わず労働者を集めろと言いたいのです。

唐津

それはわかります。

大内

チェックオフもやるべきではないと思っています。そうしてこそほんとうの強い組合ができる。

でも、それだと、たいていの労働者にとっては、かえってしんどいことですよ。そこまでしなければいけないのなら、組合なんか入らないし、やりたくもないということになるでしょう。

大内

私はそのへんの認識が違っていて、既存の組合は怠慢じゃないかなと思うのです。労働者のニーズにどれだけこたえるサービスを提供できているのか。

そういうこともあるでしょうが、それなら、ユニオン・ショップを禁止して、チェックオフもやめさせたら、理想的な労働組合が出現して、組合運動が活性化するかというと、おそらく、そうはならないと思います。かえって、組合組織の離合集散や組織率の低下の結果として、使用者に対する対抗勢力としての存在意義すら危うくなるのではないでしょうか。

水町

そうなって必然的に組織率が下がったときに、組合と企業が交渉した結果をどこまで拡張適用していくかという点も問題になると思います。4分の3という基準ではない、新しい拡張適用制度をつくらないと、団体交渉は形骸化してしまいかねない。

フランスでは、代表的だとされる五つの組合が、それぞれ1~2%ぐらいしか組織率がないにもかかわらず、その一つでも合意すれば、その労働協約が全体に拡張適用されるという制度をつくって初めて労使関係が成り立っています。

そういう場合には、組合が組合員だけの利益を代表するのではなく、労働者全体とか、組織対象として予定された労働者の利益全体を代表するという役割を果たすことになるわけですね。それに対して、わが国の企業別組合が有する最大の問題点は、企業の正社員の利益しか代表していないことにあります。私自身は企業別組合の従業員代表機能を重視する立場ですが、同時に、そのような限界性をも十分に考慮すべきだと思っています。


9. 国際労働関係法

紹介

山川隆一『国際労働関係の法理』

水町

国際労働関係法について、山川隆一『国際労働関係の法理』を取り上げます。本書は、国際的な労働関係にどの国の法が適用されるのかという問題について、アメリカにおける議論の状況などを踏まえながら、そのアプローチの仕方から具体的な適用法規の決定まで、包括的な整理検討を行った大作です。国際労働関係法という新たな研究領域を労働法の側から切り開いてきた山川先生が、その研究を集大成させた歴史に残る作品と言ってよいでしょう。

その骨子を紹介しますと、まず第1章で国際労働関係における法の適用のあり方をめぐる問題の所在と検討課題が明らかにされ、続く第2章ではアメリカにおける問題の処理状況が検討されています。そこでは、当事者自治が原則として承認される準拠法選択のアプローチと、個々の法規の地域的適用範囲の画定のアプローチという二つの異なるアプローチがあり、それらに基づいて具体的にどのように処理がなされているのかが詳細に分析されています。第3章では、以上の分析を参考にしながら日本法の検討を行います。まず、「私法」については準拠法選択、「公法」については地域的適用範囲の画定と考えられてきた伝統的なアプローチの仕方に疑問を投げかけ、両アプローチを統一的に把握する枠組み、すなわち、労働契約の準拠法に関しては当事者による法選択を基本的に承認しつつ、当事者の選択は地域的適用範囲の画定のアプローチによって直接適用される絶対的強行法規によって制約されるという見解(「絶対的強行法規の直接適用」説)を提示しています。そのうえで、日本の主要な労働法規について、各法規の目的、規制対象、法の実現方法などに照らし、絶対的強行法規に当たるのか否か、その地域的適用範囲はどこまで及ぶのかという点が具体的に検討されています。

これに対し、山川理論とは異なる観点からこの問題を検討した論考として、米津孝司「グローバリゼーションと国際労働法の課題」(『講座21世紀の労働法』第1巻)があります。米津論文は、国際労働契約法に関して日本とドイツの比較法的考察を行った著書『国際労働契約法の研究』(尚学社、1997)を基礎としながら、日本法をめぐる諸問題について総論的な検討を行ったものです。その特徴は、第1に当事者の法選択によって、当該法選択がなければ適用されるであろう法による労働者保護が奪われてはならないとする最低基準保障原則を、準拠法決定のアプローチの中で確立しようとしている点、第2に、契約準拠法となる労働者保護法は、これと重なり合う介入規範(絶対的強行法規)の目的を現実に妨げる場合に限って排除されるとして、最低基準保障原則を含んだ準拠法決定のアプローチによる解決を重視し、山川先生の言う絶対的強行法規の直接適用に対して抑制的・限定的な態度をとっている点にあります。

このお二人の業績によって、国際労働関係法という難解な法分野に二つの水準の高い法理論が構築されたと言ってよいかと思います。この二つの理論を対比してみますと、両者は次の2点で重要な違いを持つものと言えそうです。第1に、その背景にある法的基盤の違いです。山川理論はアメリカの議論の影響を多分に受けて、法規の目的・内容からその適用範囲を決定する地域的適用範囲の画定のアプローチをより重視し、実際に労働法規のほとんどはこのアプローチによるとする結論に至っています。これに対し、米津理論は、サヴィニー以来の大陸ヨーロッパ的な国際私法の伝統に基づき、法律関係を出発点とする準拠法決定のアプローチの中で、当事者自治と最密接関連法の適用との調整を図ろうとしています。前者は、最終的には国家・立法者の意思を重視するアメリカ的価値観、後者は内外法平等を前提に国際的判決調和を重視する大陸ヨーロッパ的価値観に基づくものと言ってもよいでしょう。第2の違いは、現行法である法例7条、特に行為地法主義を定める7条2項に対する態度の違いです。立法上疑問が提起されることが多いこの規定に対し、山川先生は基本的にこれと矛盾しないような解釈上の工夫を凝らしていますが、米津さんは事実上死文化しているこの条項にかえて、反制定法的解釈をとることを明言しています。

この両理論の問題点も、この2点に対応して指摘できるのではないかと思います。例えば、山川理論に対しては国家・立法者の意思を重視する立場、特に労働法規については当事者自治がほとんど排除されてしまう解釈では、グローバル化の中で高まっている国際的調和の要請や契約の多様化に対応した当事者による柔軟な法形成の要請に反するのではないかという疑問。米津理論に対しては、現行法の解釈としては無理があるという問題とともに、最低基準保障原則の適用の場面で必要となる、どちらの法が有利かという判断は社会の複雑化の中で次第に困難になるのではないかという疑問が指摘されうるでしょう。いずれにしても、両理論は極めて高い水準の研究でありつつ、その背景の違いを反映して、かなり対照的な内容を持つものとなっており、今後、学説や判例、さらには立法がどのような展開をたどっていくのか興味深いところです。

討論

山川説の特徴

大内

ありがとうございました。よく勉強したことのない分野なのですが、一つだけ。山川理論では、ほんとうに当事者自治がほとんど排除されてしまうのですか。

水町

実際の労働法規の適用の問題については、ほとんどの法規が地域的適用範囲の測定のアプローチによるので、その結果、問題が生じている地域の法が絶対的強行法規として直接適用されて、それが準拠法になります。ただし、例えば、日本にあるドイツの企業がドイツ人を雇って、日本で労働関係を展開しているときに、その当事者同士がドイツの法律を適用法規として指定していた場合には、準拠法は日本の、例えば労働基準法になるけれども、当事者によるドイツ法の指定は、実質法の指定だとして、実質法の解釈として、日本の労働基準法を上回る部分についてはドイツ法が実質的には適用されるということになります。したがって、結果的にはどれぐらい差が出るのかは、実はよくわかりませんが、理論の立て方として大きな違いがあることは確かだと思います。

大内

たしかに、山川説では、ドイツ法を準拠法と指定した場合でも、日本の裁判所は、ドイツ法の規制する事項について、日本法で規制していれば、そのドイツ法の適用は排除されるのですよね。

水町

日本で、例えば労基法上の規定が絶対的強行法規になるということであれば、それは直接適用されますので、準拠法としても日本の労働基準法ということになります。したがって、ドイツ法は準拠法としては排除される。

大内

ただ、ドイツ法の中でも、日本法の規制していない分野については、ドイツ法を準拠法として選択できるのですよね。

水町

日本の法が絶対的強行法規でない部分についてはドイツ法を準拠法として選択できます。

大内

逆のケースで、日本法を準拠法として選択していて、外国で勤務している場合、このときには山川説でいけば、日本法を準拠法として選択している以上、労働基準法の内容は実質法的指定により契約内容に入ってしまう。したがって、たとえ海外に行って労働基準法の適用が及ばない場合でも結局は労働基準法が適用される。その論拠は形式的には意思解釈ですが、実質的には、強行的な解釈準則に近い。しかも、準拠法が選択されていない場合で、法例7条2項(行為地主義)により日本法が準拠法になる場合でも、つまり準拠法指定がない場合でも、結果としては黙示の日本法の選択を認めることになります(162頁)。つまり、ドイツの労働者が日本で働いていれば、なかなかドイツ法の適用は認められないが、日本の労働者が海外で仕事をしていたという場合には、日本法の適用が認められやすい。当事者自治が片面的かなという気がしないわけではありません。

水町

当事者の法選択が存在しない場合には、行為地法主義によって行為地法である日本法が適用されることになるけれども、その場合にも黙示の法選択によって解釈上柔軟に準拠法を決定することができるという考え方ですね。

大内

そうです。その結果、日本法が適用されるということなのです。

水町

そういう解釈上の操作をすることで実質的な不都合を回避しようとする。

大内

はい。当事者が日本法を準拠法としてはっきり選択すれば、山川説では、それはまさに日本法の実質法的指定もあったことになる。それはわかるのです。一応は、日本法を準拠法にするという合意が存在しているのだから。ところが、行為地主義によって日本法になる場合には、黙示の合意によるといっても、相当にフィクションとなるので、なにか日本法の適用を認めようとするほうに誘導的な結論になってしまうように思えるのです。

水町

たしかに、黙示の法選択というテクニックまで用いて日本の労基法の適用を導こうとしているとも言えます。

大内

他方、気のせいかもしれませんが、外国法の準拠法選択をした場合には、黙示の外国法の実質法的指定まであったとする論調では書かれていないような気がします。

山川説と米津説との違い

大内

これに対して米津説は、客観的に連結点のあるところがあれば、それがまずは絶対最低基準のベースになるわけです。日本とドイツの場合だと、ドイツ人であるとか、ドイツで労務を提供するとか、何かドイツと関係があれば、ドイツの法が基本的に適用されるということで、そこは山川説とかなり違う。

水町

内外法平等という観点からは、米津論文のほうが貫徹はしていますよね。特に日本の国際私法学は法律関係から出発するので、米津論文に近いような、いわゆる準拠法決定のアプローチを主流として考えて、そこに実質法の要素を組み込んでいくという発想なんです。

そうすると、山川さんによると、まず地域的適用範囲の画定のアプローチがあって、制定法に強行的性格が認められるかぎりでそれが当事者意思を排除する形で適用される結果、従来の理解以上に法令の適用範囲が広がるということなのでしょうか。それに対して、山川さんの場合、準拠法選択のアプローチの適用範囲は、一見すると従来よりも限定されるようにも思えますが、従来の議論とはどのように違うのか、どうもよく理解できませんでした。例えば、準拠法の連結という点では米津説を支持していますね。

大内

山川さんが米津説を支持しているところは、準拠法選択についての黙示の合意の認定のところで、結局は労務給付地の法が適用されるという結論になるのです。ここは両説は一緒です。違うのは、当事者自治を正面から制限する法理についてです。

水町

絶対的強行法規の直接適用という概念を使ったところが新しいのでしょうね。

大内

それによって法例7条との抵触を避けたということですね。

やはり、法例7条2項の意義をどう理解するかということが前提にあるわけですか。労働契約の場合は、行為地か、履行地かということだけでなく、契約の履行自体が継続的な労務給付であることや、労働法令が複合的な性格であることが、議論を複雑なものにしているわけですね。

大内

米津さんの場合には、とにかく実質的に密接な関連があれば、当事者自治を制限できるという議論であり、山川さんは、それは7条2項の行為地主義に正面から反するということで批判しているのです。

しかし、結論としてはそんなに大きな違いがあるのでしょうか。

唐津

山川著(159頁)では、絶対的強行法規というものを措定されてますが、これは従来の公法の延長なんでしょうね。国際私法の研究者によれば、アメリカは、米津論文の注にあるように、自国法優位で、それらを域外適用させるという発想、アプローチが採られ、それとは異なってヨーロッパでは、最低基準で全部整理していく。こういう絶対的強行法規という概念を打ち立てれば、その法規が適用されるかどうかは、全部、法規自体が決めてしまうということになる。そうすると処理は非常に簡明ではある。でも、そういう処理の仕方で、果たしてみんな納得するのか。やはり、法抵触の問題ですから、どの法規を取るかというときに、この法規がそこも規制するというふうに決めているから、ということで足りるのか。日本では労基法を全部適用させるという政策的な意図であれば、それは、非常に便利な考え方かもしれないけど、国際私法の分野では一般的な考え方ではないんじゃないですか。

水町

特にヨーロッパみたいに、国境を越えて人や資本が盛んに移動している地域ではそうかもしれませんね。

唐津

だから、米津さんみたいな発想も出てくるんだろうと思います。最低基準保障で、法適用が重なった場合の利益調整をする。もちろん、その判断は難しいですよ。山川さんはこの点について適切に批判されている。

大内

その重なった場合の調整の点が米津説の弱点だと思います。労働協約の有利原則における有利性判断でも似たような問題がありますが、ここでみんな苦労している。だから、米津説は、理念的にはわかるんだけれども、実際の適用が難しいように思えます。ただ、実質的妥当性という点では、どちらのほうがよいのでしょうね。何が実質的妥当かという基準がよくわからないんだけど、労働者保護という点では、やはり米津説のほうがいいのでしょうか。2カ国が関係したとして、比べて有利な国の労働条件基準は最低限、確保されるわけですから。

水町

山川説の場合には、実質法指定の解釈のあり方によって結論が異なってくるように思います。実質法的指定が柔軟に解釈・認定されれば、米津論文と同じような結論に実質的に近づくような気がします。

多元的処理の可能性

水町

刑法的側面、行政法規的側面と私法的側面を切れるかどうかの問題ですが、国際私法の場合には、私法的側面を中心に議論をしているんで、これらの側面の関係があまりわからない。山川説の場合はアメリカ流の考え方なんで、法規の性質から出発して、刑法的側面とか行政法規約側面があると、やはり私法的側面だけそれを切り離すのは難しいだろうということで、一体として適用している。そこはクリアなんです。国際私法の考え方からすると、他国の法が契約準拠法として適用された場合に、私法的側面だけが適用されて、あとの行政法規約側面や刑法的側面は適用することが難しいわけです。それと、その法廷地国の介入規範との兼ね合いをどう考えているのかの問題もある。

山川さんの著書では、日本で契約上の問題として外国法を選択したとしても、刑罰法規については日本の労基法が適用される結果、民事上は割増賃金請求権が発生しないにもかかわらず、刑罰によってその支払が強制されるのはアンバランスだから、労基法について準拠法選択のアプローチを採用することは無理だといっていますが、他方で、労基法と両立しうる外国法については、なお契約準拠法として適用が可能であるとも述べています(181-182頁)。それなら、地域的適用範囲画定のアプローチと、準拠法選択のアプローチを区別する意味はどこにあるのでしょうか。

それから、準拠法の問題を考える場合にいつも思うのですが、どういう場面を想定するかによって、議論の中味が違ってくるような気がします。外国人労働者や多国籍企業、海外勤務や海外での事業活動など、いろいろな場合がありうるわけですね。果たして同じような考え方がすべてに妥当するのでしょうか。

大内

つまり、山川著では渉外事件という概念を使っていて、渉外事件を一くくりにして同じ法理で説明しようされているのだけど、盛先生の指摘では、同じ渉外事件と言っても、いろいろなパターンがあるということですか。

そうです。準拠法が問題となるのは、それについての合意がない場合や、合意が妥当でない場合でしょうが、実際には、国際的な労働関係のパターンに応じて、ある程度合理的な準拠法決定のルールというものがあるはずです。一つの原則を立てて、具体的な場合に応じてそれを微調整するというよりは、そのようなパターンごとに原則を立てて、それを統合するという発想があってもいいのではないでしょうか。いわば、演繹的な方法ではなく、帰納的方法ですね。最初に原理原則を立てて、それを具体的な場合に適用しようとするために、どうしても議論が抽象的になってしまって、私などにはなかなか理解できない。

水町

地域的適用範囲の画定のアプローチのところは、法規の性格から出発して地域的に適用されるので、契約関係の類型はあまり細かく見る必要はないのですが、準拠法選択のアプローチのところは山川先生の本の中でもきちんと場合分けをされていて、ある程度類型化しながらアプローチされていると思いますけれども。

だから、その部分は比較的すんなりと理解できたように思います。

大内

例えば、ドイツの企業が日本に支社をつくって、ドイツ人ばかりを働かせている場合でも、日本で訴訟を起こせば、日本の労基法が適用されますよね。

水町

少なくとも私法上の争いについて、労基法が行政法規的な側面とか刑法的な側面を持つから、それと一体となって私法まで直接適用されるというふうに考えるのか、それとも私法は私法だから、当事者がドイツ法の文化でドイツ法を適用しようと言っているんだから、契約準拠法についても、ドイツ法でやろうというふうになるのか。それはアメリカの発想か、大陸ヨーロッパの発想かの違いなんでしょうね。

大内

でも、山川説だと、労働基準法が適用されますね。しかも、ドイツ法のほうが仮に有利であったとしても、規制が重複している限りは日本法が適用されてしまう。そんなもんだと言えばそんな気もします。でも、何か変な感じがしませんか? 国際私法ってそいうものなのでしょうか。国際私法の問題じゃなく、労働基準法の問題か。

水町

絶対的強行法規ってそんなものなのかなということでしょうね。

唐津

そういうものとして絶対的強行法規という概念をつくったんでしょう。


10. 労働法の未来

紹介

水町勇一郎「法の『手続化』─日本労働法の動態分析とその批判的考察」

唐津

水町論文は、日本労働法にも、法の「手続化」という趨勢、傾向が読み取れるとして、そこにはどのような問題点があるのかを論じたものです。労働法の規制のあり方を根本的に問い直す視点を提示したものとして注目されます。

水町さんによれば、これまでの「労働法」は画一的な社会的モデル(「工場で集団的に働く賃金労働者(従属労働者)」)に対して、画一的に設定された規範(法律、労働協約等)を機械的・演繹的に適用するもの(いわば上からの規制)として形成されてきたのですが、社会的モデルが分散化・多様化して、社会における利益状況が複雑化・不確定化していくにつれて、このような画一的・硬直的枠組みでは、多様な利益状況を十分に反映できず、複雑化する諸問題にも対応できない。そこで、利益当事者に開かれた交渉の場で、多面的・複眼的で柔軟な議論・調整が行われることによって、複雑な問題を解決する道筋をつけるという方向での規制(いわば下からの柔軟な規制)が要請される、これが法の「手続化」であるということです。

前段については、一般に認識されていることで、何も目新しいことを指摘されているわけではありませんが、後段、すなわち法の「手続化」というコンセプトによって、21世紀の社会における労働法の姿をイメージし、法の「手続化」にかかわる日本固有の歴史的・社会的背景に特に留意し、検討すべき問題があることを論じている点に本論文の特徴と意義があります。

具体的には、まず、就業規則変更と整理解雇をめぐる近年の裁判例の動向において、当事者の協議・交渉過程を重視しようという動きが見られること(判例法の「手続化」)、また、近年の労働時間法制改正に見られる画一的・硬直的な実体的規制から、当事者による多様な交渉・調整を可能とする柔軟な規制への移行の動き(制定法の「手続化」)があることを指摘され、この日本労働法の「手続化」の背景・要因には、西洋先進諸国と共通する現代的要因とともに、日本社会に固有の伝統的要因、すなわち近代的個人主義に基づく西洋の法文化とは異なる日本固有の伝統的法文化が存在しているとして、特に後者が法の「手続化」を受け入れやすくする社会的土壌となっていると論じられています。

水町さんによれば、この日本の伝統的法文化の特徴は、第1に共同体における和を重視する点、第2に紛争解決の方法として話し合いによる柔軟な解決を重視する点ですが、これは労働関係・労使関係において、長期雇用される従業員を構成員とした企業共同体が形成され、そこでの労使協調的な話し合いによって問題の解決を図るという日本的雇用システムに受け継がれています。

日本の判例法と制定法の「手続化」は、その方向としては、より多様化・複雑化する社会状況への適応を可能とするための改革と言うことができますが、一方で、前近代的な性格を持つ閉鎖的・共同体的な話し合い文化が各企業内に残存しつつ、他方では西洋近代的な労働立法も実態としては社会に十分に浸透していない状態で、当事者による問題解決へ法の重心を移行していくということは、近代的な保護を後退させ、前近代的・封建的共同体社会への回帰へと進んでいくことになりかねない。ですから、水町論文では、日本では、このような前近代的な共同体社会に内在する危険・弊害、具体的には外部に対する閉鎖性、集団による個の抑圧、少数者の排除等を十分に意識し、これらの問題を回避しながら真の「手続化」の方向へと歩みを進めていくことが重大な課題になるとされており、日本における法の「手続化」に際しては、協議・交渉の開放性・透明性、および、協議・交渉における多元的・複線的調整の必要性が検討されるべきであるとして、具体的には労使協議や団体交渉は(複数組合併存の場合にも)同一のテーブルで利益当事者に開かれた透明性の高い形で行うようにすること、労基法上の過半数代表などについて、多様な価値・利益が反映される民主的な選出方法(例えば従業員の多様な価値・利益が比例的に反映される選挙方式)とすること、そのうえで協議・交渉の場において少数者の利益をも踏まえた多元的な調整がなされたかの審査(手続的公正さの審査)を裁判所等の第三者が行う等の法的制度化が今後の重要な課題であると述べられています。

なお、水町さんによれば、国家は市場、つまり当事者による交渉・取引によっては十分に守られない基本的な価値、つまり人間的・社会的価値の保障等の基本原則を設定するにとどまりながら、手続面で利益当事者による開放的で透明な集団的交渉・調整が、国家が定めた基本原則の枠内で公正に行われたかを事後的に審査するという方向で、その役割を変容させていく、法の「手続化」を進めていくべきものとしてとらえられており、規制の体系である労働法のとらえ方について議論を喚起しておられます。

水町論文は、法の「手続化」という視点から21世紀労働法を展望するスケールの大きなものですけれども、いくつか考えさせられることがありました。

第1点は、労働条件変更論や整理解雇理論における労使の当事者主義的な手続プロセスについての議論の展開が、法の「手続化」という法規制の転換を表象するものとして位置づけられるという指摘の妥当性についてです。といいますのは、労働法ルール(制定法ルール、判例法ルール、さらには自治的ルールを含めて)には、労働条件内容それ自体についての実体的規制と、労働条件内容形成についての手続的規制とが含まれていますが、これは相互補完的な機能を果たしているわけです。例えば、法システムのレベルでは、憲法27条第2項に基づく、国家による労働条件内容の直接規制としての労働者保護法があり、労基法は最低労働条件を保障する(実体的規制)という役割を担っておりますが、これと、憲法28条に基づく労働条件内容形成の手段としての労働者団結・団体交渉という労使自治の保障(手続的規制)とが相互補完関係にある。あるいは、具体的な規制のレベルでは、例えば、労基法における労働時間についての実体的規制と、この規制解除のための三六協定等の自治的、手続的規制との相互補完関係がある。けれども、その相互作用、あるいは補完関係について、実体的規制から手続的規制へと移行する、ここで言う法の「手続化」という現象を見て取ることができるのか、若干疑問があります。

特に、水町さんは、国家の役割を抑制的・謙抑的にとらえるべきであるとのお考えのようですけれども、その立場でも、例えば憲法27条2項による労基法、最低労働条件保障のための労働者保護法規の役割は変わらないのではないか。

第2点は、水町さんの言う法の「手続化」という視点ですが、法現象としては、法の「手続化」と言うよりも、手続の「法化」と呼ぶほうが適切ではないかと思いました。水町論文では、法の「手続化」を進めるために、特に日本的な歴史的・社会的背景から生じてくる問題点に留意して、先ほど紹介しましたような具体的な提言をされていますが、これは当事者自治、労使自治に法的な枠をはめる、法的にコントロールすることであろうと思われます。つまり、水町さんが今後進めるべきであると説かれる法の「手続化」とは、労使が自治的に利益調整をする仕組み、あるいは手続を法的にコントロールすること、言いえかえれば手続を「法化」することを要請しているものであるように理解されるわけです。ただ、ここでは、やはり国家の役割をどう位置づけるべきかという問題が出てきます。つまり、国家がどのような手続を法的にコントロールするのか、その基本的なポリシーのあり方はどうなのか、こういった問題をどういうふうに考えるかということは非常に難しい問題だろうと思いました。

ただし、水町論文からは、法の「手続化」を支持するかどうか、そのいかんにかかわらず、従来のいくつかの議論に見直しの視点が得られるのではないか、そういうふうに思われます。これが指摘したい第3点目です。一つは労使協議手続、あるいは労使自治による労働条件規制はたしかに現実のものとなっていますし、その重要性が増していることは誰しも否定できないところであろうと思いますが、水町論文は、その協議手続に対する法的なチェックポイントとして、理論的かどうかは別として、従来から日本の雇用労働関係の底流にあると指摘されているムラ社会、閉鎖社会の負の側面、多元的な価値観を排斥する、あるいは少数者を排除する、このような負の側面に目を向けさせるものです。

いま一つは、法の「手続化」という視点から、制定法ルールを新たに読み直すという可能性です。例えば、労基法の労働条件対等決定原則というのは、これまでは理念的な宣言規定と理解されています。しかし、この視点から、この原則は、例えば、労働条件決定に至る手続プロセスについての法ルールである、と理解し、したがって、労働条件にかかわる情報を開示するという義務がここに読み込めるとか、あるいは誠実交渉義務のような手続的なルールをここに読み取っていく、そういうことができるのかもしれないという可能性を感じました。

討論

「手続化」とは何か

大内

どうもありがとうございました。盛先生、いかがですか。

これは、これからの労働法の一つの方向性を示した有意義な論文だと思います。ただ、そのことを「手続化」と称することについては、若干の違和感を持ちました。「手続化」というと、いかにも実体法と対比された意味での手続法とか、プロセスというイメージが強いのですが、むしろ、実体法そのものの変化という側面も含まれているのではないかということです。水町論文では、規制手段、規制方法ということには触れていますが、規制主体そのものの変化もまた、現代の労働法の動向を特徴づけるものではないかと思います。例えば、労基法上の労使協定や、裁量労働制についての労使委員会決議がそうですが、法の枠組みのなかで労使が独自のルールを作っていくという意味では、その手続にとどまらず、規範の設定主体の変化や規範の相互関係という問題まで含めて考えたほうがよいのではないでしょうか。そうなると、「手続化」というよりも、何か別の表現があるのではないかと思ったわけです。そうは言っても、水町論文で指摘された内容については、かなり賛同するところがあります。

大内

最初は「手続化」と聞いてもよくわからなかったし、水町論文が述べていることを「手続化」と言うのが適切なのかなという気にもなりました。それはともかく、日本法において「手続化」が進んでいるという前提認識は正しいのでしょうか。例えば、就業規則の判例にある合理性法理は、決してそんな手続重視とは思えない。整理解雇法理でも、判例は、手続的な要件をむしろ最近軽視する傾向にある。それから、労働協約の不利益変更法理においても、裁判所は必ずしも労使の合意を尊重してはいない。動きとしてほんとうに「手続化」があるのかという疑問を感じます。

唐津

水町論文では、ヨーロッパで見られている法の「手続化」と類似した変化を、日本の最近の議論の中に見てみようということだと思います。ただ、労働法の各場面で、いろいろな労働条件についての実体的規制があるにしても、そのような実体的規制よりもむしろ手続的規制にシフトしていく、つまり国家が手を引いていくという流れがあってしかるべきではないか。それは水町論文の最後に出ている国家のスタンスの取り方にふれられています。そういう受けとめ方をしたのですが。

「手続化」と労使自治

大内

私も、やはり労使自治というのは重要だと思っていますから、国家が何でもかんでも介入すべきではないと思っている。だから、方向性としては水町論文で言われているのでいいと思います。ただ、現在、判例がそういう方向で進んでいるかというと、必ずしもそうではない。むしろ裁判所は、どんどん実体判断にふみこんでいってやろうという意識が非常に強いと思います。平成12年9月の最高裁の3判決(みちのく銀行事件・前掲、羽後銀行事件・最三小判平成12年9月12日労判788号23頁、函館信用金庫事件・最二小判平成12年9月22日労判788号17頁)は、それをはっきり示したのではないでしょうか。

それから、盛先生が指摘されたことにつながるのですが、「手続化」の議論でおもしろいのは、絶対的な価値というものを認めることに消極的で、手続の中から望ましい価値というのが出てくるという視点です。労使で下から実体法をつくっていくという発想ですね。他方でドイツ法的な影響を受けると、憲法理念などから演繹的にいろいろな結論が出てくるという、上からの発想となりますよね。日本法では多分、今のドイツ法的な発想のほうがまだ強いのではないかと思います。

唐津

ただ、水町論文でも、基本原則や枠組みでは、やはり国家の役割を認めているんじゃないですか。両当事者に任せていただけでは、まずいところもある。基本的な価値(人間的・社会的価値)の保障は、国家が担わなきゃいけない。でも、それ以外のところ、例えば、労働関係で起こる労使の利益対立を調整するのは、やはり当事者でありうるし、当事者で自由に妥協もできる。私は、当事者主義的な観点での紛争処理を重視したいと思っている。要するに個別的な自治の範囲内でいろいろなものを決めていく。ただし、その自治にも「枠」はあるよ、ということです。だから、ちょっと懸念しているのは、その「枠」が広がる、例えば、企画業務型裁量労働制の導入に際して多くの手続的な規制をかけているように、つまり、実体的規制は手を引くけど、今度は手続的規制でどんどん介入してくるという方向も一つ考えられるのではないか。

大内

その危険性はあります。だから、この議論は、やはり労使自治の重視という議論にしたほうがいいような気がします。今のリーガリズム的な手続の硬直化は、労使自治を重視すればかなり排除できる発想です。水町論文でも、手続の交渉の透明性とか、開放性などを議論をされているのですから。

唐津

ただ、判例法の「手続化」が見られるというところでは、先ほど大内さんが指摘されたように、労働協約のレベルでの協約内容についての裁判所の介入の仕方を見ていると、ほんとうにそうなのかという疑問は当然出てくるでしょうね。

大内

だから、議論の進め方としては、現実は「手続化」が進んでいない。進んでいないから、「手続化」を進めなければいけない、という議論だと思うのです。

唐津

しかし、「手続化」で労使双方に任せると、本来、労使自治は個を生かすためのもののはずであるのに、日本では特有の労使自治の内部で、逆に個を殺すような風土がある、そこはやはり気をつけなきゃいけない、というのが水町論文の指摘するところです。

それと、「手続化」に関連して労使自治という場合に、その労使自治の主体が何かということは、重要な問題です。例えば、ドイツだと、いわゆる開放条項ということで、労働協約に対して制定法とは異なるルールの設定を認めますし、フランスでも、同様に、特例協定と呼ばれる労働協約が問題とされます。立法的規制に代わる労使自治の主体は、あくまで団体交渉当事者なのですね。ところが、日本の場合、労使協定の締結や労使委員会委員の指名については、過半数組合に限らず、過半数代表者でも足りるわけですが、それらはもともとよって立つ基盤が違うわけで、同じように労使自治といってよいのかどうか、十分な自主的規範設定を期待できるのかどうかについて、疑問が残ります。水町論文では、いろいろその条件を提示していますが、やはり、労使自治に委ねるにしても、さらに大内さんがおっしゃるような正統性が何に求められるのかということが、一つの問題になると思います。

大内

さて、水町さん、われわれの議論は的を射たものとなっていますか。

水町

交渉の主体についてですが、私が念頭においている交渉の当事者は、今の労使とはまた違うものです。いわゆる過半数代表と言われているものとも違うもので、少数者の利益とか多様な価値・利益を吸い上げながら調整できるような新しい開かれたフォーラムを、どう制度化していくか。場合によっては解釈論の中でできることもあるし、新しく法をつくらないとできないところもある。前近代的な問題もあるし、逆に社会が多様化して脱近代的な問題も出てきている。その二つの問題を同時に踏まえながら、ありうべき集団的利益調整のフォーラムをどうつくっていくのかが、私が念頭に置いていた課題なんです。

大内

それは労働組合ではない?

水町

現行法上の労働組合とは違うものです。

大内

私は、そういうのは労働組合でいくという未来像を描いているのですが。

企業別組合を前提とした日本的従業員代表制ということもありうるでしょう。

唐津

水町さんの考えでは、それを制度的に構築するんでしょう。

大内

ネオ・コーポラティズム的な法政策形成というのは「手続化」になるのでしょうか。

水町

政労使という固定的な当事者を設定している時点で、既に私の「手続化」に反することなんです。利益にかかわるような人たちには情報を開示して、意見を出せるような場をつくることが大切。労働組合といってしまうと、組合の外の人が排除されてしまうので、そこをどうするか。

ただ、現在の社会の仕組みからすると、労使の全国組織がそれぞれの利益を代表して発言力を行使している限り、実際にそういう一般的な制度を実現することは困難です。よほど、強力な政治的イニシアチブがあるとか、特別の状況でもなければ、簡単にはいかないでしょう。

大内

それは、よく言われる社会的推進力がないということですね。でも、これは学者の議論だから、あるべき姿を提示して、いつかは社会的にコンセンサスを得ればいいじゃないですか。

水町

遠くない将来に。

大内

むだな議論かなと思いつつも、いつかは理解してもらえるかなと思いながらやる。

だいたい、社会の仕組みが大きく変わるというのは、よほどの社会変革があったときですよ。そういう意味では、日本は過去50年間全然変わっていない。

大内

だから、知的パワーで変えるのです。

水町

その意味では、情報公開というのは大きなターニングポイントになる可能性がある。政治的なプロセスが大きく変わっていく可能性はあると思います。

唐津

それは情報をみんなが共有できると、いろいろなリアクションが出てくる可能性があるということですか。

水町

情報公開したら、利益団体がエゴイスティックな発言をしにくくなるということです。だから、みんなが正論だと思うことは、政治的プロセスに乗って、社会的に実現される可能性が高くなる。我々としてもいろいろな発言をすることに意味があるし、同時に責任をもたなければならない社会になってくると思います。


おわりに

大内

最後に一言ずついただきたいのですが。

唐津

ふだんはあらゆる方面について論文を読んで考えてみるということもなく、自分の関心領域に応じて論文・著作に目を通していましたから、今回、この仕事を引き受けさせていただいて、ほんとうにいろいろな議論があるということを実感しました。

ただ、ここで取り上げた論文の背後には膨大な数の論文、著書があるわけですが、実際には、何か新しい議論枠組みを切り開くとか、今までの理論をきちんと踏まえて新しく再構成していくという作業が活発になされているかというと、そうでもないような気がしました。というのは、やはり、幾人かの論者によって議論がリードされているように思えるからです。これは自戒の念も踏まえてのコメントですが。やはり、それぞれの研究者がどういう方向で今までの議論を進めていくのかという気持ちで取り組まなければいけないように思います。

水町

全体として見ますと、土田論文のように、経済学的な視点を取り入れて法解釈をしようとする論文や、吉田論文のように実務の観点から、これまでの法理論に問題を投げかけたようなチャレンジングな論文、大内論文のように、従来の判例学説を根幹から理論的に見直そうとする論文、さらに、ここでは紹介できませんでしたが、日本の具体的な問題を念頭に置きながら、緻密な外国法研究を行った論文も少なからず見られるという印象を受けました。さまざまな問題について、多彩な観点からおもしろい議論が展開されていて、労働法学にも確実な進歩が見られた3年間であったような気がします。

ただし、一つだけ物足りなかったのは、法政策学的な観点から、具体的な立法政策の提示につながるような緻密な研究を行った業績があまりまだ見られていない。したがって、解釈論では強いけれども、立法政策論ではまだまだ手薄であるという印象をぬぐえなかった点が、若干物足りないと思いました。自戒の念を込めてですが。

たしかに、過去3年間、非常に多彩な業績が現れたと思います。テーマや内容はもちろん、方法論や議論の視点という点でも、多様なものがありました。特に、若い世代の研究者が次々と注目されるモノグラフや論文を発表して、学界が大いに活気づいたといえると思います。それと、労働法学界全体としては、やはり、日本労働法学会編『講座21世紀の労働法』の刊行が一つの到達点であり、新たな出発点ともなるでしょう。

それから、個人的な印象としては、現状を筋立ててうまく説明したり、手堅い解釈論を志向したりする業績が多かった反面、現状に対する批判や、現代の問題状況に鋭く切り込むような業績は、以前に比べるとだいぶ減ったような気がします。そのせいかどうか、特定のテーマについて議論は集中するものの、なかなか論争と呼べる状態にまでには至りません。その意味で、今回取り上げた脇田論文や、唐津さんの大内批判(「労働条件変更の法的論理について─段階的構造論・集団的変更解約告知説(大内伸哉『労働条件変更法理の再構成』)が提起するもの」南山法学24巻1号)のような論文が増えることを期待したいと思います。

もう一点、先ほど話題になりましたが、学者がそれぞれの理想を追求するのはいいとして、その反面で、議論が現実から遊離した抽象論レベルのものになってはいないかという疑念があります。理論を実際に適用したらどうなるのか、そのことが労使関係の実態との関係でどのような意味を持つのかということの検証が必要だと思います。私自身は、労働法理論というものは、よかれ悪しかれ、それが前提とする実態を離れては存在しえないと考えているものですから。

大内

2回連続で参加させていただいたので、前回との違いで感じたことをちょっと述べたいと思います。前回は、労働基準法や雇用機会均等法、さらには職安法や派遣法の改正が絡んでいた時期であり、また、変更解約告知といった、かなり大きなテーマがありました。労働法学界全体がかなりそれらへの対応に追われていたという印象を受けました。しかし、今回を見ますと、特に選考された業績のほとんどが、新たな問題に理論的に取り組むという姿勢がより強く見られたのではないかと思います。また、労働法の理論状況の中で、労働市場論が大きな影響を及ぼしているということをひしひしと感じる一方で、団体法の比重がかなり小さくなってきていることも指摘しておかなければなりません。

この6年間の理論動向を見てみますと、変更解約告知から始まった解雇論争は、理論的な点では議論がかなり出尽くしたのかなという気がしております。ただ、この解雇論争をどう反省するかということなのですが、どうも経済学や、あるいは一部の裁判所の動きに、労働法学は受け身になってしまったのではないか。それは率直に反省すべきではないのか。つまり、今後、労働法理論がやるべきこととは、やはり基礎理論、原理論をしっかり固めておくということではないかなという気がします。

そういう観点から見ますと、今回取り上げられた業績の中でも扱われておりましたが、労働権の問題、賃金の問題、あるいは差別、平等の問題については、もっと掘り下げた理論的検討が必要なのではないか、と思いました。

(本座談会は、2001年11月2日に東京で行われた)


労働法主要文献目録(1999~2001年)

Ⅰ 単行本

  1. 浅倉むつ子『均等法の新世界─二重基準から共通基準へ』有斐閣
  2. 浅倉むつ子『労働とジェンダーの法律学』有斐閣
  3. 荒木尚志『雇用システムと労働条件変更法理』有斐閣
  4. 安西愈『新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務(全訂3版)』中央経済社
  5. 安西愈『業務上疾病と一般健康管理の法律問題』労働福祉共済会
  6. 安西愈『労働者派遣法の法律実務(第2版補正2版)」『新・労働者派遣法の法律実務』総合労働研究所
  7. イ・ジョン『解雇紛争解決の法理』信山社
  8. 石橋敏郎『アメリカ連邦労災関係立法の研究』嵯峨野書院
  9. 石松亮二=宮崎鎮雄=平川亮一『現代労働法(3訂版)』中央経済社
  10. 稲上毅=連合総研編『現代日本のコーポレート・ガバナンス』東洋経済新報社
  11. 井上修一『労働基準法の基本問題』晃洋書房
  12. 井上浩『最新労災保険法(第2版)』中央経済社
  13. 井上浩『最新労働安全衛生法(第2版)』『同(第3版)』中央経済社
  14. 上村俊一『ロシアの労働事情』日本労働研究機構
  15. 遠藤昇三『組合民主主義と法』窓社
  16. 大内伸哉『労働条件変更法理の再構成』有斐閣
  17. 大橋範雄『派遣法の弾力化と派遣労働者の保護─ドイツの派遣法を中心に』法律文化社
  18. 大脇雅子=中島通子=中野麻美『21世紀の男女平等法(新版)』有斐閣
  19. 奥山明良『職場のセクシュアル・ハラスメント』有斐閣
  20. 小原昇『地方公務員の勤務条件と労使関係』学陽書房
  21. 香川孝三『アジアの労働と法』信山社出版
  22. 片岡曻(のぼる)『労働法(1)─総論・労働団体法(第3仮補訂)』有斐閣
  23. 片岡曻(のぼる)『労働法(2)─労働者保護法(第4版)』有斐閣
  24. 片岡曻(のぼる)『自立と連帯の労働法入門─働く人びとの権利読本』法律文化社
  25. 片岡曻(のぼる)『労働法理論の継承と発展』有斐閣
  26. 金子征史=西谷敏編『別冊法学セミナー・基本法コンメンタール 労働基準法(第4版)』日本評論社
  27. 鎌田耕一編『契約労働の研究─アウトソーシングの労働問題』多賀出版
  28. 川口美貴『国際社会法の研究』信山社出版
  29. 河野正輝=菊池高志編『高齢者の法』有斐閣
  30. 北村一郎編集代表『山口俊夫先生古稀記念現代ヨーロッパ法の展望』東京大学出版会
  31. 國武輝久編『高齢社会の政策課題』同文舘
  32. 久保敬治『フーゴ・ジンツハイマーとドイツ労働法』信山社出版
  33. ウィリアム・B.グールド/松田保彦訳『新・アメリカ労働法入門』日本労働研究機構
  34. 桑原靖夫=G.バンパー=R.ランズベリ一編『新版 先進諸国の雇用・労使関係─国際比較:21世紀の課題と展望』日本労働研究機構
  35. 航空労働研究会編『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  36. 香山忠志『労働刑法の現代的展開』成文堂
  37. 国際交流基金編『女性のパートタイム労働─日本とヨーロッパの現状』新水社
  38. 小嶌典明=島田陽一=浜田冨士郎『目で見る労働法教材』有斐闇
  39. 小西國友『労働法の基本問題─論理とその展開(第2版)』法研出版(発売=育英堂)
  40. 小西國友=渡辺章=中嶋士元也『労働関係法(第3版)』有斐閣
  41. 伍賀一道『雇用の弾力化と労働者派遣・職業紹介事業』大月書店
  42. 佐藤昭夫『労働法学の方法─歴史の認識と法の理解』悠々社
  43. 佐藤進『労働法と社会保障法』信山社出版
  44. 佐藤進『労働保障法と関連制度政策』信山社出版
  45. 佐藤正男『鉄道会社の労働法と戦場経営論』東洋館
  46. 佐野陽子=宮本安美=八代充史『人と企業を活かすルールしばるルール─これからの労働法制を考える』中央経済社
  47. 下井隆史『労働基準法(第3版)』有斐閣
  48. 下井隆史『労働法(第2版)』有斐閣
  49. 菅野和夫『労働法(第5版)』『同(第5版補正版)』『同(第5版補正2版)』弘文堂
  50. 菅野和夫監修/ILO東京支局監訳『世界の労使関係民主主義と社会的安定─ILO世界労働報告1997-98年』信山社出版
  51. 菅野和夫=落合誠一編『会社分割をめぐる商法と労働法』商事法務研究会
  52. 鈴木芳明『組織強制の法理─ドイツにおける史的展開』信山社出版
  53. 角田邦重=西谷敏=金子征史=深谷信夫=豊川義明=徳住堅治編『事例で読む労働法実務事典』旬報社
  54. 諏訪康雄『雇用と法』放送大学教育振興会
  55. 清正寛=菊池高志編『労働法(第2版)エッセンシャル』有斐閣
  56. 宋剛直『韓国労働法』悠々社
  57. 高梨昌『詳解労働者派遣法(第2版)』日本労働研究機構
  58. 高梨昌=花見忠監修『事典・労働の世界』日本労働研究機構
  59. 高藤昭編『少子化と社会法の課題』法政大学現代法研究所(発売=法政大学出版局)
  60. 田中清定『労働法の課題』労働法令協会
  61. 土田道夫『労務指揮権の現代的展開─労働契約における一方的決定と合意決定との相克』信山社出版
  62. 手塚和彰『外国人と法(第2版)』有斐閣
  63. 道幸哲也『不当労働行為の行政救済法理』信山社出版
  64. 道幸哲也=小宮文人=島田陽一『リストラ時代・雇用をめぐる法律問題』旬報社
  65. 直井春夫=成川美恵子『労委制度ノート─新しい紛争解決システムの模索』総合労働研究所
  66. 中窪裕也=野田進=和田肇『労働法の世界(第3版)』『同(第4版)」有斐閣
  67. 中村圭介=岡田真理子『教育行政と労使関係』エイデル研究所
  68. 中山和久=林和彦=毛塚勝利=金子征史=清水敏=山本吉人『入門労働法(第3版)』有斐閣
  69. 西谷敏『労働組合法』有斐閣
  70. 西谷敏=萬井隆令編『労働法(2)─個別的労働関係法(第3版)』法律文化社
  71. 日本労働研究機構編『アメリカの非典型雇用』日本労働研究機構
  72. 日本労働研究機構編『韓国の労働法改革と労使関係』日本労働研究機構
  73. 日本労働法学会編集『講座 21世紀の労働法 第1巻 21世紀労働法の展望』有斐閣
  74. 日本労働法学会編集『講座 21世紀の労働法 第2巻 労働市場の機構とルール』有斐閣
  75. 日本労働法学会編集『講座 21世紀の労働法 第3巻 労働条件の決定と変更』有斐閣
  76. 日本労働法学会編集『講座 21世紀の労働法 第4巻 労働契約』有斐閣
  77. 日本労働法学会編集『講座 21世紀の労働法 第5巻 賃金と労働時間』有斐閣
  78. 日本労働法学会編集『講座 21世紀の労働法 第6巻 労働者の人格と平等』有斐閣
  79. 日本労働法学会編集『講座 21世紀の労働法 第7巻 健康・安全と家庭生活』有斐閣
  80. 日本労働法学会編集『講座 21世紀の労働法 第8巻 利益代表システムと団結権』有斐閣
  81. 野川忍『雇用社会の道しるべ(改革時代の労働法入門講座)』信山社出版
  82. 野川忍=野田進=和田肇『働き方の知恵』有斐閣
  83. 野田進『「休暇」労働法の研究─雇用変動のなかの休暇・休業・休職』日本評論社
  84. 野田進=中窪裕也『労働法ロールプレイング』有斐閣
  85. 萩澤清彦=花見忠=山口浩一郎=中嶋士元也編『労使関係の法律相談(第3版)』有斐閣
  86. 橋詰洋三『最新労働法(第6版)』総合労働研究所
  87. 花見忠先生古稀記念論集刊行委員会編『花見忠先生古稀記念論集労働関係法の国際的潮流』信山社出版
  88. 花見忠=R.ブランパン編『IT革命と職場のプライバシー─欧日産業法研究所研究報告』日本労働研究機構
  89. 濱口桂一郎『EU労働法の形成─欧州社会モデルに未来はあるか?』日本労働研究機構
  90. 林豊=山川隆一編『労働関係訴訟法1・2』青林書院
  91. 福島瑞穂=金子雅臣=中下裕子=池田理知子=鈴木まり子『セクシュアル・ハラスメント(新版)』有斐閣
  92. 藤永幸治編『刑事裁判実務体系7・労働者保護』青林書院
  93. 外尾健一『労働法入門(第5版)』『同(第5版補訂版)』有斐閣
  94. 外尾健一『団結権保障の法理(2)』信山社出版
  95. 外尾健一『労働権保障の法理(1)』信山社出版
  96. 外尾健一『労働権保障の法理(2)』信山社出版
  97. 保原喜志夫=山口浩一郎=西村健一郎『労災保険・安全衛生のすべて』有斐閣
  98. 前田充康『EU拡大と労働問題』日本労働研究機構
  99. 馬渡淳一郎編『現代労働法』八千代出版
  100. 三柴丈典『労働安全衛生法論序説』信山社出版
  101. 水谷英夫『セクシュアル・ハラスメントの実態と法理』信山社出版
  102. 宮島尚史『労働・治安刑法論研究─労働者権の側面より(学習院大学研究叢書31)』学習院大学
  103. 村下博『外国人労働者問題の政策と法』大阪経済法科大学出版部
  104. 村中孝史=Th.トーマンドル編『中小企業における法と法意識─日欧比較研究』京都大学学術出版会
  105. 盛誠吾『労働法総論・労使関係法』新世社(発売=サイエンス社)
  106. 盛誠吾『わかりやすい改正労働基準法』有斐閣
  107. 八代尚宏編『社会的規制の経済分析』日本経済新聞社
  108. 安枝英訷(ひでのぶ)『労働の法と政策(第2版)』有斐閣
  109. 安枝英訷(ひでのぶ)『男女雇用機会均等法と人事管理・人材活用』『改訂男女雇用機会均等法と人事管理・人材活用』経済法令研究会
  110. 安枝英訷(ひでのぶ)=西村健一郎『労働法(第6版補訂)』有斐閣
  111. 山川隆一『雇用関係法(第2版)』新世社(発売=サイエンス社)
  112. 山川隆一『国際労働関係の法理』信山社出版
  113. 山口浩一郎編『救済命令の司法審査』日本労働研究機構
  114. 山崎文夫『セクシュアル・ハラスメントの法理─職場におけるセクシュアル・ハラスメントに関するフランス・イギリス・アメリカ・日本の比較法的検討』総合労働研究所
  115. 横井芳弘=角田邦重=脇田滋編『新現代労働法入門』法律文化社
  116. 萬井隆令=脇田滋=伍賀一道編『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
  117. ダグラス・L・レスリー/岸井貞男監修訳/辻秀典共訳者代表『アメリカ労使関係法』信山社出版
  118. 渡辺章=山川隆一編・筑波大学労働判例研究会著『労働時間の法理と実務』信山社出版

Ⅱ 論文

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1 労働法一般

(1)労働法総論
  1. 秋田成就「福祉国家における法の果す機能─労働法の役割に関連して」社会労働研究(法政大学)45巻4号
  2. 秋田成就「福祉国家における労働政策と法─労働法と社会保障法の役割に関連して」大山博=炭谷茂=武川正吾=平岡公一編『福祉国家への視座─揺らぎから再構築へ』ミネルヴァ書房
  3. 荒木尚志「労働条件決定・変更と法システム」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  4. 安西愈「企業と従業員参加」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  5. 石田眞=和田肇「労働と人権─セーフティネット論を中心に」法の科学29号
  6. 岩佐卓也「沼田法学の思想」法律時報72巻3号
  7. 岩出誠「労働市場の情報開示─法律の立場から」日本労働研究雑誌495号
  8. 遠藤昇三「現代における労働者・労働組合像(1)~(3)」島大法学(島根大学)41巻3、4号、42巻1号
  9. 大内伸哉「労働法と消費者契約」ジュリスト1200号
  10. 大内伸哉「労働保護法の展望─その規制の正当性に関する基礎的考察」日本労働研究雑誌470号
  11. 香川孝三「Deregulation Policy of Labor Laws in Japan」国際協力論集(神戸大学)7巻1号
  12. 片岡曻(のぼる)「労働法理論の継承と発展」日本労働法学会誌94号
  13. 片岡曻(のぼる)「沼田博士の労働法理論─生存権と人間の尊厳」法の科学27号
  14. 片岡曻(のぼる)「規制緩和政策と社会的人権ならびに労働法の課題」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
  15. 加藤智章「生活保障体系における労働法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  16. 桑原昌宏「Japanese Industrial Relations,Labor Laws and Government Measures after the Burst of the Froth Economy:Revised Version」愛知学院大学論叢法学研究42巻1=2号
  17. 毛塚勝利「ワークルールからみた現行労働法制の問題点と検討の課題」連合総研レポート135号
  18. ユルゲン・コッカ/西谷敏訳「労働の歴史と未来」季刊労働法194号
  19. 小宮文人「The Changing Nature of the Employment Relationship」法学研究(北海学園大学)34巻1号
  20. 小宮文人「Flexibilisation of Working Life: A National Report From Japan」法学研究(北海学園大学)34巻3号
  21. 坂林哲雄「労働者協同組合法制定の今日的意義」法の科学27号
  22. 下井隆史「中小企業と労働法─近時の法改正を契機として」『中小企業における法と法意識』京都大学学術出版会
  23. 諏訪康雄「少子化現象と労働法」『少子化と社会法の課題』法政大学出版局
  24. 武井寛「労働者と自己決定」法の科学28号
  25. 田端博邦「グローバライゼーションと労働関係─政府の政策文書を手がかりに」社会科学研究(東京大学)52巻2号
  26. 田端博邦「変動する労働関係─構造変容の歴史と論理」日本の科学者33巻4号
  27. 田端博邦「『企業共同体』の構造変容─労働者の『共同性』と労働者像」法社会学51号
  28. 土田道夫「日本型雇用制度の変化と法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  29. 西谷敏「労働条件の個別化と法的規整」日本労働研究雑誌470号
  30. 西谷敏「労働法における規制緩和と弾力化」日本労働法学会誌93号
  31. 西谷敏「日本的雇用慣行の変化と労働条件決定システム」民商法雑誌119巻4=5号
  32. 西谷敏「労働法規制緩和論に見る『法と経済』」経済44号
  33. 西谷敏「21世紀の労働と法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  34. 西谷敏「最高裁労働判例の理念的基礎」法律時報73巻9号
  35. 深谷信夫「航空機乗務員の権利課題」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  36. 藤田勇「沼田法学における唯物史観をめぐって」法の科学27号
  37. 本多淳亮「規制緩和と労働法制の改定」大阪経済法科大学法学論集41号
  38. 松岡三郎「The 21st Century Start and the Japan's Legal Circumstances - Chiefly from the Social Law Point of ViewMeiji Law Journal vol.7
  39. 松岡三郎「第二次大戦直後の労働立法の命運」法律論叢(明治大学)71巻4=5号
  40. 松岡三郎「Regulations and Deregulations in JapanMeiji Law Joural vol.6
  41. 水町勇一郎「『労働法』はどこへいくのか?─フランス労働法制の歴史的・理論的考察とそこから得られるもの」東北法学会会報17号
  42. 水町勇一郎「法の『手続化』─日本労働法の動態分析とその批判的考察」法学(東北大学)65巻1号
  43. 三井正信「労働法の新たなパラダイムのための一試論(1)(2)」広島法学24巻2、4号
  44. 宮島尚史「金融・産業体制の大変革と労使関係」季刊労働法193号
  45. 宮島尚史「法体制大変革政策(過程)における労働と生存の基本権」法学会雑誌(学習院大学)36巻2号
  46. 村中孝史「個別的人事処遇の法的問題点」日本労働研究雑誌460号
  47. 村中孝史「情報化社会と労働法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  48. 村中孝史「日本における中小企業と労働法」『中小企業における法と法意識─日欧比較研究』京都大学学術出版会
  49. 籾井常喜「『戦後労働法学』とその見直しの視点(3)~(6)(労働法と労働法学の50年)」労働法律旬報1438、1439=1440、1455、1456号
  50. 盛誠吾「人事処遇の変化と労働法」民商法雑誌119巻4=5号
  51. 安枝英訷(ひでのぶ)「わが国における労働条件と法規制」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  52. 山川隆一「労働法における要件事実」筑波大学大学院企業法学専攻十周年記念論集刊行委員会編『現代企業法学の研究─筑波大学大学院企業法学専攻十周年記念論集』信山社出版
  53. 萬井隆令「労働者保護法制の原則と規制緩和」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
  54. 和田肇「労働法制の変動と憲法原理」法律時報73巻6号
  55. 和田肇「雇用関係法制の回顧と展望」日本労働研究雑誌463号
(2)労働者の多様化
  1. 浅倉むつ子「就労形態の多様化と労働者概念─労働者と事業者との間」飯島紀昭=島田和夫=広渡清吾編『清水誠先生古稀記念論集─市民法学の課題と展望』日本評論社
  2. 井上徹二=古川景一「消費税法と労働─『労働者』と『請負的就労者』をめぐる検討」労働法律旬報1500号
  3. 小嶌典明「リスクとチャンス─中間管理職に法的保護は必要か?」日本労働研究雑誌474号
  4. 辻秀典「管理職と労働法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  5. 長坂俊成「テレワークの法的性質と法的保護のあり方─労働法理を中心として」季刊労働法193号
  6. 廣石忠司「『専門職』化と労働法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  7. 馬渡淳一郎「ネットワーク化と雇用の多様化」季刊労働法187号
  8. 森戸英幸「わが家が一番?─情報化に伴うテレワーク・在宅就労の法的諸問題」日本労働研究雑誌467号
  9. 柳屋孝安「非労働者と労働者概念」『講座 21世紀の労働法 第1巻』

2 労働市場法

(1)労働市場法一般
  1. 荒木尚志「労働市場と労働法」日本労働法学会誌97号
  2. 安西愈「アウトソーシングと人材ビジネス」ジュリスト1173号
  3. 鎌田耕一「契約労働(Contract Labour)をめぐる法的問題一ILO第86回総会討議をふまえて」日本労働法学会誌92号
  4. 鎌田耕一「外部労働市場と労働法の課題」日本労働法学会誌97号
  5. 鎌田耕一「アウトソーシングの契約問題─業務委託契約の研究」社会科学研究(釧路公立大学紀要)12号
  6. 小嶌典明「雇用の流動化と労働市場改革」NBL687号
  7. 小嶌典明=藤川恵子「Less Regulation Is Essential to Labor Market in the Era of ITOsaka University Law Review vol.48
  8. 菅野和夫「労働市場の契約ルール」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  9. 諏訪康雄「キャリア権の構想をめぐる一試論」日本労働研究雑誌468号
  10. 諏訪康雄「労働市場法の理念と体系」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  11. 諏訪康雄「(時論)労働市場と法」季刊労働法190=191号
  12. 中野育男「わが国労働市場政策の軌跡と展望」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  13. 永野秀雄「縁辺労働者の雇用政策」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  14. 仁田道夫「雇用政策の回顧と展望─構造転換期の政策課題をめぐる論点」日本労働研究雑誌463号
  15. 水町勇一郎「『労働』『市場』と『法』─『労働』の『市場』化と『法』の役割」日本労働法学会誌97号
  16. 両角道代「職業能力開発と労働法」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  17. 米津孝司「ワークシェアリングと労働法」季刊労働法194号
  18. 脇田滋「雇用・労働分野における規制緩和推進論とその検討」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
(2)雇用保険
  1. 有田謙司「雇用保険法の改正」日本労働法学会誌97号
  2. 小西康之「長期失業に対する失業給付制度の展開と課題」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  3. 田中清定「行政改革と公的保険一元化─とくに政管健保・厚年・労災・雇用の4保険徴収一元化について」関東学園大学法学紀要10巻2号
  4. 布川日佐史「雇用保障改革と生活保障政策の交錯」社会保障法15号
  5. 脇田滋「雇用崩壊・不安定化と社会保障法の課題─雇用保険と公的扶助の連携を中心に」社会保障法15号
(3)職業紹介・労働者派遣
  1. 有田謙司「職業安定法改正の意義と課題」労働法律旬報1475号
  2. 有田謙司「民間雇用関連サービス事業の役割と法規制」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  3. 安西愈「改正労働者派遣法の実務上の問題と課題」日本労働法学会誌96号
  4. 大橋範雄「労働者派遣事業の多様化と法的課題」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  5. 小俣勝治「職安法の改正」日本労働法学会誌95号
  6. 鎌田耕一「労働者派遣法改正法案の意義と検討課題」法律のひろば52巻3号
  7. 鎌田耕一「改正労働者派遣法の意義と検討課題」日本労働研究雑誌475号
  8. 鎌田耕一「労働者派遣法改正の意義と運用上の課題」ジュリスト1173号
  9. 鎌田耕一「公共職業安定機関の役割と課題─新たな労働市場機構をふまえて」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  10. 神林龍「国営化までの職業紹介制度─制度史的沿革」日本労働研究雑誌482号
  11. 伍賀一道「非正規雇用─派遣労働を中心に」大原社会問題研究所雑誌501号
  12. 小嶌典明「無料職業紹介事業と規制緩和」阪大法学(大阪大学)48巻5号
  13. 小嶌典明「労働者派遣事業と規制緩和」阪大法学(大阪大学)48巻6号
  14. 小嶌典明「改正労働者派遣法の意義と課題」季刊労働法190=191号
  15. 小嶌典明「労働市場の規制改革─職業安定法・労働者派遣法改正の評価」『社会的規制の経済分析』日本経済新同社
  16. 小嶌典明=藤川恵子「The Meaning and Issues of the Amendment Act of Temporary Work BusinessOsaka University Law Review vol.47
  17. 小宮文人「Private Employment Agencies in Japan」法学研究(北海学園大学)34巻2号
  18. 斉藤善久「労働者派遣法の改正」日本労働法学会誌95号
  19. 佐野哲「これからの公共職業紹介」ジュリスト1173号
  20. 島田陽一「派遣法改正と派遣先・派遣元企業の雇用責任」法律のひろば52巻3号
  21. 島田陽一「改正労働者派遣法における適用対象業務のネガティブリスト化の意義と問題点」早稲田法学75巻3号
  22. 竹地潔「派遣労働者の個人情報保護をめぐる課題」法律のひろば52巻3号
  23. 土田道夫「改正職業安定法の意義と課題」日本労働研究雑誌475号
  24. 長井偉訓「労働市場の規制緩和と今日の派遣労働問題」愛媛大学法文学部論集(総合政策学科編)7号
  25. 中野麻美「改正労働者派遣法とこれからの課題」季刊労働法190=191号
  26. 中野麻美「派遣対象業務のネガティブリスト化をめぐる諸問題」法律のひろば52巻3号
  27. 馬渡淳一郎「職業安定法改正の意義と問題点」ジュリスト1173号
  28. 馬渡淳一郎「労働者派遣法改正の意義と問題点」神戸学院法学30巻3号
  29. 水島郁子「派遣労働者の労働・社会保険をめぐる課題」法律のひろば52巻3号
  30. 脇田滋「労働者派遣法改正と雇用情勢」法律のひろば52巻9号
  31. 脇田滋「労働者派遣法改定の意義と法見直しに向けた検討課題」日本労働法学会誌96号
  32. 脇田滋「派遣先事業主の団交応諾義務についての一考察─大阪地労委での救済申立事件を契機に」龍谷法学33巻3号
  33. 脇田滋「労働者派遣法・職業安定法見直しの現段階と改正法案への意見」労働法律旬報1457号
  34. 脇田滋「派遣・職業紹介法と雇用保障法制の緩和」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
(4)高齢者雇用
  1. 阿部和光「高齢者就労社会の雇用政策」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  2. 蛯原典子「高齢者雇用と定年制─定年制法理の再検討」大河純夫=二宮周平=鹿野菜穂子編『高齢者の生活と法』有斐閣
  3. 菊池高志「高齢者の就業」『高齢者の法』有斐閣
  4. 清正寛「定年制の機能変化と雇用システム」『高齢者の法』有斐閣
  5. 清正寛「少子・高齢社会と労働法の課題」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  6. 中原弘二「高齢者雇用の現状と雇用政策」経済論集(佐賀大学)31巻3=4号
  7. 馬渡淳一郎「生きがい労働」『高齢者の法』有斐閣
  8. 森戸英幸「Era of Drastic Legal Reform?: A Japanese Perspective on Aging Societies」成蹊法学48号
  9. 吉田美喜夫「Beschäftigungssicherung für die älterenRitsumeikan Law Review No.16
(5)障害者雇用
  1. 入江信子「障害のある人に関する雇用」明治大学短期大学紀要66号
  2. 関川芳孝「障害者の雇用政策」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  3. 竹中康之「障害者雇用の法的課題─割当雇用制度に焦点を当てて」修道法学(広島修道大学)22巻1=2号
(6)介護従事者
  1. 有馬晋作「ホームヘルパーの就労環境に関する法政策的課題─非常勤ヘルパーと登録ヘルパーを中心に」商経論叢(鹿児島県立短期大学)49号
  2. 有馬晋作「非常勤ヘルパーの労働条件における労働法改正の影響と課題」商経論叢(鹿児島県立短期大学)50号
  3. 中野麻美「ケア・ワーカー、ホームヘルパーの労働条件保護」季刊労働法193号
  4. 林弘子「介護供給体制─ホームヘルパーの法的地位」『高齢者の法』有斐閣
  5. 林弘子「介護・看護をめぐる労働法上の諸問題』季刊社会保障研究36巻4号
  6. 水谷英央「介護サービス従事者の法的地位と責任」季刊労働法193号
(7)外国人労働者
  1. 手塚和彰「国際労働移動と法規制」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  2. 村下博「外国人労働者政策の形成と展開」法学研究所紀要(大阪経済法科大学)27号
  3. 村下博「外国人労働者受け入れ構想づくりに向けて(1)~(4)」大阪経済法科大学法学論集47、48、49、50号

3 個別的労働関係法

(1)労働基準法
  1. 井上幸夫「労働条件の明示、退職時の証明」季刊労働法189号
  2. 上田達子「労働基準法の改正について」日本労働法学会誌95号
  3. 牛嶋勉「労働契約期間の上限の延長と実務上の問題点」季刊労働法189号
  4. 遠藤公嗣「労働基準法の国際的背景」日本労働法学会誌95号
  5. 大沼邦博「改正労基法の政策と法理(上)(中)」労働法律旬報1461、1463号
  6. 毛塚勝利「職場の労働者代表と労使委員会」ジュリスト1153号
  7. 小嶌典明「働き方の変化と労基法改正」ジュリスト1153号
  8. 後藤勝喜「労働基準法制の現状と課題(1)─労働基準法制の展開と労働条件決定システム」法学論集(九州国際大学)7巻2=3号
  9. 下井隆史「1998年労基法改正の意義と問題点」ジュリスト1153号
  10. 角田邦重「労働基準法の改正と今後の課題」労働法律旬報1450号
  11. 土田浩史「平成10年労働基準法改正に至るまでの過程」日本労働研究雑誌475号
  12. 土田道夫「労働基準法とは何だったのか?─労基法の変遷・方向性をその制定過程から考える」日本労働法学会誌95号
  13. 中窪裕也「労働保護法から労働基準法ヘ─労働憲章、賃金、女子・年少者の起草過程」日本労働法学会誌95号
  14. 野川忍「立法資料からみた労働基準法─規制と団交から契約と参加へ」日本労働法学会誌95号
  15. 浜村彰「改正労働基準法の論点─労働者過半数代表・紛争解決の援助」労働法律旬報1457号
  16. 盛誠吾「改正労働基準法─規制緩和の帰結と体系的整合性」日本労働研究雑誌464号
  17. 安枝英訷(ひでのぶ)「働き方の多様化と法的規制の再編成─1998年労働基準法改正への視点」日本労働研究雑誌464号
  18. 渡辺章「労働者の過半数代表法制と労働条件」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  19. 渡辺章「立法資料からみた労働基準法─労働基準法立法資料研究の序説」日本労働法学会誌95号
(2)賃金・福利厚生など
  1. 有田謙司「退職金・企業年金と受給権の保護」『高齢者の法』有斐閣
  2. 家田崇「従業員を被保険者とする『他人の生命の保険』─団体定期保険の考察を中心として」法政論集(名古屋大学)174号
  3. 石井保雄「人事考課・評価制度と賃金処遇」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  4. 市川兼三「社内預金と商法295条」香川法学20巻1=2号
  5. 奥冨晃「雇傭契約における報酬請求権発生問題の基礎理論的考察─いわゆる『報酬支払債務と労務給付との牽連性』について」南山法学23巻1=2号
  6. 金子征史「賃金に関する立法的規制の目的と手段─賃金支払方法の規制に関連して」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  7. 木内隆司「退職金制度の法的性格について」経済理論(和歌山大学)283号
  8. 毛塚勝利「賃金・労働時間法の法理」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  9. 小西康之「企業倒産と労働債権の確保」法律論叢(明治大学)73巻4=5号
  10. 齋藤隆志「社宅の法的諸問題に関する考察」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)30号
  11. 坂本宏志「最低賃金制─賃金債権の確保」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  12. 佐藤敬二「福利厚生施策と受給権保護の課題」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  13. 佐藤敬二「福利厚生の受給権保護に向けて」立命館法学271=272号
  14. 関口昭「年俸制賃金導入をめぐる法律的諸問題─人事考課問題を中心として」立正大学大学院法学研究科研究年報2001
  15. 高木紘一「退職金・企業年金・賞与」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  16. 塚原英治「企業倒産と労働者の権利」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  17. 土田道夫「年俸制をめぐる法律問題─能力主義賃金制度の一側面」獨協法学53号
  18. 林和彦「賃金の決定基準」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  19. 古川陽二「成果主義賃金と年俸制」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  20. 宮本十至子「人の国際的移動(Labor Mobility)に伴う企業年金掛金の課税問題」日税研究賞入選論文集22号
  21. 盛誠吾「賃金債権の発生要件」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  22. 山田二郎「退職金前払い制度と税務上の取扱い」東海法学25号
  23. 山本圭子「家族手当の法的性格」『少子化と社会法の課題』法政大学出版局
  24. 山本吉人「少子化と労使関係─不就労期間と賃金」『少子化と社会法の課題』法政大学出版局
(3)労働時間・休暇・休業
  1. 相澤美智子「育児介護責任と時間外・深夜労働」労働法律旬報1439=1440号
  2. 青野覚「労使委員会─設置と運営」労働法律旬報1488号
  3. 荒木尚志「裁量労働制の展開とホワイトカラーの法規制」社会科学研究(東京大学)50巻3号
  4. 安西愈「新裁量労働制をめぐる問題点」季刊労働法189号
  5. 石橋洋「労基法上の労働時間の概念と判断基準」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  6. 大場敏彦「看護職員の深夜業の実態」労働法律旬報1469号
  7. 鴨田哲郎「『企画型』裁量労働制は働き易いか?」労働法律旬報1478号
  8. 川口美貴「職業生活と家庭生活の調和と労基法改正」ジュリスト1153号
  9. 菅野淑子「育児・介護をめぐる法的問題と今後の展望」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  10. 後藤勝喜「労働時間の算定と事業場外労働」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  11. 斎藤周「郵便局における夜間労働の実状と法的課題」労働法律旬報1469号
  12. 斎藤周「労働者の家族責任と育児介護休業法の役割─厚生労働省『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案』の検討」労働法律旬報1503号
  13. 島田陽一「労働時間短縮と労基法改正」ジュリスト1153号
  14. 島田陽一「改正労働基準法の論点─時間外労働」労働法律旬報1457号
  15. 清水敏「変形労働時問制と勤務の変更─変則勤務制における始終業時刻の変更をめぐる裁判例」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  16. 武井寛「深夜業・交替制動務・変形労働時間制の法的規制」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  17. 中島正雄「労働時間規制の原則と例外」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  18. 永野秀雄「建設労働者の深夜業に関する諸問題と改善案─特にゼネコン職員の就業実態を中心に」労働法律旬報1469号
  19. 長淵満男「年休権の構造」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  20. 中村和夫「年休権と年休闘争」法政研究(静岡大学)3巻3=4号
  21. 西村健一郎「企業における多様な休暇制度」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  22. 野田進「労働時間規制立法の誕生」日本労働法学会誌95号
  23. 野間賢「年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱い」東亜法学論叢4号
  24. 野間賢「時間外労働の法的論点」東亜法学論叢5号
  25. 野間賢「労基法上の労働時間概念(1)」東亜法学論叢6号
  26. 野間賢「変形労働時間制・フレックスタイム制」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  27. 浜村彰「労使委員会による労使協定に代わる決議」労働法律旬報1488号
  28. 浜村彰「労働時間規制の目的と手段」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  29. 春田吉備彦「計画年休協定の私法的効力の検討─年次有給休暇の法構造における自由年休と計画年休の体系的接合の観点から」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)30号
  30. 深谷信夫「改正労働基準法の論点─変形労働時間制(1ヵ月単位・1年単位)」労働法律旬報1457号
  31. 深谷信夫「航空機乗務員の労働時間─航空機乗務員の労働時間制度をめぐる争点」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  32. 深谷信夫「航空機乗務員の労働時間制度─航空機乗務員の労働時間制度」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  33. 深谷信夫「変形労働時間制と勤務の変更─航空機乗務と勤務の変更」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  34. 深谷信夫「『三六協定』締結と時間外労働義務」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  35. 藤本茂「時間外・休日労働」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  36. 古川陽二「変形労働時間制と勤務の変更─スケジュール変更と休日振替、年休『申請』にたいする『休日』指定」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  37. 盛誠吾「新裁量労働制の要件」労働法律旬報1488号
  38. 盛誠吾「航空機乗務員の労働時間制度─1か月単位の変形労働時間制」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  39. 山下幸司「余暇の確保をめぐる労働法制度」ジュリスコンサルタス(関東学院大学)9号
  40. 吉田美喜夫「裁量労働制」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  41. 萬井隆令「労働時間法制と規制緩和」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
  42. 渡辺章「工場法と国際労働条約と労働基準法─時間外労働に対する法的規制の推移を中心に」日本労働研究雑誌482号
  43. 渡辺章「労働基準法上の労働時間─作業職労働者の『始終業基準』との関連において」筑波大学大学院企業法学専攻十周年記念論集刊行委員会編『現代企業法学の研究─筑波大学大学院企業法学専攻十周年記念論集』信山社出版
  44. 渡辺章「労働時間法政策の展開と課題」渡辺章=山川隆一編『労働時間の法理と実務』信山社出版
(4)安全衛生・労災補償
  1. 石川洋「職場におけるストレス」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)28号
  2. 石田眞「作業関連疾患」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  3. 一瀬尚美「請負契約における安全配慮義務に関する一考察─元請人の下請人の被用者に対する安全配慮義務を中心として」立正大学大学院法学研究科研究年報2000
  4. 伊東優子「労安衛法の構造と間題点─その効力と労働者の申告制度の検討を中心として」法政論集(九州国際大学大学院)2巻1号
  5. 岩崎恵一「損害賠償金と労災保険給付金・特別支給金との調整」判例タイムズ998号
  6. 岩村正彦「労災保険政策の課題」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  7. 小畑史子「過労死の業務上外認定─最高裁判決と行政通達」ジュリスト1197号
  8. 小畑史子「脳血管疾患・虚血性心疾患の業務上外認定に関する裁判例─『共働原因』と『相対的に有力な原因』」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
  9. 小畑史子「労働安全衛生法の課題」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  10. 菊池馨実「労働者の自殺をめぐる法的救済」週刊社会保障53巻2062号
  11. 品田充儀「使用者の安全・健康配慮義務」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  12. 田中清定「労災補償制度と労働者の『故意』による事故」関東学園大学法学紀要9巻1号
  13. 田中清定「『過労自殺』事件に係る最高裁判決について」関東学園大学法学紀要10巻1号
  14. ダグラス・ジョン・ドレナン「Regulation and Response: Industrial Safety and Health Law in Japan(1)(2)」法政研究(九州大学)64巻4号、65巻1号
  15. 中嶋士元也「業務上の過重負荷と民事賠償責任─いわゆる過労死・過労自殺と使用者の措置義務」ジュリスト1197号
  16. 中嶋士元也「職業性循環器系疾患死の因果関係論(続論)」上智法学論集42巻3=4号
  17. 中嶋士元也「職業性疾病・作業関連疾病と安全配慮義務」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
  18. 西村健一郎「通勤災害保護制度の現在」週刊社会保障54巻2109号
  19. 西村健一郎「法的問題としての過労死について」ジュリスト1197号
  20. 根本到「通勤災害─通勤途中の犯罪の事案に限定して」労働法律旬報1507号
  21. 長谷川正男「過労自殺をめぐる法律問題」立正大学大学院法学研究科研究年報2000
  22. 畠中信夫「労働安全衛生法の形成とその効果」日本労働研究雑誌475号
  23. 古西信夫=古西律子「過労自殺の労災認定基準(1)~(3完)」労働経済旬報1640、1544、1648号
  24. 堀田一吉「労災保険制度とメリット制」三田商学研究43巻6号
  25. 保原喜志夫「労災認定の課題」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  26. 保原喜志夫「職業性疾病認定の一断面─保母等の頸肩腕症候群について」高見勝利編『人権論の新展開』北海道大学図書刊行会
  27. 松岡三郎「KaroshiMeiji Law Journal vol.8
  28. 松本克美「消滅時効と損害論─じん肺訴訟を中心に」立命館法学268号
  29. 松本克美「強制連行・強制労働と安全配慮義務(1)(2完)─心意なき労働関係における債務不履行責任成立の可否」立命館法学270、273号
  30. 水島郁子「疾病労働者の処遇」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  31. 水島郁子「ホワイトカラー労働者と使用者の健康配慮義務」日本労働研究雑誌492号
  32. 宮崎和子「最近の判例に即した安全配慮義務の一考察─看護労働者のバーンアウトと安全配慮義務の具体的内容」東洋大学大学院紀要36号
  33. 矢邊學「労働契約と使用者の安全配慮義務」専修総合科学研究6号
  34. 山口浩一郎「精神障害・自殺と労災保険」週刊社会保障54巻2075号
  35. 山口浩一郎「通勤災害の補償に関する問題点」週刊社会保障55巻2123号
  36. 山口浩一郎「製造物責任と労働災害の競合から生じる法律問題」法曹時報52巻9号
  37. 良永彌太郎「労災補償と損害賠償の新たな関係」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  38. 渡辺章「健康配慮義務に関する一考察」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
(5)労働者の人格
  1. 今野順夫「私的自由と労働契約」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  2. 島田陽一「企業における労働者の人格権」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  3. 砂押以久子「労働者の個人情報保護の意義と課題─労働省(旧)『労働者の個人情報保護に関する行動指針について』」労働法律旬報1506号
  4. 砂押以久子「情報化社会における労働者のオンラインの権利をめぐる諸問題」『IT革命と職場のプライバシー』日本労働研究機構
  5. 竹地潔「ネットワーク時代における労働者の個人情報保護」季刊労働法187号
  6. 竹地潔「人事労務管理と労働者の人格的利益の保護」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  7. 道幸哲也「自分らしく働く─職場における自立法理の展開」法律時報73巻9号
  8. 野村晃「労働者の思想信条と言論の自由」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  9. 山田省三「雇用関係と労働者のプライバシー」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
(6)雇用平等
  1. 青野覚「差別是正の実効性確保」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  2. 浅倉むつ子「『市民社会』論とジェンダー─労働法の分野から」法の科学28号
  3. 浅倉むつ子「労働法とジェンダー─『女性中心アプローチ』の試み」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  4. 浅倉むつ子「性差別の『例外』とポジティプアクション」労働法律旬報1439=1440号
  5. 浅倉むつ子「男女共同参画社会基本法と条例─労働法へのインプリケーション」労働法律旬報1487号
  6. 井村真己「民事訴訟法改正と賃金差別訴訟における立証─文書提出義務の一般義務化を中心として」沖縄法学(沖縄国際大学)29号
  7. 蛯原典子「雇用差別禁止法理に関する一考察─労働法における平等取扱原則を中心に」立命館法学269号
  8. 奥山明良「雇用・就業形態の多様化と均等待遇」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  9. 神尾真知子「男女賃金差別の法理─法解釈の限界と立法論」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  10. 君塚正臣「改正男女雇用機会均等法の憲法学的検討─いわゆるポジティブ・アクション規定を中心に」関西大学法学論集49巻4号
  11. 今野久子「差別の立証方法」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  12. 笹沼朋子「募集・採用差別」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  13. 笹沼朋子「均等法の新指針の意義と問題点」労働法律旬報1439=1440号
  14. 笹沼朋子「雇用における制度上の性差別に関する一考察」愛媛法学会雑誌25巻1号
  15. 島田陽一「雇用差別をめぐる裁判例の動向と問題点」法律時報73巻9号
  16. 関川芳孝「障害をもつ人に対する雇用平等の理念」荒木兵一郎=中野善達=定藤丈弘編『講座 障害をもつ人の人権2 社会参加と機会の平等』有斐閣
  17. 高橋保「男女共同参画社会形成の課題」創価法学30巻2=3号
  18. 田端博邦「労働市場の女性化と労働法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  19. 西谷敏「賃金・昇格差別の救済法理」季刊労働法193号
  20. 林弘子「配置・昇進と雇用差別」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  21. 深谷信夫「労働法における平等と公正と」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  22. 藤本茂「年齢差別禁止立法化の前提─経済企画庁『雇用における年齢差別禁止に関する研究会中間報告』を読んで」労働法律旬報1493号
  23. 本多淳亮「雇用上の男女平等と性別役割分業」法学研究所紀要(大阪経済法科大学)30号
  24. 山田耕造「障害をもつ人の雇用機会の平等を支えるシステム」荒水兵一郎=中野善達=定藤丈弘編『講座 障害をもつ人の人権2 社会参加と機会の平等」有斐閣
  25. 山田省三「改正均等法の禁止規定化と救済手段」季刊労働法186号
  26. 山本吉人「女性雇用と雇用差別禁止規定をめぐる課題」法律のひろば52巻4号
(7)女性労働
  1. 石井妙子「企業の法的リスク管理からみた女性雇用」法律のひろば52巻4号
  2. 石井保雄「女性の深夜労働禁止規定廃止」労働法律旬報1439=1440号
  3. 今上益雄「職場におけるセクシャル・ハラスメント」東洋法学43巻2号
  4. 上村貞美「セクシュアル・ハラスメントの訴えと名誉毀損」香川法学20巻3=4号
  5. 奥田香子「女性労働法制と規制緩和」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
  6. 奥山明良「セクシュアル・ハラスメントをめぐる法的枠組み─その法概念と法的責任を中心に」日本労働研究雑誌478号
  7. 木下潮音「女性労働者の時間外労働」季刊労働法189号
  8. 桑原昌宏「職場・キャンパスセクハラと法─日本の判例理論からみた予防策を含めて」愛知学院大学論叢法学研究41巻2号
  9. 小西智秀「セクシュアル・ハラスメントの法的構成についての一考察」立正大学大学院法学研究科研究年報2001
  10. 笹沼朋子「女性雇用と就業環境整備をめぐる課題」法律のひろば52巻4号
  11. 染谷孝文「職場におけるセクシュアルハラスメントに関する法的諸問題についての一考察」立正大学大学院法学研究科研究年報2001
  12. 中村和夫「母性保護」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
  13. 前原直樹=坂野純子「国際レベルをめざした男女共通の深夜労働の法規制の現状と今後の課題」労働科学76巻5号
  14. 水谷英夫「日本におけるセクシュアル・ハラスメントの現状と判例の動向」法律のひろば51巻5号
  15. 水谷英夫「日本におけるセクシュアル・ハラスメント裁判例の検討」日本労働法学会誌94号
  16. 宮島尚史「女性(労働者)の保護と平等─政策、運動および論理、法理」法学会雑誌(学習院大学)34巻1号
  17. 宮田量司「セクハラ判決」武蔵大学論集48巻4号
  18. 安枝英訷(ひでのぶ)「女性労働者の保護緩和と労働契約」季刊労働法186号
  19. 安枝英訷(ひでのぶ)「女性雇用新時代の課題と展望」法律のひろば52巻4号
  20. 山崎文夫「セクシュアル・ハラスメント防止の配慮義務と新指針」労働法律旬報1439=1440号
  21. 山崎文夫「セクシュアル・ハラスメントの法理」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  22. 山田省三「女性の時間外労働制限規定の撤廃」労働法律旬報1439=1440号
  23. 山田省三「女性雇用と深夜業務等勤務時間をめぐる課題」法律のひろば52巻4号
  24. 山田省三「職場におけるセクシュアル・ハラスメントをめぐる裁判例の分析(1)(2)」法学新報(中央大学)105巻12号、106巻1=2号
(8)非典型雇用
  1. 木村陽子「社会保障・税制と雇用形態」日本労働研究雑誌462号
  2. 倉田聡「短期・断続的雇用者の労働保険・社会保険」『講座 21世紀の労働法 第2巻』有斐閣
  3. 島田陽一「非正規雇用の法政策」日本労働研究雑誌462号
  4. 島田陽一「雇用・就業形態の多様化と法律問題─パートタイム労働を中心に」自由と正義51巻12号
  5. 島田陽一「契約客室乗務員制度の法的問題点」『規制緩和と航空リストラ』旬報社
  6. 砂山克彦「非典型労働関係と法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  7. 土田道夫「パートタイム労働と『均衡の理念』」民商法雑誌119巻4=5号
  8. 手塚律子「パートタイム労働者の賃金に関する一考察」シオン短期大学研究紀要38号
  9. 久野靖典「パートタイム労働者法の一考察─“現行法・判例”の総括と今後の展望」法政論集(九州国際大学大学院)2巻1号
  10. 和田肇「パートタイム労働者の『均等待遇』─パートタイム労働法私案について」労働法律旬報1485号
  11. 渡寛基「パート労働法制の課題─パート労働者の権利保障法の確立へ」労働法律旬報1441号
(9)労働契約
  1. 石橋洋「労働契約法理の新たな展開」法律時報73巻9号
  2. 岩出誠「情報の管理─労働者の守秘義務、職務発明・職務著作等の知的財産権問題を中心として」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  3. 大内伸哉「変更解約告知」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  4. 唐津博「労働条件変更の法的論理について─段階的構造論・集団的変更解約告知説(大内伸哉『労働条件変更法理の再構成』)が提起するもの」南山法学24巻1号
  5. 唐津博「労働契約と労働条件の決定・変更」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  6. 川田琢之「競業避止義務」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  7. 菊池高志「労働契約の期間」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  8. 桑原昌宏「ネットワーク下の企業秘密と職務著作・職務発明─労働者の人格権の観点から」季刊労働法187号
  9. 斎藤大「労働者の退職後の競業避止義務」判例タイムズ1014号
  10. 角田邦重「労働者に対する損害賠償請求」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  11. 寺井基博「労働条件の決定・変更と労使慣行の法理」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  12. 中窪裕也「労働契約の意義と構造」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  13. 野田進「労働条件切り下げの『条件』」『高齢者の法』有斐閣
  14. 野田進「変更解約告知と整理解雇法理─判例における準変更解約告知法理の展開」法政研究(九州大学)66巻2号
  15. 野田進「労働契約における『合意』」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  16. 外尾健一「労働契約の基本概念」日本労働法学会誌96号
  17. 松岡博「渉外労働契約における競業避止義務」阪大法学(大阪大学)47巻4=5号
  18. 水町勇一郎「労働契約の成立過程と法」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  19. 宮本健蔵「労働過程で生じた損害と他人のためにする行為のリスク責任」明治学院大学法律科学研究所年報16号
  20. 村中孝史「労働契約概念について」京都大学法学部百周年記念論文集刊行委員会編『京都大学法学部創立百周年記念論文集第3巻』有斐閣
  21. 盛誠吾「労働契約関係」労働法律旬報1457号
  22. 矢野昌浩「De la théorie japonaise du contrat du travail: Problèmes et possibilites」琉大法学62号
  23. 矢野昌浩「Autour de la théorie de contrat de travail au Japon」琉大法学64号
  24. 山本吉人=山本圭子「労働条件変更の決定過程と法的評価(3)(4)」法学志林(法政大学)97巻3号、98巻1号
  25. 萬井隆令「労働契約法制と規制緩和」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
  26. 脇田滋「雇用・就業形態の変化と指揮命令権」『講座 21世紀の労働法 第4巻』和田肇「労働契約論の現代的課題・試論」季刊労働者の権利233号
(10)就業規則
  1. 青野覚「判例における合理性判断法理の到達点と課題」日本労働法学会誌92号
  2. 大沼邦博「労働条件の不利益変更─就業規則に関する判例法理の展開」法律時報73巻9号
  3. 小西國友「就業規則による労働条件の不利益変更─最近の最高裁判決の位置づけ」季刊労働法195号
  4. 島田陽一「労働条件変更手段からみた就業規則に関する判例法理の問題点と課題」日本労働法学会誌92号
  5. 清野惇「私立大学教職員の就業規則(試案)について」修道法学(広島修道大学)23巻1号
  6. 田村洋「就業規則不利益変更判例の検討」法学会雑誌(束京都立大学)39巻1号
  7. 浜田冨士郎「就業規則法の理論的課題」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  8. 三井正信「就業規則法理の再検討─就業規則論研究序説」修道法学(広島修道大学)23巻2号
(11)人事・懲戒
  1. 岩村正彦「出向制度の現状─法的視角からの分析」川喜多喬=岩村正彦=高木晴夫=永野仁=藤村博之『グループ経営と人材戦略」総合労働研究所
  2. 鬼頭統治「配転・出向をめぐる労働法的課題」名城法学論集(名城大学大学院)26号
  3. 黄馨慧「配転規制法理の形成と発展」本郷法政紀要(東京大学大学院)8号
  4. 鈴木隆「企業の懲戒・制裁」『講座 21世紀の労働法 第6巻』
  5. 藤内和公「降格をめぐる法律問題」季刊労働法194号
  6. 藤内和公「人事制度」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  7. 中村和夫「転勤をめぐる判例法理の再検討」法政研究(静岡大学)5巻3=4号
  8. 原俊之「配転理論の今日的課題」法学研究論集(明治大学大学院法学研究)10号
  9. 和田肇「業務命令権と労働者の家庭生活」『講座 21世紀の労働法 第7巻』
(12)労働契約の終了
  1. 荒木尚志「Re-examination of Employment Security in Japan in Light of Socio-economic Structural Changes」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
  2. イ・ジョン「解雇の手続的規制」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  3. 石原和子「労基法14条改正(契約期間の上限緩和)と有期雇用の雇止め」愛知論叢(愛知大学大学院)66号
  4. 鵜飼良昭「整理解雇法理の現状と実務上の課題」季刊労働法196号
  5. 大石玄「類型別にみる整理解雇」労働法律旬報1502号
  6. 加藤照康「反覆更新後の有期雇用契約の雇止めに関する一考察」中京大学大学院法学研究論集19号
  7. 加藤真紀「協議説明論」労働法律旬報1502号
  8. 川口美貴「雇用構造の変容と雇用保障義務」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  9. 北岡大介「解雇回避措置論」労働法律旬報1502号
  10. 国武英生「人選基準論」労働法律旬報1502号
  11. 小宮文人「解雇・雇止め・退職強要の法律問題」ジュリスト1149号
  12. 小宮文人「雇用終了をめぐる最近の判例」法学研究(北海学園大学)35巻3号
  13. 小宮文人「解雇に関する判例の動向とその評価」法律時報73巻9号
  14. 紺屋博昭「リストラの実態」労働法律旬報1502号
  15. 土田道夫「解雇権濫用法理の法的正当性」日本労働研究雑誌491号
  16. 津幡笑「いわゆる四要件論─必要性要件について」労働法律旬報1502号
  17. 道幸哲也「整理解雇過程論の試み」労働法律旬報1502号
  18. 中田(黒田)祥子「解雇法制と労働市場」日本労働研究雑誌491号
  19. 中町誠「整理解雇法理は実務上確立しているか」季刊労働法196号
  20. 西谷敏「整理解雇法理の再構築」季刊労働者の権利238号
  21. 盧尚憲「有期労働契約の法理(1)(2完)─更新拒否をめぐる法的問題を中心に」法学会雑誌(東京都立大学)39巻1、2号
  22. 野川忍「解雇の自由とその制限」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  23. 野田進「解雇法理における『企業』」日本労働法学会誌97号
  24. 野田進「解雇法理における『企業』」法政研究(九州大学)67巻4号
  25. 野田進「解雇の概念について」法政研究(九州大学)68巻1号
  26. 藤原稔弘「整理解雇法理の再検討」日本労働研究雑誌491号
  27. 古川景一「解雇権濫用法理と要件事実・証明責任、及び解雇に関する正当事由必要説の再構成試論」季刊労働法194号
  28. 古川景一「解雇制限と証明責任・証拠提出資任─解雇を巡る判例法理の意義」季刊労働者の権利238号
  29. 村中孝史「日本的雇用慣行の変容と解雇制限法理」民商法雑誌119巻4=5号
  30. 村中孝史「人事制度の多様化と解雇の必要性判断」季刊労働法196号
  31. 本久洋一「違法解雇の効果」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  32. 盛誠吾「整理解雇法理の意義と限界」労働法律旬報1497号
  33. 森戸英幸「辞職と合意解約─いわゆる「みなし解雇」に関する考察とともに」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  34. 山川隆一「解雇訴訟における主張立証責任─解雇権濫用法理・解雇事由・整理解雇の問題を中心に」季刊労働法196号
  35. 山口純子「解雇をめぐる法的救済の実効性」日本労働研究雑誌491号
  36. 山口卓男「解雇紛争処理の判断枠組みの再検討─管理職労働者に対する解雇権濫用法理の適用事例をめぐって」企業法学会編『企業法学』(商事法務研究会)
  37. 山田哲「リストラをめぐる法的な論点と基本判例─整理解雇の位置づけ」労働法律旬報1502号
  38. 吉田美喜夫「解雇法制と規制緩和」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
  39. 和田肇「整理解雇法理の見直しは必要か」季刊労働法196号
(13)企業組織の変動
  1. 荒木尚志「合併・営業譲渡・会社分割と労働関係─労働契約承継法の成立経緯と内容」ジュリスト1182号
  2. 石田眞「歴史の中の『企業組織と労働法』─企業組織の変容と労働法」日本労働法学会誌97号
  3. 岩出誠「労働契約承継法の実務的検討(上)(中)(下)」旬刊商事法務1570、1571、1572号
  4. 岩出誠「会社分割による労働契約承継法の実務(1)~(6)」労働判例792、794、796、798、800、802号
  5. 小俣勝治「使用者概念の変化と法」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  6. 武井寛「営業譲渡と労働関係─労働法の視角から」日本労働法学会誌94号
  7. 土田道夫「会社組織の再編と雇用関係」自由と正義51巻12号
  8. 中内哲「企業結合と労働契約関係」『講座 21世紀の労働法 第4巻』
  9. 棗一郎「会社分割法制及び労働契約承継法の内容と問題点」季刊労働者の権利237号
  10. 南村博二「純粋持株会社と労働法上の諸問題」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)30号
  11. 橋本陽子「営業譲渡と労働法」日本労働研究雑誌484号
  12. 三田村浩「企業の営業譲渡に伴う労働者の法的地位の承継をめぐって」法研会論集(愛知学院大学大学院)13巻1=2号
  13. 本久洋一「労働契約承継法」日本労働法学会誌97号
  14. 本久洋一「会社分割と労働関係─『会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案』の検討」労働法律旬報1478号
  15. 本久洋一「労働契約承継法の検討─省令・告示等をふまえて」労働法律旬報1508号
  16. 盛誠吾「企業組織の変容と労働法学の課題」日本労働法学会誌97号
  17. 安枝英訷(ひでのぶ)「会社分割と労働関係」法学教室243号
  18. 柳屋孝安「会社分割と労働法上の諸問題」日本労働研究雑誌484号
  19. 山川隆一「会社分割と労働関係」法学教室242号
  20. 山川隆一「持株会社と労働法」川越憲治編『持株会社の法務と実務』社団法人金融財政事情研究会
  21. 山下眞弘「営業譲渡と労働関係─商法学の立場から」日本労働法学会誌94号
  22. 吉田哲郎「純粋持株会社解禁と労働法上の諸問題」季刊労働法188号
  23. 萬井隆令「企業組織の再編と労働契約の承継─『会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案』について」労働法律旬報1478号
  24. 萬井隆令「複数関係企業間における労働条件の決定・変更」『講座 21世紀の労働法 第3巻』

4 集団的労使関係法

(1)総論・労働組合・労働者代表
  1. 新谷眞人「労働者代表制と労使委員会」季刊労働法189号
  2. 遠藤昇三「団結権論再構築の視座(1)~(3)完」島大法学(島根大学)42巻3、4号、43巻1号
  3. 大内伸哉「ユニオン・ショップ協定が労働団体法理論に及ぼした影響」神戸法学雑誌49巻3号
  4. 大内伸哉「労働者代表に関する立法政策上の課題」日本労働法学会誌97号
  5. 萱谷一郎「労働組合の当事者適格」姫路工業大学一般教育部研究報告8
  6. 毛塚勝利「『労使委員会』の可能性と企業別組合の新たな役割」日本労働研究雑誌485号
  7. 小嶌典明「労使関係法と見直しの方向」日本労働法学会誌96号
  8. 小嶌典明「従業員代表制」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  9. 鈴木芳明「労働条件決定過程と組合内部手続」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  10. 田端博邦「労働者組織と法─立法政策の可能性」日本労働法学会誌97号
  11. 田端博邦「生産方式の変化と労使関係─グローバル化への対応」東京大学社会科学研究所編『20世紀システム5 国家の多様性と市場』東京大学出版会
  12. 道幸哲也「労働組合員たることの保護法理」法律時報70巻10号
  13. 道幸哲也「労働組合政策の回顧と労使関係政策の課題」日本労働研究雑誌463号
  14. 道幸哲也「労使関係法の将来」日本労働法学会誌97号
  15. 道幸哲也「21世紀の労働組合と団結権」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  16. 道幸哲也「団結権保障システムの展開と課題」高見勝利編『人権論の新展開』北海道大学図書刊行会
  17. 直井春夫「労働組合と情報公開─NPO法を契機として」季刊労働法187号
  18. 根本到「労働者像の変化と労働組合」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  19. 藤川久昭「労使関係法政策直しのための諸論点に関する覚書」日本労働法学会誌96号
  20. 藤原淳美「退職積立金及退職手当法成立期の労働運動─戦前期日本労働運動史の一側面」神戸法学年報16号
  21. 三井正信「労働組合の職場代表機能に関する法理論的考察(1)(2)」広島法学22巻2号、23巻3号
  22. 三井正信「組合のなかの集団と個人」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
(2)団体交渉
  1. 新谷眞人「団交拒否」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  2. 遠藤昇三「団体交渉権理論の転換(1)(2)」島大法学(島根大学)43巻3、4号
  3. 片岡曻(のぼる)「雇用形態の多様化と団体交渉制度」京都大学法学部百周年記念論文集刊行委員会編『京都大学法学部創立百周年記念論文集第3巻』有斐閣
  4. 道幸哲也「団体交渉権の法的構造」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
(3)団体行動
  1. 遠藤昇三「争議行為の責任」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  2. 大久保史郎「日本企業社会と現代人権論─就業時間中の組合腕章・バッジ着用をめぐって」立命館法学271=272号
  3. 大和田敢太「争議行為の正当性」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  4. 辻村昌昭「企業内・外の組合活動」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  5. 松田保彦「裁判所の論理・労働委員会の論理─JRバッジ事件の場合」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
(4)労働協約
  1. 萱谷一郎「労働協約論『私論』の輪郭」姫路工業大学一般教育部研究報告8
  2. 小西國友「労働協約の意義・成立・法的性質と労働条件の決定」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  3. 名古道功「労働協約の変更と拡張適用」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
(5)労働委員会
  1. 秋田成就「労働委員会命令の司法審査」季刊労働法188号
  2. 池田稔=原山喜久男「労働委員会命令取消訴訟事件の判決確定後の措置について」中央労働時報941号
  3. 小西國友「労働委員会の実効確保措置勧告について」立教法学54号
  4. 千々岩力「労働委員会の個別的紛争処理と事務局の専門職問題」季刊労働法188号
  5. 道幸哲也「実感的労働委員会論(上)(下)」法律時報72巻4、5号
  6. 直井春夫=成川美恵子「個別紛争解決システムと労働委員会」季刊労働法190=191号
  7. 中窪裕也「労働委員会制度に関する一考察─Have they outlived their usefulness?」日本労働研究雑誌473号
  8. 中嶋士元也「裁判所の手法と労働委員会の苦境」日本労働研究雑誌473号
  9. 籾山錚吾「労働委員会の将来─補充性の原則の適用の視点から」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  10. 安枝英訷(ひでのぶ)「労働委員会による労働争議の調整」同志社法学52巻2号
  11. 山口浩一郎「わが国の労使関係における労働委員会の役割」日本労働研究雑誌473号
  12. 山嵜眞司「中央労働委員会における紛争処理の現状と課題」ジュリスト1207号
(6)不当労働行為
  1. 秋山義昭「救済命令と取消訴訟」日本労働法学会誌94号
  2. 國武輝久「組合併存状態と不当労働行為」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  3. 小宮文人「不当労働行為の認定基準─いわゆる不当労働行為意思論と不利益取扱の態様」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  4. 下井隆史「JR不採用事件について─労委命令・裁判例の見解に関する整理と検討」日本労働研究雑誌461号
  5. 道幸哲也「救済命令の司法審査法理」季刊労働法188号
  6. 道幸哲也「不当労働行為の成否判断基準」日本労働法学会誌94号
  7. 直井春夫=成川美恵子「査定差別」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  8. 西井龍生「国鉄労働組合に対する数かずの不当労働行為」西南学院大学法学論集30巻2=3号
  9. 浜村彰「不当労働行為判例の最近の動向と問題点」法律時報73巻9号
  10. 平川亮一「労働委員会と裁判所の論理の相違─その思考・軸足の違いをみる」名城法学48巻1号
  11. 古田幸「不当労働行為救済命令の取消判決に見る問題点」名城法学論集(名城大学大学院)26号
  12. 宮里邦雄「労働委員会命令の法理」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  13. 山口浩一郎「行政救済と司法救済」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  14. 山本吉人「労働委員会命令と最高裁の審査基準(上)(下)」労働判例741、742号
  15. 萬井隆令「採用拒否と不当労働行為─純然たる新規採用の場合について」龍谷法学33巻3号

5 官公労

  1. 香川孝三「公共部門における労働条件の決定・変更」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  2. 片岡曻(のぼる)「地方公務員の派遣と混合組合問題」民商法雑誌121巻3号
  3. 島田陽一「地方公務員法における管理職員等の範囲─大宇陀町職員組合登録取消事件を契機として」早稲田法学76巻4号
  4. 清水敏「公務員の給与と勤務時間」『講座 21世紀の労働法 第5巻』
  5. 清水敏「公務における任用の弾力化と公務員法制改革の課題─労働法学の立場から」労働法律旬報1447=1448号
  6. 清水敏「地方公務員の第三セクター派遣と立法上の課題」労働法律旬報1459号
  7. 清水敏「独立行政法人における労働法上の諸問題」労働法律旬報1484号
  8. 清水敏「独立行政法人における労使関係の法的枠組み」早稲田法学75巻3号
  9. 橋本孝夫=本久洋一「地方公務員労働者における労働条件決定システムの法的研究(上)(下)─小樽市職員の労働条件決定システムの法的構成」商学討究(小樽商科大学)51巻2=3、4号
  10. 深谷信夫「国立大学の設置形態と労使関係(上)(下)」労働法律旬報1503、1505号
  11. 松尾邦之「期限付任用・短時間勤務国家公務員の任用反復更新後の再任用拒否に対する法的救済試論」香川法学19巻2号
  12. 三浦大介「自治体職員の懲戒制度─高知県の職員に対する飲酒運転懲戒免職処分によせて」高知論叢63号
  13. 渡辺賢「公務員の労働基本権」『講座 21世紀の労働法 第8巻』
  14. 渡辺賢「適正手続保障としての労働基本権(1)─公務員の労働基本権再考のための覚書」帝塚山法学5号

6 紛争処理

  1. 浅倉むつ子「司法におけるジェンダー・バイアス」法律時報73巻7号
  2. 鵜飼良昭「個別労使紛争の現状と紛争解決システム」ジュリスト1149号
  3. 鵜飼良昭「司法制度改革と労働裁判改革」自由と正義52巻6号
  4. 菅野和夫「労使紛争と裁判所の役割─労働事件の特色と裁判所の専門性」法曹時報52巻7号
  5. 土田道夫「労働裁判改革─『法の支配』を雇用社会に定着させるために」法律時報73巻7号
  6. 道幸哲也「個別労使紛争の増加と処理システム」季刊労働法195号
  7. 中嶋士元也「労働条件の決定・変更と紛争処理システム」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  8. 中山慈夫「解雇紛争処理制度の現状─裁判所、労働委員会を中心として」ジュリスト1149号
  9. 西谷敏「労働裁判改革の展望」労働法律旬報1499号
  10. 西谷敏「労働裁判改革の展望」法の科学30号
  11. 村田毅之「地方労働局における個別的労使紛争処理─労働基準法105条の3に基づく紛争解決援助制度を中心に」松山大学論集12巻5号
  12. 渡辺章「雇用関係紛争における法の実現について─多発する雇用紛争の質的変化をみすえて」駒井洋編『日本的社会 知の死と再生』ミネルヴァ書房

7 外国法・比較法・国際法

(1)国際機関
  1. 吾郷眞一「国際経済開発と労働基準」法政研究(九州大学)66巻2号
  2. 阿部浩己「国際人権と女性─女性差別撤廃条約選択議定書の意味するもの」労働法律旬報1487号
  3. 小畑史子「労働安全衛生規制とISO14000・OHSAS18000シリーズ─ISOのOHSMS規格開発の動きが労働安全衛生に与えた影響」富大経済論集(富山大学)46巻3号
  4. 軽部恵子「国連女性差別撤廃条約および選択議定書の留保に関する一考察─条約の実効性確保の観点から(1)」桃山学院大学社会学論集34巻2号
  5. 木下正義「雇用促進失業保護条約にそくした解雇規制策─失業者の雇用を促進するために」専修総合科学研究8号
  6. 木下正義「均等条約の促進と労基法の均等条項の再検討─均等条項を拡大する立法改正試案の構想」比較法制研究(国士舘大学)22号
  7. 木村愛子「ILO基準と日本の母性保護制度」大原社会問題研究所雑誌508号
  8. 斎藤周「国際労働基準の展望」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
  9. 笹沼朋子「女性労働法制再編とILOの動向」季刊労働法186号
  10. 清水敏「ILO結社の自由委員会1991号事件中間報告の意義─国労、全動労提訴事案」労働法律旬報1474号
  11. 水津雄三「21世紀の先進国経済と自営業─ILOの動向を中心として」同志社商学51巻1号
  12. 戸塚悦朗「ILO創設と男女平等賃金原則の成立(1)」国際協力論集(神戸大学)8巻2号
  13. 長井偉訓「ILO『民間職業紹介所に関する条約』改正とわが国の労働者派遣制度」愛媛大学法文学部論集(総合政策学科編)6号
  14. 西立野園子「女子差別撤廃条約選択議定書─個人通報手続と調査手続の導入」ジュリスト1176号
  15. 服部あさ子「ILO強制労働条約と『従軍慰安婦』問題─ILO条約勧告適用専門家委員会による条約違反認定の法的妥当性」国際公共政策研究(大阪大学)3巻2号
  16. 本多淳亮「働く女性の地位と国際人権─自己決定権と平等原則をめぐって」大阪経済法科大学法学論集43号
  17. 松尾邦之「経済のグローバリゼーションとILOおよびEUの動向」『規制緩和と労働者・労働法制』旬報社
  18. 馬渡淳一郎「労働市場の法的機構─国際基準と動向」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  19. 米津孝司「グローバリゼーションと国際労働法の課題」『講座 21世紀の労働法 第1巻』
(2)アメリカ
  1. 相澤美智子「雇用差別訴訟における立証責任に同する一考察(1)~(3完)─アメリカ公民権法第7編からの示唆」法学会雑誌(東京都立大学)39巻2号、40巻1、2号
  2. 相澤美智子「労働者の妊娠・出産保護をめぐる新たな議論へ向けて」法学会雑誌(東京都立大学)41巻1号
  3. 伊藤健市「全国労働関係法合意判決と従業員代表訓」同志社商学51巻3号
  4. 今里滋「連邦政府における人事行政改革の実践─業績評定・業績給制度を中心として」今里滋『アメリカ行政の理論と実践』九州大学出版会
  5. 井村真己「アメリカにおける雇用差別禁止法理の再考察」六甲台論集(法学政治学篇)(神戸大学)44巻3号
  6. 植木淳「平等保護法理とAffirmative-Action」六甲台論集(法学政治学篇)(神戸大学)46巻2号
  7. アナリーゼ・エイコン/桑原昌宏訳「セクハラ・雇用平等とジェンダー差別─20世紀後半の法律分野でみられる新しい動きに関する夢と悪夢:米国三菱自動車事件からの困難な教訓」愛知学院大学論叢法学研究40巻1号
  8. 大原利夫「米国における退職者医療給付改廃権をめぐる判例法理の動向(上)(下)」労働法律旬報1451、1452号
  9. 奥田剛「セクシュアル・ハラスメント訴訟と雇用主責任─米最高裁の示した推定責任とは」インシュアランス3839号
  10. 片岡洋子「人事管理と雇用平等制度」大原社会問題研究所雑誌506号
  11. 勝田卓也「雇用差別訴訟における統計的証拠の利用について─アメリカにおける『系統的な異なる取扱い』訴訟を中心に」早稲田法学74巻2号
  12. 勝田卓也「アメリカにおける雇用平等法制の展開─公民権法第7編訴訟における差別概念とアファーマティヴ・アクションの変容」早稲田法学75巻1号
  13. 加藤亮太郎「日本企業とアメリカにおける雇用差別問題について─国際人事管理の一考察」東海法学23号
  14. 川井圭司「アメリカ・プロスポーツにみるNLRA〔全国労働関係法〕と反トラスト法の関係─Brown判決の意味」日本労働法学会誌94号
  15. 河合塁「アメリカの私的退職プランに関する法的考察(上)(下)」季刊労働法195、196号
  16. 菊澤眞一郎「アメリカ『年齢差別禁止法』に関する一考察」法政論集(九州国際大学大学院)2巻1号
  17. 木村澄「米国障害者法における差別禁止と障壁除去」秋田法学(秋田経済法科大学)34号
  18. トーマス・C・コーラー/早川智津子訳「世紀末の雇用関係とその規律─1990年以降のアメリカ合衆国における動向についての考察」日本労働研究雑誌464号
  19. 澤田幹「ダンロップ・レポートと1990年代アメリカ労使関係」同志社商学51巻3号
  20. 品田充儀「アメリカにおける放射線被爆労働者の救済(1)」神戸外大論叢50巻1号
  21. 菅野和夫「米国企業における苦情処理ADRと社内オンブズパーソン」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
  22. 竹川雅治「アメリカにおけるセクシャルハラスメントに対する使用者責任の新しい動向」札幌法学(札幌大学)10巻1=2合併号
  23. 田中豊「セクシュアル・ハラスメントと使用者の責任」法律のひろば52巻3号
  24. 谷本義高「アメリカにおける労働条件の決定・変更」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  25. 千々岩力「アメリカ不当労働行為審査制度の構成と運用(上)(中)(下)」高岡法学10巻1=2号合併号、11巻2号、12巻2号
  26. 中窪裕也「アメリカにおけるセクシャル・ハラスメント法理の新展開─使用者の責任に関する連邦最高裁の意義」ジュリスト1147号
  27. 中窪裕也「労働法の規制緩和と弾力化─アメリカ」日本労働法学会誌93号
  28. 中窪裕也「アメリカの解雇規制の概要」世界の労働50巻9号
  29. 永野秀雄「障害のあるアメリカ人法における『精神的障害をもつ人』に対する雇用差別規制法理」法学志林(法政大学)98巻1号
  30. 中村涼子「雇用における年齢差別の禁止─米国の法規制の基本趣旨」本郷法政紀要(東京大学大学院)9号
  31. 橋場俊展「『従業員参加』をめぐる諸議論の概観及び批判的検討」北見大学論集(北海学園北見大学)23巻2号
  32. 早川智津子「アメリカ労働法における外国人不法就労者の法的地位」法学政治学論究(慶童義塾大学)46号
  33. 林弘子「アメリカにおけるセクシュアル・ハラスメント法理の再検討─最近の連邦最高裁判決を中心に」日本労働法学会誌94号
  34. 福岡久美子「労災補償支払停止に関する憲法上の問題」阪大法学(大阪大学)50巻4号
  35. 藤川恵子「労働者派遣の現状と展望─アメリカにおける労働者派遣と共同使用者の概念を中心に」季刊労働法186号
  36. 藤川恵子「従業員リースとその規制─アメリカの現状」阪大法学(大阪大学)48巻6号
  37. 藤原淳美「アメリカ労働法における制定法上の権利の仲裁付託可能性─最近の判例の動向に対する一考察」日本労働研究雑誌464号
  38. 藤原淳美「アメリカ合衆国における戦時労働政策と仲裁─第2次世界大戦期の労使紛争処理施策」六甲台論集(法学政治学篇)(神戸大学)46巻1号
  39. 藤原淳美「米国労働仲裁と連邦仲裁法─連邦労働政策の一側面」六甲台論集(法学政治学篇)(神戸大学)46巻3号
  40. 真嶋理恵子「使用者によるEメールのモニタリングと従業員のプライバシー(1)~(4完)─米国の電子的通信プライバシー法」NBL 658、660、661、662号
  41. 松田聡子「アファーマティブ・アクションの違憲審査基準─人種的多様性論の行方」帝塚山学院大学研究論集32号
  42. 籾岡宏成「アメリカ法における懲罰的損害賠償の『法と経済学』的検討」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)29号
  43. 籾岡宏成「アメリカにおける雇用差別と懲罰的損害賠償」法学政治学論究(慶応義塾大学)41号
  44. 森戸英幸「米国におけるテレワーク・SOHOの法的諸問題─C. Andrew Head, "Telecommuting: Panacea or Pandora's Box?"を基礎として」成蹊法学50号
  45. 森戸英幸「雇用における年齢差別禁止法─米国法から何を学ぶか」日本労働研究雑誌487号
  46. 柳澤武「雇用における年齢差別禁止法理の変容─アメリカ年齢差別禁止法の下におけるインパクト法理」九大法学(九州大学)81号
  47. ジョージ・ラサグレン/安部圭介訳「アメリカ法に対するフェミニズムの影響─雇用差別の分野を例として」アメリカ法1998-1
(3)カナダ
  1. アルジュン・P.アガルバル「職場におけるセク・ハラ─カナダ法の概観」愛知学院大学論叢法学研究39巻4号
  2. 柏崎洋美「労働者に対するセクシュアル・ハラスメントについての一考察(上)(下)─カナダ法を中心に」季刊労働法192、193号
  3. 木村愛子「カナダにおける労働市場の変容と男女同一価値労働同一賃金法制の課題」早稲田法学75巻3号
  4. 木村愛子「『賃金衡平』に関するカナダ連邦裁、新判決の意義(報告)」世界の労働50巻4号
  5. フランク・ジョーンズ/桑原昌宏訳「カナダの労使関係と労使紛争解決方法─日本との比較」愛知学院大学論叢法学研究40巻4号
  6. 三田村浩「カナダ連邦およびB.C.州における企業の営業譲渡と承継人の権利義務規定─団体交渉権の承継をめぐる法規制と審決例の趨勢」法研会論集(愛知学院大学大学院)14巻1=2号
(4)EC・EU、ヨーロッパ諸国間比較
  1. 荒木尚志「EUにおける企業の合併・譲渡と労働法上の諸問題─企業譲渡指令にみるEC労働法の一側面」『現代ヨーロッパ法の展望」東京大学出版会
  2. 家田愛子「EU(欧州連合)における営業譲渡法─イギリス労働法へのEU労働法の影響」日本労働法学会誌94号
  3. 家田愛子「EUにおける新たな雇用差別禁止指令および人種差別禁止指令の提案」労働法律旬報1492号
  4. 井口泰「諸外国における最近の雇用・失業対策の動向─ドイツ・フランスを中心として」日本労働研究雑誌466号
  5. 上田達子「EUの社会政策における同一賃金及び賃金待遇原則」同志社法学49巻4号
  6. 上田廣美「EU企業の事業所閉鎖に対する欧州労使協議会の機能とその問題点」国際商事法務26巻11号
  7. 上田廣美「EUにおける従業員参加の法的研究(6)~(8完)─加盟各国における従業員参加の諸形態と欧州労使脇議会指令への展開」法研論集(早稲田大学大学院)87、88、90号
  8. 上田廣美「欧州共同体における従業員の情報入手と協議に関する一般的枠組みを設置する理事会指令の提案について」亜細亜法学35巻1号
  9. 上田廣美「企業再編における従業員保護に関するEC指令と判例理論の展開」亜細亜法学35巻2号
  10. 奥山明良「諸外国におけるセクシュアル・ハラスメントの法規制─EU諸国における法規制の現状を中心に」法律のひろば51巻5号
  11. 奥山明良「EU諸国におけるセクシュアル・ハラスメントの法規制」ジュリスト1147号
  12. 川口美貴「欧州連合(EU)における国際的集団的労使間係法の展開」法政研究(静岡大学)3巻1号
  13. 川口美貴「フランスにおける労働時間法制の展開─労働者の健康・自由時間保障と雇用・労働形態の多様化」法政研究(静岡大学)5巻1号
  14. 川口美貴「フランス法・共同体法(EC法)における国際社会法の展開」日本労働法学会誌94号
  15. 鈴木隆「EUにおける障害者雇用政策の展開(1)(2完)」島大法学(島根大学)44巻4号、45巻1号
  16. 鈴木宏昌「規制緩和と弾力化・ヨーロッパの視点」季刊労働法190=191号
  17. 手塚和彰「EU統合とヨーロッパ労働法─ドイツ法との関連において」『現代ヨーロッパ法の展望』東京大学出版会
  18. 濱口桂一郎「EUの『年齢・障碍等差別禁止指令』の成立とそのインパクト」世界の労働51巻2号
  19. 濱口桂一郎「EU社会政策思想の転換」季刊労働法194号
  20. マルコ・ビアジ=ミケーレ・ティラボスキ/大内伸哉訳「欧州における企業内労働者代表に対する情報提供・協議義務」日本労働研究雑誌495号
  21. 福岡英明「欧州連合(EU)の雇用における男女平等に関する法制の発展(1)(2)」比較法雑誌(中央大学)30巻3、4号
  22. 古川陽二「欧州連合(EU)の従業員代表法制の展開とイギリスの労働組合」越路正巳編『21世紀の民族と国家(2) 21世紀の主権、人権および民族自決権』未来社
  23. 籾山錚吾「ヨーロッパの統合と労働の法理論(1)~(6)」朝日法学論集16、18、19、21、23、25号
  24. 柳沢房子「EUにおける男女雇用平等政策─回顧と展望」レファレンス603号
  25. 山川隆一「セクシュアル・ハラスメントと使用者の責任」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
  26. 山崎隆志「諸外国における親休暇(育児休暇)の現状─欧州諸国を中心に)レファレンス577号
  27. 山田省三「ヨーロッパ司法裁判所におけるポジティブ・アクション法理の展開─カランケ・マルシャル・バデック・アブラハムソン事件4部作の検討」比較法雑誌(中央大学)34巻4号
  28. ジェラール・リオン=カーン/大内伸哉訳「労働法の二面性」『現代ヨーロッパ法の展望』東京大学出版会
(5)イギリス
  1. 相澤美智子「間接性差別の立証における集団的比較の方法」労働法律旬報1489=1490号
  2. 秋田成就「イギリス労働協約の法的拘束力(2)」社会労働研究(法政大学)45巻1号
  3. 有田謙司「イギリス雇用契約法における信頼関係維持義務の展開と雇用契約観」山口経済学雑誌(山口大学)46巻3号
  4. 有田謙司「イギリスにおける教育訓練費の返還条項」山口経済学雑誌(山口大学)47巻5号
  5. 有田謙司「イギリス雇用審判所・雇用上訴審判所における三者構成と専門性(1)」山口経済学雑誌(山口大学)48巻4号
  6. デヴィッド・アンティル=パスカル・ロベール/小宮文人訳「イギリス労働党政権下における労働者の集団的・個別的権利の改革」日本労働研究雑誌496号
  7. 石井まこと「英国労使関係の新展開─集団的自由放任主義から法規制へ」労働の科学54巻11号
  8. 石橋洋「イギリス法における営業制限法理の形成過程」常葉謙二=古賀允洋=鈴木桂樹編『国際社会の近代と現代』九州大学出版会
  9. 石橋洋「イギリス法における営業制限法理の法的構造(1)─雇用契約上の競業避止特約を中心に」熊本法学98号
  10. 大森真紀「イギリス工場法・工場監督制度研究の歩み(上)(下)」早稲田社会科学研究57、58号
  11. 表田充生「イギリス労働審判所における上訴に関する一考察」日本労働法学会誌92号
  12. 唐津博「イギリスにおける整理解雇法ルール」季刊労働法196号
  13. 黒岩容子「性差別禁止法の間接差別と『正当性』の抗弁」労働法律旬報1489=1490号
  14. ヘーゼル・ゲン/村山眞維訳「イギリスにおける代替的紛争処理」千葉大学法学論集15巻2号
  15. 柴山恵美子「イギリスのパートタイム労働に関する新法制とEC(現EU)理事会指令」賃金と社会保障1280号
  16. 鈴木隆「イギリス労働法改革の課題と展望」島大法学(島根大学)42巻4号
  17. 高木龍一郎「イギリスにおける賃金保護─減給に対する法的規制と問題点」東北学院大学論集(法律学)53=54号
  18. 高木龍一郎「イギリスにおける出勤停止─コモン・ローにみるその機能と法的性質」東北学院大学論集(法律学)55=56号
  19. 高木龍一郎「イギリスにおける就労請求権─コモン・ローにおける原則と例外的領域」東北学院大学論集(法律学)58号
  20. 高島道枝「賃金委員会法(Trade Boards Act, 1909)の成立─イギリス最低賃金制史(3)」経済学論纂(中央大学)41巻3=4号
  21. 田口晶子「イギリスの解雇規制の概要」世界の労働50巻6号
  22. 田口典男「イギリスにおける賃金審議会の廃止と全国最低賃金制度の導入」大原社会問題研究所雑誌502号
  23. 田口典男「イギリス労使関係におけるサッチャリズムの影響」アルテスリベラレス(岩手大学)65号
  24. 寺田博「イギリスにおける中高年問題と年齢差別禁止」社会科学論集(高知短期大学)80号
  25. 寺田博「イギリスにおける中高年労働者」労働法律旬報1444号
  26. 内藤忍「性差別禁止法で間接差別とされる『要件または条件』」労働法律旬報1489=1490号
  27. 盧尚憲「イギリスにおける有期雇用契約の法理」法学会報誌(東京都立大学)40巻2号
  28. 盧尚憲「イギリスにおける剰員整理解雇の法理」法学会雑誌(東京都立大学)41巻2号
  29. 古川陽二「イギリスにおける労働法の規制緩和と弾力化」日本労働法学会誌93号
  30. 本田一成「イギリスにおける職業調練の構造─3つのアプローチに着目して」日本労働研究機構研究紀要15号
  31. 三井正信「イギリス雇用契約論におけるcontractstatus(1)(2)─フランス法との比較の視点から」広島法学23巻1、2号
  32. 宮崎由佳「パートタイム労働と間接性差別」労働法律旬報1489=1490号
  33. 山下幸司「イギリスにおける労働条件の決定・変更」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
(6)ドイツ
  1. 有澤知子「ドイツにおける積極的平等施策と基本法3条2項の改正─割当制をめぐる議論について」法学研究(大阪学院大学)27巻1号
  2. 岩佐卓也「ワイマール期における労働組合と労働法」法社会学54号
  3. 岩佐卓也「ドイツ労働書記局における法と運動」大原社会問題研究所雑誌505号
  4. ロルフ・ヴァンク/橋本陽子訳「ドイツにおける労使関係と法の新展開」日本労働研究雑誌464号
  5. 上田真理「ドイツにおける人員整理と雇用保障の法理」行政社会論集(福島大学)11巻3号
  6. 上田真理「ドイツ失業者最低生活保障─連邦社会扶助法を手がかりに」行政社会論集(福島大学)12巻3号
  7. 上田真理「ドイツ連邦社会扶助法における最低生活保障の法理─『ホームレス』を素材として」行政社会論集(福島大学)12巻4号
  8. 内村国臣「旧ドイツ民主共和国の労働協約法制の生成過程」中央学院大学総合科学研究所紀要14巻1号
  9. 内村国臣「Kollektivverträge im östlichen Teil Deutschlands in der sowjetischen Besatzungszeit nach dem Ⅱ. Weltkrieg」中央学院大学法学論叢11巻2号
  10. 蛯原典子「ドイツ労働法における平等取扱原則(1)~(3完)」立命館法学260、261、262号
  11. 大橋範雄「ドイツ連邦共和国被用者派遣法」大阪経大論集49巻6号
  12. 緒方桂子「ドイツにおける成績加給制度と法的規整の構造」季刊労働法190=191号
  13. 川田知子「ドイツにおけるパートタイム労働者の平等取扱原則─わが国の法解釈論への示唆を中心に」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)29号
  14. 倉田原志「ドイツにおける政治活動を理由とする解雇と基本権・覚書」立命館法学271=272号
  15. 毛塚勝利「ドイツにおける個別紛争処理制度」世界の労働51巻7号
  16. 小西康之「ヴァイマル期における失業保険制度成立の道程─失業への取組みとその限界」法律論叢(明治大学)73巻2=3号
  17. 小林勝「ドイツにおける外国人労働者のインテグレーション(1)─概念と政策」中央学院大学法学論叢13巻2号
  18. 斎藤純子「ドイツの社会保険義務のないパートタイム労働(僅少労働)」レファレンス572号
  19. ギュンター・シュミット/布川日佐史訳「労働の未来─工業社会から情報社会へ」季刊労働法194号
  20. 高橋保=梅迫早智子「ドイツ母性保護法─職業に従事する母親の保護に関する法律(母性保護法)(翻訳)」創価大学法学30巻2=3号
  21. 高畠淳子「ドイツ社会法典第3編・雇用促進における賃金補償給付─失業手当と退職手当の調整を中心に」社会システム研究(京都大学)4号
  22. 田口晶子「ドイツの解雇規制の概要」世界の労働50巻4号
  23. 竹内治彦「従業員代表会の両義性と機能的成熟」岐阜経済大学論集33巻2号
  24. 竹内治彦「ドイツにおける従業員代表選挙と労働組合の事業所政策」岐阜経済大学論集34巻3号
  25. 田多井妃文「中高年労働者処遇をめぐる一考察─ドイツの解雇制限法制度とその変容」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)29号
  26. 塚田奈保「企業組織の変動と労働関係─ドイツ法における労働関係の強行的移転の検討」本郷法政紀要(東京大学大学院)9号
  27. 辻村昌昭「労働過程で生じた損害と責任制限法理の新展開」法学新報(中央大学)104巻8=9号
  28. 土田道夫「ドイツの労使協議制度の概要」世界の労働49巻9号
  29. ヴォルフガング・ドイブラー/西谷敏訳「ドイツ解雇制限法の現状」季刊労働法193号
  30. 藤内和公「ドイツ小売業の営業時間規制」季刊労働法186号
  31. 藤内和公「ドイツの労働時間 1995年」法学会雑誌(岡山大学)47巻3号
  32. 藤内和公「ドイツにおける従業員代表のタイプ」法学会雑誌(岡山大学)47巻4号
  33. 藤内和公「ドイツ・公務員の従業員代表制」法学会雑誌(岡山大学)48巻2号
  34. 名古道功「ドイツにおける中高年労働者」労働法律旬報1444号
  35. 名古道功「大量失業・グローバリゼーションとドイツ横断的労働協約の『危機』」金沢法学43巻2号
  36. 名古道功「ドイツにおける労働条件規制の最近の動向─事業所レベルヘの移行」日本労働研究雑誌496号
  37. 西村健一郎「ドイツ労災保険法の社会法典第7編への編入について」週刊社会保障52巻2007号
  38. 西村健一郎「独労災保険法における自殺の労災認定」週刊社会保障53巻2059号
  39. 根本到「解雇法理における『最後的手段の原則(ultima ratio Grundsatz)』『将来予測の原則(Prognoseprinzip)』─ドイツにおける理論の紹介と検討」日本労働法学会誌94号
  40. 根本到「ドイツにおける変更解約告知制度の構造(2)」季刊労働法187号
  41. 根本到「ドイツにおける整理解雇法理の判断枠組」季刊労働法196号
  42. ペーター・ハナウ「Arbeitsrechtliche Probleme alternder GesellschaftenRitsumeikan Law Review Vol.18
  43. 早川勝「ドイツの欧州事業所委員会法(翻訳)」同志社法学52巻3号
  44. 早川勝「ドイツ事業所組織法(翻訳)(1)(2)完」同志社法学52巻4、5号
  45. 平田衛=丸岡桂子「ドイツにおける労働災害保険制度の概観─『社会的権利の概観』から」労働科学77巻1号
  46. ミヒャエル・フィヒター/大井方子、中村民雄訳「労働と労使関係のグローバライゼーション─ドイツの場合」社会科学研究(東京大学)52巻2号
  47. 藤原稔弘「ドイツにおける労働条件の決定・変更─個別的労働法上の変更手段を中心として」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  48. 細谷越史「ドイツにおける労働者の損害賠償責任制限法理に関する一考察(1)(2完)」法学雑誌(大阪市立大学)47巻2、3号
  49. 松丸和夫「ドイツにおける労働市場政策と雇用創出をめぐる若干の問題」大原社会問題研究所雑誌496号
  50. 三柴丈典「ドイツにおける労働安全衛生法の新展開」労働法律旬報1465号
  51. 水島郁子「ドイツ賃金継続支払法の変更」姫路法学(姫路獨協大学)23=24号
  52. 水島郁子「ドイツにおける疾病被用者の所得保障の転換─社会保険法による解決か、労働法による解決か」姫路法学(姫路獨協大学)25=26号
  53. 水島郁子「法律変更が労働協約に及ぼす影響─ドイツ賃金継続支払法の変更に関する一考察」姫路法学(姫路獨協大学)29=30号
  54. 籾山錚吾「ドイツの出入国管理法の動態」朝日法学論集25号
  55. 柳屋孝安「ドイツにおける自営業者に対する労働法、社会保障法上の規整の動向」法と政治(関西学院大学)51巻2号
  56. 矢野久「西ドイツにおける労働移民健康政策の史的展開─1962年から1965年」三田学会雑誌(慶應義塾大学)91巻4号
  57. 和田肇「ドイツ労働法の変容─標準的労働関係概念を中心に」日本労働法学会誌93号
(7)フランス
  1. 石井保雄「労働者が単独でストライキ権を行使することは可能か─最近のフランスにおける議論の紹介」亜細亜法学34巻1号
  2. 石井保雄「女性の深夜労働を原則禁止するフランス労働法典と労働条件の同一化を求めるEC1976年男女均等待遇指令との相克─労働者の保護と平等をめぐって」亜細亜法学36巻1号
  3. 伊藤雅康「シュドロー報告と労働者の企業管理への参加─フランス第四共和制憲法前文の具体化の一断面」札幌学院法学15巻2号
  4. ジャン=モーリス・ヴェルディエ/岩村正彦訳「フランスにおける雇用と労働時間─三五時間法と交渉による労働時間の短縮」日仏法学22号
  5. ジャン=モーリス・ヴェルディエ/大内伸哉訳「社会的変化および社会的疎外という新たな試練に直面する労働組合と労働者代表─フランスの経験」『現代ヨーロッパ法の展望』東京大学出版会
  6. 大山盛義「労働者供給活動に関する規制立法の生成と展開─19世紀フランスのマルシャンダージュについて」法学会雑誌(東京都立大学)39巻2号
  7. 大和田敢太「フランスにおける団結権論の課題─規制緩和政策と労働組合の代表機能」彦根論叢(滋賀大学)315号
  8. 大和田敢太「労働組合の代表機能をめぐる課題─フランスにおける労働組合複数主義のもとでの労働組合の代表性の二つの側面」彦根論叢(滋賀大学)326号
  9. 奥田香子「『35時間法』をめぐる諸問題─フランス時間法制の新たな展開」労働法律旬報1476号
  10. 奥田香子「フランスにおける労働条件の決定・変更」『講座 21世紀の労働法 第3巻』
  11. 奥田香子「フランスにおける35時間法改革と新労働時間法制」世界の労働50巻7号
  12. 奥田香子「フランスの雇用・時短政策と35時間労働法」日本労働研究雑誌496号
  13. 勝亦啓文「フランス労働協約法と非典型協定」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)27号
  14. 川口美貴「フランスにおける経済的理由による解雇」季刊労働法196号
  15. 川口美貴「フランス労働法と労働者の権利保障」山下健次=中村義孝=北村和生編『フランスの人権保障─制度と理論』法律文化社
  16. 坂本宏志「フランスにおける賃金の法的性質に関する一考察─賃金控除の理論的考察」神奈川法学34巻3号
  17. 島田陽一「フランスの解雇規制法の概要」世界の労働50巻7号
  18. アラン・シュピオ/矢野昌浩訳「90年代におけるフランス労働法の動向」日本労働研究雑誌464号
  19. 鈴木清貴「使用者責任における『事業ノ執行ニ付キ』の再検討─フランス法と比較して」法学政治学論究(慶應義塾大学大学院)48号
  20. 鈴木秀貴「フランスにおける週35時間労働法」時の法令1605号
  21. 砂押以久子「フランスにおける労働者の個人情報保護」日本労働法学会誌96号
  22. 砂押以久子「労働者のプライバシー権の保護について─フランスの現状と課題(3完)」季刊労働法186号
  23. グサヴィエ・ブラン=ジュヴァン/岩村正彦訳「フランス法における労働紛争の和解による解決」『現代ヨーロッパ法の展望』東京大学出版会
  24. ドミニック・ナゼ・アローシュ/植野妙実子=佐藤修一郎訳「フランスの男女平等確立におけるヨーロッパ法の影響」比較法雑誌(中央大学)31巻3号
  25. ヴァレリー・ブルボン/松本英実訳「フランスにおけるセクシャル・ハラスメントヘの立法上・司法上の対応」法政理論(新潟大学)32巻3=4号
  26. 保原喜志夫「フランスにおける労使協議制」世界の労働49巻7号
  27. 松村文人「大量失業下での時短による雇用創出─仏週35時間法の効果について」オイコノミカ(名古屋市立大学)35巻3=4号
  28. 向井喜典「フランスの労働争議強制仲裁制度の軌跡─人民戦線衰退過程の労使関係政策」大阪経済法科大学経済学論集24巻2号
  29. 本久洋一「フランスにおける企業移転と労働契約」日本労働法学会誌94号
  30. 盛誠吾「フランスにおける労働法の規制緩和と弾力化」日本労働法学会誌93号
  31. 安井宏「サン-ディディェの労働法と債務法の対立論(1)」法と政治(関西学院大学)51巻2号
  32. 矢野昌浩「企業内労使関係と『非典型協定』」日本労働法学会誌92号
  33. 矢野昌浩「労働法の規制緩和と労働者の法主体性─A. シュピオの所説から」早稲田法学75巻3号
(8)その他のヨーロッパ諸国
  1. ゲルハルト・エアシュニッグ「オーストリアにおける社会的パートナー制」労働法律旬報1456号
  2. 大内伸哉「イタリアの労働市場法制の動向─1997年の改革とその影響」神戸法学年報15号
  3. 大内伸哉「イタリアのパートタイム労働新法の紹介」神戸法学年報16号
  4. 大内伸哉「イタリアの個別紛争処理」世界の労働51巻6号
  5. 木下正義「国際労働基準を実施する立法論の構想─スウェーデンのILO委員会を素材にして」比較法制研究(国士舘大学)20号
  6. 中野育男「スイス職業教育改革と効率化に関する比較研究」専修総合科学研究8号
  7. 中益陽子「非従属的就業者への労災保険制度の拡張─最近のイタリアの動向」日本労働研究雑誌496号
  8. ヤン・ハインシゥス/川田琢之訳「20世紀末期のオランダ労働法─雇用関係における『フレキシビリティ』化の傾向」日本労働研究雑誌464号
  9. 皆川宏之「オーストリアにおける労働契約法の史的展開(1)(2完)─特に19世紀における発展を顧慮して」民商法雑誌123巻2、3号
  10. 山口浩一郎「イタリアにおける雇用平等の展開と現状」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
(9)アジア・オセアニア
  1. 粟津光世「中国労働紛争仲裁」JCAジャーナル46巻1号
  2. 李銀榮「韓国における非正規(非典型雇用)労働者の契約期間」法政研究(九州大学)66巻4号
  3. イ・ジョン「韓国における雇用調整と雇用保障制度」日本労働法学会誌96号
  4. イ・ジョン「労働委員会における個別紛争処理に関する一研究─韓国のケースを中心として」法政研究(九州大学)66巻2号
  5. イ・ジョン「東アジア諸国の労働法制の交錯に関する研究─日本の労働法制が韓・中・台の法制度の形成にもたらした影響を中心として」法政研究(九州大学)68巻1号
  6. 市毛景吉「いわゆる社会条項とマレーシア労働組合権」法律論叢(明治大学)73巻2=3号
  7. 押見善久「ベトナムの労働関係法制」ジュニア・リサーチ・ジャーナル(北大法学研究科)6号
  8. 姜成泰/宋剛直訳「韓国の労働者派遣法の主要内容と問題点」季刊労働法188号
  9. 黄維玲「中国における失業保険法制の成立および展望」九大法学(九州大学)79号
  10. 黄維玲「中国における職業紹介法制─民間有料職業紹介を中心に」九大法学(九州大学)81号
  11. 鈴木康二「インドネシア1997年労働法の行方」国際商事法務27巻3号
  12. 曽我貴志=秋山洋「海外研修終了後の従業員を拘束する特約の中国労働法上の有効性に関する考察」国際商事法務26巻10号
  13. 宋剛直「韓国労働関係法等の改正をめぐる諸問題」比較法学(早稲田大学)31巻2号
  14. 田中清定「中国における法制度・国際関係の現状─中国の新しい『労働法』について(中国における改革の諸政策と各種法制度の整備の状況)」関東学園大学法学紀要7巻2号
  15. 蔡勝錫「韓国の勤労基準法」東京経済大学法学1号
  16. 崔弘嘩/宋剛直訳「韓国における外国人労働者と労働法上の課題」季刊労働法194号
  17. 長淵満男「オーストラリア港湾争議と労働者の権利」労働法律旬報1442号
  18. 長淵満男「労働関係の個別化とその実状─オーストラリアの実証」甲南法学39巻3=4号
  19. 長淵満男「オーストラリア労働関係における個別化と組合排除─九〇年代における労働関係法の改編」甲南法学40巻1=2号
  20. 長淵満男「ラオス労働法(和訳)」甲南法学41巻1=2号
  21. 長峰登記夫「雇用環境の変化と大学教員─高等教育部門の規制緩和とオーストラリアの大学教員」法学志林(法政大学)97巻4号
  22. 長峰登記夫「企業別交渉下の大学労使関係─規制緩和とオーストラリアの大学」法学志林(法政大学)98巻1号
  23. 盧尚憲「韓国の新整理解雇法制」労働法律旬報1449号
  24. 朴洪圭「韓国労働法の形成と展開─政治及び労働運動に関連して」立命館法学267号
  25. 朴宣映「韓国における非正規労働の法制度に関する一考察(1)(2完)─パートタイム労働と派遣労働を中心として」法学雑誌(大阪市立大学)45巻1、2号
  26. 朴宣映「韓国の労働者派遣法制について」東アジア研究(大阪経済法科大学)22
  27. 林和彦「開発体制と労働法」日本労働研究雑誌469号
  28. 林和彦=イ・ジョン「韓国の新労働立法 解説と翻訳(1)~(3完)」日本法学63巻3、4号、64巻2号
  29. 林和彦「労働法における開発独裁の精算─韓国の経験」日本法学56巻2号
  30. アンソニー・フォーサイス=リチャード・ミッチェル/長峰登記夫訳「オーストラリアにおける労働法研究の動向」日本労働研究雑誌464号
  31. 彭光華「中国労働法下の労働協約制度─労働協約の締結過程を中心に」九大法学(九州大学)77号
  32. 彭光華「中国の労働協約制度における労働行政」九大法学(九州大学)80号
  33. 彭兆輝「現代中国における失業問題と失業保険─失業保険制度の国際比較を通して」大東法政論集(大東文化大学大学院)8号
  34. 彭海奇「中国における労働者災害補償保険法制の成立及び展望」九大法学(九州大学)81号
  35. 村下博「1995年フィリピン移住労働者送り出し法(共和国法8042号)」法学研究所紀要(大阪経済法科大学)29号
  36. 文普玄「韓国における整理解雇法理の動向」季刊労働者の権利237号
  37. 元田時男「タイの労働者保護法の改正」JCAジャーナル46巻4号
  38. 安田信之「オーストラリアの人権委員会の紛争処理手続─人種差別事件を中心に」国際開発研究フォーラム(名古屋大学)12号
  39. 山下昇「中国における雇用調整と雇用保障制度」日本労働法学会誌96号
  40. 山下昇「中国の雇用保障制度」九大法学(九州大学)78号
  41. 山下昇「中国における教育訓練費用の返還特約に関する研究」九大法学(九州大学)80号
  42. 山下昇「中国における『下崗』─国有企業の人員合理化策に関する研究」日本労働研究雑誌469号
  43. 尹辰浩/金元重訳「韓国労使関係の新たな実験(上・下)─労使政委員会の成果とその評価」大原社会問題研究所雑誌492、493号
  44. 楊坤「中国における労使紛争処理システムと労働組合の役割(1)~(4)」労働法律旬報1491、1493、1497、1507号
  45. 楊坤「中国労使紛争処理法制」日本労働法学会誌92号
  46. 吉田美喜夫「(資料)タイの国営企業職員関係法」立命館法学266号
  47. 吉田美喜夫「(資料)タイの新労働保護法」立命館法学268号
  48. 吉田美喜夫「タイの新『国営企業労働関係法』の意義と課題」立命館法学271=272号
  49. 劉暁紅「香港における男女雇用平等法制」社会環境研究(金沢大学)6号
  50. 劉波「中国における労働制度改革と労働契約法制」日本労働法学会誌92号
  51. 林鍾律「韓国の失業問題と雇用増進法制」法政研究(九州大学)66巻4号
  52. 呂学静=田多英範「中国失業保険制度論」流通経済大学論集35巻1号
(10)その他
  1. 尾崎正利「ブラジルにおける日系人就労斡旋のシステムの現状と課題」三重短期大学・地研年報6号
  2. 小池洋一「ブラジルの労使関係─グローバル化と制度改革」アジア経済40巻8号
  3. 武井寛「私有化と労働関係法制の転換」藤田勇=杉浦一孝編『体制転換期ロシアの法改革』法律文化社
  4. 武井寛「ロシアにおける労使関係システムの現在」ロシア研究27号
(11)諸国間比較
  1. 浅倉むつ子「間接性差別をめぐる法的課題─日本とイギリス」労働法律旬報1489=1490号
  2. 網谷喜行「国際比較における日本の『解雇規制』制度、その現状と課題」商経論叢(鹿児島県立短期大学)51号
  3. 荒木尚志「雇用システムと労働条件変更法理(1)~(6完)─労働市場・集団と個人・紛争処理と労働条件変更法理の比較法的考察」法学協会雑誌(東京大学)116巻5、6、10号、117巻4、7、8号
  4. 荒木尚志「日米独のコーポレート・ガバナンスと雇用・労使関係─比較法的視点から」『現代日本のコーポレート・ガバナンス』東洋経済新報社
  5. 有田謙司「倒産時における労働債権の保護(上)(中)─先進諸国のスタンダード」世界の労働51巻3、6号
  6. 蛯原典子「労働法における平等取扱原則─ドイツ法を手がかりとして」日本労働法学会誌96号
  7. 大山和寿「アメリカ連邦破産法における賃金優先権(1)~(4)─雇人給料及び会社使用人の先取特権を改善する立法論を志向して」法研論集(早稲田大学大学院)95、96、97、98号
  8. 大山盛義「労働者派遣法制の研究(1)~(4)─フランス法と日本法を中心に」法学会雑誌(東京都立大学)40巻1、2号、41巻1、2号
  9. 香川孝三「日本との比較で見る東・東南アジアの女子労働の現状と法制度」『労働関係法の国際的潮流』信山社出版
  10. 川田琢之「公務員制度における非典型労働力の活用に関する法律問題(1)~(3完)」法学協会雑誌(東京大学)116巻9、10、11号
  11. 川田琢之「公務員制度上の非正規職員に関する法的問題」日本労働法学会誌96号
  12. 杉野昭博「機会平等法の国際的な展開─オーストラリアとイギリスの機会平等法」河野正輝=関川芳孝編『講座 障害をもつ人の人権1 ─権利保障のシステム』有斐閣
  13. 菅野和夫=諏訪康雄「パートタイム労働と均等待遇原則─その比較法的ノート」『現代ヨーロッパ法の展望』東京大学出版会
  14. 砂押以久子「労働者の外観の自由とこれに対する使用者の規制─日米における裁判例の比較」季刊労働法190=191号
  15. 手塚和彰「各国の出入国管理政策」法律のひろば53巻10号
  16. 照井敬「便宜置籍船キャンペーンと国際比較法的研究(上)(下)」海事法研究会誌154、155号
  17. 中野育男「若年層の雇用保障と職業教育に関する比較研究─カナダ・ドイツそしてスイスの事例から」専修総合科学研究7号
  18. 中野育男「労働安全衛生と福祉国家─分権的自律的福祉国家への歩み(日本・イギリス・アジア諸国)」大原社会問題研究所雑誌481号
  19. 中野育男「労働安全衛生と福祉国家」大山博=炭谷茂=武川正吾=平岡公一編『福祉国家への視座─揺らぎから再構築へ』ミネルヴァ書房
  20. 永由裕美「人事考課に対する法的規制の日米比較(1)(2完)」法学新報(中央大学)107巻7=8、9=10号
  21. 野瀬正治「代替的紛争処理(ADR)と労使紛争─英米からの示唆」国際公共政策研究(大阪大学)4巻1号
  22. 野田進「諸外国の休暇制度と日本(上)(下)─休暇制度のグローバルスタンダードを探る」世界の労働50巻6、7号
  23. 野村晃「管理職組合をめぐる日本とアメリカにおける労働法上の問題」研究紀要(日本福祉大学)99号
  24. 藤井樹也「定年制と憲法」米沢広一=松井茂記=土井真一編『佐藤幸治先生還暦記念 現代立憲主義と司法権』青林書院
  25. 細谷越史「『失業給付の支給制限』に関する一考察─日独比較」賃金と社会保障1293号
  26. 松林和夫「ドイツ重度障害者法の比較法的検討─OECDの一部の国(米、英、カナダ、日本)を中心として」法学会雑誌(岡山大学)48巻3=4号
  27. 三柴丈典「労働科学と法の関連性─日独労働安全衛生法の比較法的検討(学会報告予備説)」近畿大学法学47巻3=4号
  28. 三柴丈典「労働科学と法の関連性─日独労働安全衛生法の比較法的検討」日本労働法学会誌96号
  29. 向田正己「過失責任における有責性原理─具体的過失など具体的事情とそれを前提とする心理的可責性」一橋研究23巻3号
  30. 向田正己「過失責任の危険責任化について─労災における使用者の労働者に対する注意義務を中心にして」一橋研究23巻4号
  31. 向田正己「過失相殺における不注意について─危険引き受けなど被害者の心理的可責性と義務違反」一橋研究24巻1号
  32. 向田正己「第三者の過失と被害者側の過失について─安全配慮義務における履行補助者と共同雇用原理によせて」一橋研究24巻3号
  33. 籾岡宏成「英米法における懲罰的損害賠償の歴史的素描」中央大学大学院研究年報(法学研究科篇)28号
  34. 山川隆一「諸外国における労働市場政策─積極的雇用政策の動向」『講座 21世紀の労働法 第2巻』
  35. 山崎文夫「イギリスの嫌がらせ規制法とわが国のストーカー規制法におけるセクシュアル・ハラスメント」比較法(東洋大学比較法研究所)38号
  36. 林素禎「男女賃金格差と間接差別法理─米国・英国の法の比較が示唆するもの」本郷法政紀要(東京大学大学院)8号
  37. 脇田滋「韓国と日本の労働者派遣法・日本の側からの比較─姜成泰論文を読んで」季刊労働法188号

労働法主要文献目録は、『法律判例文献情報』等に基づき、中村涼子(東京大学大学院法学政治学研究科博士課程在学中)が作成した。