資料シリーズNo.307
副業・兼業に関する企業ヒアリング調査

2026年9月9日

概要

研究の目的

厚生労働省は、平成30(2018)年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、副業・兼業の促進の方向性や、労働時間や労働者の健康確保等の留意事項をまとめている。副業・兼業に関する施策の検討に当たっては、副業・兼業に関する企業側の支障や懸念点、副業を認める場合の雇用契約等についての実態も把握する必要があることから、副業・兼業を許可する企業及び受け入れている企業の実態や課題等について、企業ヒアリング調査を実施した。

本調査は、厚生労働省労働基準局 労働条件政策課の要請調査である。

調査の方法

企業に対するヒアリング調査(企業8社)

主な事実発見

<自社が副業・兼業者を送り出す場合>

  • 副業・兼業制度の導入理由では、その発端として、モデル就業規則の改定や副業・兼業ガイドライン等を背景とする副業・兼業の普及・促進に係わる社会的な趨勢への対応がある。制度を導入する場合、自社に適した制度設計をしており、企業側が期待していることとして、①自律的なキャリア形成の促進(例:社外での多様な経験や自社の専門領域以外の経験)、②社員のスキルアップ(得意分野の活用)、③副業・兼業による副収入の確保、④それらによる社員のモチベーション・満足度の向上、⑤副業・兼業経験の自社へのフィードバック(本業還元)――などがある。企業のなかには、社会的趨勢への対応だけでなく、積極的に副業・兼業制度を導入することで、社員の自律的なキャリア形成を促進し、モチベーションを高めること等に意義を見出している企業がみられる。
  • 許可制での副業・兼業制度においては、副業・兼業先で、雇用・非雇用のいずれも認めるか、非雇用に限定するかが制度設計の分岐点となっている。とくに雇用も認める場合(雇用型)、労働時間の通算規定に対する対処もあり、「管理モデル」を導入している企業がみられる。一方、非雇用は、労働時間の通算規定の対象外であることから、労働時間管理の対象外としている企業がある。副業・兼業先を非雇用に限定する理由では、所定外労働時間の割増賃金の算定の対象外である点をあげる企業が目立つ。また、雇用型を認めてしまうと、副業・兼業先の指揮命令下に入ること等により、過重労働となり健康面が阻害されてしまう可能性があることや、本業で対応してもらいたいタイミングで指示ができないなど、本業での働き方が制限されるケースが想定されることをあげる企業もある。
  • 副業・兼業制度の利用について、禁止・制限事項が設けられている。具体的には、職務専念義務(本業に支障がある場合の副業・兼業の禁止)、健康配慮、企業秘密保持(情報漏洩禁止)、競業避止・利益相反、社内設備・仕事で得た人脈の不使用、会社の名誉や信用を損なう可能性のある行為の禁止(レピュテーションリスクがある副業の禁止)、反社会的行動の禁止などである。
  • 禁止・制限事項のなかで、企業が注視しているのは、①職務専念義務と健康配慮、②企業秘密保持、競業避止・利益相反――と考えられる。とくに本業がフルタイムの場合、副業・兼業をすることで労働時間の総計は増加するため、健康配慮を懸念している企業が多い。また、自身のスキル・特技等を活かす副業・兼業が想定されることから、企業秘密保持、競業避止・利益相反に対する懸念が大きい。
  • 許可申請段階で確認される事項としては、副業・兼業先の契約形態(雇用・非雇用や就業形態など)、副業・兼業の内容、副業・兼業の活動時間(労働日、労働時間や目安の時間、見込みの回数、時間など)、副業・兼業の契約期間――などがある。とくに副業・兼業先の活動時間は、本業の労働時間への支障の判断材料であり、かつ、健康確保の面でも重要な指標となっている。健康確保に支障を来すような副業・兼業は申請段階で不許可となる。競業避止・利益相反の禁止事項については、なにが競業避止・利益相反に当たるかを事前に設定することは困難であるため、実際には申請段階で個別判断されている。むしろ、副業・兼業規定やガイドラインを周知し、注意喚起することで、申請者の自己チェックにより、競業避止・利益相反に当たらない副業・兼業の申請を促している面がある。このように禁止・制限事項を事前に明示し、許可申請段階でチェックすること(禁止・制限事項の遵守の宣誓を課すこと含む)は、社員の副業・兼業に対する意識を高め、かつ、申請者自身が禁止・制限事項に抵触しない仕事の内容のみを申請するという形で、これらの禁止・制限事項に抵触しない安全な副業・兼業を促進するうえでも有益なものとなっている。
  • 副業・兼業制度の利用実績に対する企業の認識は、増加傾向、もしくは安定的に推移しており、減少傾向にあるとの認識を示す企業はなかった。いったん制度が導入されると、従業員側の副業・兼業に対するニーズが高いことが示唆される。また、企業側も利用実績があることから、制度導入に一定の効果を感じている。
  • 副業・兼業の申請の特徴では、副業・兼業先が非雇用であるケースが多い。具体的な副業・兼業の仕事内容としては、コンサル業や企画業等の業務委託、大学等の講師等がみられる。これまで培ったスキルを活かした副業・兼業が目立つ。執筆や通訳など、趣味や特技を活かした副業・兼業もある。定期的な仕事というより単発(スポット)の仕事が多い。雇用の仕事としては、飲食店のパート・アルバイト等、様々である。
  • 副業・兼業先の活動時間については、自己申告で把握している企業がある(勤怠管理システムで、副業の活動時間を自己申告する仕組み)。上長が、本業の労働時間・業務負荷と、副業・兼業の労働時間を把握できる仕組みにもなっている。健康確保の面から本業・副業の合計時間が単月80時間などの上限を超えた場合にアラートを出す仕組みを整備したり、単月80時間を超える層に対して産業医面談の健康確保措置を講じている企業もある。ただし、実際には、長時間労働のケースはほとんどない、とする企業が多い。
  • 副業・兼業の制度導入の効果としては、本人が持つスキル・能力を社外の様々な分野で発揮できること、その経験を本業に活かせることを挙げる企業が目立つ。自社の事業領域外や、自社では育成できないキャリアを社外で形成できるメリットを指摘する企業もある。また、自身のスキル・強みを生かせることで、「モチベーション維持・アップにも繋がっている」との指摘もある。

<他社から副業・兼業を受け入れる場合の労働時間管理等>

  • 今回のヒアリング対象では、副業・兼業者を非雇用として受け入れている可能性がある企業、雇用(非正社員)として受けている可能性がある企業がみられた。
  • 非雇用の主な事例として、事業領域外の単発プロジェクトでは、必要な人材(例えば、デザイナーやコンサルティング等)を業務委託しているケースがみられた。ただし、業務委託の中で、副業・兼業者がいる可能性はあるが、それを企業側が確認しているわけではなかった。
  • 副業・兼業者の雇用(非正社員)の受け入れについては、とくに店舗等繁閑のあるシフト制のある職場(小売業や外食産業等)では、結果的に、採用者のなかに副業・兼業者が含まれることはありうる、としている。

本文

研究の区分

課題研究「副業・兼業に関する企業の実態調査」

研究期間

令和6~7年度

調査担当者

奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査部長
奥村 澪
労働政策研究・研修機構 調査員
郡司 正人
労働政策研究・研修機構 リサーチフェロー

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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