資料シリーズ No.216
職場のパワーハラスメントに関するヒアリング調査結果

2019年6月7日

概要

研究の目的

現在、社会問題化しているパワーハラスメント、カスタマーハラスメントにおいて、企業は業種、規模、業務内容等により、企業内で知識と経験を蓄積し、独自の対策を講じている。中小企業では、マンパワーの不足等のため、十分な対応ができていない。また、ハラスメント体質が残っている業種がある。顧客や取引先からの著しい迷惑行為については、消費者の権利保護という考え方が誤解されており、十分な対応ができていない。このような状況下で、JILPTでは厚生労働省の要請を受け、職場のパワーハラスメントの具体例の収集・分析を行った。

研究の方法

ヒアリング調査、書面調査

主な事実発見

  • パワーハラスメントについて、企業活動に対する阻害要因、経営に対する重大なリスク要因と認識されており、多くの企業で取り組みが進められている。
  • 多くの企業では、パワーハラスメントを禁止行為として就業規則等の社内規定に明記している。
  • 社内のコミュニケーションの円滑化、ストレスチェックの活用により、パワーハラスメントの発生要因を解消しようという試みが行われている。
  • 企業内の相談窓口等では、パワーハラスメントに特化せず、セクシュアルハラスメント、公益通報などと一体化して窓口を設けている例が多くみられた。また、セクシュアルハラスメントや公益通報者保護法に則した体制整備を行っている企業もみられた。
  • パワーハラスメントの事象が生じたときに、事実関係の確認等は、本社人事部などの第三者が行っている例が多くみられた。
  • 通報者のプライバシー保護、不利益取扱いの禁止等は、多くの企業が社内規定や広報で周知し、配慮されている。二次被害の防止についても、事案の調査を行っていることを周囲に知られないように調査範囲を限定するなど、配慮がみられている。一方で、匿名通報については、多くの企業で受け付けているものの、事実関係を確認する上で障害となることから、本人の同意を得た上で、顕名としている例が多くみられた。
  • パワーハラスメントの6類型では、以下のような特徴があった。
    1. ① 身体的攻撃の事例は少なく、問題行為と認識されている。
    2. ② 精神的な攻撃の事例が多く、暴言を吐く、大勢の前で叱責する、執拗に叱責を繰り返すなどの事例がみられた。
    3. ③ 人間関係からの切り離しは、懇親会や打ち合わせに呼ばない、外国籍の人にとって気になるような発言をするといった事例がみられた。
    4. ④ 過大な要求は、目標達成のために過度な要求をする、休日出勤を強いられるほどの業務を与えるといった事例がみられた。
    5. ⑤ 過小な要求は、プロジェクトに参加できない、役職に見合った仕事を与えないという事例もみられた。
    6. ⑥ 個の侵害は、プライベートを詮索する、悪気なく飲み会に誘う、自宅に呼んで私用をさせるなどの事例がみられた。パワーハラスメントととられないよう、平日の飲み会への誘いを禁止している事例もみられた。
  • これらの事例は一般化して分類しているものも多く、実際には、暴力行為と暴言、個の侵害とセクシュアルハラスメントなど複合的に発生している例がみられた。
  • 多くの企業では、被害者の希望を聞いて、納得が得られるように対処していた。
  • 加害者が業務上の指導の範囲内と認識していても、被害者はパワーハラスメントと認識するなど、被害者と加害者の言い分の相違がみられるという意見が多く聞かれた。
  • 中小企業では事例の蓄積やマンパワーが十分でなく、経営者自身がパワーハラスメントの対応に当たっている。また、社員が休業することによる経営上のリスクも大きく、大企業のように、被害者と加害者を引き離すといった対応を取ることが難しい。
  • パワーハラスメントかどうか判断に迷うような事案について、前例を参照するとともに、顧問弁護士や社会保険労務士に世間相場を確認するという意見が多くみられた。
  • 顧客や取引先からの著しい迷惑行為については、業態により、有無、対応に大きな違いがみられた。ひたすら消費者の理解を求めるしかないなど、抜本的な解決策となっていない事例もみられた。
  • 顧客や取引先からの著しい迷惑行為について、社員が一人で抱え込まないようにし、まずは上司に相談し、組織的に対応するようにしているという企業が多かった。
  • 顧客や取引先からの著しい迷惑行為について、小売業を中心に顧客第一主義のあり方の見直し、迷惑行為への対応に当たって根拠となるようなものや業界指針を求める意見があった。また、顧客や取引先からの著しい迷惑行為が問題となっていることを世の中に周知すべきという意見があった。

政策的インプリケーション

  • 企業は、すでに立法化されているセクシュアルハラスメント、公益通報者保護制度などと一体的にパワーハラスメントについて対応を取っており、今後、立法化に際してはこのような制度との整合性が求められる。相談者にとっても、相談内容によって窓口が変わるよりも、自分が相談したい窓口を選び、包括的に悩みの相談をできるというメリットがある。
  • 企業によって社内の事例の蓄積に差がみられることから、国からの積極的な情報提供が求められる。とりわけ、中小企業では経営者の考え方によってパワーハラスメントへの対応が異なってくる可能性があり、経営者がパワーハラスメントの対応を重視していなければ問題が放置される可能性もある。このため、中小企業経営者への情報提供や支援が必要である。
  • 厚生労働省「あかるい職場応援団」のHPを参照している窓口担当者が多く、事例の充実などにより、より情報提供することができる。
  • 顧客や取引先からの著しい迷惑行為は態様が様々であり、業法による規制や業界ごとの自主的な取り組みが有効な場合もある。また、消費者教育など、労働政策にとどまらない連携的な政策が必要である。

政策への貢献

  • 第6回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(平成30年9月25日)及び第8回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(平成30年10月17日)資料への引用。
  • 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」の検討に活用。

本文

研究の区分

緊急調査「職場のパワーハラスメントの具体例の収集・分析について」

研究期間

平成30年度

執筆担当者

望月 知子
労働政策研究・研修機構 統括研究員
藤本 隆史
労働政策研究・研修機構 アシスタントフェロー
酒井 計史
労働政策研究・研修機構 アシスタントフェロー

※所属・肩書きは、調査実施時点。

関連の研究成果

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成果普及課 03-5903-6263 

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