資料シリーズ No.204
雇用バッファの動向
─長期雇用慣行の持続可能性─
概要
研究の目的
コア労働者の長期雇用が維持されてきた背景に、関連企業、賃金、労働時間、非コア労働者などによる調整といった仕組みがどの程度働いてきたのかを明らかにすること。
研究の方法
文献サーベイ、政府統計等の2次分析(特に厚生労働省「毎月勤労統計」結果原票の活用)。
主な事実発見
- 企業外の雇用バッファについて、企業の規模別構成や子会社数をみるとバッファは小さくなっているように思われるが、近年、出向を実施する企業割合が高止まりしており、出向による労働移動も増加傾向にある。
資料出所 東洋経済新報社「日本の企業グループ」より作成。
(注)表章した5時点全てにおいて1社以上の関連会社が掲載された、持株会社でない企業についての親会社1社当たりの関連会社数。( )内は集計企業数。
- 製造業においては、パートタイム労働者による労働費用調整が短期的にはほとんど影響しておらず、一般労働者の所定外労働や特別給与による労働費用調整が、雇用のバッファ機能を果たしてきたと考えられる。
資料出所経済産業省「工業統計表」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」より作成。
(注)1.2002年、2007年の日本標準産業分類改定により製造業の内訳が変更されている。
2.全労働者現金給与総額=一般労働者数×(所定内給与+時間当たり所定外給与×所定外労働時間+特別給与)+パートタイム労働者数×(時間当たり所定内給与×所定内労働時間+時間当たり所定外給与×所定外労働時間+特別給与)とした上で、残差項を無くすため2か年の平均に対する変化率について増減寄与度を求めた。
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査」の調査産業計についてみると、大規模事業所においては男女の特別給与による調整がみられる一方、所定外労働時間による調整はあまりなく、女性の労働者数による調整がみられた。
資料出所 厚生労働省「毎月勤労統計調査」
(注) 結果原票による。
資料出所厚生労働省「毎月勤労統計調査」
(注)1.①は総実労働時間に占める所定外労働時間の割合、②は現金給与総額に占める特別に支給する給与の割合。
2.データラベルは1,000人以上、500~999人、5~29人に付けている。
政策的インプリケーション・政策への貢献
今後の労働行政推進上の基礎資料となる。
本文
本文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。
- 表紙・まえがき・執筆担当者・目次(PDF:471KB)
- 第1章 本研究の位置づけと目的
第2章 企業外のバッファの状況
第3章 製造業における企業内バッファの動き (PDF:1.1MB) - 第4章 調査産業計における企業内バッファの動き
第5章 まとめ
補論 規模別の常用労働者数の動きについて (PDF:1.0MB) - 資料 現金給与総額変動要因分解におけるデータの加工方法について(PDF:307KB)
研究の区分
プロジェクト研究「雇用システムに関する研究」
サブテーマ「産業構造と人口構造の変化に対応した雇用システムのあり方に関する研究」
研究期間
平成29年度
執筆担当者
- 永田 有
- 労働政策研究・研修機構 統括研究員