資料シリーズ No.138
グローバル企業における女性の活躍促進
―インタビュー・レコード

平成26年 5月26日

概要

研究の目的

グローバルに経営を展開する欧米企業による、女性の管理職登用を含めたダイバーシティ・マネージメントの取り組み事例を調査し、同じくグローバルな経営戦略を考える日本企業における女性の活躍を促進するための参考資料とする。

グローバル企業では、女性だけでなく多様な人材を統合するダイバーシティ・マネージメントに取り組んでいるが、そもそも日本企業と異なる賃金、人事制度を持つグローバル企業の特性を踏まえるとともに、産業や組織構造、人的資源管理システムが女性登用において少なからぬ影響を与えているとの仮説のもとで、企業特性、組織構造、人的資源管理など、包括的に整理した。

研究の方法

文献調査、インタビュー調査、質問紙票調査

主な事実発見

調査対象は、年8回アメリカで発行されている無料雑誌、Working Mother誌が実施している「働く母親ベスト100企業(Working Mother 100 Best Companies)」、全国女性役員連盟(NAFE;The National Association for Female Executives)による、女性役員・管理職登用における上位50社のランキング、投資顧問会社によるダイバーシティ経営への対応状況の格付け(A Survey of Corporate Diversity Practices of the S&P 100)、ドイツ家庭省による女性進出度ランキング、ファミリー・フレンドリー企業部門厚生労働大臣賞などを参考に選定した。

(1)「選択と集中」によるグローバル展開型、(2)ローカル市場優先型、(3)顧客適応型の三つに分類して分析した。

  • (1)「選択と集中」によるグローバル展開型は、2000年代に入りグローバル化の速度を速めるなかで、女性を含めた多様な人材を統合する経営の必要性が高まっている。国境を超えた競争が激しさを増すなかで、すべての従業員が経営者の視点を持って業務にあたることや、従業員の能力を最大限に発揮させるために、能力育成や公正な評価の仕組みの整備が進んでおり、女性の活用や登用もその一つとして位置づけられるようになっている。
  • (2)ローカル市場優先型では、本国、もしくはグローバル・レベルで目標値が設定される形で取り組みが促されていることや、ローカル市場の顧客が多様性を持つようになっていることから、企業内に多様性を取り込んでいく必要性が高まっていることなどから、女性の活躍を促進する施策が展開されている。賃金制度、職務記述と職務グレード、評価制度などは、グローバル・レベルで多様な人材を統合するための公正さを担保した仕組みとなっており、それらが女性の活用推進や登用にも効果的に機能している。一方で、労働市場に占める女性労働者の割合など、ローカル市場の特性に影響を受ける部分も大きい。
  • (3)顧客適応型は、主要な顧客である日本企業とともに海外進出や常駐するといった経営を行うため日本企業の影響が強いが、女性の活躍を促進する施策は本国企業のイニシアチブのもとで進んでいる。

政策的インプリケーション

出産、子育てというライフ・ステージを持つ女性の特殊性を理解しつつ、能力を最大限に発揮することで競争力の向上に資するという、「働き続ける」ための支援を行っているということが、調査対象企業の共通した特徴である。グローバル展開における戦略の違いにより切実さに温度差はあるが、女性を含めた多様な人材の能力を最大限に発揮させることが、企業の競争力にとって不可欠であるという認識は共通している。

「働き続ける」ための支援とは、柔軟な働き方を提示するだけでなく、フォーマルな仕組みのなかで評価される能力の獲得方法や、インフォーマルな仕組みのなかで評価される人的なネットワークの構築方法を習得させることを含む。フォーマルな仕組みが多様な人材に配慮した公正なものとなっていることは言うまでもないが、職務や評価などのうえで、明文化されていないインフォーマルな仕組みについても、情報を共有することが全体としての公正さを担保することにつながっている。何がフォーマルか、インフォーマルであるかについては、賃金、職務、評価、採用などの制度が、日本企業と異なっていることを考慮しなければならないものの、本調査結果から得られる女性の活躍促進に向けての示唆であろう。

政策への貢献

ポジティブ・アクションに関する厚生労働省のウェブサイト上で調査対象企業の事例が公開される予定。

本文

研究の区分

課題研究

研究期間

平成25年度

執筆担当者

齋藤 奈保
日本生産性本部ワークライブ部
雇用システム研究センター主任研究員
榊原 嘉明
明治大学法学部兼任講師
山崎 憲
労働政策研究・研修機構国際研究部主任調査員補佐

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