資料シリーズ No.85
求人企業サービスに関する研究
―仕事魅力、求人充足、求人開拓、事業所訪問、他―

平成23年3月31日

概要

研究の目的と方法

公共職業安定所等公的職業紹介機関の求人企業サービスに関して、その在り方、方向性を検討し、求人企業サービスを強化するための調査研究を行うのが本研究の目的であった。求人企業サービスは、求人受理、求人充足/人材紹介、求人開拓、日頃からの求人企業との関係強化という四つのステップがある(下図参照)。

本研究では研究会の実施、ヒアリング調査、Webでのデータ収集、求人情報閲覧行動の詳細なデータ化、関係文献からの情報収集等を行い、検討を進めた。

図表 求人企業サービスのステップと本研究

/資料シリーズNo.85「求人企業サービスに関する研究―仕事魅力、求人充足、求人開拓、事業所訪問、他―

主な事実発見と政策的含意

求人受理に関しては、的確で充実した「仕事の内容」の記述と、仕事や会社の魅力をアピールすることが必要である。この点に関して、第2章において仕事や職場の選択において個人が重視する点を調査し、仕事の進め方としての「創意・自律・個性」因子、定時に帰れる安全な職場で通勤に便利等「定時・安全・通勤」因子以下8因子が得られた。個人が仕事や職場を選ぶ際、どのような点が重要か様々なことが言われるが、大括りで見た場合、この8因子が想定されることが示されたことになる。ここで得られた因子は求人票だけからは分からないものも含まれるが、個人が求人情報を見る場合このような点が見られており、職業紹介においても、このような点に答えられると良いことになる。そのためにはここで示された点を日頃から情報収集しておく必要がある。本章ではこの因子から「仕事魅力チェックリスト」も作成しており、求人企業や職業紹介の場面で、求人の魅力を点検したり再確認したりできるものとなっている。

第3章では、求人情報のどこをどのように見ているのかデータを収集し、応募に前向きになる要素として、自分の長所や経験が生かせる仕事内容か、興味や関心が持てる仕事内容か、また、応募に躊躇する要素としても、このような仕事は自分にはできないということでやはり仕事内容が挙げられた。応募に躊躇する要素としてはこの他、必要な実務経験が書いてあるとそのような実務経験がない場合、応募できないとなることや、免許資格が必要とある場合も、それを持っていないと応募できない等が見られた。このように第2章と同様に、第3章においても求人情報の閲覧において、仕事内容が大きな要素となっている結果であった。ここで得られた知見は求人受理において求人票を作成する際、参考となるものであり、この際どのような情報を盛り込めば良いかその方向を示すものである。

求人充足/人材紹介のステップでは、求職者側と求人企業側双方の情報を可能な限り収集し、その情報の上に適切な人材、適切な求人を紹介する必要があるが、この情報収集に関して、今日ではインターネットから様々な情報が得られる。この点に関して第7章において、インターネットからの情報収集の現状と留意点等を整理している。インターネットからの情報は求人充足/人材紹介の際、役立つものであるが、インターネット等から様々な情報を収集できれば、求人受理において、それを求人票における「仕事の内容」に生かし、より充実した正確な記述ともなるものである。インターネットの具体的な活用に関しては付録「求人企業サービスにおけるインターネットの利用活用」において整理している。

求人開拓に関しては、どのようなときに求人が出てくるのか把握しておくことが重要であり、この点に関して第4章において求人が出てくる要因や背景を、これまでの研究や調査から整理した。求人開拓の訪問をどのようにすれば良いかに関しては、求人開拓に近い要素があると考えられ、研究が蓄積されている営業活動に関してこれまでの研究等を第5章において整理し、求人開拓に生かせるものがないか検討した。また、このような検討に基づき、求人が出てくるかチェックする「雇用開発チェックリスト」と、求人開拓における訪問の際チェックする「求人開拓チェックリスト」を作成した。

日頃からの事業所との連携強化のためには、助成金の支給や新制度の案内だけでなく、事業所に役立つ情報を提供することも必要である。この観点からHRM チェックリストを実施することは、企業経営の参考となる情報を提供できることになり、また、HRM チェックリストとして蓄積されてきたデータを分析することによって、企業の興味関心に答えることができる。そこで第6章において職場や仕事の状況とストレス、コミットメントとの関係を分析した。人事担当者にとっては興味深い結果ということができる。

政策への貢献

公共職業安定所の求人企業サービスに関しては、これまで継続的、体系的な研究が手薄であったが、本研究を端緒とし、以上のような研究の蓄積を図っていくことによって、求人企業に対しても、求職者に対してもより良いサービスとなることに資することができると考えられる。

本文

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研究期間

平成22年度

執筆担当者

松本真作
労働政策研究・研修機構 副統括研究員
佐藤 舞
労働政策研究・研修機構 臨時研究協力員

入手方法等

入手方法

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